わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 14 手捻の作品の「ひび」

2014-10-30 22:08:28 | 素朴な疑問
主に手を使って制作する方法に手捻りがあります。手捻りはなぜか多くの「ひび」が表面に入り易く

「ひび」を撫ぜて修正する必要があります。

手捻り作業中は、常に土に触っている事と、轆轤作業と異なり、水の使う量も限定されます。

それ故、土の乾燥が早く土の表面に細かい「ひび」が多く入り易くなります。

1) 「ひび」の入る原因。

 ① 粘土は乾燥すると、収縮します。空気が乾燥していたり、気温が高いと当然、土の乾燥が

  早まります。しかし、人の手も30数℃の熱を持っています。この温度に晒され続ける結果、

  土は乾燥し収縮します。粘土が熱を帯び、暖かくなっている事も確認できる事もあります。

 ② 乾燥の速さは、土の量によって左右されます。即ち土の塊の大小、肉厚の差、表面積の広さ、

  更に、水で濡らす頻度も関係します。

 ③ 土は空気中に放置すると、次第に乾燥します。紐作りの場合、必要量(本数)の紐を作って

  から、制作に取り掛かる場合と、形を作りながら紐を作る方法があります。

  当然、前者の必要量の紐を作ってから、制作する方が効率が良いのですが、手早く紐を積み

  上げないと、紐が乾燥し固くなり作業がし難くなります。この場合は、準備した紐の乾燥を

  抑える為、濡れたタオルなどを被せておくと、乾燥が防げます。

 ④ 表面に細かい「ひび」が入った場合、そのまま放置すると、「ひび」は成長し深く長く伸びる

   事に成りますので、水で濡らした「竹へら」等で綺麗に撫ぜ、「ひび」を消します。

   又、「ひび」が発生したら、早めに水で濡らしたスポンジで拭き、指で撫ぜ「ひび」を消し

   ます。ある程度乾燥が進むと、水で濡らしたり、竹べらで撫ぜた程度では、「ひび」が取れ

   ない事があります。その際には、カンナで表面を一皮削り取る必要があります。

 ⑤ 「ひび」の入ったまま焼成すると、細かい「ひび」はそのまま残り、釉を掛けても作品の

   表面は「ザラツク」事に成ります。又、釉掛けの際、空気を閉じ込め易く、気泡が発生し

   釉が斑(まだら)模様になる場合もあります。更に、作品は汚れ易く、洗う場合にも

   「ひび」の中に汚れが入り易く、洗いにくくなります。

 ⑥ 逆にこの「ひび」を積極的に利用する方法があります。即ち、若干乾燥した作品の表面に

  「ドベ」を塗り放置して置くと、「ドベ」を塗った表面に「ひび」が発生します。

  この「ひび」を装飾として利用する方法です。尚、本体の乾燥具合によって、「ひび」の大きさ

  や形状が変化します。大きく剥がれる様ですと見苦しくなりますので注意。
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素朴な疑問 13 衣類や部屋の汚れ

2014-10-28 21:52:03 | 素朴な疑問
粘土を取り扱っていると、衣服と作業部屋や周囲が汚れます。

この様な状態ではどの様に、改善したら良いのでしょうか?

