徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

ふたつのレベル7

2011-04-13 03:21:28 | News
福島の原発事故がINES(国際原子力・放射線事象評価尺度)の事故評価でチェルノブイリ級のレベル7と評価された。

東電はレベル7に対して「(放射性物質の放出量から見て)チェルノブイリ事故に匹敵する、あるいは超えるかもしれない事故になったことを重く受け止めている」と謝罪した。
内閣府原子力委員会委員長はレベル7に対して「それほどのインパクトはない。原子力行政が変わるものではない」と言う。
経済産業省原子力安全・保安院はレベル7だが「放出量は同事故の約10分の1とみられる」と言う。
そして首相は「事故は安定に向かっている。レベル7に“なった”のではなくレベル7であることが“わかった”」と言った。

レベル7、チェルノブイリ級というフレーズに騒ぐ人間を批判する声もある。確かにチェルノブイリと福島では事故そのもの状況がまったく違うわけで、必ずしも「2つのレベル7」を同じように重ね合わせて見ることはできない。
しかしこれで当局・関係者が事態をどのように見ているのかがはっきりとわかる。
現在「レベル7になったのではなく」、事故発生から数時間だけでも1時間当たり最大1万テラベクレルの放射性物質を放出しながら、事故から一ヶ月経った昨日になって「レベル7であることがわかった」。「チェルノブイリに匹敵する放射性物質の放出量」ではあるが、評価に対しては「インパクトはない」。なぜなら「現在の放出量はチェルノブイリの10分の1」である上に現在「事故は安定に向かっている」のだから。
それなら何故「インパクトはない」のに今更レベル7なんだろう。
彼らにとってはレベル7は「過去」なのだろう。しかしレベル7の状態は確実にあった(INESは、「数万テラベクレル」相当の放射性物質の外部放出がある場合をレベル7と定めている)。
その状態で何も知らないまま東日本に住む人間はほぼ放置された/されていた。何か、絶望的なほどの危機感の薄さと対応の遅さを感じざるを得ない。
しかもほとんど誰も福島が「安定」などしていないことは予感している。いまだに炉を安定して冷却するための準備段階の準備(あーめんどくせェ!)で手間取っている状況、ましてや東京の人間でさえ昨日、一昨日の余震を体験すれば、現場の方々の健闘と無事こそ心から祈ってはいるものの、実感としてそれほど楽観的になれるはずもない。
原子力委員会が「インパクトはない」と言ったとしても、それでも最悪の評価尺度はそれなりのインパクトを国内外に与える。
しかしなぜ、それが震災から一ヶ月なんだ?
そしてなぜ、今、レベル7なのかが、やはりよくわからない。
「震災から一ヶ月」という、あまりにも形式的な節目にいろんなことが起こり過ぎて馬鹿馬鹿しくもなりつつも、やはり慎重に、粘り強くヲチしていく必要がある。

菅首相は復興へのメッセージをアナウンスしたが、同時に福島では新しい被災者が生まれようとしている。まったく嫌になるぐらい、震災/人災がいまだに続いていることを実感する。
凄まじい批判に晒されている菅さんは「何か」の捨て石になろうとしていないか? そんな予感もしているんだが…。
(4月13日追記・修正)

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