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もやもや日記

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『COMANDANTE』

2008年04月02日 | 学習
監督:オリバー・ストーン 出演:フィデル・カストロ、オリバー・ストーン
(2003年/アメリカ・スペイン合作/カラー/100分)


《内容》
アメリカ社会の権力構造とメディアの暴力に取り組んできたハリウッド屈指の「社会派監督」、オリバー・ストーンが、アイゼンハワーからブッシュまでの歴代米国大統領10人と渡りあってきた世界でもっとも象徴的で、生誕80周年をむかえ何かと話題になっている人物、伝説のキューバ最高指導者フィデル・カストロに迫った歴史的ドキュメンタリー。監督自身がインタビュアーを務め、3日間にわたるインタビューと30時間以上の撮影から半世紀にわたる政治の変動と戦いつづけてきた「ちいさな強国」の指導者の素顔が今はじめて世界に向けて映し出されるー。
  ――『COMANDANTE』日本語公式サイトより




ひと月近く前に観た作品。
どういう風に感想を書くべきか大いに悩みました。というのも、私の不勉強からくる作品全体への理解度の低さ、そもそもキューバとカストロとその周辺を取り巻く歴史的事実に対する認識度合いの低さにより、私がそれについて何か語ることが果たして許されるだろうかという疑惑があったからです。まあ、今さらですが。私はこれまでにも何度かこのフィデル・カストロという人物に関して、彼から受ける強烈な印象についてここで述べたことがあります。

今回も、この作品が映し出すカストロの姿に感銘を受けたのは事実としてあります。依然として私のキューバやカストロに対する理解レベルは上がっていないまま、彼の動作、そして言葉だけしか得られない状態で。それでも(あるいはそれだからこそかもしれませんが)確かに彼は魅力的なのでありました。
何が私をこの人に引き付けるのか。私が問題にしたいのは、どこまでもその点なのかもしれません。

カストロが何を目指し、そのためにどのようなことを行い、それによってどんな状況がもたらされたのか。彼の理想がいまだ実現されていない(もしかしたら永久に実現されないだろう)という事実、これまで数々の失政によってどんな犠牲を払わねばならなかったのか。そこにももちろん興味はありますし、学ばなければならないと思います。
しかし、私がまず心を動かされるのは、やはりひとつの人格としての彼の巨大な知性と強固な精神力、そして物事に対する真剣さです。思考のスケールが個人を超えているように見えます。理想の追求がどれほど苦しい道のりであり、ほとんど到達不可能なものであることを知りながら、しかし決してそこから外れようとは思わない強さが見えます。人間はこんなふうに生きることもあるのだ、というひとつの貴重なサンプルだと思うのです。興味は尽きません。
私は彼を美しいと思う。それは何故か。


作品中で最も印象に残った場面のひとつに、フィデルがストーン監督を伴って学校を訪問するという場面があります。
自動車から降りたフィデルの周りには学生が群がって、「コマンダンテ!」「コマンダンテ!」と手を差し出しながらフィデルに呼びかけています。ものすごい人気のありようです。
キューバでは学費が無料なのです。そして海外からもわりと多くの留学生を受け入れているようでした。ですから学生に人気があるのは当然でしょう。若者は、自分を成長させてくれる人物を敬愛するものではないでしょうか。私が彼を美しいと思う理由のひとつが、これです。未来の社会を担う人材に、出来る限りの機会と期待を当然のものとして与えようとしているところです。あとのことはまだよく分からないので、そのうちまた考えようと思います。


以下、印象的だったストーン監督の質問に対するカストロの答えをメモしておきます。終盤20分時点からメモを取り始めましたが、すぐに紙が足りなくなりました。次はもっと大きな紙を用意しなければなりません。
この人の言葉の圧倒的な魅力の秘密についても考え中です。どうしてこれほどまでにこの語りが魅力的なのか、それは何か優れたテクニックによるものなのか、それとも、真心といったものによるものなのか。まだ判断がつきません。今の私には、彼の言葉の威力に抗うだけの力はどこにもなく、ただただ打たれるだけなのでした。


*「我々のような新興国家が経験者ぶることは不可能だ」

*「アメリカ人はこんなふうに言っていた。
  共産主義政権のキューバは合衆国の安全を脅かす存在だと。
  神聖な言葉だ。
  その言葉は使われるたびに効力を発揮した。
  “彼等は合衆国の安全を脅かす” 」

*「道徳観を持たぬ者が、他人の批判を出来るかね?」

*【“独裁者”を定義できるものは?】
 「独裁者であることは本当に悪か?
  アメリカは傑出した独裁者たちと大変親密だったではないか。
  マルクスは個人の独裁ではなく、プロレタリア独裁を語った」

*「私は人間よりも、思想や国民の政治的教養に信頼を寄せている」

*【無神論者?】
 「そうだ。人が作り上げたものはすべて信じない」

*「武力によって世界の秩序を築くことなど絶対に不可能だ。
  軍事力で世界の問題は解決できない。私の理想はアメリカの国民
  が理想と変化を擁護し、人間的な秩序を得るための決定的要因に
  なることだ」

*「私の考えは借り物ではない。
  生涯自分の仕事をし、任務を遂行してきた。
  私は自分自身の独裁者といえる。
  私は自分自身の独裁者であり、国民の奴隷だ。
  それが私だ」