 粘土は微細な粒子の集合体です。それ故、空中に舞い上がり、自然落下により部屋に降り注ぎます

 又、轆轤作業などでは、大量の水を使い泥(どべ)を発生させる必要があります。

 更に、釉には着色材として、酸化金属などが含まれています。

 これらの鉱物類は単体として、有毒なものは少ないのですが、塵となって空気中に漂い、人の

 呼吸と伴に、体内に吸い込む事になると、問題が発生する場合もあります。特に粘土は元々岩石が

 風化して出来たものですので、大量に吸い込むと有害です。塵肺(じんぱい)と言う職業病が

 あります。以前は主に石工達や、汚れた空気の中での作業で掛かった病です。即ち、石の粉塵が

 肺に溜まる病ですが、陶芸に於いても同じ様な環境ですので、塵肺を発祥する恐れがあります。

1) 細かい塵は、長い間空気中を漂います。石の粉ですが直ぐには落下しません。

 部屋の換気を良くし、空気中の塵を外に出す事も大事ですが、常日頃の掃除も大切です。

 一晩おくと、空気中の塵は床に落ちますので、翌朝綺麗に掃除する必要があります。

 結構の量が確認されます。当然、掃除の際には、水や霧を吹いて塵を巻上げない事です。

 轆轤挽きは別名「水挽き」と言われ、粘土の表面を水で濡らし泥を出して、手指が良く滑る様に

 します。それ故、手や指の他、衣類は確実に汚れます。

 ① 轆轤は回転していますので、泥は外側に飛び散る事になります。

  轆轤には「ドベ受け」と呼ばれる物が付随し、飛び散る泥を受け止める装置が付いています。

  但し、これで完全に泥の飛び散りを防げる訳ではありません。「ドベ受け」よりも大きな大皿

  などの場合は、「ドベ受け」が使えません。又背の高い作品の場合も、ドベ受け」の外に、

  泥が飛び散る事もあります。 泥の飛び跳ねを少なくする事はできますが、完全に無くす事は

  できません。

 ② 削り作業で細かい粉が、飛び散る事になります。水挽きの状態では、粘土は濡れています

  ので、空気中に漂う事はありませんが、削り作業では、完全ではないが、乾燥状態ですので、

  飛び散った粘土の粉は空気中に漂う事に成ります。

2)衣類の汚れ。衣類に泥が付いた時の処置。

 ① 泥が付いたからといって、直ぐに水拭きする方法は最悪です。肌理の細かい泥は、水拭き

   する事で、薄く伸ばす事になりますので、汚れの範囲を拡大させる事に成ります。

 ② 衣類に付いた泥は、布目の間に入り込みます。それ故簡単には取れません。

   乾燥させてから、手で揉む事と更に、それをはたく事で取る事ができます。

   乾燥させると、多くの粘土は白っぽくなりますので、乾燥している状態を知るのは容易です。

   エプロンなどを着用する事が多いですが、轆轤作業では、意外と足元や靴が汚れ易いです。

 ③ 最終的には、水洗いする事に成りますが、他の衣類と一緒に洗う前に、泥で汚れた衣類は

   単独で水洗いした後に、一緒に洗う事になります。

   但し、幾度も「すすぎ」をおこなっても、汚れが出て澄んだ水には成りません。

3) 釉による汚れ。

  釉には酸化金属を含むものが多いです。特に酸化鉄(赤錆=あかさび))は強烈です。

  それ故、白い衣類は敬遠した方が無難です。

 ① 釉による汚れは、容器に入っている釉を掻き混ぜる際に発生し易いです。

  釉は固まり易いですので、施釉する際、攪拌する事に成ります。その際勢い余って釉を跳ね

  飛ばす事が多いです。

 ② 大きな作品に施釉する際にも、釉が周囲に飛び散り易いです。それ故、近くに施釉が完了

  している作品を置かず、遠くに移動させる必要があります。

  施釉方法では、浸し掛けは比較的安全ですが、吹き付け方法は一番条件が悪いですので、それ

  なりの設備が必要です。

 ③ 床に飛び散った釉は、床に「こびり付いて」いて乾燥しています。ブラシ(歯ブラシ)などで

  浮き上がらせてから吸い取ります。

いずれにしても、粘土や釉の微粉末は、健康に害になりますので、掃除の際には「マスク」を着用

する事を薦めます。
 
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素朴な疑問 12 使い易い器とは

2014-10-23 22:13:58 | 素朴な疑問
陶芸で一番多く作られ、焼かれているのは、食器だと思われます。

陶芸を習い始めの頃は、単に作るだけで精一杯の状態ですが、腕が上がるにつれて、装飾に凝る

様になり、最終的には一番使い易い食器を作る事に行き着く様になるのが、自然な流れとも言えます

各家庭で各種の食器が使われていますが、その出番がある食器はある程度限定されるているはず

です。即ち、季節毎に出番がある器、来客など特別な時に出番のある器などがありますが、常日頃

使用している器は、種類は少なくは、数も少ない事が多いです。

1) 使い易い器とは季節に関係なく、登場回数の多い物です。それには幾つかの条件があるは

  ずです。

 ① 適度の大きさである事。

  使い易い大きさが存在します。勿論料理の量によって、使用する器の大きさが変化しますが、

  銘々が料理をとる取り皿は、料理の種類によらず、決まった器が使われる事が多いです。

