本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

新聞記者

2019-07-06 10:05:36 | Weblog
■本
59 新聞記者/望月 衣塑子
60 キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇/石田 衣良
61 デジタル資本主義/森 健、日戸 浩之

59 菅官房長官の定例記者会見での厳しい質問で有名になった、東京新聞望月記者の自伝的な本です。下記の通り映画の方の「新聞記者」を観てからこちらを読みました。望月さんが新聞記者になった背景や下積み時代、そして、映画のプロットの元になった、伊藤詩織さんのレイプ告発や森友・加計問題などの取材経緯が書かれています。よく言われる記者クラブの問題点についても触れられていて、言葉は悪いですが、東京新聞というある種ニッチな新聞社に所属されていたからこそ、さほど既得権に縛られず、ここまで政権に真正面から厳しい質問をし続けられたのだということが理解できました。政権寄りの人々からの各種批判に晒されつつも、使命感に基づくバイタリティ溢れる活動に頭が下がります。男性中心の新聞や政治の世界への女性進出の重要性についても考えさせられる本です。

60 引き続き池袋ウエストゲートパーク関連の作品を。こちらは、キングと呼ばれる池袋の若者のリーダータカシと、主人公のマコトの高校生時代のエピソードを中心に、なぜ学校でも知る人ぞ知る存在だったタカシがキングにまで上り詰めたかというお話です。郊外だけでなく、大都会の若者も自分の将来に強い閉塞感を感じているところが少し切ないですが、それでも、したたかに彼らなりの美学に則って暮らしているところに共感します。ストーリーは完全に予定調和ですが、IWGPシリーズファンは押さえておくべき作品です。

61 デジタル化が進む中で、資本主義がどのような状態になっているのか、という論点について、「消費者余剰」(消費者が最大支払ってもよいと考える価格と実際の取引価格との差分-グーグルの検索やソーシャルメディアに代表されるように、無料で提供されているサービスでも消費者がお金を払っても提供を受けたいと思わせるサービスが、デジタル化により増加していることがその背景にあります-)という概念を補助線として解説されています。この「消費者余剰」があるので、GDPや労働生産性という、これまでの経済指標がピンボケを起こしているという主張なのですが、個人的には「消費者余剰」とよりも、デジタルのサービスが国境を越えて提供されているため、その経済的な影響を国単位で測ることができなくなっている、「グローバル化」の方が、経済のピンボケ現象の影響としては大きいと思いました。「交換様式」(平等さと自由度の軸で交換について4つに類型化したもの)や「技術文化」(道具と人間の関係性を類型化したもの)といったフレームワークは参考になりますが、人間の主観世界に重きをおき、「どのような未来を作り出すかは人間次第」という結論は、ややピンボケしている印象を受けました。三部作の第一弾ということなので、続編を待ちたいと思います。


■CD
9 "Let's Rock"/Black Keys

 シンプルで潔いロック作品です。3分に満たない楽曲も多く、アルバム全体でも40分ありません。ギターリフがどにかく格好いいです。キラーチューンはないものの、ライブで聴きたいグルーブ感たっぷりの楽曲が続きます。複雑になる一方の現代の音楽シーンで、このシンプルさは尊重すべき美徳だと思います。多くの若い人に聴いてもらって、ギターを始めてもらいたいです。


■映画 
61 秋日和/監督 小津 安二郎
62 新聞記者/監督 藤井 道人

61 引き続き小津安二郎監督の作品を。これまでの作品では娘側の役をすることが多かった原節子さんが、本作では母親役になっていますが、基本は小津監督が何度も描いてきた、結婚適齢後期の娘を嫁にやる親の話です。娘の親友の現代っ子ぶり(といっても1960年の作品なので、私の親の世代なのですが)や、娘の結婚を心配しつつ物事をややこしくする、死んだ父親の3人の友人など、コメディ色が少し強めな印象です。死んだ父への思いや戦争の爪痕を巧みに織り込みつつ、母親と娘、そして死んだ父親との絆の強さを、しみじみと巧みに描かれています。小津作品全てに共通しますが、このあたりの細やかな感情の交流の描かれ方が本当に見事です。

62 上述した望月記者の本をモチーフにした映画です。望月さんがモデルと思われる女性新聞記者と、出向先の内閣情報調査室で政権に不都合なニュースの火消しに関わるエリート外務官僚が、主人公のサスペンス作品です。主演のシム・ウンギョンさん、松坂桃李さん、そして内閣情報調査室の不気味な上司役の田中哲司さんの緊迫感のある演技と、スリリングなストーリー展開でエンターテイメント作品としても優れています。ただ、ドラマティック過ぎる展開と救いのない結末には賛否が分かれると思います。現実の事象を連想させる問題が随所に盛り込まれた、安倍政権に批判的なメッセージに溢れた作品で、本作品にかかわる全てのスタッフの勇気にまず敬意を表します。言論の自由が保障されているとされているこの国で、本作に関わった人々が今後どのような扱いをされていくかも含めて、日本という国のいろんな面が問われている作品だと思います。
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