わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

懐石道具 (焼物鉢 2 備前)

2010-06-19 13:04:13 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
前回に続き、茶の湯の、懐石道具の、焼物鉢について、述べます。

 懐石料理は、普通は茶の湯の席で、お茶を頂く前に、出される物です。

 茶会の席で、空腹のまま、刺激の強い茶を、飲む事を避け、茶を美味しく味わう上で、差し支えのない

 程度の和食料理が、供されます。

 ・ 一汁三菜が、基本に成りますが、一汁三菜とは、ご飯に汁物(味噌汁)、おかず3種

   (主菜1品、副菜2品)で、構成された献立です。

 ・ おかず三品は、膾(なます、生魚を切り刻み、酢で味付けた物)、煮物、焼き物の三品が、基本です。

 ・ 焼き物とは、食材を焼いて、調理したものです。

   焼物には、魚の切り身を、主として用いますが、野菜、鳥肉等も有ります。

   その茶事の時期にあって、最も味の良い、旬(しゅん)の物を使うのが、習いとなっています。

   魚の場合は、骨を除き、大きさや形も、取り分け易く、食べや易い様に、配慮しています。

 ・ 懐石料理には、「旬の食材を使う」、「素材の持ち味を活かす」、「親切心や心配りをもって調理する」

   と言う、三つの大原則があります。


 前置きが長くなりましたが、本日の本題に入ります。

 ご存知の様に、備前焼は、無釉の焼締の、陶器です。

 釉薬を掛けない器は、窯の中で、燃料である赤松の灰が、自然に掛かり、胡麻(青、黄、カゼ)、

 さんぎり、榎肌(えのきはだ)、等の他、火襷、牡丹餅などの装飾が、施され、窯の中の窯変と、

 あいまって、味わい深い焼き物と、成っています。

 ・ 料理は、素材もさる事ながら、見た目の美しさも、大切です。

   備前焼は、主張しすぎる事なく、料理を引き立ててくれる、器です。

 ・ 備前焼の手鉢は、有名で、桃山時代の、名品も残っています。

   三日月型や、円形の鉢が多く、把手の断面は、丸又は、平らで、複雑な器形は、ありません。
 
   脚を付けず、「ベタ」が特徴です。

 1) 牡丹餅手鉢 桃山時代 径:20.7 X 24.6cm、高さ:5.9cm

   形は三日月で、深さは浅く、轆轤挽き後に、変形した様に、見えます。

   鉢の中央の縁に、やや平たい把手が、架けられています。

   器の内側に、牡丹餅(ぼたもち)が6個あり、赤味が強く出ています。

 2) 手桶型鉢 江戸時代 径:23.0 高さ:14.8cm

   轆轤で円筒形に挽き、把手を付ける部分の、2ヶ所を残し、他の縁を切り取ります。

   残した部分に把手を、差込み、形作っています。やはり、内側に牡丹餅が、付いています。

 3) 備前焼の使い方

   ① 無釉ですので、器肌が滑らかではありません。

     その為、食卓や、テーブル等に、傷が付く事があり、敷物を使用する場合も有ります。

   ② 電子レンジで温める事は、大丈夫ですが、オーブンで温めるのは、極力控えます。
 
     又、直火に掛けないで下さい。急激な温度変化は、「ひび」が入ります。

   ③ 器を水で濡らすことにより、油分や臭いの付着を防ぎます。出来れば10~15分程、

     水に漬けて置きます。

     又、色が鮮やかになり、美しく見えますので、料理を盛り付ける時に、最低でも、

     さっと水に濡らし、簡単に拭いてから、料理を盛って下さい。

    ④ 万一、器が水漏れする場合は、米ぬかに浸して1~2晩おくか、漏れの箇所に米粒を塗り

      潰してみてください。

    ⑤ 使用後(収納前)は、洗剤で洗う必要はありません。

      水洗いで、汚れをキレイに洗い流し、しっかりと乾かす事が重要です。

      良く乾燥させないと、カビや嫌な臭いの原因となります。

    ⑥ 油もの、しつこい汚れ、嫌な臭いがする時は、洗剤又は、漂白剤を使って洗います。

      これで、ほとんどの臭いや、カビを綺麗に取ることが出来ます。

    ⑦ 備前焼の器は、使い込む程に、表面の細かい角が取れ、色合いも、柔らかく成ります。

    ⑧ 尚、新品の食器を、最初に使用する時は、一度煮沸すると、器が丈夫になります。

      ・煮沸(湯煮)の仕方は、陶器を、水をたっぷり入れた、鍋の中に完全に沈めて、

       水より焚き始めます。10分間程度沸騰させます。自然に冷ましてから、取り出します。

以下次回、(焼物鉢、古染付)に、続きます。
 
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懐石道具 (焼物鉢 1 織部)