  その器が使いよい器の大きさと言う事になります。

  )適度の大きさは、食事する人数、他の器との関係(バランス)、テーブルの広さ、食事

   時間(朝、昼、夜)等によって左右されます。

  )手に持つ場合と、下に置いた状態で使う物とでは、使い勝手に差があります。

   即ち、手に持つ器であれば、当然軽くなければ成りません。

  )食器棚に収納でき、且つ場所を取らない器です。

   収納場所も直ぐに取り出せる場所に置かれた器が、頻繁に使用される事になります。

   器は重ねる事で、収納スペースを少なくする事が可能です。

   何処の家庭でも、食器棚は満杯ですので、新たに加わる器があると、他のどれかを処分する

   必要が出てきます。それ故、あまり広い収納場所を取らない事が、大切になります。

 ② 汎用性のある器。

  器は常に料理を盛る役目を負います。それ故、料理の種類によって、器が変わるのが理想で

  すが多くの場合、一つの器を使い続ける事が多いです。それの器は飽きの来ないものである

  場合が多いです。春夏秋冬と季節感のある器も存在し、その季節にそのような器を使う事も

  趣きのある事ですが、実際には特別の来客の以外は難しい事です。

 ③ シンプルな形や色の器は多くの出番があります。

  器はあくまで脇役で、主役の料理を引き立てる事(美味しく見せる事)が重要です。

  料理屋や旅館の器の様に、奇をてらった形の物や、派手派手な器は敬遠される傾向にあります。

 ④ 洋食器と和食器。

  食器が与える雰囲気も大切です。華やいだ空間か落ち着いた空間かなどによって、器を選ぶ

  事もあります。

  )洋食器は白を基調にした器が多いですが、和食器では色使いが豊富です。

    洋食器がクールなイメージですが、和食器は温か味がある為、多く使われています。

  )洋食器は主にプレートと呼ばれる皿類が多いですが、和食器では茶碗類や丼物(ドンブリ)

    など、より立体的な器が多いです。

結論として、適度の大きさと重さ、程よい色彩(色数は少ない)、収納のし易さ、簡単に洗える

形状などの条件を満たした器が、使い勝手の良い器とまります。

尚、食器はその人の好みを反映した物となります。使い易さも人により違いがありますので、あく

までも一般論を述べました。

以下次回に続きます。
  
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質問12 本焼中の「へたり」に付いて。

2014-10-21 18:03:22 | 質問、問い合わせ、相談事
中浜俊様より以下の質問をお受けしましたので、当方の見解を述べます。


焼成時(主に本焼)の最中に、作品の取手や持ち手など上に張り出している部分がへたってしう、

もしくは、崩れ落ちてしまうというのが稀にあります。

これは何が理由で、窯の中でどのような状態になり起きているのでしょうか。

お答えいただければ幸いです。


中浜俊様へ(明窓窯より)

 素焼きまでは何ら問題が発生していなくても、本焼きで問題が起こる事は珍しくありません。

 ご指摘の点もその一つです。

 1) 原因となるのは、粘土は高温に成ると、焼き締り、硬くなると思われがちですが、実際には

   高温中は幾分か軟らかくなる事です。即ち腰が弱くなります。温度が高い程軟らかくなります

   但し、冷却 した状態では硬く焼き締まっています。

 2) 軟らかくなる温度は、土の種類によって左右されますが、鉄分を多く含むと軟らかくなり

   易いです。それ故、赤土で起こり易くなりますので、赤土単味で使用しない事です。

   単味で使用する場合は、若干最高温度を下げる事です。又、高い温度で長時間保持する

   「ねらし」の時間を短くする事です。

 3) 更に、酸化より還元焼成の方が、影響が強く出て弱くなると言われています。

 4) 土が弱くなっても、十分下から支えられる状態(形状)であれば、持ちこえることが可能

   ですが、耐える事が出来なければ「へたる」(変形する)事になります。

 5) 質問者は、取手や出っ張りの状態を問題視していますが、それ以外に、作品の歪みとして

   現われます。轆轤挽きし真円に作った作品も、本焼きでは楕円形に成ったりします。

   その為、蓋物は蓋をした状態で、本焼きする必要があります。即ち、例え歪んだとしても蓋を

   した状態で焼成した位置では、蓋を身に合わせる事が出来るからです。

 6) 但し、取手を重く強固に作ると、本体を引っ張り影響を与え、歪ませる事に成ります。

   尚、本体の歪みは主に口縁周辺で起こり易いですので、口縁周辺を歪み難い形状にする事です

   又、取手や出っ張りは、口縁部よりやや下の部分取り付けると、より安全になります。

以上参考にして頂ければ有り難いです。

   
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素朴な疑問 11 酸化と還元

2014-10-19 20:15:41 | 素朴な疑問
疑問 11 酸化と還元焼成では、釉の発色が違う理由は?

