脱あしたのジョー

MTオリーブフィットネスボクシングクラブのブログ

存在と無 

2019-04-01 | Weblog
先日高校生に過去形を教えた時に基本的に過去は今とは違うと言うことを表現した時制、例えばi was a studentは、昔生徒であったが今は生徒ではない、だから英語的に言えば何か失敗をしてもそれを過去形で語ったら清算できると冗談交じりに行ったが、私自身も学生時代はたくさんの失敗をしてきた。そしてその失敗することで多くのことを学習できたことも確かである。今日はハワイでの私の失敗談を紹介したい。

これは私がそこでボクシングをはじめてまもない頃の話、試合の最中にある言葉を耳にした。相手を応援しているのかどうかわからないのだが、しきりに「ベリー、ベリー」という声がするのだ。最初は気にもとめなかったが、次の試合でもまた「ベリー」そしてその次の試合でも「ベリー、ベリー」と連発するではないか。最初ボディのなまりかと思っていたのだが、しかしそうではないあきらかに「ベリー」と言っている。「ベリーって何やろう、たぶんあいつらの名前や、俺の階級はヒスパニック系が多いから、日本で言ったらタロウかそんなよくある名前のことやろう、それにしてもおんなじ名前が多いなあ」と思った私は、対戦した相手もベリーと呼ばれていたので、たまたま廊下ですれ違った時にHiベリーと声をかけたのだ。でも相手はエッという顔をしている。お前何言ってんのと言う顔をしたので「いやベリーだろ」と言ったら怪訝そうな顔をしている。これは後に知ったことだが、ベリーはスペルでつづると「belly」単純に言えば「腹」ということである。日本人はボディブローと言う言葉があるのでお腹=ボディのイメージが強いが、しかしベリーはどちらかと言うと「お腹」ではなく「はら」ネイティブは試合の最中にお腹をうてではなく、腹をうてと言う、たぶんこっちのほうがはっきりしていて実戦的であると思う。日本人では英語で虫を「insect」と習うが、しかし実際はこの「虫」に対して「bug」と言う言葉がよくつかわれる。どちらかと言うと「insect」ば「昆虫」、日本で「虫」を見ても「あっ昆虫」などと言わないと思うが、「body」と「belly」の違いもこれと同じような事かも知れない。

私はこれだけではなく、たくさんの失敗、恥をさらしてきた。向こうはゲイが多いと聞いて、何事もはっきりさせなくてはいけない国だと勘違いし、いきなり新しいコーチに「お前ゲイか」聞いてしまい爆笑されたこと、元チャンピオンを怒らせてしまい、一週間ぐらい気まずい雰囲気の中ジムに行ったこと、それだけではなくすごく知的なコーチに出会ったことは衝撃的で彼からはたくさんのことを学ばされた。その体験は数え上げたらきりがないが、私はたくさんの衝突をくりかえし、失敗をしてきた。しかし失敗をしてきたからこそ、本当にいろいろなことがわかったし、何よりもそこで生きた日々は楽しかったと言える。人に話しかけて行って失敗するということは大きな学びになると思う。特に違う文化の人間と交流すると言うことは自分には知らないことだらけだ、文化も違うし、考えてることも違う。そしてそれだけではなく自分よりも教養があったり、知的レベルが高い人間、そういう人間たちと交流することで、自分の足りなさに気づきこのままではだめだと成長しようとする。よく貪欲に何かを求めろと言うが、私はこういったことを求めることは貪欲なことではなくて、むしろ謙遜でなければならないと思っているのだが、そういう体験を若い時に体験することは大事なことだ。サルトルは「存在と無」の中で「人間こそが在るということと同時に無いと言うことも考えることができる。」と言った。無いということがわかるから人間はそのたりなさに気づき努力する。おそらく自分が知りえない大きな世界にぶちあたったら、自分はこのままではいけないもっとかわらなくてはと思わされるが、特に若いうちはいろいろな環境に身をおいてたくさんのことを体験して自分の世界を広げることが大事なことで、外国に行けと言うのはそういう体験ができるからだ。


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