ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

父の涙声の真実

2012-12-12 08:19:26 | 日記

大切な日の未明、持ち帰った仕事とブログの更新を済ませ、念のためスマホで検索すると、なぜか目的地へ予定時刻に到着する画面が出ない。 時刻は既に午前 3 時前。 もともと徹夜の予定だったけど ・・・ 。

そのままシャワーを浴びて身支度を整え、徒歩で駅まで出て始発電車に乗る。 15 分程で到着した乗換駅で僕はひたすら走り、何とか 1 本前の電車に飛び乗った。 そして新幹線乗り換え駅へ到着し 2 本早い便に変更して、エスカレーターを駆け上がり、何とか乗り込むことができ、「 ホッ 」 と一安心。 某駅で私鉄に乗り換え、〇野〇へ 8 時 22 分に到着。

焦った ! 母がいない !! 電話をしたところ、30 分前には家を出たと言う父。 駅までの道で倒れていないだろうか ??? そんな不安を胸に、間もなく到着した 8 時 31 分の電車で逆戻りを開始。

実は、迎えに行くと言ったら、うんざりした声で強く断られたので、故郷の駅まで迎えに行くことは内緒にしていた。

乗車後には、母の携帯にさんざんメールを送り電話をかけたけど音沙汰なし。 そうこうするうちに電車は乗り換え駅に到着。 慌てて乗り換え改札に行き待ったけど来ない。 仕方なくその地の新幹線乗り換え駅へ向かい、待合室を隅々まで睨み見たけど姿はなし。 仕方なく、ホームへ上がる。

ホーム上の待合室へ入ると、左傍に座った母が僕の姿を見て驚いていた。 僕はその隣の荷置きテーブルに座った。 何と、事前に乗り換えのリハーサルをしていた母は、僕と同じ電車の別車両に乗り、僕よりも早く乗り換えていたのだった。

少し見ない間に、母はまた小さくなった。 歯も悪くなっていた。 僕を見上げ気丈に笑う、小さくて前歯が飛び出してしまったこの方が僕を生んで育ててくれたと思うと、有難くて泣きそうになった。 僕は涙をこらえて楽しく話をし、10 分ほど遅れて到着した列車で東京へ向かった。

式場で試着時のフォトを頼りに着替え、控え室に。 お互いの親族と丁寧に挨拶を交わし、いよいよ挙式そして披露宴。 新郎の父として臨席する宴は、想像していたよりも間延びしていて長く感じる。 再入場に際し、新郎を出口までエスコートした母はご満悦だ。 その後、新郎の友人一同が作成したビデオ上映時間にトイレへと中座し、席に戻ると程なく声が掛かった。

入口に背を向け、両家両親が一列に立ち並ぶ。 新婦の涙声に、既に相手の両親はボロボロ。 E さんらしい心のこもった、とても良い話なんだけど ・・・ 。 その時、僕は自分の披露宴を思い出していた。

父は、僕の披露宴での挨拶で泣いてヨレヨレだった。 本人は 「 入れ歯の噛み合わせが悪くて ・・・ 」 なんて言っていたけど、明らかに泣いていた。 僕はそんな父のことが理解できず、「 馬鹿馬鹿しい 」 などと思っていた。 そんな父は高齢で体調が悪く、残念ながら欠席。 申し訳ないことに、詫び状まで送ってくれた。

そして、両家代表としての挨拶。 僕の左手には新郎から渡されたテディベアがずっしり。 そう、この重みはあの日の重みそのもの。 左を向いたら、泣いていないのは僕だけだった。 3 対 1 は分が悪い。 左手の感覚は、新郎が小児喘息を発症する前の姿を思い出させる。 思わずマイクを口から離し、「 泣きそうだ 」 と漏らしてしまった。

正直、僕は 「 この子は長く生きられるのだろうか ? 」 などと考えていたのかも知れない。 低気圧が近付くと、深夜の小児救急には馴染みの子達が点滴に集まった。 そんな我が子が新郎として左方にいる。

出だしはスムーズだった僕も、その後、父と同様 “ ヨレヨレ ” に。 後半持ち直したけど、胸にこみ上げるものは尽きなかった。 僕は今、正しくあの日のこの子を抱き上げている。 列を作って幼稚園から帰ってくるこの子を消防車庫の前で待ったあの日。 金はなかったけど、ごく些細なことに一喜一憂していたあの頃。

出口で出席された方の見送りを終えると、相手の両親と挨拶を済ませ、母を宿泊予定の場所へと送るため、着替え室に向かった。

ほぼ着替え終わった頃、新婦の父が入場。 モーニングのズボンを脱ぎ、ステテコ姿になった父親は、僕に 「 これからも会って飲むことができますか ? 」 と何度も迫った。 嬉しくてたまらない反面、ビジュアルとのアンバランスさはなかなかのものである。 着替え終わった僕は丁寧に挨拶し、母を迎えに走った。

待っていた母は、僕の顔を見上げながらニコニコと笑った。 タクシーで駅へ行き、宿泊地の最寄駅である大〇へ向かうべく、悲運にも指定席の存在しない列車の空席を物色。 幸運にもトイレ至近の席が確保でき、そのまま発車を待った。

たわいもない会話をしているうちに 1 時間強で目的地へ到着。 乗車した際に “ 11 号車 ” とメールしたおいたことで、停車した窓外には妹の笑顔が見えた。 僕は母を妹に譲り渡すと、挨拶を交わして帰途に就いた。

 

時は確実に流れている。 今日、僕の想い、人生は新郎、新婦に引き継がれたのだ。

 

コメント
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