ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

明日、父のいる町へ

2013-11-20 22:44:55 | 日記

海岸沿いの町で僕は育った。 父は無口で粗暴で、あまり遊んでもらったことがないけど、なぜか小学 4 年の頃、当時買った厳つい中古自転車に僕を乗せて、ちょくちょくサイクリングに連れていってくれた。

冬になると店の石油ストーブの前で暖をとっている父を見ていた。 小学校低学年の僕は風邪薬の CM が TV で流れる頃、店横の径で夜空を見上げ、雪が灰のような色で降ってくる様子に、「自分は家庭を持ち家族を養っていけるのだろうか?」 などと真剣に悩むマセガキだった。 風邪もひかず病気もせず、毎日毎日店に立っていた父。

悪い遊びをして警察の取り調べを受けたとき、夜遊びで朝帰りをしたとき、怖いくらいに優しかった父。 成績が振るわず高校受験で2度の志願変更をしたとき、都度、石油ストーブの前で相談に乗ってくれた父。 上京しての大学入学式に一緒に出てくれた父。

いつしか幼少のころの恐いイメージはなくなっていった。 でも、幼い頃のアルバムには、あの恐い表情の父が写っていた。

NTT 代理店悪徳営業マンの詐欺に遭って、それを僕が解決する姿をすまなそうに見ていた父。 帰省の度に小さく弱くなっていく父。 4 年前から痴呆が目立った父。 僕を証券会社と勘違いして、携帯の向こうで一生懸命話しかける父。 ある日の朝、「これからそちらに行く」 と、突然訳のわからないことを一方的に電話してきた父。

ここ数年は時々意識を失い、救急車の世話になっていた父。 会えば嬉しそうにとつとつと話してくれる父。 食べこぼしもひどく、耳も滑舌も悪くなっていく父。

 

そして昨日、階段から落ちて救急車で運ばれ入院した父。 兄からの 「痛みはひどいようだけど骨折もなく、念のため脳の検査と、ついでにインフルエンザの予防接種をして退院する予定」 との連絡に胸をなでおろした ・・・ そして、夜中に徘徊し、今日未明に亡くなった父。

“ 舌根沈下による呼吸停止 ” なんて、階段から落っこちたことと関係ないじゃん。 慣れない枕とベッドで、余程寝苦しかったのかな?

メールで知らせた上の子は、職場で泣きながら 「僕も行きます」 と言ってくれた。 何と夫婦で行きたいのだとか。 そして、下の子も行きたいと言ってきた。 父さんまで脈々と続いた血縁は、あなたの孫にもしっかりと受け継がれていますよ。 安心してくだい。

 

最期まで母と一緒に生活できたし、何よりも仕事が続けられて良かったね。 明日は僕を育ててくれた父さんのいる、あの町へ伺います。 もうちょっと待っててくださいね。

 

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