ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

オーディオの始まり <その4>

2015-06-13 20:43:39 | 日記
愛用の PHILIPS AD7063/M8 に続いて購入したのは、もちろん PHILIPS 。 今回は自作ではなく、某オーディオ専門店のオリジナルモデルだ。 左右ペアで 50,000円位だったろうか。

偶然見つけたダークブラウンのエンクロージャーと、ブルーのバッフル板とのコントラストが映えるそのモデルは、とあるビルの最上階にある大きなオーディオ専門店の壁一面に並ぶスピーカーシステム群の中にあって、紛れもなく光って見えた。

それは、PHILIPS AD9710/MC と PHILIPS AD0163/T8 。 極厚の板で組まれた 200L を超える重量級バスレフ箱の上端に、それぞれが寄り添うように取り付けられていた。 ネットワークは、ツィーター側にハイパスフィルターとして 2.7μF のコンデンサーをかませただけのシンプルな構成だ。

低音は密閉型の如く引き締まり、ゴリゴリとしてエッジが明瞭。 F0 から下は、だら下がり。 レベルは相当落ちるものの、かなり低いところまで再生できた。 中低音~中音はふくよか。 中高音~高音は線は細いものの素直。 但し粉末状の曖昧なトーンではなく、微細に砕いたガラスのようで、1 つ 1 つの音粒を描き切る力があった。

カタログに載る周波数特性は、PHILIPS AD7063/M8 にも増して平坦さを欠き、ノコギリ刃のようなピークとディップが連なっている。 その一方で、聴感上はフラットかつワイドレンジなのだから、オーディオって面白い。

そんなこいつは SATIN M-20 との相性が抜群。 針圧の微調整を終えて聴く “ 雨のウェンズデイ ” や、“ To France ”、更には “ Let's Go Crazy ” 及び“ Darling Nikki ” のイントロのキーボードは鮮烈、繊細でリアル。 これこそが僕にとって最高の音色。 今もこのトーンが、僕の “ Primary Standard ” だ。

このスピーカーをもって、僕のアナログオーディオは一先ず完成 ・・・ その後、研究所の移転で移り住んだ、某県 JR 某駅至近の 2K で、一緒にアナログの終焉を迎えることとなった。



そうそう、後日談が 2 つある。



1 つは、賃貸のテラスハウス暮らし時代の話。 当時、階段下に造作された押入れの扉を取っ払い、上段にこのスピーカーを含むオーディオ一式を納めていた。 そして丸く大きめのバスレフポートに、いよいよ長男の手が届くようになった頃、オモチャ紛失防止とスピーカー保護とを目的とした苦肉の策として、長男に言い聞かせたストーリーがある。

それは、「 穴の中にヘビが住んでる 」 というもの。 もちろん嘘である。 しかしながら、当時住んでいたテラスハウスは豊かな自然に囲まれ、庭の塀にヘビがぶら下がっている光景を目にしていたこともあって、小学校低学年の頃まで信じていたようだ。



もう 1 つは、ヘビの話から更に 20年を経た頃。 久しぶりに秋葉原を訪れた僕は、シャツをジーンズの中に収めた寡黙な若者達と共に駅構内の階段を降り、電気街口へ。 ホームも階段も出口も大学時代のまま。 そして脇目も振らず、正面の “ ○ジ○会○ ” ビルへ。

そそくさとエスカレーターに乗る。 そう、あの頃のように。 そして最上階へ近づくと、女の子の顔が見えた。 しかも金髪だ。 戸惑う心中に関係なく、エスカレーターは上がっていく。 その緩やかな動きに合わせ、目前に等身大フィギュアの全貌が姿を現した。

こりゃいかん! 「 万が一社員に見られたら ・・・ 」 などと焦りつつ、うつむき加減と速足とを駆使してビルを下りることにした。

そう、かつてその最上階には PHILIPS AD9710/MC 、 PHILIPS AD0163/T8 と出会った、あのオーディオ専門店が確かにあったのだ。 齢を重ねたビルは、過去を捨て去り、新しい時代を迎えていた。




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