文句なしの成績で初優勝を決めた関脇・毛呂乃だったが、毛呂乃には笑顔はなかった。
この優勝のための犠牲はあまりにも大きく、最愛のダッチハズバンド、『ダニー浜田』を失ってしまったのだから。毛呂乃の規格外のまらパワーについていける者は人間界にはまずいない。そこで人形であればとダッチワイフに手を出し、それだけでは飽き足らずダッチハズバンドまで相撲の幅を広げ、たどりついた無二の相棒がダニー浜田だった。
毛呂乃と優勝を争い、敗れた雲虎も、スポーツマンらしく勝負が終われば毛呂乃を祝福。だが、雲虎の祝辞にも、毛呂乃は「まったく素直に喜ぶわけにはいかない」と沈痛な返信。誰から、どんなに優勝を祝われても、「うれしくない」「喜べない」を連呼する毛呂乃。まらずもう界の頂点に立ったことがうれしくないはずはない。だが、その過程での犠牲が悔やまれてならないのだ。最高のパートナーを自らのまらで殺めてしまったのだから、心の傷は相当深いに違いない。
協会もそんな毛呂乃に配慮、千秋楽の優勝インタビューは延期し、後日あらためてインタビューすることを決定。いまはそっと見守るよりないが、一日も早く、まらともども元気を取り戻してくれることを願ってやまない。
(横綱・雲虎の談話)
毛呂乃関、優勝おめでとう。早く心の傷を克服し、今回の優勝を、自信を持って誇れる日が来ることを願うばかり。
(大関・玉椿の談話)
十四日目の相撲はドラマチックというか、悲壮で鬼気迫るものがあったねえ。理事長は、同様に大関に挑戦中だった初代若乃花(1956年9月)を思い出したそうだが、わしは千代の富士(1989年7月)を思い出したよ。