普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

小泉改革の意味するもの

2009-02-22 16:52:27 | 麻生内閣

 小泉、竹中さん登場の前から、構造改革を推進した経済学者の中谷巌さんが懺悔の書として「資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言」が評判になっているそうです。
 これについてネット上で賛否こもごもの意見(どちらかの言えば批判的な意見が多いようです)が出ています。
 私は経済学などまったく判りませんが、経済を専門にしている中谷さんが、自分の職業や地位が影響があるにも関わらず、学者としての良心に基づいて反省の書をだした勇気に対して評価しています。

[中谷巌さんの意見]
 その中谷さんの考えかたについてはNHKの「中谷巌(経済学者)の転向
の報道によると、
・米国型の競争社会を目指した改革は正かってのか。
・世界はグローバル資本主義のパンドラの箱を開けてしまった
・日本は人と人と繋がりを持つコミュニティをもっていたがそれが消えた。
・派遣社員は格差社会を産んだ
・日本の現場は一体感をもっていたし信頼と協力で進んで来た
・国にはそれぞれの歴史と文化がありそれを無視した改革は上手く行かない
・改革は人を幸せにするもので無ければならない、人を孤立させる改革は改革ではない。

[小泉さんの麻生批判に勢いつく改革派]
 一方、政界では小泉さんが登場して麻生批判を行い、それに元気を取り戻した所謂改革派の人達が離党も辞さないと言わんばかりの発言をしています。
 それで私も素人が見た小泉改革とは何だったのか米国と日本の事情を比較して考えて見たいと思っています。

[小泉改革の際の環境の日米の比較]
・社会格差の考え方
米国:奴隷制度以来の伝統、競争社会で頑張ったものが優位にたち、頑張らない人達はそれなりの報いを受けるのは当然だの考えが通用し格差社会に大きな抵抗がない。
 だから米国在住の人達が首を捻るような富裕層だけのコミュニティーを作り、貧乏人を締め出しても批判が起きない。
日本:昔からあった士農工商は明治維新で否定され、地主と小作農の上下関係も占領軍から廃止された。
 占領軍は自由、平等を唱えて民主主義の考え方を導入した。
 平等の考えは学校教育での「横並び」に繋がり、社会全体としても(頑張らなくても)平等なのは当然だという空気が生れた。
 日本の好景気時代に生産性の高低に関わらずどの業種に従事する人達も皆「一億総中流意識」を持つ理想的な社会の経験をした。
 戦後以来、今回のような社会格差を持つのは初めての経験で大問題になっている。

・独立心と助け合い
米国:フロンティア・スピリッツでで象徴されるように、独立心を持っておりすべては個人責任だという考え方がつよい。
日本:個人の競争より協力、助け合いの考えがまだ残っている。
 今の日本で派遣切りされた人の現状を個人責任だと言っても日本では通りません。

・コミュニティーの問題
米国:日本に比して宗教心が強い→金が集まる→慈善事業を行う
 一神教の国はどこでもそうだが、金を持った人達が貧乏人に金をやるのは当然だと言う考えがあるので、旧マイクロソフトのビル・ゲイツさんのその収入を使って慈善事業を行う風土がある。
日本:占領軍は一時神道を禁止したが、その影響で(と思うが)日本人が宗教心を無くしてしまった。
 それで日本中で広く信仰されていた仏教まで衰え→金が集まらない→昔からやっていた慈善事業などやれなくなった。
 米国のように富裕層が貧乏人を助けると言う風土が殆どない。

・企業の競争力
米国:戦後間もなく日本の台頭、最近では中国の台頭で製造業の競争力が減退したが、基軸通過のドルのお蔭で金が集まり、国内消費に頼る経済と、金融技術で何とか凌いで来たが今回の破綻となった。
日本:家族主義経営→従業員の企業への忠誠心と品質管理システムを米国から導入→自主管理活動、改善活動にによる従業員のチームワークと、通産省の指導で飛躍的に競争力強化
 膨大な且つ超低賃金の中国の台頭→日本企業の企業競争力の相対的低下の時期に小泉改革が始まる
 小泉改革のやったこと→労働関係諸法の規制緩和→需要に応じて増減出来るしかも低賃金の非正規社員の急増で何とか企業の競争力を保つ
 その一方経費削減で、地方交付金や社会福祉関係の予算の削除、セイフティーネットの強化を怠る
 政府主導かどうかは別として米国流の経営手法、成果主義、株主優先、長期的視野の経営より短期的利益の追求などが導入され、家族主義経営、チームワーク、従業員を大切にする、長期的視野の経営など日本企業の強みとするものをなく企業が増えてきた。
そして今回の米国発の金融・経済危機でGDP減少率が先進国で飛び抜けて大きい12.7%の数字を示した。

