わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 電動ろくろ16(轆轤作業の手順3素地を選ぶ)

2019-08-28 09:15:52 | 続 電動ろくろに付いて

3) 使う素地(粘土)を選ぶ。

  陶芸では粘土類(又は磁土)が素材になりますが、どの粘土類を使うかによって作品

  の出来具合が大きく異なります。粘土類は産地による性質の違いの他、焼き上がりの

  色や肌理の粗さ、即ち手触りも異なります。又大物と小物の違いの他、繊細で綺麗

  に仕上がる物、荒々しい(無骨な)作品に仕上げたい場合など、作者の要求に答える

  素材でなければなりません。交通の発達していない少し前まででしたら、地元から

  産出する素材を使う事がしか出来ませんでしたが、現在では各地の素材を陶芸材料店

  等で、容易に入手可能になりましたので、自由に選ぶ事ができます。

  又、各地の素地をブレンドして、ご自分の好みの素地を作る事が出来る様にも成り

  ました。ある意味選択の余地が増え、選ぶのが大変化も知れません。

 ① 素地を選ぶ基準。

  ⅰ) 作り易く入手が容易な素地を選ぶ。

   作り易さは、前にお話しした様に、手捻りと電動轆轤によっても違いが有りますが

   両方に向いた素材も存在します。著名なほとんどの素地は、陶芸材料店で入手可能

   ですが、その産地でも産出量が少なく、ほとんど入手できない物も存在します。

   又産出量の少ない素地では、特性を合わせる為に、幾つかの素地を混ぜ合わせた

   合成土も存在します。 カタログ上で説明のある物と、無い物もあります。  

  ⅱ) 値段の安い物を選ぶ。(安価だから悪い粘土であると言う事は有りません)

   各メーカーのカタログやネットで値段等も知る事が出来ます。

   産出量も多く、比較的に安価な土に、信楽の土があり一番多く利用されています。

   信楽の土は、色の白い物から、色の濃い赤土、大物用、轆轤用、肌理の細かい物

   から肌理の粗い物(ハゼ石を含む物)まで、種類も豊富に存在します。

   最小量もメーカーによって、1~2,5,20,30kgと、取り揃えてあります。

   その他、希少な土や入手困難な素地は、単価も高くなります。

   勿論、手に入らない粘土も存在します。

  ⅲ) 素地の焼き上がりの色で選ぶ。

   焼き上がりの素地の色は、釉との関係で見た目も印象が変わります。即ち濃い色の

   素地では、釉の色も地味に仕上がります。又、下絵を付ける場合にも、白い素地を

   使用しないと、模様もはっきり出ません。白化粧土で搔き落としの技法を採る際は

   赤土など、色の濃い土を選ぶと良いでしょう。

  ⅳ) 大物用又は細工物用に適するかで選ぶ。(肌理の細かさ、粗さで選ぶ。)

   大物用は素地の粗い物を、細工物では肌理の細かい物を使用します。

   粗い素地は乾燥や焼成で、収縮率は比較的小さく、肌理の細かい素地は収縮率は

   大きくなります。尚、収縮率が大きい事は縮む量も大きく成り、作品の割れが多い

   事を意味します。

  ⅴ) その他、釉及び化粧土の載りの良さで選ぶ。

   素地と釉との相性が悪く、上手に施釉出来ない(釉が剥がれる、禿げる)場合いも

   あり、同様に化粧土を掛けたり、粉引(化粧土を生掛けする)に適さない素地も

   存在しますので、目的に合った素地を選ぶ必要が有ります。

  ⅵ) 自分で見つけた土を使う。

   但し、実際に使用できるまでには、多くの試練が存在します。

   陶芸に適しているとは限りませんので、実際に作陶し扱い易いかを調べ、更に

   施釉して試し焼きをし、限界焼成温度を見極めたり縮率を調べる必要があります。

   多くの場合単味では使えない場合が多いですので、他の粘土を混ぜて使用する事が

   多いです。

 尚、粘土種類多く、どうしても多くの種類を試したくなりますが、多く集める程手間も

 増え、作業も煩雑になりますので、常に使粘土は3~5種類程に絞るのが良いと思われ

 ます。長い間使用しないと粘土が固まり、使う際に苦労ます。

4) 土を練る。

以下次回に続きます。

 

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続 電動ろくろ15(轆轤作業の手順2)

