鼎子堂(Teishi-Do)

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『三文紳士:吉田健一・著』

2011-02-22 21:43:22 | Weblog
穏やかに晴れた一日。


引越しで、以前に読んだ本が、再び、手近に戻ってきて(押入れの奥に入り込んじゃったりして、暫く陽の目を見なかった本達)、再読したのが、今日の御題の『三文紳士』。

著者は、現・管政権の二つ前くらい?の麻生太郎元総理の叔父さん(伯父さんか?)で、故・吉田茂総理のご長男。
洒脱で、洗練されて、昭和のエッセイスト(・・・あまりにも、軽いかこの響き・・・随筆家の方がいいのかもしれないし・・・)の至宝ではないか・・・森茉莉さん同様・・・なんてことは、以前にも書きましたかね?

兎に角、面白い・・・。
今で言う、帰国子女で、英語の方が、日本語よりもお得意な方らしいし、父親の吉田茂元総理が、日米和親条約だったか、サンフランシスコ講和条約だったか・・・の折に、現役のネイティブ仕官に対して
『あんたの英語は、なまっている』
と敗戦国側なのに言ってしまう・・・そんな方の息子さんである。
つまらない訳がない。

宰相の御曹司貧窮す・・・などの著作もあって、一国の総理大臣の子息が、鎌倉の陽の当らない貸家で暮らし、口にだすのもおぞましい節足昆虫が現れる、畳の腐らないのが不思議なくらいのじめじめ部屋に引っ越すはめになったり、全権大使(後、総理)を父にもち、贅沢になれた生活から、戦後の食糧不足で、赤貧を味わい・・・そんな話が、軽快に語られている。

貧乏から金持ちになったひとの話と、金持ちから貧乏になったひとの話では、どちらが面白いのだろう?
吉田健一さんの場合、明らかに後者だと思うけれど、氏素性・育ちのよさ・・・貧乏になっても、その矜持は、持ち続けているのがこのひとなのだろうと・・・そんな魅力的な文章なのだ。

森鴎外の長女・森茉莉さんもこのパターンで、お嬢様育ちの彼女が、自らの離婚、両親の死により、赤貧をあらう?『贅沢貧乏』と対を成すのではないかと思ってしまう。
昭和の二大エッセイストを挙げるとすれば、どうしても、このお二人になってしまうのである。

この本も随分長く、じめじめした押入れに仕舞われていたせいか、本のページの天地に、無数のシミができてしまった。
文庫本なのだが、880円と20年くらい前に出版された本なのに、随分と高価だった記憶がある。
・・・でも、とても堪能できる一冊である(値段に見合っている・・・というか・・・なんというか・・・このあたり、貧の下々の庶民感覚ですかね?誇り高く行きたいもんです。タトエ貧でも・・・)。


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