裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

死んだらどうなるか?問題・33

2023年01月15日 09時43分17秒 | 死んだらどうなるか?問題

仮装しての仮想シミュレーション(かそう実験)、またやってみん?
今回は赤ちゃんじゃなく、あなたにはもう少し先祖返りしてもらって、ゾウリムシからちょっとだけ進化したくらいの「原始生物」になってもらう。
つわけで、あなたは今、たっぷりと日の当たるぬるい浅瀬で腹ばいになってうごめき、ヒゲの先に触れるものを見さかいなく(目はまだない)口に運ぶばかりのヨタヨタ生物だ。
原始的とはいえ多細胞で、すでに食ったり食われたりするシリアスな食物連鎖社会が形成されてて、適者生存の淘汰も本格化しはじめ、進化で遅れを取るわけにはいかない。
そんな中、あなたは手さぐり(手もない)で拾ったものを確認もせずに摂食するせいで、妙なものを体内に取り込んでおなかを壊したり、自分よりも大きな相手を口に運ぼうとして逆に口に運ばれたりして、よく死んでしまう。
なんとかならぬものか?(と考える脳もない)
そんなある日、あなたは画期的な発明をする。
それが「目」だ。
最初のそれは、ピンホールのような穴だった。
その入り口から光が差し込むと、穴の底にある受容体が反応して一連のからくりを起動させる、という単純なシステムは、それでも絶大な効果を発揮する。
「目の出現以前」と「以後」とで時代を分かつほどの、革命的な発明だ。
それを持つ個体には、圧倒的なアドバンテージが与えられるのだ。
この新発明のなにがすごいのかというと、「そのものに触ることなく、そいつの存在を捕捉できる」という、まるで超能力のような認識能だ。
例えば、浅瀬で腹ばいで過ごすあなたは、ピンホールを上に、つまり光りが差す方向に向ける。
この状態を、例えばスイッチの「オフ」の状態とする。
そこを何者かが通過する際に、あなたは光が陰るのを感じ取る。
そのとき、光の感知システムがオフからオンに切り替わる。
「おっ、きたな!」てなものだ。
オンの情報・・・すなわち頭上に何者かが現れたサインは、ただちに神経系に伝えられ、あなたはすぐさま、逃げるにしろ、食いつくにしろ、そいつへの対応を取ることができる。
・・・と、ここまで読ませておいて恐縮だが、もう一度、同じ内容を別の表現方で描かせてくれ。
というのも、上の表現では、目の獲得者(あなた)がまるで知性と目的意識を持った主体的行為者であるかのように・・・つまり擬人化されてるわけだが、原始生物ふぜいは能力が単純なので、もう少し正確を期したいのだ。
仮想上の仮装のあなたは、細胞をたくさん集めて動作律を統一させた、原始生命としてはわりと進んだ個体ではあっても、まだ意志を持たないため、ただの「反応装置」と言っていい存在だ。
生命維持に特化した機構自体は洗練されてきてはいるものの、ただただ遺伝子の命ずるところに従い、外部からの刺激に対して機械的に反応するのみの身なのだ。
という部分を踏まえて、書き出しに戻る。
さて、一世代前の個体が遺伝情報を複製する際にミスプリントして残したせいで、あなたはたまたま新しい機能、すなわち「光りの粒(光量子)によって発動する高分子システム」を体内に持つラッキーに与った。
要するに、さっき描写した初期的な目の機能をまんまと手に入れたのだった。
ところが時を同じくして、あなたと同系統の他の何人(何体)かも、同様にそのシステムを身につけてたのだ。
ただ、それぞれに少しずつ、神経の伝達の方向性が違った。
つまり、目が光を捉えてスイッチが切り替わった際に、「明→暗」の情報の伝達をへて、「その場から遠ざかる」神経系を反応させるものと、「その場に留まる(なにも反応を起こさない)」もの、そして「目の前をかすめた影に向かう」ものがいたのだ。
そうした別々の神経配線を持つ三態の中で、「その場に留まるもの」は、システムを生かして生きのびることができない。
なぜなら、目の前をかすめたのが敵であったならまんまと餌食となろうし、逆にエサであったならそれを取り損なうことになるからだ。
そして「影に向かうもの」も生きのびる可能性は小さくなる。
目の前をかすめたものが敵かエサかの可能性は半々なので、50%の確率で餌食になってしまう。
こうして、難しい言い方をすれば、「光量子を体内の高分子装置に取り込んで、そこから遠ざかろうとする神経系をスイッチングさせるタイプ」であったあなたは、めでたく生き残ることができる。
わかりやすく言えば、あなたは「何者かが目の前に現れたら逃げる」能力を得たのだった。
これこそが、ダーウィンの言う「適者生存の淘汰律」だ。
遺伝子のミスプリントは全方位性で、要するに種は、多くの個体にバラバラな進化をさせておいて、いちばん生き残る確率の高い進化をしたもの(適者)を多く生き残らせるわけだ。
生命進化は、実験に次ぐ実験で生き残りにくいものをふるい落として淘汰し、生存者を決めていく。
すなわち、素晴らしい進化をしたものが生き残るのではなく、結果として生き残ったものは素晴らしい進化を遂げてた、という順序が正しい。
この要領で、あなたが獲得した単純な目がこの先、どう高度に進化していくのかを見ていく。

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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