木村拓哉は30石取り(概算年収300万円)の下級武士で、藩主の食事毒味役である。毒味中のアクシデントで失明する。
妻の壇れいは、家名存続と家禄安堵のために奔走する。
人の弱みに付け込む悪い上司(板東三津五郎)が、こんな時に登場するのは、今も昔も変わらない。言葉巧みに壇れいを陥れる。
家のためとは言え、妻の不貞を知った木村拓哉は壇れいを離縁する。そして敢然と板東三津五郎に決闘を申し入れる。
盲目となった身での決闘の勝算は極めて薄い。剣道の師匠である緒方拳は「死の中に生がある」と説く。また、下男の笹野高史は決闘場の河原の小石の状況など細々と教える。
卑怯にも板東三津五郎は目の見えぬ相手に背後から襲い掛かるが、返り討ちに合い敗れる。
家名存続・家禄安堵となった木村家に笹野高史は飯炊き女を雇い入れる。
夕餉の膳に座った木村拓哉は炊きあがったばかりの椀の香に、ある愛おしさを直感した。ひとくち食べただけで…もう分かった。
暖かく盛られた椀の飯は、離縁した筈の妻の作ったものだと。
本作品の中では、確かに日本人が喪失しかけている、「正々堂々・卑怯・敢然・決死」などについて語られている。
しかし、そんな武士道精神のベースにあるものが、実は仏教じゃあないのか、とも語っているように思えた。
盲目となって、初めて知ることの出来た、妻の真の愛おしい心。妻の愛情に強く応えようとする自分の心。
たとえ目は見えなくても良い、しっかりとした心が在れば…。すなわち、空即是色(般若心経)と。
藤澤周平原作、山田洋次監督。木村拓哉・壇れい・笹野高史・板東三津五郎・緒方拳、出演。(2006年作品)。
飯炊き女・・・泣かせますね。
泣かせますね。
山田洋次の藤沢周平作品は全部観ましたが、いずれも秀逸。
日本人の忘れてしまった心根-惻隠の情-などがうまく表現されていて好感がもてますね。
吉永小百合なんていうと、お互い心中おだやかならざりし世代ですが、飯炊き女の登場シーンでは、誰もが自分の奥さんへの思いがWってしまったみたいですね。
この映画は、奥さんと観ましたか?
私はカミサンと見ました。ラストで鼻をすすっている私を見て神妙な
顔をしていました。
空即是色などと書いたものだから、話の風向きが私ら夫婦の方に
変わって来たみたい…。映画観賞記です。御笑読ください。『少し感服』などといわれると、照れます。
この手の映画でカミサンが泣いたのを見たことがありません。
大抵はダンナの方が感涙(すすり泣き)にむせぶものです。