マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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的野渡人の祝い唄

2014年03月04日 09時38分43秒 | 山添村へ
大正4年に記された『東山村神社調書(写し)』文中の社記によれば「祭儀を終えて退社した渡り衆は当家に上がり込む。その際には竹枝に御幣紙を付箋したものを手にした人が当家の家先で出迎える。そのときに御幣付きの竹を一本ずつ渡り衆に手渡す。先導しながら当家の家に上がり込む」。

「あきのくに いつくしまの べんざいてんの ねじろやなぎ あらわれにけり げにもそよそよ いざやおがまんを繰り返し唱和しながら上がり込む」とある。

この作法を「踊り込み」と呼んでいた。

降り続ける雨は止まない。的野へ戻る還行のお渡りもできずに、車に乗った渡人。

会所手前の十数メートル前で降車した。

渡人、一人、一人に手渡す幣を付けた竹。

提灯を手にして先導する当家の親戚筋の男性。

「あきのくに いつくしま びざいてんの うねじろやなぎ あらわれにけり げにやそよそよ いざやおがまん」を渡人ともども唱和しながら会所の縁側から座敷に上がり込む。

座敷中央には高膳に盛られた一升のお米と二合の小豆がある。

お米は収穫したばかりの新米だ。



「福の種」と称する米と小豆を掴んで右回り。

竹を振りながら「ふーくがごーざった ふーくがごーざった」と目出度い台詞を詠いながらお米と小豆を高くあげて振り撒く。

調書に書かれてあった「踊り込み」の様相である。

この作法は「ウタヨミ」、「オドリコミ」とされる当家祝いの歌である。

五穀豊穣の目出度い台詞が当家に響き渡ること3周。

隣村の室津や桐山でも同じような所作の「オドリコミ」である。

福の種が一面に広がった座敷。

その場を奇麗に方付けて慰労の場に転じた。

装束も仕舞われた当家の座敷はご馳走の膳が並ぶ。



夜の膳は渡人を慰労する会食。

総代、当家、一老の挨拶並びにお礼を伝えてほっとした表情を見せる渡人たち。

乾杯をする場にはオードブルも配膳された。



世話方を勤めてきた婦人たちもほっとしたようである。



会食の場にはなぜか、珍味のハチの子まで盛られた。

(H25.10.15 EOS40D撮影)