裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

死んだらどうなるか?問題・28

2022年12月12日 09時10分25秒 | 死んだらどうなるか?問題

今読んでいるリチャード・ドーキンスが、このブログで前章までに書いてきたことをうまく表現しているので(くやしい)、パクリじゃないけど、レトリックだけを頂戴してぼくの考えるところに反映させてもらいます。
「利己的な遺伝子」でおなじみのドーキンスは、生物学界で知らぬひとはいない、ポスト・ダーウィニズムの巨人です。
彼は常に進化論を基にしてものを見ようとするひとで、量子力学と生物進化を掛け合わせた「分子生物学(細胞などの働きを分子レベルにまで解体して構造を知ろうという学術分野)」にもその考え方を持ち込んでいます。
ぼくは前章で、「人類は、世界の本当の姿を見ているわけではなく、自分たちの営みに必要な情報だけを選択して受け取り、活動が都合よくいくように主体的な解釈をしているにすぎない」ということをくどくどと書きました。
ドーキンスはこの点をわかりやすく、「人類の目は可視光だけを見るように進化したため、脳もまた、赤外線と紫外線の間におさまる限定された世界を構築するしかなかった」という表現を採っています。
人類が、もしもガンマ線だけを見るように進化していたなら、この世界は、ぼくらが見ているこの「感じ」とはまったく違ったものになっているはずです。
ヘビは赤外線を舌で感知して世界を構築していますし、コウモリは音波をキャッチして暗闇の中に立体世界を描いています。
犬はにおいで、鳥は電磁気で、ミミズは・・・なんらかの方法で独自に自然界から情報を選択的に受容し、自分たちのオリジナルな風景を築いているわけです。
そんな各々の主観によって描かれた独自な画づらが、人類のものとまったく異なることは、疑いがありません。
要するに、「世界」とは脳内にのみ存在しているもので、その意味ではみんなそれぞれに別の世界に住んでいるのです(同じ人類であるぼくとあなたとでも、それは違います)。
脳が高度に発達したわれわれ霊長類は、原形質に近い微生物の粗い世界とはまったく別ものの、さまざまな情報を総合して細密に組み立てられた世界を生きていると自負するわけですが、逆に、微生物がわずらわされている(あるいは彼らにとってはなくてはならないかもしれない)分子のブラウン運動や、微弱な電磁気力、量子世界のエンタングルメントなどを実感できない粗い世界を生きている、とも言えそうです。
自身の中で発達させた受容機械が、宇宙を飛び交うどの波をどう選択的に拾い上げ、脳内にどんな画を投影しているかによって、その者にとっての世界像(宇宙の形)が決定されます。
事実上の盲目であるコウモリは、相手のコウモリが可愛いかどうかを音で判断しますし、物質表面の細かなキメにぶつかる空気の震え(波!)によって、色彩のようなクオリアまで脳内に立ち上げている(とドーキンスは信じている)ほどです。
その世界を想像すれば、人類が唯一無二のものと思い込んでいる可視光解釈による脳内フィードバック映像が、いかに世界を表現しきっていないか、情報の偏った狭いものであるかが理解できそうです。
逆に言えば、ぼくらの感知の及ぶ守備範囲の外側にこそ、世界の真実はあります。
ぼくらが見ているこの世界は、文字通りに幻想でしかないわけです。
実際にはそこには、ただスカスカな波が立っているだけ、なのですから。
その中のどの波を拾ったところで、それは真実の一部でしかなく、ぼくらには世界の本当の姿を見ることはできません。
何者かの肉体が、例えばどんな電磁気力とも反応しないニュートリノでできていたとしたら、彼にとってそもそも物質という概念は意味を持ちません。
彼の世界には、形も触感も存在しないわけですから。
そんな生命体にとっては、太陽や地球などの天体は真空のようなもので、自身の「カタチ」すらもおぼつかなく、ビッグバンという世界創生からしてまったく別の現象に感じられ、とりあえずは光子とのやり取りや、素粒子の対生成・消滅などにつき合うことをベースにした進化と生き方が求められることでしょう。
だけど考え詰めれば、クォークやニュートリノを含めた素粒子という「波」概念そのものが、ぼくらが脳内に立ち上げた勝手な世界の一部なわけですよね。
素粒子どころか、ぼくらの世界の外には、ぼくらが感知できない、素粒子以外のものからできている生命体が独自に立ち上げた奇妙奇天烈な世界が、つまるところ、彼らの中に存在しているかもしれませんよ。
そんな彼らにとっては、われわれ物質世界に生きる生命体が、感覚的にまったく理解できない奇妙奇天烈な存在に思えるにちがいありません。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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