 最初にお断りしますが、上記の分析の中で占領軍の政策が日本に大きな影響を与えていますが、憲法と同じように占領軍の統治や引き揚げ後の米国の都合の良い様に決めるのは当然の話です。
 日本が独立した後日本が変えれば良い事だし、ネット上で問題になる米国の年次改革要望書も日本に国情に合わなければ採用しなければ良いのです。

[小泉・竹中さんの構造改革の問題点]
・日本の国情や、日本人の心情や日本企業の強みを無視した規制緩和をした
・日本のコミュニティーや日本人の心情と米国のそれの違いも考えずに、改革を進めるだけで、それに伴う負の遺産の処理を怠った。
・企業はそれを最大限、または無制限に利用して何とか当面の中国台頭に伴う競争力の低下を何とかしのいだ。
・企業は非正規社員の増加、何でも小泉さんが推進した米国の流れに乗って成果主義など取り入れ日本の競争力の基本となっていたチームワークを壊してしまった。
・これも日本企業の強みだった長期的視野に基づく経営から短期的に利益の追求にはしり、便利な非正規社員の採用などで、放漫経営に陥った会社も出た。

[所謂、改革派の人達へ]
 そして結果の今の様な日本の惨状です。
 これは天災でしょうか。
 日本の金融界は米国の金融資本の動きを慎重に見極めたために世界で一番被害を少なくしました。
 ということは政府の人達も政治家も今問題の製造業の人達も金融界と同じ情報をもって居たはずです。
 然しこれは小泉さんばかりが悪いのではありません。
 今日は紙面の都合上触れませんでしたが、自分で首を切って置いて後は処理は政府の責任だという経団連のトップのように、企業の倫理観とか社会的責任をわすれた企業のトップの責任者、今まで政府主導で護送船団方式で伸びてきた企業がいきなり規制緩和されで、放漫経営をした企業の責任者の責任もあります。
 然し企業経営者は皆優秀で、悪い事はしないと言う性善説に立って、規制緩和してあとは自己責任で逃げてしまった小泉さんの責任はあります。
 世の批判を浴びている小泉さんの麻生批判に、勢いずいた改革派の人達のやることは、改革の負の遺産の処理をどうするかはっきりすることです。
 もしそれを忘れたら有権者の批判→落選の憂き目に逢うことも知るべきだと思います。

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1 コメント

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英米思想と日本人について (菱海孫)
2009-02-23 00:12:18
「占領軍は自由、平等を唱えて民主主義の考え方を導入した」と、ここで仰られている民主主義が、もし米国型の民主主義であるならば、戦後の日本社会にも「フロンティア・スピリッツで象徴される」「すべては個人責任だという考え方」が根付いていたはずです。

しかし現実にはそうなっていません。実際に合衆国憲法と日本国憲法とでは、その原理を全く異にしています。このことは占領軍が導入した民主主義が、実は自由を基調とする米国型の民主主義ではなく、フランス革命に端を発し、後に社会主義へと移行する、平等を基調とした欧州型の民主主義であったことを意味していると思います。

その平等を基調とした欧州型の民主主義の理念が、戦後も20年から30年を経て、当然のことのように人々の心に浸透した結果、我国でも「学校教育での横並びに繋がり、社会全体としても(頑張らなくても)平等なのは当然だという空気」を助長したのではないでしょうか。

小泉竹中改革が終って、二年余を経た今日でも私達は「あの改革は何だったのか」と考え、また「改革の負の遺産」との言葉が報道やブログを賑わしております。それは裏を返せば、それほどまでにあの改革が私達に与えた心理的な衝撃が大きかったことを意味していると思います。

そして、その衝撃の理由は小泉竹中改革こそが、実は「日本人が初めて出逢った英米思想」だったからで、それまでの明治維新も、敗戦も、昭和元禄も、只の一度たりとも私達に英米思想をもたらさず、唯一点、あたかも白紙に落ちた墨滴のように小泉竹中改革という英米思想が我国の歴史にあるのだと私は思います。
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