 焼き物を焼成する場合、酸化と還元焼成の方法があります。酸素を十分供給して焼成するのが

 酸化で、酸欠状態で焼成するのが還元です。その他どっち付かずの状態の炎を中世炎と呼びます。

1) 地球上のほとんど鉱物は、空気中の酸素の影響で酸化物として存在します。地表のみでなく

  水中にも酸素は存在し、その影響を受け酸化される事になります。

  粘土や釉の原料も例外ではありません。

2) 釉の発色に関わる物質は主に金属類が多いです。

  鉄、銅、亜鉛、チタン、錫(すず)、マンガン、コバルト類等はほとんどが金属です。

  金属が酸化するのを、一般に錆(さび)ると言います。例えば、鉄などは赤錆となり、銅は

  赤銅色から緑色に変化します。電気窯をそのままで使用すれば、必ず酸化焼成に成ります。

3) 還元とは、元々の(金属)元素に戻すこ為に、酸素を奪い取ることです。

  元素の状態では、酸化物とは異なる色をしています。

 ① 奪い取る方法は、一酸化炭素(CO)を発生させ、酸素を剥ぎ取り二酸化炭素(CO2)にし、

   窯の外に排出させます。

 ② (CO)を発生させる為には、炭素を含む燃料(薪、炭、ガス、灯油など)を不完全燃焼させ

   るのが一般的です。

 ③ (CO)は猛毒です。人が吸い込むと血液中の酸素を運ぶ、「ヘモクロビン」から酸素を奪い

   人は酸欠状態に陥り、窒息死します。それ故、屋外の窯か換気が十分に行われる部屋以外では

   行う事が出来ません。実際に、換気不十分で窯焚きで死亡事故も起きています。

 ④ 還元された金属類は、一般に目にする事は少ないですので、釉として発色すると斬新な

   イメージに見えます。それ故、陶芸では還元焼成された作品の評判が良いようです。

   但し、還元の強弱によって、色は微妙に変わります。

4) 温度上昇と酸化、還元の関係。

  窯の温度を上昇させる最適条件は、弱還元焼成又は中性炎の時と言われています。

  強酸化や強還元焼成では温度上昇は鈍り、場合によっては温度が降下します。

  この為、燃料や空気の供給を調節したり、煙突があれば煙突の引きの強さを調整し、温度上昇に

  なる様に操作する必要があります。

5) 還元焼成は釉の熔け始める、950℃~1,200℃程度の範囲で行います。

  1,200℃以上では釉の表面がガラズ化し、(CO)も釉の中に入れず還元の機能が無くなります。

  無理に還元を掛けると、釉の表面に炭素が入り込み釉面を黒く汚す事に成ります。

  それ故。1,200℃以上では、酸化焼成に切り変え、炭素分を燃焼させます。

6) 釉だけではなく、赤土など鉄分を含む粘土も還元の影響を受け、グレーに変色します。

  鉄分を含まない透明釉も、酸化と還元焼成では異なる発色に成ります。特に石灰系の透明釉で

  顕著です。又土灰釉には、微量な金属が含まれる為、差が出易いです。

7) 藁(わら)や糠(ぬか)を使った白い釉では、酸化と還元の発色に差が無い物もあります。

  更に鉄を大量に使う釉では、還元の効果が薄く、両方の発色の差は少ない様です。

以下次回に続きます。
  
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素朴な疑問 10 素焼きの意味

2014-10-18 21:42:21 | 素朴な疑問
