本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

百万円と苦虫女

2013-09-08 06:09:33 | Weblog
■本
80 太陽は動かない/吉田 修一

 芥川賞作家、吉田修一さんによるエンターテインメント小説です。悲惨な過去を持つ企業スパイが、太陽光発電の日中米間の利権争いで暗躍します。ルパン三世の峰不二子を思わせる美人スパイなども登場し、キャラクター設定がかなり漫画的で現実離れしているので、「悪人」や「横道世之介」といった、リアルな人物描写が売りの吉田さんの近年の傑作のファンにはあまり評価されないかもしれません。私自身も、主人公の超人すぎるアクションシーンやご都合主義的すぎる強運には正直興ざめしました。また、先述した、「悪人」や「横道世之介」では成功していた、現実社会での事件の引用が、本作ではひどく薄っぺらく強引なものに感じました。その一方で、巧みなストーリーテリングで一気に読み終えたことも事実で、吉田さんの作品という先入観がなければ、とても楽しめる作品です。すでに地位のある人がこういうチャレンジをする姿勢は評価すべきだとは思いますが、過去の作品に少なからず思い入れのある私的には、一層の事、別名義で発表してくれた方がよかったのに、とも少し思いました。


■CD
74 Right Thoughts, Right Words, Right Action/Franz Ferdinand

 おしゃれでいかにもイギリス的な洗練された作品です。当初「原点回帰」といわれていたので、もっとトリッキーでダンサブルなサウンドになるかと思っていたのですが、とても行儀の良い大人のサウンドだと思いました。引っかかりのある派手な曲は特にありませんが、クオリティの高い短い曲をたたみかける様な構成は心地よく、一気に楽しめます。


■映画
57 百万円と苦虫女/監督 タナダユキ
58 素敵な相棒~フランクじいさんとロボットヘルパー~/監督 ジェイク・シュライヤー

57 蒼井優さん主演の地味で薄幸な主人公が他人や弟との交流により成長していくというロード・ムービー的作品です。観終わった最初の感想は「森山未來さんって本当にうまいなあ」というものでした。こんな地方大学生っていそうだなあ、というキャラクターを見事に造形しています。蒼井優さんも非常によい女優さんだと思いますが、本作では表情がタイトル通り「苦虫顔」と「おどおどと笑う」の2パターンしかないのに対し、森山未來さんはそれほど喜怒哀楽がはっきりした役にもかかわらず、いろんあ複雑な感情をとても豊かなに表現されています。ストーリー展開も予定調和にならずオリジナリティー溢れるもので好感が持てます。苦いエンディングが個人的には少し残念でしたが、その分強い引っかかりがいつまでも残り、もう一度観てみたいという誘惑に駆られます。

58 認知症になった元泥棒が、息子から贈られたヘルパーロボットに盗みの技術を教えるうちに、そのロボットとの間に奇妙な友情が芽生えるという近未来ファンタジーです。主役のフランク・ランジェラが頑固な老人役をキュートに演じていますし、スーザン・サランドンも、悲しみを奥に秘めた、快活な図書館司書役を実に魅力的に演じています。濃い印象のリヴ・タイラーが、こういう地味な作品の世界観を壊さず、普通に巧みに演じているのも意外な発見でした。ストーリー的には、認知症ものにありがちな記憶の消失を用いたどんでん返しは不要だったと思いますが、全体的には予想の斜め上をいくよくできたシナリオだと思います。崩壊しかけた家族の再生の姿も丁寧に描かれていて、後味も悪くないです。ミニシアターの作品らしい、こじんまりとした良作だと思います。
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