2010-06-18 22:35:35 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶の湯の、懐石道具の、焼物鉢について、述べます。

焼物鉢は、向付や、煮物碗と共に、一汁三菜の内、三彩を入れる器と、成ります。

 ・焼物は、大きめの鉢に盛った料理(焼魚など)を、取り回します。

  取り箸は、青竹か白竹製で、中節の取り箸を用います。

  客は鉢から、銘々の食べる分を、取り箸で取り分け、向付か煮物碗の蓋に取ります。

形や、様式などで、分類すると、以下の様に成ります。

1) 焼き魚を入れる器で、蓋が付き、料理が冷めるのを、防ぐ様に出来ています。

2) 蓋が無く、取っ手が付いた、いわゆる、手鉢も有ります。

3) 板皿の形の物、

4) 古染付け、古九谷、金襴手など

以下順番に、述べていきます。

1) 蓋付きの焼物鉢(織部焼き)

  代表的な、蓋付きの焼物鉢に、織部焼きが有ります。

  ① タタラ作りで、型を用いて作る方法が、多いです。

    平底で、四隅に、半月型の脚が、付いています。

  ② 形は、扇面(せんめん)、四方(よほう)、四方入隅(いりすみ)、木瓜(もっこう)型などが、

    代表的な物です。

    注:四方入隅とは、正方形又は、長方形の四隅が、内側に凹んだ形です。

      又、轆轤挽き後に、四隅を凹ませて、形作る事も、有ります。

      木瓜型とは、楕円形の四隅が、内側に窪んでいる形で、四葉のクローバーの様な、

      形をしています。

  ③ 大きさは、縦横とも20~25cm程度で、高さが10~12cm程度です。(蓋の取っ手を含む)

  ④ 織部の魅力は、

   ) 緑(青織部釉)と、白地に塗り分け、白地に鬼板(鉄絵)で、模様が描かれています。

   ) 器の側面、蓋の上面に、模様が描かれ、蓋の「つまみ」の形にも、工夫が凝らされています。

   ) 蓋を取ると、器の内側や、蓋の裏側にも、模様が描かれ、外側と内側では、全く異なる意匠に

      成っています。外から見た面白さと、蓋を取った時の、内側の意匠の意外さが、蓋付き織部の

      魅力に成っています。

   ) 絵柄も意表をつく物も、多いです。

      幾何学文様や、亀甲紋様、蔓草(つるくさ)紋様などの、定番の他、蟷螂(かまきり)、法螺貝、

      扇、間道(かんどう)、石畳など、変化に富んでいます。

 2) 織部手鉢について

    ① 四大手鉢と呼ばれる、手鉢には、古染付け、高取、備前、そして織部があります。

    ② 把手(取っ手)が付いているので、使い易い形に、見えますが、実際は、この部分は、かなり

      脆弱で、破損し易い、形状に成っています。

      それ故、取り扱いは、把手を持たず、両手で器を、受ける様にします。

    ③ 把手は、正方形や長方形の、対角線上や、向かい合わせの、辺に取り付けます。

      把手までの高さは、約15~18cm程度です。

    ④ 把手の形も変化に富んでいます。

      透かし彫や、印花紋、変形型などが、有ります。

    ⑤ 織部模様が、器の内側と、側面に描かれています。食事と共に、料理が減少していくに従い、

      絵柄が、表れると言う、嗜好に成っています。

以下次回に続きます。
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オーブン陶芸 3 (注意事項2)

2010-06-17 22:00:26 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
前回に続き、オーブン陶芸の、注意事項の話を、致します。

