Chopin: Nocturne No. 10 in Ab Maj, Op. 32, No. 2 - Ingrid Fliter - YouTube
とおい記憶の地平の向こう側へ
消息の途絶えたおもかげを追ったとき
あなたの詠む歌は悲恋でしょうか
それともおごそかにつづられる叙事でしょうか
いまこのとき この春に
あなたのまなざしの奥に
小さくきらめく光は何でしょうか
だれにも語られない憎しみでしょうか
いくつもの物語をたどらなくてはそこに至れない
生命の深い森に連なるこのうえもなく貴重ななにかでしょうか
心がいつかきっとそこを訪ねたいと願い
願いつづけながら滅びてゆくかなしみでしょうか
あるいは深くわけ入ったとき
道行きの途上でついには口ずさんでしまう
いにしへの歌謡に連なるなにかでしょうか
あなたと血脈を同じくする数多のまなざしが告げていました
そうでありうることがせつないのです
そうでありえないことがくるおしいのです
あめつちはじめてひらけしときより
あはれにはかなく
かなしくむごたらしい
つねならぬつねの
つねになりてなりゆくありさまを
ただひとり見すぎたこの星の自然よ
おまえは倦むということがないのでしょうか
時のあわいにあるかなきか
永遠のまにまに
かつ消えかつ結びて
なおも見わたせば
春にひろがる情けのさざなみを
ある人かく曰はく、
まことのひとのなさけ
しごくまっすぐに
はかなくつたなく
しどけなきものなり
かさねて曰ふ、
つたなく執着尽きがたく
めめしくあはれなるものなれば
あはれの心をあはれのままに語れぞかし云々
ひとのこころを種として
まにまにかつ消えかつ結びて
つたなくめめしふ詠みつくれば
あやしふこそものぐるほしけれ
あなたのまなざしの向かう彼方に
結ばれる言の葉は挽歌でしょうか
あけそめの光に連なる頌歌でしょうか
よしなきいざないは止まず
遠いおもかげをよすがとしながら
終わりなき連歌のえにしにみちびかれ
踏破すべき一片のよしなしごととして
いまも心に訪れているのでしょうか
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