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冬に備えて、午前中は枯れた夏草を刈るなどの庭仕事をしています。
センダンは黄色に色づいて、その後、落葉。
アメリカハナミズキは真っ赤に紅葉しています。
毎日新聞くらし面の「ガラスの天井:女性と自立」が、
11月25日から28日までの4日、毎日掲載されました。
担当記者さんには、田村佳子さんと中村かさねさんも入っています。
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ガラスの天井:女性と自立/1 家族に縛られ自活も困難 毎日新聞 2015年11月25日 時代とともに女性のライフスタイルは多様化し、働き続ける女性も増え、シングルライフを謳歌(おうか)する人も出てきた。しかし、女性が自活せざるを得ないとき、男性と比べ、不利な状況にあることにあまり変わりはない。自立の道を選ぶことができない人もいる。女性の自立を阻んでいるのはなんなのだろう。 朝6時半、洗濯と朝食の準備を済ませ、認知症の祖母(86)の身支度を手伝う。今日もまた、代わり映えのない一日が始まる。 浅子さん(27)=仮名=が7歳の時に両親は離婚し、2歳下の弟と一緒に父親の実家に引き取られた。中学生になると、食事や弁当を作るのは浅子さんの役割になった。理不尽に感じたことはない。祖母の介護も「育ててもらったのだから」と、どちらかといえばすすんで引き受けた。 大学を出て教師になりたいという夢があった。だが「女の子なんだから(大学に行く必要はない)」と、父親が学費を出してくれなかった。仕方なく奨学金とバイト代で大学に進み、一般企業に就職したが、セクハラやパワハラで職を転々とするはめになった。家庭と仕事の両立も重くのしかかり、思うようには働けなかった。 弟は違った。父親が学費の一部を負担して大学を出て教職に就き、同居していた時も、給料は家計に入れなかった。同じように祖母に育てられたはずなのに、介護も一切手伝わない。 61歳の父親の収入だけを頼りにする生活はギリギリだ。祖母の年金は介護や医療費に消える。職歴が長い父親が仕事に専念し、自分が家庭責任を引き受けた方が合理的だと頭では理解している。 「でも、なぜ私だけ?」 結婚、出産、昇進。友人たちが人生の階段を上る様子を知るたび、やりきれない思いでいっぱいになる。結婚すれば何かが変わるだろうか。 「夏目漱石の『こころ』って知ってますか? 時代に取り残されて死にたくなる。そんな気持ちです」 ●6割が非正規雇用 かつて女性の経済的支えとなったのは、結婚までは父親、結婚後は夫だった。だが男女ともに雇用環境が厳しくなり、生涯未婚率が上昇し続ける中で、それは期待できなくなっている。 一方で、女性は働くことで十分な収入を得て身を立てることも難しい。平均年収はどの年代でも300万円を超えることがほとんどなく、年齢とともに上昇する男性の年収とは対照的だ。働く女性が増えたといっても、その約6割は非正規労働者だ。 大阪で女性や若者の自立支援を行う一般社団法人「キャリアブリッジ」の白水崇真子顧問は「男女で決定的に違うのはこの点」だと強調する。 白水さんは2011年から2年間、大阪府豊中市の定時制高校で生徒の自立支援に携わり、女子生徒の支援の難しさを痛感した。「生活困窮の家庭では、女の子は家事や弟妹の世話などを子どもの頃から引き受け、バイト代も家に入れる生活を強いられることがある。大人になっても自立できる仕事やロールモデルは少なく、家事や収入を期待する家族の反対もあり、次第に家族や男性にからめ捕られていく。自立した未来を描けるよう、応援してくれる大人がいる『家』が必要なのです」 対照的に、男子なら就職して自立することを当然と考え、家族もサポートに前向きだったという。 ●介護、病気、離婚… 美奈子さん(51)=仮名=も家族に振り回された半生を送ってきた。 夫の希望に従い、1991年の結婚を機に、マスコミ関連の会社の正社員からアルバイトに切り替えた。月収は激減し、夫からは毎月10万円を渡されたが、家賃や光熱費、食費に消えた。 同じ年、実家の父親が倒れた。うつ病を患う母親から「仕事をとるか、父親をとるか」と迫られ、仕方なく仕事を辞めた。朝、夫に弁当を作って送り出し、その後は実家で家事の手伝いや父親の看病をする。帰宅して夕食を作り、夫を待つ。その繰り返しだった。 「落ち着いたらマスコミの世界に戻りたい」。「いつか」を夢想するのが、心の支えだった。まだ20代だった。 だが想定外の出来事はその後も続いた。夫のうつ病と退職、自身のがん、夫の暴力、そして離婚−−。病気で働くことができなくなり、今は生活保護を受給しながら一人で暮らしている。 ●職場復帰の夢遠く いずれにも共通するのは、家族に自立を阻まれ、家を飛び出し働いて自活することも難しいという点だ。 横浜市を拠点に2010〜13年行われた若年困窮者支援事業で、相談者742人が抱える問題の種類などを男女別に分析した結果がある。