 ④ 焼成の注意点 

   家庭用オーブンで、焼成できますが、オーブンに入れる方法、温度、時間などに、注意がいります。

   尚、この粘土を焼く為の、専用のオーブンも、市販されている様です。

     (なるべく、家庭用と一緒のオーブンを、使わない様に、すると良いとの事です。)

  ) オーブンは、温度が設定出来る機種を、選びます。

    (温度設定が、出来ない物では、高い温度に成ってしまう、機種も有ります。)

  ) オーブンに、アルミホイルを敷き、その上に、作品を置きます。

    「焼きむら」を、無くす為です。

  ) 余裕を持って、オーブンに入れますが、大きな作品で、ぎりぎりの場合には、作品の上にも

     アルミホイルを被せたり、縁に巻き付けたりして、「焼きむら」を防ぎます。 

  ) 焼く温度は、160~180℃で、大きさなどで、焼く時間は変わりますが、焼き上がると、

     乾燥前の粘土の色より、濃くなります。時間は10分~60分位です。

    温度が高過ぎると、焦げて煙りや、匂いが出るだけでなく、発火の恐れもあるので、

    温度は必ず、守ります。

    尚、低めの温度(120~130℃)で長い時間を掛けて焼くことで、丈夫な仕上がりになる様です。

  ) 焼き上が直ぐの作品は、熱くなっていますので、十分注意が必要です。

 ⑤ 水漏れ防止、光沢を出すには

  ) 水ものを入れる食器、花瓶などや、光沢を出したい作品は、作品を冷ましてから、

     防湿防水コート剤等を、筆で塗ります。(透明に、仕上がります。)

  ) コート剤として、藍色の物が有り、着色したりして、装飾に使います。

  ) 乾燥後、100~120℃で、30分~60分程、さらに加熱します。

     一度では、水漏れを完全に防げない場合には、もう一度、コート剤を塗り、オーブンで、焼きます。

 ⑥ その他の注意点

  ) 一般の粘土の様に、釉薬(うわぐすり)を塗る事は、出来ません。

     作品に、色を付けたい場合には、アクリル絵の具が、向いています。

     但し、食器など、食物を盛る物には、使わない方が、安全です。

     又、置物の様な物は、ニスを塗る方法もあります。

  ) 完成後の注意
   
    a) 金属たわしで、洗う事は、避けます。(傷が付きます)

    b) 電子レンジや、直火での加熱は、しない方が良いです。

    c) 焼成後でも、粘土の色落ちが、起こりがちです。

      色の濃い土ほど、色落ちしますので、色落ちが気になる方は、淡い色の粘土を、使って下さい。

    d) 完成後に「ひび」が、入る事が有ります。原因は、成形時に、土を締める力が弱い為と、

      焼成温度が低すぎた為、起こりがちです。

      土は練らなくても、直ぐに使えますと、唱っていますが、練ってから使うほうが、安全です。

    e) 一般の陶器より、衝撃に弱いですので、重い物を載せたり、皿などは、何枚も重ねないで、

      下さい。割れる恐れが、有ります。

以上にてオーブン陶芸の話を、終わりにします。

    参考:オーブン陶芸 伊藤珠子、他、著 「誠文堂新光社会」

 次回は、懐石道具の続を、お話します。

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オーブン陶芸 2 (注意事項1)

2010-06-16 21:52:37 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
オーブン陶芸の、話を続けます。

2) オーブン陶芸の注意事項

 ① 粘土について、

  ) 粘土の種類は、一般の粘土に比べ、種類が少ない様です。

     土の色や、焼き上がりの色も、白くは有りません。

     白くするには、専用の白化粧土を、使う必要が有ります。

  ) オーブン陶器専用の土は、一般の土の10~15倍程度の、値段がします。

     購入単位も、400g、1Kg、10Kg などが有ります。

  ) 土の取り扱いは、一般の土と、同じ様に、取り扱います。

   ・ 即ち、乾燥すると、硬く成りますが、水を加えれば、軟らかく成ります。

   ・ 土同士を、接着させる場合には、「ドベ」を使います。

   ・ 削り作業で、出た土は、集めて、軟らかくして、再利用できます。

     但し、顔料(弁柄など)を除く、土以外の、不純物(ほこりや、塵)は、混ぜない(混入させない)

