裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

死んだらどうなるか?問題・34

2023年01月17日 12時11分08秒 | 死んだらどうなるか?問題

この世に初の「お目見え」を果たした目は、光を落っことすピンホールだった。
穴に差し込んだ光が底まで一直線に進む、というところがミソだ。
光が進めるわずかな距離を設けたことよって、捕捉物体の位置が特定できるのだから。
穴の底部には、光か影かを判定するオン・オフスイッチが組み込まれ、その視覚情報は「1ピクセルのモノクロ画」と考えることができる。
原始生物であるあなたが見る世界(例によって、神経系の配線によって築かれるあなたの独自解釈世界)は、白か、黒か、そのうちのどちらかのシンプルなものなのだ。
それでもこの光量子捕獲装置は、肉体組織とダイレクトに連動されることで、個体が生存する確率をぐんと高めてくれる。
何者かが目の前に近づくだけで「逃げろ」の電気サインが出され、危険が自動的に回避されるのだから、相手に触れなければわからなかった(触れてもわからなかったが)これまでとは大違いだ。
この単純お知らせシステムは、あなたが主体的な行為者として覚醒する前段階の、機械的な反射反応と言える。
この全自動式のからくりを進化させ、刺激→反応のみの活動から、状況判断→意図的行動という、主体性を持った個体の営みへと洗練させていきたい。
というわけで、またシミュレーションだ(ところで「め」の字だが、ここまで「見る」という概念を表現してきた「目」から、肉体のパーツ・機能としての「眼」に改めさせてもらう)。
さて、遺伝子の偶発的な変異という暁光に与り、めでたく一つ眼(独眼)を獲得したあなたなのだった。
進化は、この「着眼」のステージが最も困難で、それに比べたらここから先の展開は、出来合いのものを応用し、更新していくだけなので、時間をかけさえすればわりとイージーに進める。
新発明した一つ眼を応用しようという遺伝子は、まずは最も安直に「ひとつをふたつに増やす」ことを思いつき、二つ眼(双眼)を試そうとするに違いない。
こうして、後の世代に進んだあなたは、進化の過程で二つの眼を手に入れる。
あたりまえに思えるこのアイデアだが、効果は劇的だ。
なにしろ、一つ眼だと点でしか確認できなかった外界が、二つ眼になると線で解釈できるようになる。
あなたのゼロ次元だった世界は、一次元になる。
具体的には、二つの眼が持つ2ピクセルが時間差で点滅することで、目の前の相手がどちらからどちらへと移動したかを理解できる。
ピンポイントだった位置情報が、動きを持つことになったのだ。
あなたの神経系(頭脳はまだない)は、「方向」という概念を手に入れたわけだ。
気をよくした遺伝子は、三つ眼を試す。
線だった世界が、いよいよ面になる。
方向しかわからなかったあなたは、広がりという概念を手に入れる。
蛇足だが、オレはこういう話をする際に、小学校の頃に教わった俳句を必ず思い出す。
それは「米洗う 前『に』ホタルが ふたつみつ」という句だった。
先生は、「これはホタルの位置を点で表している」と言うのだ。
これに方向を持たせるには、「米洗う 前『へ』ホタルが ふたつみつ」とすればいい。
さらに広がりを持たせるために、「米洗う 前『を』ホタルが ふたつみつ」とするのだ。
静的空間が、一字を入れ替えるだけで、これほどまでに動的になろうとは!
なんという美しい、そして奥深い日本語表現であろうか・・・
おっとと、閑話休題。
んで、なんだっけ?あなたは三つの眼を持つことで、広がりのある世界を手に入れたのだった。
縦方向と横方向の空間を理解できるようになり、あなたは紙の上を動きまわるマンガの登場人物のように、二次元世界を生きることになったわけだ。
ここから先は、四つ眼が試され、六つ眼が試され、さらなる複数眼が試された。
が、結果は同じことだった。
二次元よりも先へは進めなかったのだ。
ところが、そこを限界とあきらめなかった遺伝子は、着眼点を変え、世界のさらなる更新を求める。
このイノベーションはすごい。
なんと「複数の眼をひとくくりにまとめて片眼とし、それを2セットにして」、あなたに与えたのだ。
すると、あなたの視界に、ついに三次元世界が立ち現れた。
あなたは、奥行きという概念を知り、世界を立体像として構築したのだった。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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