こう見えて学生の頃はすごくケグジェンイであったと思う。ピーターがもう少し治安のわるいLAとかだったらうたれているというのもわかる。もう何度か書いているが、その私がフェアプレイに徹しようと考えさせられたきっかけになった試合がある。もちろん監督はリングをおりたらジェントルマンであれみたいなことを言っていたが、しかし私はここでは日本人かどうかもよくわからない外国人、その外国人が異国で競技するには、おおげさに聞こえるが時にはまわりが敵に見えることもある。だから多少虚勢をはっていたと思うのだが、しかしある試合をきっかけにフェアプレイであるとかリングをおりたらジェントルマンであれというようなことを考えた。
そのきっかけとなった試合が、コーナーに戻るときいらいらしていてコーナーマットをけったという試合である。まあはっきり今だから言えることだが、はやってはいけない行為である。たぶん日本だったら思いっきり注意されて10年ぐらいはこういう人間がいたとこんなことはやってはいけない例としてあげられるであろう。しかしその試合ではレフリーがだめだと首をよこにふるだけで、その時は減点もなかった。そしてここからが私がかわったきっかけになったのだが、終わって控室のようなところでくつろいでいるとそのレフリーが近づいてきた。「げっ、あのレフリーじゃないか」と一瞬ぎょっとしたが、彼はその私にこう話しかけてきた。「Bow BowだよBow」私は何のことかと思ったが続けてこういう「君の国にはBow(おじぎ)というのがあるだろ。君は東洋人で東洋人は礼儀正しいことをよく知っている。だから次は素晴らしい試合を期待しているよ」とかそういう感じであったと思うが、私はこの彼の言葉を聞いて自分の態度をこの日からあらためた。
おそらく公共の場で求められるのは一方的な体育会のあいさつとか礼儀ではなく。思いやりやエチケットそしてそういうものが作法としてあらわれるのだと思う。私自身もその時はそういう気持ちがかけていた。だからそれがそういうかたちであらわれたのだと思う。うちではただならぬオーラを出してへとへとになるまで追い込んで、バタンと倒れこむようなトレーニングをしてもらってはこまるし、させないようにしているが、それはこの場が女性や社会人もトレーニングしている場であるからだ。まわりのことはおかまいなしに汗をまきちらしてすごい勢いでトレーニングする。ひどい奴になると裸でトレーニングするなんていうのもあるが、こういうことはエチケットの問題で、そういうトレーニングは中高生までにしてほしい、ここは社会人のコミュニティだし、そこに女性がいたらそういう行為はひかえるもの、それがこの公共の場での思いやりでクラブの雰囲気をよくするものだと思っている。
私は体育会のあいさつとか礼儀よりも、こういうエチケットが守れるかどうかということのほうがクラブの質を上げるためには大事なことだと思うし、そのコミュニティが社会的だと言える。やんちゃですとかアウトローは、あいさつや礼儀とか言って日本語がめちゃくちゃでも敬語もどきの言葉をつかえるが、しかしことエチケットとなると別、でかい声でさけんだり、暑い暑いと裸になったり、汗をまきちらしてへたれこむ、武勇伝ややんちゃ自慢をするのもそうだが、そういうやつはいくらあいさつができても女性が集まる健全な場では害である。はっきりいってここは大人が集まるクラブであって、運動クラブの延長ではない。ここではある程度成熟したコミュニティのとらえ方が求められる。
試合の時彼は注意して私の態度をあらためさせるのではなくて、むしろ立派な民族はそうしないんだよと、内面からそれは違うこれからはこうしようとわからせようとしたのだと思う。作法というのはその人間の内面のあらわれでなければならない。その作法は体育会のようにこうしろと言われてするものでもないし、自己満足的なことでもない。それは相手に対する敬意やいたわりからでてくるもので、私はそれを礼儀という。