     事です。

   ・ 色の違う土は、混ぜる事は可能ですが、色はどんどん黒く成ります。

   ・ 色の濃い粘土は、色落ちし、他の土を、汚す恐れが有りますので、十分注意します。

   ・ 電動轆轤(ろくろ)で、作品を作る際には、轆轤専用の土を使うと、作りやすいです。

  ) 土の収縮率は、およそ1割程度です。(一般の土は、12~13%程度が多いです)

     それ故、縮みを考えて、大きく作る必要が、あります。
 
 ② 乾燥について

   出来上がった作品は、完全に乾燥させてから、オーブンで、焼成します。

  ) 作品の肉の、厚さによって、乾燥に掛かる日数が、変わりますが、大体3~7日程度です。

     乾燥は、風通しの良い、日陰で行います、乾燥が進むと、土の色が、白っぽくなってきます。

  ) 乾燥不十分で、オーブンに入れると、作品に「ヒビ」が、入り易いです。

  ) 作品の向きを、変えたり、上下逆さにして、全体を均等に、乾燥させます。

     一方だけ乾燥させると、作品が、歪んだりしますから、注意が必要です。

  ) 特に板物は、狂いが生じやすいので、乾燥が終わるまで、支えが必要な場合があります。

 ③ 生乾きの状態での装飾

   完全に乾燥してしまうと、変形させたり、削ったりは、出来なく成ります。又どんな装飾を、

   施すかによって、乾燥状態が、代わります。

   装飾方法は、白化粧、印花紋、搔き落とし、象嵌(ぞうがん)、面取り、透かし彫、貼り付け紋

   削り出し等が有ります。又、カップの取っ手も、この段階で、行います。

   (これらは、一般の陶芸と、同じ技法です。)

 ④ 焼成の注意点 

以下次回に続来ます。

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オーブン陶芸 1

2010-06-15 22:41:03 | 陶芸四方山話 (民藝、盆栽鉢、その他)
オーブンで焼成し、実用に耐える程度に、強度が出る、「オーブン陶芸」と、言われる焼き物が、有ります。

私の教室の、生徒さんから、「オープン陶芸」は、どうなんですか?と質問されましたので、

調べてみる必要を感じ、調べた結果を、述べたいと、思います。

 (尚、私が実際に、製作した経験は、ありませんので、文献などを、参考にしています。)

1) 家庭用オーブンで、焼く焼き物

   陶芸で一番の問題は、粘土を焼いて、強度を出す為、陶芸用の窯が、必要な事です。

   その窯を自分で用意するか、陶芸教室や、陶芸サークルなどで、焼いてもらう事に、成ります。

   オーブンで焼けると成ると、大変便利になります。

   但し、粘土や、作り方、水漏れ防止策など、注意する必要が有ります。順次お話致します。

 ① 粘土は、専用粘土を使います。(一般の粘土は、使えません)

   オーブン陶芸用の、粘土は、陶芸材料店や、インターネットで、購入できます。

  ) 粘土の種類

     大きく分けて、手捻り用と、轆轤用に分かれます。

   a) メーカーによって、違いは有りますが、手捻り用は、「工作用」、「黒木節」、「紅陶」が有ります。

     違いは、土に黒、又は、紅色が付いているかどうかの、違いです。

     これらの土は、混ぜ合わせて、使う事が可能です。

   b) 「ろくろ用」の土は、轆轤成形が可能ですが、手捻りにも使えます。

   c) 「エコ」の土も有ります。即ち、半年から1年土に埋めておくと、自然な土に帰る物です。

   粘土は、練らなくても、直ぐに使用出来ますが、練ってから作業する事を、勧めます。

 ② 作り方

  ) 道具(用具)は、一般の陶芸に使う物と、同じです。

     即ち、竹ヘラ、剣先(針)、切り糸、弓、なめし皮、タタラ板、カンナなどです。

  ) 作り方は、一般の粘土で作るやり方と、同じ事が、出来ます。

    即ち、玉作り、紐作り、タタラ(板)作り、くり抜き作り、轆轤成形などです。

  ) 装飾は、練り込みや、化粧掛け、搔き落とし、彫刻などを、施す事も、可能です。

  ) 土の収縮率は、約10%程度ですので、その分大きく作ります。

     一般の粘土に比べ、焼き締まりが小さく、強度的に、やや弱いので、やや厚く(最低で5mm位)

