鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『蜩の記:葉室麟・著』

2012-02-08 23:00:22 | Weblog
久々に氷点下から抜け出した朝。


今日のお題。
端正な時代小説である。
硬質な端正さ。
端正な美しさ。

居住まいを正して読まねばいけないのかもしれない。
きちんと正坐して・・・でないと、本篇の主人公・戸田秋谷さまに申し訳が立たぬ・・・(・・・が、しかし、風邪が治らず、相変らず、具合もよくないんで、横になって読ませて貰った・・・)。

風露新香隠逸花

幽閉中の戸田秋谷は豊後・羽根藩・三浦家の家譜編纂を命じられ、十年の歳月後、切腹を申し付けられた身である。
罪状は、藩主側室との不義密通。

全ては、ひととして、正しきことを貫くため、そして、後世に、その真実をしらしめるため、秋谷は、何の申し開きもせず、家譜編纂に精進し、死期を待つ。

秋谷の端正さは、静寂だ。
そして、関わったひと全てを、正しき道へと導くために存在しているようだ。
そのひととなりに触れたものは、己の中に一筋の正しき道を見出す。

心がけの良きものは良き道を、悪しきものは、より悪しき道を辿る・・・。
秋谷には、ひとを良き道へ導く力が備わっているようにみえる。
そして、その真逆をいく家老・中根兵右衛門。
因縁の祖先からの恨みが、かの一族を絡め取る。

よい木には、美しい花が咲き、悪しき木には、腐臭のする実が成る。

郁郁乎文哉

秋谷の残すであろう正しく美しい花は、彼の遺児・薫と郁太郎となって、悪しき実の中根兵右衛門の前途に立ちはだかることを、中根兵右衛門は、既に予見している。

命が終わっても・・・。
かのひとの正しき志は、受け継がれていく。
その咲き誇る美しい花となって。


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