朝日新聞(H21年4月19日付け、朝刊35面)の「ヒラで定年、あゝ上野駅」の見出しが目に飛び込み、長めの記事であったが一気に読んだ。
イワン・アサノヴィッチも3年前に某役所を定年退職したが、事実上のヒラで定年という身であった。
そんな同じような境遇に興味・親しみが湧いて、記事を読んだことはいうまでもない。
もひとつ感動したのは記事中の人物(佐伯憲治氏、以下敬称略)が、定年まで単身赴任で暮らしていたワンルームマンションの荷物片づけのことである。
佐伯はテレビとうす汚れた布団を残し全てを捨ててしまったのである。『それがサラリーマンの正しい姿』と威勢よく言ってのけた。
…この3月にイワン・アサノヴィッチは定年後の再雇用の3年間を終えて完全リタイアしたのである。
役所の机やロッカーにはかなりの私物があった。家に持ち帰ればみんな使えるものばかりであったが、職場専用の老眼鏡を除いてすべて捨ててきた。
捨てるに躊躇したものも少なからず在ったがすべて捨ててきた。愛着と言えばキレイだがその陰に未練みたいなものがくっついていたからだ。
多分、佐伯もそんな自分の心をこの際にサラリーマンの一切を精算しようと思ったのであろう。
ただひとつ、捨てるに最後まで迷った物が一つあった。それは履き慣れたメッシュの革靴であった。
水虫持ちのイワン・アサノヴィッチは冬場を除いて役所では職場専用のメッシュの革靴を愛用していたのである。
退職後、家の中でこのメッシュの革靴を履くことなどあり得ない筈なのであるが、何年もの間、役所の中で”苦楽”を共にしてきたメッシュを捨てるには忍びがたい気もあったのである。でも、やはり捨ててきた。
何十年来の持病である水虫とこの際、精算できるかも知れないと思って(笑)…。さらば!サラリーマン&水虫である。