     作ります。

 ③ 乾燥

   肉厚の差によって、乾燥は3~7日程度、必要です。乾燥するに従い、土の色は、白っぽく

   変化します。十分に乾燥してから、焼成に掛かります。

 ④ 焼成

   オーブンに、アルミホイールを敷き、その上に、間隔を開けて、置きます。

   焼き斑(むら)を、無くす為です。

  ) オーブンは、温度設定の出来る、機種で130~180℃程度で、20~50分掛かります。

    高い温度になると、煙や焦げが、発生します、
   
  ) 釉薬(うわぐすり)は、掛けられません。それ故、焼いた肌が、土の感じで、ざらつきます。
    
  ) 焼成した後でも、ある程度水を通します。(水が漏れます。)

    水を入れない、置物や、植木鉢などは、このままの状態で、使用できます。

 ⑤  焼成後の作業

  ) 水を入れて使う場合には、一度焼成後、コート剤を筆(刷毛)で塗り、乾燥後、100~120℃で

    再度焼成します。

  ) 焼き上がった作品には、アクリル絵の具や、水彩絵の具、油性ぺんなどで、色を付ける事が、

     出来ます。但し、これらの絵の具類で塗った、食器は使わない方が、良いでしょう。

     (絵の具には、人体に有害物質が、含まれています。)

以下次回に続きます。

 
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懐石道具 (向付6、金襴手)

2010-06-14 21:41:23 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
骨董好きで、器好きなら、まず最初に、欲しくなるのが、小皿や向付との事です。

懐石料理という、食事形態から、生まれた向付ですが、使い道も、多岐にわり、煮物や珍味を、

盛り付けたり、酒器としても使われます。筒形や縁が開いている物、染付や色絵の物、白磁に、

赤や金箔を貼り付けた物(五彩、金襴手)など、形も大きさも、色も様々です。

1) 江戸の元禄年間(1688~1703年)に成ると、裕福な商人が、成長してきます。

 彼らは、茶の湯に親しむと共に、より絢爛豪華な、金襴手と呼ばれる、色絵磁器に、注目してきます。

 (金襴手の名称は、我が国で、呼ばれている名で、中国では「そう金」と、言うそうです。)

 当初は、中国の明王朝、嘉靖年間の、景徳鎮の民窯で作られた、古赤絵金襴手が、珍重されますが、

 やがて我が国の、伊万里でも、製作される事になり、両方の器が、使用される様に、成ります。

 特に、景徳鎮の金襴手を、所有する事は、大変名誉な事とされていました。

 ・ 現在でも、茶席開きの際には、金襴手の向付を、使う事が習慣(決まり事)に成っているのは、

  その名残です。

  尚、中国製の磁器は、製作された時期(1522~1566年)より、はるか後の、江戸時代に使用され、

  侘寂の茶懐石に、豪華な彩を、もたらします。

  桃山時代から、江戸時代初期に、到来し珍重されました。

2) 景徳鎮の金襴手の種類

  金襴手とは、色絵付けされた上に、金箔や、金泥を貼り付け、金色に仕上げた、様式です。

  金襴手には、赤絵金襴手、色絵金襴手、萌黄(もえぎ)地金襴手、瑠璃(るり)地金襴手等があり、

  その他、赤地、白地、黄地、緑地などの、金襴手が有ります。品数の多いのは、白磁の上に、

  濃い赤絵を、上絵付けし、金箔を貼った、色絵金襴手で、金箔色絵磁器も、造られています。

  純金箔を、切り抜き、一枚一枚の文様を、張り付け、焼き上げます。

 (伊万里焼きでも、金を使っていますが、金泥を使っている為、光沢が鈍くなります。)

