イワン・アサノヴィッチの一日  畑と映画の好きな卒サラ男。

政官業癒着体質の某公共事業職場を定年退職。鞍馬天狗・鉄腕アトムの人類愛に未だに影響を受けっ放し。孫には目がない。(笑い)

唐人お吉の不思議

2010-12-25 00:04:17 | 旅行記

 先日、カミサンと伊豆の下田に忘年旅行に出かけてきました。

JRの往復の特急とホテルがパックとなっているだけの極安の料金で済む旅行です。だから下田温泉では完全なフリーで放っておかれてしまいます。

観光はすべて自前ですので伊豆急下田駅から近い「唐人お吉資料館」に出かけました。
お吉は江戸幕府が開国したばかりの初代米総領事のハリスの従女に、要求されるままに送り込まれます。

お吉のあとに4人の従女がハリスのもとに送り込まれます。お勤めと言うのも変ですが、お吉以外の4人はそれぞれ数ヶ月から一年間の期間をハリスのもとで暮らしました。

お吉を初めとした従女たちはみな十代で、支度金は25両、暇金は30両、年俸は120両と言う莫大なカネが幕府から支給されていたそうです。まるで日米安保の米軍に対する思いやり予算を彷彿させるお話しです。

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『こんな時代から日本はアメリカの言いなりだったんだね。』と近くの女性の見学者が呟いていたことが印象的でした。

お吉はハリスの帰国後、酒に溺れる自堕落な生活をおくるようになり孤独地獄と周囲の無慈悲な「唐人」と言う差別の扱いに耐えきれず49歳で入水自殺をして果てます。

壮絶な孤独生活と相俟ってお吉のハリスへの思慕が美しく対比して描かれた話しだけがともすれば我々に残されていましたが、事実はどうやら違っていたようです。

お吉は他の従女と違って僅か3日でハリスから暇を出されるのです。”一目惚れ”などという言葉もありますが、果たして僅か3日の情交で一生を貫くようなハリスへの情念に為り得るものなのでしょうか?

お吉は総領事館を出てから、昔の恋人と一時期生活を共にしますが失敗し独り身となり大金もなくなり正に何の後ろ盾も無くなってしまうのです。

そこから陰湿な弱い者イジメが始まるのです。入水自殺したお吉の亡骸は誰一人引き取ろうとした者は居なかったそうです。宝福寺の住職が引き取り菩提をしたそうです。

我々の知っている唐人お吉物語は、どうやら後生の人のいわば判官贔屓みたいな創作ではなかろうかと思われます。


正直者だけでは世の中、回っていかない

2010-12-15 23:57:23 | 社会・経済

 前進座の出前芝居「くずーい、屑屋でござい」(11月27日 四街道市)を観ました。この芝居は古典落語の「井戸の茶碗」を原作としているとのことでした。

そして前進座の方々は登場人物が比較的少ないお芝居を選んで、地方の隅々まで芝居の出前に出向くと言う企画で頑張っておられるとのことでした。
 

 あらすじは、律儀で正直な武士と町家に身を窶(やつ)した律儀で正直な奥方さまが登場し、仲を取り持つ正直者の屑屋がリサイクル品の茶碗の仲買をします。三者とも思ってもいなかった事態で高値となり三百両を手にします。

がしかし、その分け前をめぐって正直過ぎるが故に『受け取れ』『受け取れない』のタテマエ論争に発展。間に入った仲買の屑屋は無礼伐ちにさへ遭いかねない状況です。屑屋は『お武家さんも奥方さんも筋が一本通った律儀者、だけど何でオレがこんな苦労をしなきゃならねんでえ!』と不合理を訴える始末です。

世の中の酸いも甘いもかみ分けた大家さんのとりなしで、「正直者はバカをみない」という落ちで芝居は決着するのです。

イワン・アサノヴィッチにとって、この芝居のテーマが余りにもいま的かつ自分的で唸らされてしまいました。それと言いますのは、我が町の議会で一本の都市計画道路予算をめぐって大いに揉めているからです。