施釉陶磁器の場合、施釉する前に、素焼きを行うのが一般的な方法です。

施釉陶器きでも、素焼きをせずに本焼きを行う作家さんもいます。

又、施釉しない陶磁器、即ち「焼締」と言われる陶磁器では、原則素焼きを行いません。

1) 縄文や弥生式土器は、素焼き程度の温度で焼成されています。

  当時は、熱を閉じ込める窯が発明されてなく、温度の上昇も高くはありませんでいた。

  但し、使用に耐える工夫がなされていました。

2) 現在素焼きを代表する例として、素焼きの植木鉢があります。

  施釉した植木鉢より、水を吸い込んだり吐き出したりして、呼吸する為、過湿や乾燥から植物を

  守り、植物の成長に良い環境を与えます。但し、機械的強度が弱いのが難点です。

3) 素焼きしてから施釉する方法は、大陸から伝わった技術と言われています。それまでは「生掛け」

   の方法が取られていました。 素焼きは施釉する際や、その後に起こる乾燥時や、本焼き中の

   作品の破損を予防する為に行います。

 ① 施釉する際に破損し易い。

   素焼き前の状態を「生(なま)」と呼んでいます。「生」の状態では素焼きに対し機械的強度

   が劣ります。少しの衝撃で破損する事は稀ではありません。強度的に不安定な状態での施釉は

   神経を使いますし、大きな作品では持つ事すら怪しくなります。

 ② 施釉時に破損し易い。

  ) 施釉は完全に乾燥した後に行いますが、乾燥した土は「もろく」、更に強い吸水性が

   あります。施釉の方法にもよりますが、一般的な「漬け掛け」や「流し掛け」などでは、

   泥漿(でいしょう)化した釉を使い、作品に水を吸収させる事で一様に釉を掛ける事に成り

   ます。

  ) 水を吸った「生の土」は確実に膨張します。また表面の一部は水で溶かされます。

   水を吸った土は、強度的に弱くなり、膨張の影響で破損の原因に成ります。

  )素焼きをせずに釉を掛ける事を「生掛け」と言います。釉との密着度が良いと言われ、

   この技法を、積極的に取る人もいます。又釉の発色も若干異なるとも言われています。

 ③ 施釉後の破損。

  上記作業が無事に完了しても、時間を置くと破損する場合が出てきます。

  施釉は短時間で終わりますが、釉の水分は徐々に作品の中に浸透して行きます。

  土の内部まで、水が浸透すつと土全体が溶け始め、自分の重さに耐えられなくなり、崩壊します

  以上の事柄は、粉引き(こひき)でも同様な作業に成りますので、粉引きの失敗原因として良く

  取り上げられています。

 ④ 焼成時の破損。

  水を大量に含んだ土を、焼成する時は特にゆっくり温度上昇をしなければ成りません。

  温度上昇と共に、大量の蒸気が発生し、土が膨張し破損し易いです。更に窯の中に水滴が溜まり

  施釉した作品の上に落下し、汚いシミを残す場合があります。

以上の様な事を予防する為、素焼きの方法を採用する事で、焼成による失敗率は大きく低下したと

言われています。(作品の歩留まりが良くなります。)

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 9 作品を軽くする 2

2014-10-16 22:37:55 | 素朴な疑問
疑問12 作品を軽く作るには? (前回の続きです。)