3) 金襴手の向付

  向付の内側は、白地を多く残し、見込みのみに、染付け模様を、付けます。

  その為、料理の色と、喧嘩せず、料理が映えます。それ故、茶人達に、好まれた物と、思われます。

  特に、赤地に、唐草紋様が付いた物が、多いです。地紋は、赤地の他に菱繋(ひしつなぎ)、

  宝尽紋(たからつくしもん)、や梅に小禽図(しょうきんず)が見られます。

4) 金襴手の名品

  ① 緑地金襴手茶碗 5客(口径:11.9~12.2、高さ: 6.2~6.4) 明、景徳鎮窯 重要文化財

   名前は茶碗ですが、向付として、使われたと、思われます。

   この金襴手は、萌黄金襴手と呼ばれ、特に貴ばれている物で、口縁の内側には、染付けの、

   欅文が廻らされ、見込みに丸紋があり、外側は、萌黄釉の地に、金箔押しで、牡丹唐草が、

   表現されています。

  ② 色絵金襴手向付 5客(口径:13.8 高さ:7.0)景徳鎮窯

   外側の赤絵の中に、丸い窓を抜き、その中に、色々な仙人を、表情豊かに、軽妙なタッチで

   描がかれています。見込みの白磁は、透明で、染付けが華やかに、浮き出ています。

5) 金襴手の技法は、九谷焼でも、見られます。

   慶応年間に、大聖寺藩が招いた、京の永楽和全によって、本格的な技法が、九谷焼に伝えられます。
 
以上にて、向付の話を、終わります。
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懐石道具 (向付5、古染付)

2010-06-13 23:00:15 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
染付けとは、呉須(コバルトを主にした、顔料)で、下絵を描き、施釉後、焼成し、藍色、青、または青紫に

発色させた、磁器のことです。

中国では、元代に盛んになり、青花(せいか)・釉裏青(ゆうりせい)と言います。

日本では、『染付け』と呼び、藍一色で、描かれた食器の、総称になっています。

どんな料理にも合い、使い易く、現在でも、多くの人に好まれています。

日本では、江戸初期の伊万里焼に、始まります。

 (現在では、手描きは少なく、転写紙を使った、作品が多いです。)

・ 古染付けは、1620~1627年まで、中国の明の時代の景徳鎮で、製作された、磁器の器の事です。

 (年号が、器に記されている為、確認できます。)

1) 日本からの注文品

  古染付けは、大量生産の、碗や皿の他、茶人による、我が国からの、注文品で、懐石道具が有り、

  後者が、人気の高い作品と成っています。現在でも、多くの名品が、伝わっています。
 
 ① 古染付けの、向付の特徴
   
  ) 陶器をモデルとした、発注品なので、磁器としては、かなりの厚手と、成ります。

  ) 形は、型抜きで、成形されています。

     但し、型を外した後、作品を、一個一個手で、歪ませている為、揃いの器でも、若干形が

     異なります。又、染付けの、絵付けも、各々変えている為、同じ物は、見受けられません。  

 ② 古染付け、向付の形

   向付の形は、実に多様で、変化に富みます。背の高い物、低い物から、蓋の付いた物や、

   動物、植物などを、型取った物など、色々な形をしています。

  ) 動物では、獅子、鳳凰、象、馬、牛、兎、猿、鶏、蝉、蛍、蝶などで、

     魚貝類では、魚、海老、法螺貝など

     植物では、 筍(竹の子)、木の葉(一葉向付)、菊花、牡丹、茄子(なす)、蓮の葉、

     桃果などで、その他、器物などでは、扇面(開扇、半開扇)、琵琶(びわ)などが、有ります。

  ) 古染付けの文様

    人物、花鳥、山水などで、獅子、鳳凰、龍、鶴、千鳥、鷹、鹿、猿などが、モチーフになって

    います。

  ) 手描きによる、絵付けで、濃淡を付けて、描いています。

     又、吹墨(ふくずみ)と言う、技法を使った、作品も作られています。

以下次回に続きます。

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懐石道具 (向付4、唐津)

2010-06-12 23:07:38 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
唐津焼は、佐賀県唐津市で、焼かれる陶器で、古くから「一楽、二萩、三唐津」として、

