本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

カゲロボ

2019-03-23 09:52:05 | Weblog
■本
27 残酷すぎる成功法則/エリック・バーカー
28 カゲロボ/木皿 泉

27 監訳者の橘玲さんもおっしゃっているように、成功者の個人的な経験則ではなく、論文などの科学的なエビデンスに基づき人生で成功するための方法を考察した画期的な自己啓発書です。「エビデンス」というと難解に感じますが、文章はわかりやすく、取り上げられている事例もとても面白いです(若干冗長ではありますが)。基本的には、自分の強みを活かせて長時間の努力に耐えられる好きな領域に集中して取り組むことや、他人や自分に寛容な姿勢を持つこと、など、日本人にとって受け入れやすいアドバイスが多く、腹落ちしやすいです。個人的には、最後のワーク・ライフ・バランスについての筆者の熱いメッセージが印象に残りました。アメリカのビジネス界で成功者として見られがちな人たちの人生に対する満足度が、必ずしも高くないという指摘が逆に信用できます。限られた自分の時間を、周囲に流されることなく、本当に自分のしたいことに費やすこと(その本当にしたいことが見つからない場合は、それが見つかりやすい環境に身を置くべく努力すること)の大切さを再認識できました。

28 大好きな木皿泉さんの短編小説集です。発売日に買って一気に読みました。「昨日のカレー、明日のパン」や「さざなみのよる」などの、最近の短編集と比べると、より曖昧で読む人によって捉え方が異なるところも多いと思いますが、木皿泉さん独特の、「ダメな自分を許す」優しい視線に満ちた包容力溢れる作品です。冒頭ニ作が少年期のいじめを題材にした話だったので、その方向性で話が進むかと思ったら、突然老女が主人公の幻想的な話が挟みこまれ、また、いじめが題材の話に戻るなど、なかなか掴みどころがありません。それでいて、各短編が微妙につながっていて、最初の方の作品でいじめの加害者側だった登場人物たちが、別作品ではその成人した様子が描かれています。全体を通して朧げに浮かび上がるテーマも印象的です。私はそのテーマは「生きにくさに対する共感」だと感じました。いじめの被害者と同様に加害者側も、さまざまな屈託を抱えていること、そしてそれを不器用にしか表現できないダメな私たちに、それでも「大丈夫」と太鼓判を押してくれる、とても温かい作品です。


■映画 
24 ラストミッション/監督 マックG
25 ノルウェイの森/監督 トラン・アン・ユン

24 「レオン」などのリュック・ベッソンの脚本を、「チャーリーズ・エンジェル」シリーズのマックGが監督した、ケビン・コスナー主演のアクション作品ということで、なんとなく内容が想像できますが、怖いもの見たさもあり観てみました。良くも悪くももリュック・ベッソン色が濃く出ていて、フランスを舞台にしたスタイリッシュな雰囲気に、予定調和の家族愛と過激な暴力シーンが、不自然に絡み合い、そこにセンスのないコメディ要素も加わります。それでも、ケビン・コスナーは枯れた感じのベテランCIAエージェントをいい感じに演じていますし、私生活でジョニー・デップともめている、アンバー・ハードはドSな上司役を雰囲気たっぷりに演じていて、悪役も含めた癖のあるキャラクター設定は、さすがリュック・ベッソンです。コーエン兄弟監督作の「トゥルー・グリット」での演技を絶賛されたヘイリー・スタインフェルドが、ただのよくある思春期のわがまま娘役だったのは、少し残念でした。主人公の不治の病が治る新薬が都合よく登場するなど、ご都合主義的な設定を気にせず期待値を下げて観れば、それなりに楽しめる作品だと思います。私は、割と気に入りました。

25 言わずと知れた村上春樹さんの大ベストセラー小説の映画化作品です。まず、ここまで原作ファンの思い入れが強い作品を映画化した勇気に敬意を表します。女性キャストが発表されたときは、直子と緑の役が逆の方がよかったのでは、と思いましたが、菊地凛子さんは直子の儚さを、水原希子さんは緑の快活さを見事に演じられていたと思います。松山ケンイチさんも、私のイメージする主人公ワタナベ像にかなり近くて共感できました。60年代の大学キャンパスや主人公が旅をする日本の風景が情感たっぷりにゆったりと美しく描かれていますし、レディオ・ヘッドのジョニー・グリーンウッドによる緊張感のある音楽もいいアクセントになっていて、芸術的に優れた作品だと思います。しかし、村上春樹さん作品のファンとしてはその「芸術性」の敷居の高さに少し違和感を感じました。村上春樹さんの作品は、一見ポップで読みやすい文体で間口は広く取っているにもかかわらず、読み進めるにつれてその深さに圧倒される、というところが最大の魅力だと思っていますので、この取っつきにくさは致命的だと思いました。頻出する性的シーンも、登場人物のさまざまな葛藤が「性」の問題に矮小化されるのではという心配もあります。なにより、私が一番好きな、病床の緑のお父さんとワタナベ君がきゅうりを一緒に食べるシーンがなかったところが残念でした。
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