 ご飯茶碗の場合、作品の大小はあるものも、焼き上がり時の重さは200g以下にしたい物です。

  抹茶茶碗の場合には、形の種類にもよりますが、おおよそ300~400g程度の場合が多い

  様です。この重さが使い易く、取り扱い易い重さと思われます。

  当然、焼き上げると土の水分など蒸発し、軽く成りますが、施釉する事で、ガラス質を身に

  まといますので、差し引き大差の無い値と成ります。但し重さは絶対的なもでは無く、同じ

  重さであっても、体積の小さいものは、より重く感じます。

  即ち、一般的な作品では、削り作業が終わった状態の重さが、おおむね焼きあがりの重さと

  考えても良いと思われます。それ故、削り終えた作品の重さを測る事で、おおよその出来上がり

  の重さを知る事が出来ます。

2) 装飾で軽くする。

  底削りが終わっても、作品が重たく感じる時には、彫刻などの模様を施す事で、肉を削り、

  軽くする事も有ります。

  ① 透かし彫りを施す。但し最初の予定した作品から、用途が変わる場合が多くなります。

   即ち、液体を入れる事が出来ませんので、菓子鉢の様なものに限定されてしまいます。

   透かし彫りを施す事で、肉抜きを行い重量を軽くできます。

  ② 掻き落としを施す。異なる色化粧土を施した後、模様を描き掻き落とし、模様を浮き立た

   せます。勿論、化粧土を塗ることで、重量は増えますが、それ以上の量の土を掻き落としを

   すれば、重量が軽くできます。

  ③ 彫刻を施す。作品に鎬(しのぎ)を入れます。

   鎬とは、彫刻等などを使い、線状に溝を掘り込み文様を付ける方法です。

   縦方向や斜め方向に連続して掘り込む場合が多いです。表面は凸凹し波紋の様になります。

  ④ 肉厚の部分に面取りを施す。

   肉厚の部分は腰から高台にかけての場合が多いですので、この部分に面取りを入れます。

   面の数が少ない程、厚く切り取る事に成りますので、面数をいくつにするかも考慮する必要が

   あります。

  いずれにしても、形が変わってしまいますので、最初から予定していたのでないならば、この

  方法で軽くするのは、あまり薦められません。

3) 重たい作品を軽く感じさせる方法。

 同じ重さであっても、見た目で軽く感じる形があります。

 ① 高台の高い作品は軽く見えます。

  「べた高台」は「輪高台」に比べ、「どっしり感」があり、重く感じがします。

  同様に碁笥底高台も重く感じられる形です。

  即ち、器全体がテーブルより浮き上がった感じにすることで、浮遊感が出て軽さを感じさせる

  事ができます。更に欲を言えば、斜め上から高台自体が見えなければ、より浮遊感がえられます

  即ち、高台の直径を小さくするか、撥(ばち)高台にする事です。

 ② 人は作品を持つ前に、おおよその重さを判断します。その後作品を持ち上げた時、軽いと

  感じるか重いと感じるかは、予想した重さに対して、比較して感じるものです。

  それ故、重たそうに見せ掛け、その実軽い作品にすれば軽く感じる事に成ります。

  )手に持つ事無く、作品の重さの予測するのは、作品の大きさもさる事ながら、口縁の肉厚で

    判断する事になります。

  )口縁の肉厚から、作品全体の厚さも同一と判断します。

    初心者の作品(特に轆轤挽きしたもの)は、口縁が極端に薄くなり勝ちですので、一見

    軽い様に見えますが、実際にはたっぷり腰周りに贅肉が付いている為、重たく感じます。

  ) 陶芸に慣れた方は、口縁のみを極端に厚く作り、一見重そうに見せ掛けます。

    特に、角皿の場合は土を締めながら、口縁の肉を厚くし重そうに見せ掛けます。

    又、轆轤挽きでも同様に口縁を厚くし、重量感を持たせますが、手に持ってもらうと

    軽く感じさせる事が出来ます。

 ③ 作品に動きがあると軽く感じます。

  ) 左右均等の形の作品は、動きが乏しく、重さを感じさせます。花瓶などに耳を付ける

    際には、取り付け位置を左右で変えたり、同じ形でない耳を付ける事で、作品に動きが

    出ます。

   ) 不安定感も作品に動きを感じさせます。作品の重心が高い作品(下膨れとは逆)や、

     左右の形状が僅かに違っている場合、僅かに傾いている場合など、作品に動きが現れ

     作品が軽く感じさせる働きがあります。

 ◎ 勿論、作品制作時に重さ(厚さ)を確認しながら作業を進めるのが本質です。

   形のみに捕われる傾向になり勝ちですので、常日頃肉厚などに注意を向ける事です。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 8 作品を軽くする 1

2014-10-15 22:39:28 | 素朴な疑問
疑問12 作品を軽く作るには?

