本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

スマホ脳

2022-01-08 07:51:05 | Weblog
■本
3 裏道を行け ディストピア世界をHACKする/橘 玲
4 スマホ脳/アンデシュ・ハンセン

3 高度化する一方の知識社会の進展で、ロングテール化(少数の大成功者と多くのそれ以外の人に分かれる構造)が進み、ふつうに生きているだけでは人間らしく生きていくことができなくなった世界で、そのシステムの隙を見つけ、ハッキングしていくことにより、したたかに生き抜いていこうという、橘玲さんらしい作品です。「恋愛」、「金融市場」、「脳」、「自分」、「世界」をハッキングしようとした人の試みを紹介しつつ、この残酷な世界をサバイブする方法が探られています。少し前までの橘さんの作品は、このハッキング方法の描かれ方がカラッと明るいものだったのに対し、近年の作品はハッキング方法やその結末がどこかグロテスクにさえ感じられる点が気になります。本作でも、ハッキングに成功した人が一時は幸福な人生を送っているように見えつつも、その後は必ずしもそうではない例が多いです。現実世界がますます厳しくなっていることを象徴しているのかもしれません。暗い気持ちになりつつも、それでも、周囲の常識に左右され過ぎず、自分で考え続けなければならないと思わされました。

4 昨年のベストセラーということで読みました。息子たちのスマホに接する時間がとにかく長いので、読み進むにつれて不安が募りましたし、その原因や対処方法が脳の特徴を丁寧に説明しつつ解説されているので、とても参考になりました。我々の脳は、他の人間も含む動物からの襲撃や飢餓の危険に日々さらされていた時代からさほど進化していない一方で、スマホに代表されるテクノロジーは進化し続けているので、そのギャップが我々の精神状態や健康にさまざまな悪影響を与えているというのが、趣旨だと私は理解しました。そのうえで、そのギャップを理解しつつ、テクノロジーに支配されるのではなく、よりよい生活を送るために適切な関係を保とうと主張されています。飢餓の危険が身近にあった時代の名残で、食べられるものがあるときに食べておこうと脳が判断しがちなのと同様に、たとえ間違いであっても危険を察知するために常に周囲に気を配る特徴が脳にはあり、そのために、スマホからのメールやソーシャルメディアの通知が気になり、スマホから離れられなくなる傾向が説明されています。AIで代替できない仕事には集中力が必要とされる一方で、テクノロジーの発達が人間から集中力を奪っているという指摘が、危機感とともに特に印象に残りました。ダイエットと同じで実施するにはかなりの強い意志が必要だと思いますが、デジタル機器に触れる時間の削減も必要だと感じました。取りあえず、適度な運動とスマホの寝室への持ち込みをやめ、通知機能をオフにすることを続けることから始めたいと思います。子どものスマホ中毒に悩む親だけでなく、自身の集中力のなさや睡眠不足に悩む人にもお勧めできる良書です。


■映画
2 マラソンマン/監督 ジョン・シュレシンジャー

 ダスティン・ホフマン主演のサスペンスです。タイトルからマラソンが重要な役割を果たすのかと勝手に思っていましたが、単に主人公の趣味のジョギングシーンが冒頭に描かれていたからでした。日本版のみのタイトルかと思いましたが、原題も「Marathon Man」です。監督は名作「真夜中のカーボーイ」のジョン・シュレシンジャーですが、本作はそこまで手放しの傑作とは残念ながら言えません。冒頭から断片的なエピソードを並べ、なかなか本筋が始まらず、それがサスペンス効果を高める狙いとしてある程度機能しているとは理解しつつも、まどろっこしくて作品世界に入り込めません。それらのエピソードが繋がったときの爽快感もさほど得られませんでした。主人公が元歯科医に拷問されるシーンの生々しさは強く印象に残りますが、拷問する側の動機が単なる金目当てで、強大な権力が背景にあるわけではないので拍子抜けしました。緊迫感のある映像の見せ方など、監督、俳優の素晴らしい技術が存分に発揮されつつも、それが作品全体のクオリティに直結していない点が少し残念な作品です。
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