男女で最も差があったのは「家族や地域との関係をめぐる問題」で、男性の25%に対して女性は48%だった。同様の調査結果は他の自治体にもある。 「子ども、介護、病気などを抱えると、無理なく働ける職場がない。女性だと、40代を超えると書類選考すら通らない」。調査に関わった一般社団法人「インクルージョンネットかながわ」の鈴木晶子代表理事は、女性の生きづらさをこう説明したうえで、「生活困難は、ある特定の人たちの生き方の問題ではなく、女性なら誰もが陥る可能性のある落とし穴です」と指摘する。 「今思えば、結婚や看病で仕事を辞めるべきではなかった。辞めたことで『頼ってもいい人間だ』と家族に思わせてしまった」 美奈子さんは福祉の手を借りながらではあるものの、ようやく自分の人生を歩けるようになった。だが、夢にみた「いつかマスコミの世界に戻る」日はもう来ない。今、迫りくる自分の老後について不安とあきらめを抱えている。 ◇ この連載は中川聡子、中村かさね、吉永磨美、田村佳子が担当します。=つづく |
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ガラスの天井:女性と自立/4止 生き抜く力、学ぶ機会を 毎日新聞 2015年11月28日 若い時期から、家族との関係や雇用状況の厳しさなどから、知らず知らずのうちに自立が難しい状況に追い込まれる女性たちがいる。その背景にあるのはなにか、自立に向かうにはどうしたらよいのか、女性の貧困問題などに詳しい、東京学芸大の山口恵子准教授に聞いた。 ●「無償のケア」担う −−女性の貧困や自立しにくさは「見えにくい」といわれています。なぜでしょうか? 女性は無職で困窮していても、家族に扶養され、家事や家族の介護など、家の中での役割を果たしていると、外から見れば、家族で支え合い、生活がうまく回っていると思われがちです。 さらに、女性自身も周りも「いつか、結婚するだろう」「夫に扶養されるだろう」と思い、低収入や無職であっても、そのことが「問題」だとみなされてこなかった、というのもあります。 家族のケアは一方的に女性が担うものではないはずですが、無償のケアをずっと担わされることで、自立の基盤を失うことにつながる場合もあります。 −−「女性は自立しなくてもいい」という考えはどのように根付いてきたのでしょうか? 日本では戦後、男性が外で仕事をして、女性が家事や育児をする「性的役割分業」を推進し、社会制度全般が「男性稼ぎ手モデル」を軸にして作られてきました。一例ですが、会社員らに扶養される専業主婦向けの年金の第3号被保険者制度▽所得税の「配偶者控除」−−などで、主婦をする女性には厚遇で、税制度や年金制度で有利に働くものでした。未婚、単身女性は、その「枠外」にあるため、もともと生きづらい構造の中にいるのです。 そもそも自立を妨げる背景には、社会において、女性の地位を低く見る考え方が根強くあり、制度や人間関係の中にも深く入り込んでいると考えられます。 ●社会的損失大きく −−結婚がうまくいかなかったり、家から出られなかったりした場合はどうなりますか? 実家暮らしで、収入のある親が健在なうちはいいですが、親が介護を要するようになり、自分が離職せざるを得なくなれば収入が途絶えます。さらに親が亡くなると、たちまち貧困に陥るということも考えられます。 経済的に自立できない女性が増えると、一個人の問題ではなく、社会的に大きな損失につながることが予想されます。 −−離婚し、一人で子育てをする母親の自立のしにくさが社会問題化していますが、どのような支援が求められているでしょうか? 必要とされるサポートは人によってさまざまです。一手に金銭的支援を受ける生活保護のような制度だけでは対応しきれません。 例えば住居の割り当てや賃貸料の補助など、住まいに関する多様な支援があれば、自立できるケースは多いと思います。住居費が支払えないために、生活保護を受けざるを得ない人もいます。公営住宅の数を増やし、住宅支援制度を充実させて、シングルマザーに限らず、支援を必要とする人たちに、住まいを確保する最低限の生活保障を進めるべきでしょう。 ●学校教育見直して −−困窮し、不当な扱いを受けても、声を上げられない女性が後を絶ちません。 社会的な支援を利用する知識に乏しい現状があります。相談機関の存在やその利用方法、労働や福祉の法律の知識など、いわゆる実践的な「生き抜くための力」を学ぶ機会を、学校教育の中にもっと設けるべきだと思います。【聞き手・吉永磨美】=おわり ============== ■人物略歴 ◇やまぐち・けいこ 東京学芸大教育学部准教授。専門は都市社会学。主な著書に、共著で小杉礼子・宮本みち子編「下層化する女性たち」(勁草書房)。 |
ガラスの天井:女性と自立/2 低収入苦しむ母子家庭(毎日新聞 2015年11月26日) ガラスの天井:女性と自立/3 賃金格差が年金に反映(毎日新聞 2015年11月27日) |
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