 花瓶などて常に手に持つ必要の無い物では、重い事は比較的問題に成りませんが、常に手に持つ

 食器等は軽い方が使い勝手が良く、軽い方が喜ばれる傾向にあります。

 勿論、料理店など食事を提供する場所では、あえて分厚い皿や重たい器を使い、重厚感を出し、

 料理を豪華に見せる場合も多いです。

1) 軽く作るには、作品の肉厚を薄くする事が一番効果的です。制作時に薄く出来ない場合には、

 削り作業や後加工(細工)で薄くします。又、軽そうに見せ掛ける方法もあります。

 その他、粘土の材料を選ぶ事で、若干軽くする事もできます。

 ① 手捻りで作った場合は、轆轤挽きで作るよりも、重くなる傾向に成ります。

  手捻りでは、制作段階で薄く作る事が難しく、どうしても肉厚になります。

 ② 轆轤挽きでは、制作時に薄く挽く事もできますが、轆轤に慣れていない方は、作品全体を肉薄

  に挽く事が難しく、多くの場合口縁は薄過ぎ、腰から高台に掛けて肉厚に成り易いです。

  轆轤挽きで薄く出来れば、容易に軽い作品を作る事も可能です。

 ③ 削り作業で薄くする。

  ) 手捻りでも轆轤挽きでも、底削りを行うのが一般的です。

    腰から高台脇、高台、高台内を削り形を整えると同時に、作品の贅肉を落とし軽くします。 

  ) 削り作業を効果的に行うには、作品の乾燥具合が大きく関係します。

    軟らか過ぎても、乾燥し過ぎても削り難いです。又、作品が轆轤上にしっかり固定されて

    いれば、より安定的に薄く削る事が出来ます。当然、削る道具即ちカンナ類も良く研いで

    切れる状態にしておく方が、薄く削る事が出来ます。

  ) 削れる量の判定が難しい。

    多くの場合、作品を伏せ更に、轆轤上に固定されている状態で削り作業を行います。

    その為、今削っている作品の肉厚が解かり難いです。削り過ぎて穴を開けてしまうのを恐れ

    削り不足が多い様です。

  ) 削り作業を行う前に、肉厚を確認する。

    どの部分にどの程度の贅肉が有るかを、前もって確認しておく事が重要です。

    闇雲に削り作業を行う前に、手を使って厚みを確認しておく事です。

  ) 削り作業中に肉厚を知るには、昔より作品を中指で弾いて、その音から判断する方法が

    取られています。即ち肉厚の場合は「こつこつ」と高い音となり、肉厚が薄くなるに従い

    低い音に変化します。但し、この音は、底(高台内)と高台脇、更に腰の位置では見妙に

    変化しますので、経験を積まないと難しいかも知れません。

  ) 碁笥(ごけ)底高大台は、輪高台より重くなる。

    碁笥底は高台を凸状にするのではなく、外側のカーブが底まで連続しています。その為

    高台内は削っても、高台自体を削り出しませんので、どうしても削り不足になり勝ちです。

    それ故、輪高台よりも肉厚部分が多くなり、重たくなります。

  ) 底削りで重要な事は、内側のカーブと外側のカーブを合わせる事です。

    内側の底から立ち上がる際、丸みを帯びている場合には、そのカーブに合わせて丸みを

    付けて削り、角張っている場合には、外側も角張る様に削る事で、肉厚を一定にする事が

    出来ます。内側が丸で外側が角の場合には、タップリ土が付いています。逆に内側が角で

    外側が丸の場合は、肉が薄くなり過ぎる危険性がありますので、注意が必要です。

2) 装飾で軽くする。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 7 土(粘土)に付いて 7

2014-10-14 21:46:14 | 素朴な疑問
疑問11 土地が焼き締まるとは、どうゆう事か?

