

日米地位協定の第17条により、「合衆国の軍法に服するすべての者に対して(第17条1-a)、また米軍基地内において(第17条1-b反対解釈)、合衆国の法令のすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」と明記され、合衆国軍隊が第一次的裁判権を持つことになっている。日本で犯罪を犯しても、アメリカの軍属は日本の法律を適用させませんというのである。古くは殺人事件でもアメリカに帰国させ無罪放免されていた。
治外法権というが、国家が国民を守ることなく他国の法にそれを委ねるというのである。国が占領されているときにはよくある話であるが、56年も全く変えずにいるのは珍しい。要するに未だに日本はアメリカの占領下にあるのである。
アメリカに侵攻された、アフガニスタンでもイラクでもアメリカやNATO兵の犯罪に対する裁判権は放棄していない。
作家の司馬遼太郎は栃木県の小隊長として終戦を迎える。自らが述懐するように彼は愛国青年であった。首都圏にアメリカ軍を迎え撃つため向かうことになったが、道には混乱した人たちが溢れてたどり着けない。軍に相談すると、大本営から「轢き殺していけ」と命を受けた。国民を守るための軍隊にこのとき疑問を持ったのである。司馬遼太郎にとって、兵士が国民を守ろうとしないこの出来事は大きかった。その後の彼の執筆の原点になっている。
日本を守るためのアメリカ軍と自負するが、平気で駐留兵たちは日本人を殺すし犯すし盗みをおこない、泥酔で暴走する。地位協定が彼らを守ってくれるし、地位協定を背景にしてアメリカ軍の優越感は国が担保してくれるし、国だってそうした軍隊でも金をたんまり出してくれる。おまけに、日本は世界のどの国よりも格段に治安が良い。兵隊さんはやりたい放題である。今回も再発防止のために、旧態依然とした方針がださえたが、もうすでに酔っ払いで事故を起こした女性兵士がいる。自粛や規制など何の効果もない。日本を守るなどお題目に過ぎない。アメリカの戦略は別のところにある。
日米地位協定を結んだのは、安倍晋三の敬愛する祖父のA級戦犯ながら生き延びた昭和の妖怪、岸信介である。