茶器として名高いです。

和物の向付には、美濃焼以外に、唐津焼、京焼などが、有ります。

唐津の向付は、美濃焼、特に志野の影響を、強く受けています。と言うより、志野の写しとも思われる、

作品も多いです。

1) 唐津向付の特徴

  ① 志野の向付は、四方形が基本です。口造りも、志野の向付と同じ作りに、なっています。

  ② 志野との違いは、粘土と、釉の違いで、雰囲気も、大分違いが有ります。

    即ち、白い土や、白い釉の志野に対して、色の付いた土と、唐津釉による、詫びた感じと、

    成ります。

  ③ 志野は、紐造りで、3~4個の脚が付いていますが、唐津では、削り出しによる、

    輪高台となります。高台や、畳み付き周辺には、釉をかけません。

    又、削りも、縮緬皺(ちりめんじわ)にし、削り痕を残します。   

  ④ 唐津焼きには、以下の方法が、あります。

    絵唐津: 鉄絵具で絵付し、長石釉を掛けます。唐津特有の、褐色の焦げが、表われます。

         絵模様は、志野と同じ、草花で、縁取りには、桧垣文様が、描かれています。         

    朝鮮唐津: 黒飴釉と、藁灰釉や、海鼠(なまこ)釉を、掛け分けた物です。

         その逆に、海鼠釉の上に黒飴釉を、掛けたりした物です。
          
         この技法は、全国の諸窯などに、数多くありますが、朝鮮唐津は、黒飴釉の部分と、

         海鼠釉の部分とを、別々に掛け分けて、やや重なり合った部分が、高温でガラス化し、

         黒の部分と、白の部分が溶け合い、絶妙な色と流れ具合の、変化が特徴になります。

    斑唐津: 藁灰釉が、白濁に斑(まだら)に成るものです。

         燃料の松灰が降りかかり、青い斑文が出る所から、この名があります。

         白灰色の釉と、飴釉が斑にかかった物や、青みを帯びた、むらのある白濁色の

         灰釉が掛かった物を言います。

2) 唐津向付の種類

   織部や、古染付けより、種類は大幅に、少ないです。

   筒向付(のぞき)、楕円平向付、片口深向付、粉引向付、貝型向付などが、あります。

以上で、唐津の向付の話を、終わります。

次回は、(古)染付けの、向付に付いて、述べる予定です。
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懐石道具 (向付3, 織部)

2010-06-11 22:37:17 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
向付の話を、続けます。

織部は、染付け(後述予定)と共に、人気の有る向付です。

1) 織部の向付

  美濃の焼き物も、黄瀬戸から、志野、織部へと発展して行きます。

  黄瀬戸の円形、志野の四方形、そして織部では、不定で、形が複雑になり、

  絵柄も、多様化してきます。

 ① 織部の向付の特徴

  ) タタラ造り(板造り)

