少し前の話になるが、12月30日に年末恒例の「日本レコード大賞」が発表された。<o:p></o:p>
大賞を誰が獲ったのか定かではないが、イワン・アサノヴィッチの関心は演歌・歌謡曲にあった。このイヴェント賞から、演歌・歌謡曲部門が主流から外れるようになって久しい。
今年も演歌歌手のヴェテランは小さな部門賞に入っただけであった。因みに坂本冬美(最優秀歌唱賞)・天童よしみ(作曲賞:ふたりの船唄)、そして歌謡界の大御所と言われている北島三郎が「大衆歌謡文化賞」と言う“祭り上げられたような“賞を獲ったに過ぎない。
北島は会場で「風雪ながれ旅:星野哲郎詩・船村徹曲」を歌った。<o:p></o:p>
この曲は昭和55年(1980年)にリリースされたヒット曲であった。ご存じの方も多いと思われるが、詩・曲のイメ-ジは暗く寒く陰に籠もるようなものがあり、誰もが気軽に飛びつくような歌ではなかった。
♪破れ単衣に 三味線抱けば よされ よされと 雪が降る♪
曲の一番の出だしであるが、いかにも寒く暗そうである。
♪泣きの十六 短い指に 息を吹きかけ 越えてきた♪
と続き、雪の北国を彷徨する旅芸人の辛酸を歌った曲であろうことが推理される。<o:p></o:p>
曲の二番になると、詩の趣(おもむき)はガラっと変わってくる。
♪三味が折れたら 両手を叩け バチが無ければ 櫛でひけ♪
♪音の出るもの なんでも好きで かもめ鳴く声 聴きながら♪<o:p></o:p>
はて、「音の出るもの何でも好きで…」などと言うフレーズは、ついぞ演歌の歌詞の中では聴いたことのない一節である。
長い間、ミステリアスな曲ではあったが、これは音や音楽に執念を持った音楽学校の生徒とか何処かの音楽教室の弟子の経歴・育ちを表現したものではなかろうかと推理が行き着いた。
そして曲の三番がドラマチックに展開される。<o:p></o:p>
♪鍋のコゲ飯 袂に隠し 抜けて来たのか 親の目を♪
すなわち、音楽学校か教室かは不明であるが、先生と生徒の禁断の恋が歌われているのである。コゲ飯を隠して運んで来たのだから、きっと貧乏家庭教師と女生徒の、親が認めない恋だったのであろう。
♪通い妻だと 笑った女(ひと)の 髪の匂いも なつかしい アイヤ~♪
と曲は結ばれ、若かりし頃の美しくも哀しい悲恋に終わった歌だったのである。<o:p></o:p>
と、勝手にミステリーを想像・推理したのであるが如何であろうか?
(そんな事いちいち考えないで、カラオケで歌っていたよ、 ですって?ごもっとも…。)<o:p> </o:p>
【書き終わった後で、ネットのWikipediaで調べたところ、作詞家・星野哲郎氏が津軽三味線奏者の高橋竹山氏の生涯を元にしてつくった作品であることが分かった。
曲のヒットは生前中のこと、自分をモデルにした曲の仔細を幅広く受け入れる、竹山氏の奥行きの深さと人間性の豊かさが忍ばれる。】<o:p></o:p>
また、イワン・アサノヴィッチのデリカシーさが伝わってきました。
そういうことを考えて聞けば、北島三郎の歌い方がなんとなく情念のようなものが感じられ、味わい深い歌になりますね。
勉強になります。