イワン・アサノヴィッチの一日  畑と映画の好きな卒サラ男。

政官業癒着体質の某公共事業職場を定年退職。鞍馬天狗・鉄腕アトムの人類愛に未だに影響を受けっ放し。孫には目がない。(笑い)

映画・ラッキーを観て(1)  切ない記憶。

2018-04-22 00:16:25 | 映画
  主演はハリー・デイーン・スタントン。一種のロードームービーである。
主人公のラッキーは高齢の独身男。目が覚めると直ぐに枕もとのタバコに火をつけ、吸い終われば灰皿でもみ消し直ぐには起きようともしない。
そしてヨレヨレの下着のままベッドの上でヨガを幾つかセットにして熟(こな)す。やがて立ち上がったラッキーの下着姿のヨレヨレ感が、そのまま腕や脚の筋肉の衰えと同化している。カメラはゆっくりとスタントンの老体をアップで写し出している。
映画の冒頭で観客は、この映画は派手な立ち回りやドラステイックな台詞のやり取りはなさそうだと印象操作される。そして移住して来たメキシコ人が住むこの町は、たぶんテキサス州あたりかと思われ、街の周りには名も知らぬ大きなサボテンが雑草の如く生えている変哲の無い風景だ。
古びたテンガロンハットを被り行きつけの店でミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲むのが毎朝の日課でもある。店主とは『ロクデナシめ!』とやれば『そっちこそ!』と交わすのが常で、これはスタントンのロスの友人との実際の生活の中から採られたシーンとのこと。

ラッキーは『独り(alone)の語源は、みんな一人(all one)なんだ。』 と変な悟りにも似た言葉を時に放つ。
そして、ふとした拍子に子供時代に撃ってしまったマネシツグミのことを思い出し、胸がはりさけるような気持ちになるという。・・実はイワン・アサノヴィッチも中学生時代に友人の空気銃で、屋根の雀を撃ってしまったことがある。まさか中る訳がないと軽い気持ちで引いた引き金だった。屋根の上で簡単に絶命してしまった雀、60年近く経った今もフト思い出すと切なくなる。
ラッキーは通いなれた行きつけのバー「エイレン」では、いつものブラッデイ・マリアを飲んでいる。女店主のエレインに『だれにも言わないでくれ、怖いんだ。(死が)』と告白する。エイレンは『ええ、わかっているは 』と優しい笑顔で応える。
イワン・アサノヴィッチも70歳代に突入した。・・内心そろそろ自分も終活の歳頃になってきたなと漠然と考えるようになった。

 (映画監督のD・リンチが出演。ペットの陸亀に逃げられた事を告げる。左側)

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