本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

モリーズ・ゲーム

2020-12-05 07:01:45 | Weblog
■本
103 コロナ後の世界/ジャレド・ダイアモンド 、ポール・クルーグマン他
104 「自分メディア」はこう作る!/ちきりん

103 新型コロナをテーマにした本の中で評判がよいので読んでみました。「銃・病原菌・鉄」のジャレド・ダイアモンドさんや「ライフシフト」のリンダ・グラットンさんなどの著名人が、タイトル通り「コロナ後の世界」について語ってくれています。コロナの世界的な影響を冷静に分析しつつも、今後の見通しについては楽観的なものが多い点と日本という国の立場になっての提言が多いところが印象的です。個人的には、マックス・テグマークさんの『データは本当に「新しい石油か?』という意見が新鮮でした。技術が進化すれば、人間の子どものようにAIの学習も大量のデータが不要になるという仮説に基づく意見ですが、データ収集という観点では英語圏や中国圏と比べて不利になる日本にとっては、注目する価値のある意見だと思います。少なくとも、流行りの意見に過度に流されずに別の視点を持つ重要性に気づかされたという意味では有意義でした。コロナでダメージを受けた世界を立て直すためには、ワクチンも含めたいろいろなものの人類全体への公正な分配がカギになるのではと考えています。これを機に格差の拡大傾向に歯止めがかかる可能性が見えれば、この本の知識人のように少しは楽観的になれるのですが。「楽観主義も悲観主義も自己予言的」なので、それならば「楽観主義になるべき」という、スティーブン・ピンカーさんの意見にも考えさせられました。

104 ブログの熱心なファンではありませんが、ちきりんさんの書籍は全て読んでいるので、ブログ黎明期の状況もあらためて知りたかったこともあり読みました。前半の、個人の趣味として書いていた「Chikirinの日記」を、いかに月間200万PV超のメディアにまで(しかも量だけでなく訪問者の質にまでこだわって)戦略的に育て上げたか、という部分は、ネット時代のメディア論とも言える内容です。ブログに関わらず様々なビジネスで、自分たちが継続的に関係性を構築したい層に、いかに情報を届け交流すべきか、を考える上で参考になると思います。しかし、やはりこの本の見せ場は、後半のブログのベストエントリ集です。反響の多いものが選び抜かれただけあって読み応え十分です。ネットで公開されているものとは言え、まとめて書籍で読むとやはりいろいろと発見があります。個人的には特に、「新4つの労働者階級」というエントリーに衝撃を受けました。私が普段漠然と不安に感じていることを見事に言語化してくれています。我々世代はこのエントリーで書かれている、発注者や上司の要求に基づく(2)「仕組みの設計をする人」が多いと思うのですが、そこがコモディティ化して稼げなくなったので、社会や事業システム自体を構想する(1)「仕組みを設計する人」になるよう求められているが、(1)をするには能力が不足しており、また、稼働面では実は(3)「言われた通り仕組みを作る人」も不足しているので、そちらに時間を割かれているという悪循環に陥っていることがよくわかりました。ちきりんさんの物事をわかりやすく整理する力と、独自の視点をポジションを取って展開する勇気に圧倒されました。


■映画 
102 ルパン三世 THE FIRST/監督 山崎 貴
103 モリーズ・ゲーム/監督 アーロン・ソーキン

102 山崎貴監督の甘い世界観はあまり得意ではないのですが、この作品はルパン三世という作品(というか「カリオストロの城」)に対する敬意が感じられて好感が持てました。心配していたフル3DCGの違和感もありませんでした。ストーリーも、テレビのスペシャル版にありがちな余計な脱線もなく、シンプルに楽しめました。次元や五ェ門のキャラ崩壊もさほどなく(最近どんどんコミカルなキャラになっているところが少し不満です)、本作のオリジナルキャラも既視感はあるものの、この作品に合っています。スケール感のあるエンターテイメント作品だと思います。

103 予告編を観て勝手に「オーシャンズ~」シリーズのような、クライムエンターテイメントだと思っていたのですが、味わい深いビルドゥングスロマンのような作品だったので驚きました。主人公のモリーが行った違法賭博は褒められたものではありませんが、自分の才覚だけで成り上がっていく姿や、安易に人を裏切らず一定の筋を通す姿勢は、アメリカの長所をある意味体現していて、好ましく感じました。モーグル大会中のアクシデントでオリンピック出場を逃し、違法賭博の摘発で無一文になるなど、様々な挫折からもタフに這い上がろうという姿勢にも励まされます。モリーを演じるジェシカ・チャステインの演技は圧巻ですし、その高圧的な父親役のケビン・コスナーも「ドリーム」という作品に引き続き渋い演技をみせています。人生のいろいろな苦みをパワーにして前に進もうという気にさせてくれる素敵な作品です。
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