 焼き物は粘土類を高温で焼く事で、実用に耐える強度が得られます。

 元々花崗岩(かこうがん)の様な岩石が、風化分解して出来た粘土が、元の岩石に戻る事になり

 ます。

 ① 焼き締めることとは、土を固め密度を上げて、耐衝撃性等の機械的強度を増す事と、耐水性を

   与える事になります。但し、この様な性質を持たせる為には、ある温度以上で焼成する必要が

   あります。

 ② 粘土類は高い温度ほど焼き締まります。但し、高温に成り過ぎると、高い温度に耐えかね

  土が熔け出しますので、最適な温度で焼成する必要があります。

  ) 一般に土物と呼ばれる粘土では、土の種類にもよりますが、最高で1280程度です。

    但し、1200~1250℃以下で焼成する事が多いです。

  ) 石物と呼ばれる磁土の場合は、最高で1300℃程度が多いです。

    一般には1280~1300℃以下で焼成します。

 ③ 焼き締まる為には、条件があります。

  ) 収縮率を大きくする物質として、長石、鉄化合物、石灰石、雲母などがあります。

    逆に収縮率を小さくする物質として、石英やアルミナなどがあります。

    又、ガラス成分となる物質を多く含む土では、ガラスが膨張して、収縮が少なくなります。

    更に、ガラスは素地にも作用し、発泡状態に成る為素地も膨張し、収縮も少なくなります。

  ) 粒子の細かい程、収縮は大きくなります。

    これは、微細なほど表面積が大きくなり、化学的、物理的な相互作用が強く働く為です。

  ) 焼成温度が高くなるに従い、収縮は大きくなります。

  ) 所定の温度まで上昇させるのに、時間が掛かる程収縮は大きくなります。

    又、所定の温度で長く時間を掛けると、収縮は大きくなります。

 ④ 作品が焼き締まる事で、作品の大きさが小さくなります。

   縦横高さが同率で縮みます。即ち三乗に反比例しますので、容積としては7割程度になる

   場合が多く、大きな作品ほど縮みむ寸法は大きくなりますので、作品を作る際には、かなり

   大きく作る必要があります。陶芸の初心者では、「こんなに縮むのか」と驚かれる方も多い

   です。但し、肉厚も変化しますが、元々肉が薄い為、縮んだ事が解からないはずです。

 ⑤ 土の密度が増す事で、粒子間の間隔が狭くなり、更に、素地の一部がガラス化する事と、

   釉を施す事で、水を通し難くなります。それ故、焼き締まりの弱い(焼きが甘い)ものでは、

   水を通してしまう場合があります。特に花瓶の様に常に水を蓄えておく器では、何らかの

   方法を施す必要があります。一般的には「水漏れ防止剤」を使います。

 ⑥ 市販されている粘土類は、土を調合してある為、ほぼ同じ様な縮み率になっています。

   即ち12~13%程度が多い様です。

以下次回に続きます。

 
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素朴な疑問 6 土(粘土)に付いて 6

2014-10-13 22:09:20 | 素朴な疑問
疑問11 土を加熱すると、どの様に変化するのか?

 加熱によって以下の順で熱的変化が起こります。

 ① 十分天日干した作品でも、数%(2~5%)の水分を含みます。

 ② 水分は100℃程度から蒸発し始め、300℃前後で結晶水以外の水は放出が終了します。

   この段階で、水を加えると元の粘土に戻ります。

 ③ 300~500℃で粘土中に含まれる、有機物の炭化が起こり、やがて600℃程度で燃焼し、焼失し

   ます。但し、素地中に入っている場合には、十分空気を供給しても、燃え尽きない事もあり

   ます。その際に、素地に炭素が多く残っていると、灰色に成ります。

 ④ 350℃位から粘土は熱分解を起こし、結晶水の放出が始まり、450~700℃程度で結晶水の放出

   が完了します。その際、吸熱反応により、素地が熱を吸収する為に、温度上昇は鈍くなります

   吸熱状態では、作品の表面と内部の温度差が150℃程度あります。急激に温度を上昇させると

   内部の水分が外部まで抜け切れずに急膨張し、素地に亀裂が入る恐れがありますので、急な

   温度上昇は厳禁です。尚、この段階になると、水を加えても元の粘土には戻りません。

 ⑤ 有機物の多い素地では、素地が膨らむ場合があります。即ち「ぶく」と呼ばれる現象です。

 ⑥ 素地に含まれる不純物で問題になるのが、鉄化合物です。特に硫化鉄は450℃で分解し、素地に

   悪さをする事に成ります。

 ⑦ 573℃程度で、粘土の中に含まれる石英が、急膨張します。

 ⑧ 700~800℃で素焼きが完了します。

   粘土は、固くなり加工が困難に成ります。又、水に漬けても形が崩れる事はありません。

   粘土の主成分である、カオリナイトはメタカオリンと結晶構造が変化し、燒締まりが進みます

 ⑨ 800~1,000℃で、石灰石やドロマイトなどの炭酸塩が分解します。 

 ⑩ 1,000℃以上になると、メタカオリンはムライト結晶に変化し、素地が急激に縮んで行きます。

   更に、遊離したシリカ(珪酸)はクリストバライトに変化します。

   アルカリ及びアルカリ土類成分は、シリカと科学反応を起こし、980℃近辺からガラスを生成

   する様になります。


 尚、釉が施されている場合に付いては、後日お話する予定です。

以下次回に続きます。
 
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