高山植物、固有種の自生など尾瀬一帯は植物の宝庫。訪ねる時期に応じて花の種は多様な展開を見せてくれる。鳩待ーアヤメ平、富士見下ー富士見峠(アヤメ平)、至仏山、笠ヶ岳、尾瀬ヶ原一周と今年5回訪ねているがそれぞれの場所、時期によって変化があり満足させてくれる。
「トキソウ」はラン科トキソウ属の多年草。地下に横に這う根茎があり、所々から地上に茎を立てるのだという。草丈は10センチぐらいの低いものから30センチ弱まで。葉は少し厚味を感じさせる笹の葉のようなラン科らしい形でひと茎に一枚。オサワ田代から笠ヶ岳に向かう登山道脇で、小笠の南面に広がる草原の縁に咲いていた。淡い紅紫の色にトキの舞う姿を重ねて名が付いているのだろう。
花期は5-7月。薄いピンクの花が印象的。外側に広がる羽?に見えるの部分がガク(?)で、中央にある花弁は唇形。内側に肉質の毛状突起を密生させている。写真を撮ったのは8月上旬。時期が少し遅かったのか、数株しか見られなかった。かつては、平地の湿原などでも見られたのだそうだが、環境変化や盗掘で激減。私も、鬼怒沼と尾瀬でしか見たことが無い。
「シシウド」はセリ科シシウド属の多年草。北海道を除く全国の日当たりの良い山地に生える。草丈が1-2メートル以上の大型。草原から頭ひとつ高く飛び出すが、シシウド越しに眺める山々の遠望など趣が深い。鳩待峠から至仏山方面に歩き出し30分ほど。日光白根山など奥日光の山々が最初に展望できる辺りに咲いていた。高原に秋を感じさせる花でもある。
山菜の“ウド”に対し、大きくて美味しくないのでこの名が付いたと勝手に理解していたがそうではないらしい。根を乾燥し漢方薬として使い「独活」という名で頭痛薬などに使われる。人間が食べると苦味があるのだそうだが、冬場に“猪が根を掘り起こして食べる”という強鋼なイメージからこう呼ばれるのだそうだ。