───竹田青嗣『欲望論』(第二巻、314)
(ヘーゲル『美学講義』)……
ヘーゲルはカントの「道徳」思想を、
理性と自然(感性)の分離、および感性の理性への服従の構図として批判し、
むしろ人間的自然(感性)が理性化されることに近代の道徳(内的倫理)の本質をおく。
近代の人間性は、まず、個の自由(自己欲望)の解放と
社会的な規範順守の対抗性のうちに矛盾の本質を見出すが、
近代的個人における矛盾の解法は、
各人が自然の傾向性を抑えることで自らの内なる道徳的義務に従う、
というカントの構想のうちにはありえない。
この内的「義務」の遵奉という理想は、むしろ世界宗教が人びとに課した
欲望の普遍的抑止と信仰と道徳への要請の変奏形態にすぎない。
ヘーゲルは主張する。相互承認を根本理念とする近代社会では、
規範的善の順守の内的な義務化ではなく、
自己の自由と社会的規範の内的調和とが達成されるべき課題である──。
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