https://www.youtube.com/watch?v=_5-pBkwyUxc
十二月の月明かりの夜空は冷たく透きとおり
今夜は途切れのないクリスタルだったから
心はどんな感情も結ぶことができなかった
刹那を刻む情動の発火が先行して
時制のコマンドは壊れ
数えきれない昼と夜が入り混じり
呼ぶ声も応える声も
どれが自分かわからなかった
いつかあなたといた空があり
今夜もあなたといた
もうすぐ消えようとしている灯を照らすように
病室の外の月はこんなにも綺麗に輝いていた
光が触れた情景が
永遠に保たれるものなら
空の彼方のどこか
はるかに遠ざかりながら
あなたとぼくは
いつまでも同じ場所にいるのでしょうか
真夏の太陽の下で冷たい清流を泳ぎ回り
焼けた岩肌に腹ばいになりながら
川瀬に潜ったあなたの姿を追っていた
あなたは隆々の腕っぷしを見せつけるように
並んで泳ぐ二匹の鮎を一刺しにして銛を突き上げ
こぼれるような笑顔を投げて寄こした
青空を映した水面には
白い雲が流れ
澄みきった光と風のなかで
少年の心は満たされ
水辺には夢と区別されない
黄金の時間が流れていた
横たわったベッドでか細く息をつぎながら
あなたはその意味を受け取る力なきものに
ふり絞るようにわずかに手を握り返した
帰る場所も、留まる場所も、送る場所も
だれも教えてくれないさびしい時代のシグナルが
月の光がつつむこの街に巨大な不在を告げていた
病室を出てから上流の懐かしい土地へ向かった
真夜中の時間、そこにも待ち受けてくれる人たちがいた
ヘッドライトが照らす暗闇の川べりの道を
影が走り、風がわたり、木々がそよぎ、
月明かりの夜空と無明の現在が溶け合っていた
永遠の遠ざかりの臨界に萌すものがあるのでしょうか
心なるものの応えなき応答のいとなみにおいて
冴えわたった月の輝きが
なにかに召喚を促していました