   形が不定形ですので、轆轤では成形せず、タタラを、型に押し付けて、作品を造ります(型起し)。

   蚊帳などの、布を型に置きますので、布目の痕が付いているのが、普通です。

  ) 形と絵付け

   ・ 青織部と呼ばれる、緑釉(銅釉)が掛けられ、余白部分に、鉄絵が描かれ、鉄絵の部分に、

     透明性の、釉が掛かっています。文様も動物文、植物文、幾何学文、抽象文など色々あります。

   ・ 黒織部と呼ばれる物は、黒い釉が、青織部の替りに、掛けられています。

   ・ 鳴海織部は、白土と赤土を、継ぎ合わせて、成型した物です。

   ・ 総織部は、青織部一色の、釉を掛けた物で、鉄絵はありません。

     形と絵付けは、多様で、具象的なものから、抽象的な物まで、実に多くの種類が有ります。

  ) 代表的な、向付の形

     誰袖(たがそで)、州浜(すはま)、扇面(せんめん)、木瓜(もっこう)、分銅(ふんどう)、

     松皮菱(まつかわびし)、結文(むすびぶみ)、隅切(すみきり)、舟形、田楽(でんがく)、

     三亀甲(みつぎっこう)、六角、八角、円形(轆轤成形)などの他、手付きの向付など、

     多種に渡ります。

   ・ 誰袖: 衣桁(えこう)に架けられた、衣の袖を、連想させる形から、名が付けられました。

   ・ 州浜: 浜辺と入り江の姿を表し、 三角洲など浜辺に出来る、島形の洲の事で、その形に

     似ている為、名付けられました。

   ・ 扇面: 扇(おおぎ)型をした器で、扇を二枚重ね合わせた、形もあります。
     
   ・ 木瓜: 胡瓜(きゅうり)の、切断面の様な、形で、花菱の周囲に四鐶(かん)を巡らし、

         これを、四葉で囲んだ物が、基本的な形です。

     その他の形についての、説明は省略します。興味の有る方は、調べて下さい。

  ) 形と大きさ

     形が不定形ですので、寸法が表示し辛いですが、 一般に、長径が12~15cm、高さが5cm

     程度です。

     底は、広く平坦で、3~4個の、半月状の、脚が付いています。
  
    ・ 筒向付(深向付)と呼ばれ、深い為、中の料理が見えない所から、“のぞき”とも言われる

      物もあります。形も色々有り、細長く、高さも8~10cm程度です。

      又、蓋付きの、向付も有ります。
    
次回に続きます。
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懐石道具 (向付2、黄瀬戸)

2010-06-10 22:55:34 | お茶と「茶の湯」と茶道具(茶陶)
茶道具の、向付の話を、続けます。本日は、「黄瀬戸の向付」です。

懐石道具の中で、飯茶碗や、汁茶碗など、漆器製の器が多く、陶磁器製の向付は、大変目立ち、

華が有ります。

黄瀬戸釉は、古く鎌倉時代に、始まったとも、言われています。

室町時代にも,透明性の黄釉の掛かった、茶碗が瀬戸や美濃で、焼かれていました。

桃山時代に入ると、油揚げな様な、失透性の黄釉の掛かった、黄瀬戸が焼かれる様になります。

 ・ 桃山時代の黄瀬戸には、茶碗として作られた物は少なく、多くは向付として、焼かれた物を

   転用したものです。

    (銘:難波=なにわ、の黄瀬戸茶碗も、元々は、向付であったと、思われています。)

黄瀬戸は、桃山時代、1573~95年の短い 間に、優れた器を残し、姿を消していきます。

1) 黄瀬戸向付の特徴

  ① 形はシンプルな、円筒形(半筒状)や、丸い(円形)物で、志野の向付と異なり、意図的に

    歪ませる事は、ほとんど無く、形の種類は、多くはありません。

  ② 轆轤挽きし、薄く作られています。 高台は、削りで、低い輪高台が、多いです。

    又、口縁が、端反(はたぞり)に成っている物も、多いです。
   
  ③ 装飾は、胴に一本、凸状に紐が巻かれている(胴紐と言う)作品や、胆礬(たんぱん)と呼ばれる

    装飾があり、「あやめ手」と言い、細い線描きの、草花文が施されています。

   ・ 黄瀬戸の中でも、古い物には、印花の様な、菊や桜の花を、判で押した、押文が

     多用されています。

   ・ 胆礬は、外側から、内側に、緑色が抜けている、抜け胆礬が、珍重されます。

  ④ 釉は、木灰による、灰釉で黄(又は、黄褐色)色で、釉肌も柚子肌で、油揚げを思わせる物を、

    「油揚げ手」と呼ばれ、明るい光沢のある、貫入の入った黄釉です。

  ⑤ 向付は、五客揃いが、一般的です。必ずしも、絵柄(模様)を統一する必要は有りません。

2) 粘土について

  ① 土は、美濃や瀬戸で産出する、白い色の、「五斗蒔土(ごとまきつち)」です。

  ② この土は、生乾きや、素焼の時に、乱暴に取り扱うと、割れが入る事が、あります。

  ③ 又、粘土はさくいため、焼き上がりも、柔らか味のある雰囲気が、残りますが、水を含み易い

    特徴もあります。但し、最近は改良された粘土も出ています。

  ④ 高台すべてに施釉をし、カビや汚れ等の発生を防ぎます。

    使った後は、良く乾燥させた方が良いです。

3) 現代の黄瀬戸

   現存する、桃山時代の黄瀬戸の作品は、少ないですが、昭和初期以降、加藤唐九郎初め、

   各務周海氏など、黄瀬戸を作っている作家も、多いです。

次回は、「織部の向付」に付いて、述べる予定です。
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