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もやもや日記

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『ヤマネコ号の冒険』

2006年06月19日 | 読書日記ー英米
アーサー・ランサム 岩田欣三訳(「アーサー・ランサム全集3」岩波書店)


《あらすじ》
ローストフトの港にやってきたウォーカー兄妹を待っていたのは、小さな緑色の美しいスクーナー「ヤマネコ号」だった。ツバメ号の乗組員とアマゾン海賊、フリント船長の面々は、新たに老練な水夫ピーター・ダックを仲間に加え、今度は海を帆走する。

《この一文》
”どんなときでもいつもと変わらないことはあるのだ。どこにいても、船首で漕いでいた者がオールで背中を打ったら「ごめんね。」というだろうし、なにかほかのことを考えていたために、たまたま調子を狂わせたら、「わたしが悪かった。」というだろう。 ”



シリーズの3冊目です。

さて、これから読もうという方がもしかしたらこの記事をご覧になるかもしれないので、なるべく物語の内容については書かないでおこうと思います。この手のお話は、予備知識なしで読むのが一番です。そういう訳で、なるべく本筋が分からないように、私の感想を述べてみたいと思います。

物語は、なんというか、とにかく派手です。思いっきりエンターテイメントです。あまりに派手なので、私はひょっとしてティティの夢オチで終わるんじゃないかと、はらはらしながら読みました。いつもだったら、釣った魚が美味しそうとか、ママレードを塗ったブドウ入りパンが美味しそうとか、私も途中でリンゴとチョコレートが食べたいとか思うのですが、今回はそんなことを考える暇もありませんでした。あ、でもアイスクリームを食べ放題の場面はうらやましかったな。それと、ついつい焼き蟹がもったいねーとも思ってしまいました。私なら食べますよ。多分。

ともかく今回のは大冒険です。しかも誰もが憧れるような。まるで映画のように鮮やかでスリリングな展開には目が釘付けになります。

そしてまた、この胸の踊るような大冒険はとても楽しかったのですが、私の心を打ったものと言えば、ヤマネコ号の乗組員たちは、どういう状況でも節度をわきまえて決して卑怯なことはしないということです。1作目から思っていたことですが、それは彼らの育ちが良い(どう見ても経済的にかなり恵まれた家の子供のようです)というのもあるだろうとは思いますが、つまり「育ちが良い」というのはそういうことなんだろうなーと考えさせられます。生まれつきの性質というのがどれほど影響力を持つものかは分かりませんが、やはり世の中の大人がみんな公平さと分別を持っていれば、子供だってずるいことをする理由なんてないのかもしれません。ウォーカー兄妹やブラケット姉妹の周囲は幸運なことに立派な大人ばかりのようですが、可哀相なことに親のいない子供だとしても周りの大人がきちんとしていれば大丈夫なのではないでしょうか。誰かの親であるかどうかは、社会の一員として生きる以上問題ではありません。少しでも先んじて生きる人間は、後に続く全ての人のために常に襟を正さなければなりますまい。いかに現実が厳しかろうとも。と、本編とはあまり関係がないような気のするところで、ちょっと真剣に反省してしまいました。

とにかく、面白かったです。またいずれは読み直したい1冊です。