賛成派は残念ながら”走り出したら止められない公共事業”の宿命に唯々諾々と追随してしまう議員たちで、あまつさへ進出予定の大型店舗に獲らぬ狸の皮算用で法人税増収だとか雇用増見込みを吹聴する有り様です。

反対派は中心市街地商店街への影響をないがしろにし、且つ過大な公共事業だと主張しています。

現実論派はコリ固まってしまった、関連する土地区画整理事業や大型店舗出店計画にいまさら中止や変更は出来ないとするものです。かなり昔に仕込まれた、やや「政官業」の合作っぽい臭いもしないではありません。
 

 折しもイワン・アサノヴィッチはこの町の都市計画事業にボランテイアで少し関わるようになってしまいました。確かに旧態依然の拡散型で大規模な土地浪費型の関連事業に纏わる都市計画道路は4車線ではなく2車線で十分だと思っています。

それに中心市街地商店街には少なからずの悪影響が出ると考えています。しかし、昨年度から着手された都市計画道路事業をいまさら変更とか中止ということになれば節税効果よりも社会的混乱のデメリットの方が大きいのです。

正義感やタテマエだけで世の中は回っては行きそうにありません。とき利非ずです。


広島県知事の「育メン宣言」は前例打破

2010-12-11 13:03:35 | 社会・経済

  広島県知事の湯崎英彦氏(45歳)が第三子の誕生に際して育児休業を執ることを定例記者会見で語り、波紋が広がっています。

一方で湯崎知事は県庁内で幹部職員に対し、成果主義を導入し年功序列型賃金制度の改革を進めているとのことです。

インターネット上の反響を調べてみました。案の定の反響でしたが、少し紹介しましょう。

「日本の景気を考えてみろ!広島県も財政的危機状況にあるはず。」「国民の多くは働いても働いても給料は上がらず、育児休暇なんかは夢の夢だ。」として今の社会情勢の中ではオカシイと言っています。

そもそも「育メン」は男女平等というタテマエ社会にあって、実際は女性だけが”育児専門者”みたいに社会から遠ざけられてしまう不条理を改革することなのではないでしょうか。

少子化対策もありますが、それ以上に意欲のある女性を労働力として社会に貢献してもらうと言う大きな意義があると思います。

湯崎知事は県内の中小企業に対し一週間以上の育児休業取得に際し、最高30万円の奨励金を支給する制度の創設をしました。▼決して社会情勢を無視して自分だけが育メン休暇を執ると言うスタンスではないように見えます。

知事です、ベビーシッターのひとりぐらい雇えない身分ではありません。イワン・アサノヴィッチでさへ第三子が生まれた時は妻の入院中に互助会の有料制度を利用してベビーシッターに来て頂いたものです。

知事の育メン休暇宣言の意味をもう少し掘り下げて考えてみませんか?▼公務員社会には大きな思想的欠陥が存在します。それは「前例踏襲と横並び」思想で、よく耳にはするものの実態は深刻です。

役所で育メン休暇など執ろうものなら、その男性職員はたちまち人事当局から”マーク”をされ、その後の人事任用に大きな不利益が生じることは間違いありません。なにせ他の県庁や部署でやっていない、そして前例にないことをしでかした訳ですから睨まれること必至なのです。

そんな実態を知っている湯崎知事が自ら育メン休暇を執って堂々と前例を示したに過ぎないことなのです。▼橋下大阪府知事が『船が沈む時、乗客より先に逃げ出す船長』と酷評したみたいですが、湯崎知事は役人の意識改革をして”沈まない船”を造っているのだろうと思えてなりません。

船長は真っ先に逃げないけれど、沈むかも知れない船なんかには、イワン・アサノヴィッチはとうてい乗る気にはなれません。