
そもそもこの”大筋”なる言葉がいい加減である。どの国も使っていない。合意内容は4千ページとも8千ページともいわれているが、日本では数百ページのいい加減なものしか公表されていない。日本では甘利が、合意だけを取り付けたのであって、内容などこれからの話となる。だから”大筋”なのである。
上の表の数字は、交渉中に農水省概算した主な作物の減少額と、大筋合意後の試算を比較したものである。多少の変化は仕方がないとしても、例えばコメは1兆100億円の減少を予測していたが、なんとゼロである。どんな対策になるのかは判然としませんが、自画自賛もいいところである。基本的な考えとして、価格が一割下がれば生産量は一割伸びるというものですが、膠着したドグマのような思考経路と言える。特に果実類ではほとんど影響がないとなっているが、かつてオレンジの自由化で極端に国内の柑橘類が減少した経験は生かされていない。
この計算は願望ともいえる、恣意的な見込み数字と言える。
しかも全品目で減産はゼロ、価格に何ら変動がないという前提である。これを空論と言わずしてなんと呼ぼうか。
甘利が最後っ屁と残していった、”大筋”合意のTPPである。TPPは国内対策で減産は起きない、国民には何ら迷惑がかかることはないと、農水省のTPP以降の試算ははじき出している。
誰が信じるか!
しかし、アメリカの大統領はだれがなっても、そのうちTPPに参入することになります。選挙期間中の、票対策の発言は就任以後アメリカの本筋から外れることはまずないでしょう。
総論が大好きなオバマがいい例だと思います。
B・サンダースは最初っからTPPには反対の立場ですし、H・クリントンも最近はライバルに引っ張られてか反対の表明をしています。
勿論のこと、D・トランプ爺は保護主義者でTPPなど評価するはずもない。
誰が大統領になっても、米国議会にTPP法案が送られる事はなさそうです。
日本が、甘利氏が、早々とカードを切ってしまって、後は白人共がガツガツと自国の未来の有利を争った時には、茫然としてただその場に居ただけでした。これを「行司役をした」とか評した某新聞は笑止でしたが、彼にしてみれば早くお家に帰りたいだけだったのでしょう。我が国の未来を守るべく白人共と戦う姿勢はまったく見られませんでした。
氏にとっては国内への影響はどーでもイイ事で、米国政府が求めているから、中国包囲網とか云う意味?もあり、交渉を終わらせる事が使命と思っていたでしょう。
ここにきて宗主国に裏切られ、加えてとんでもないボロも出て、氏は国会でこれ以上の恥を晒すつもりはないでしょう。
TPP騒動では、我が国の国民の農業への無理解、無関心、政府の横暴と対外交渉力の無さ、野党のダラシナサなど、まさに我が国の暗部を見る思いです。