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『ロートレック荘事件』

2008年04月16日 | 読書日記ー日本
筒井康隆 (新潮文庫)


《あらすじ》
夏の終わり、郊外の瀟洒な洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。ロートレックの作品に彩られ、優雅な数日間のバカンスが始まったかに見えたのだが……。二発の銃声が惨劇の始まりを告げた。一人また一人、美女が殺される。邸内の人間の犯行か? アリバイを持たぬ者は? 動機は? 推理小説史上初のトリックが迷宮へと誘う。前人未到のメタ・ミステリー。



ミステリーです。
ミステリーの場合、ネタをバラさないように気を遣うと、あまり書くことがありません。なので、この作品はとても面白かったのですが、なかなか書くことを思い付けません。うーむ。

そうは言ってもせっかくなのでちょっと書いてみると、解説で佐野洋氏も書いておられましたが、その他の作品においてみられる『戦う筒井康隆』像が、このミステリー作品にもうかがえます。

そもそもトリックのあり方からして凄い。私はミステリーを読みなれているわけではありませんが、こういう方向のトリックはあまり、というか全く経験がありません。さすが筒井先生。ミステリーとしては王道から外れているのかどうかは分かりませんが、まったくよく考えたなーという感じです。

実は私はこの作品を読みはじめるなり、読みやすい筒井作品にしては珍しく大いなる違和感を感じていたのですが、なし崩し的に物語を読み進めるうちに(それでもやはり面白いので)、いつの間にかその違和感はなくなっていきました。ところが、それがまさかああいうことになろうとは! いやー、凄い。あ、もうこのあたりでやめておこう。未読の方のこれから読む楽しみを損ねてしまう。

ついでに、この物語では何か「痛み」のようなものを物語っているような気がして、胸が痛みました。たぶん、ミステリー仕立てにしなくても十分に痛かっただろう筋書きは、この独特のトリックのためさらに一層痛さを増しています。はー、参った。

また、この文庫にはタイトルにもある「ロートレック」の絵が何枚かカラーで挿入されていて、それを見られるだけでも結構なお得感があります。こういうのは楽しいですね。


「あまり書くことがない」と言いつつ、結構書いてしまったか。