2019-08-25 11:16:52 | 続 電動ろくろに付いて

2) 作り方を決める。

 轆轤挽には、色々な方法があります。小さな作品を作る場合と、大物と呼ばれる作品

 を作る方法は自ずから異なります。又作り方はその地方(又は窯元)の土や作品の

 種類や、伝統及び個人の技量によっても異なります。

 轆轤の作陶方法には、大きく分けて数挽と個挽(一本挽)の方法があります。

 勿論、いずれの方法にも、利点と欠点があります。

① 数挽とは、一塊の素材から複数個の作品を作る方法です。

 湯呑やご飯茶碗の様な小さな作品に用いられる方法です。即ち轆轤上に据えた一塊の

 素地(粘土)の上部を土取りし、その土を使って一個の作品を作り出し、挽上がった

 後糸で下の素地から切り離し、別の場所に移動させ、その下の素地を使って新たな作品

 を作り続ける方法で、ごく一般的な方法です。

 利点として、轆轤に慣れた方は、短時間に多量の作品を作る事が出来る事です。

 特に轆轤作業に従事する職人さんは、同じ様な小物の作品を数多く作る際には、この

 方法で作ります。即ち、大量の土を轆轤に据えれば、土(素材)を追加しなくとも、

 次々と作品を作る事が出来、土が多いですが、土殺し等は必要部分のみで比較的容易

 に行う事ができます。陶芸体験では、この方法を取る所が多いです。

 欠点は、同じ大きさと形の作品を数多く作る事の少ない場合(職人でない陶芸家等)

 には、土取りが作品毎に異なる事と、大きな作品では、挽上げた轆轤上の作品を取り

 除く事(作品の形が歪む)に苦労する事です。

② 個挽とは一塊の土から一個の作品を作る方法です。

 勿論、特に背の高い、大きな作品を作る際には不足する土をその上に載せる(継ぐ)

 方法を採ります。但し大皿の場合は継ぐ事はほとんどありません。

 大きな作品は轆轤上から作品を取り除く事が困難ですので、亀板を使います。

 亀板上で作品を作り、挽上がった作品は、亀板ごと取り上げまると作品の歪みも少

 なくて済む利点があります。特に大皿を作る際には、この方法を採るのが一般的で

 す。更に、土取りの作業をする必要もありません。即ち素地の重量を秤で測り、

 その土を使えば常に一定の重さ(量)の土を使いますので、作品の大きさも揃え易い

 です。

③ 手捻りと電動轆轤を組み合わせて作る方法。

 轆轤に適さない土も存在します。勿論、実際に轆轤挽する事で判明します。

 しかし、どうしても轆轤挽で綺麗なか形の作品を造たい場合に取る技法です。

 即ち土が十分に薄く伸び難い土では、紐作りの方法で、背の高い作品を作る方法

 です。必要な径と高さまで紐状の粘土を積み重ねてから、轆轤を回転させ出来る

 だけ薄く延ばしてから、形を造ります。背を高く積み上げるには、ある程度の太さ

 の紐が必要です。

 又 底の広い作品(大皿や大壺等)を拳骨で強く叩き底割れを防ぐ方法を採ります。

 轆轤上に据えた土を直ぐに轆轤挽するのではなく、底の土を強く叩き土を締めた

 後、轆轤を回転させ轆轤挽すると、より割れを防ぐ事ができます。

3) 使う素地(粘土)を選ぶ。

以下次回に続きます。   

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質問37 急須の注ぎ口が釉で塞がった場合の処置

2019-08-20 19:50:10 | 質問、問い合わせ、相談事

ぷくぷく様より以下の相談(質問かも)をお受けしました。


初めて急須を作ったのですが、注ぎ口の穴が釉薬で塞がってしまい、お水が出ません(涙)。

3ミリの穴を10個ほど開けたのですが、そのうち9個が塞がっています。

もし、解決策があるようでしたら教えて下さい。

やはり、植木鉢に転用するしかないでしょうか?

 

明窓窯より

釉で塞がった穴は、釉を溶かして取る事は出来ません。それ故物理的な方法で取り除く

事に成ります。但し、穴を復活させる事が困難な場合には、穴全体を壊し、茶漉しを使う

必要があります。

方法は三つです。急須の注ぎ口の穴がどの様な方法で開けられているかによって、対応

が分かれます。主な方法は急須の胴体部分に直に穴を開けている。急須の胴体部分を内側

に凸状に押し出し、その部分に穴を開ける。穴を開けた部品を注ぎ口に張り付ける。

急須の蓋側から又は注ぎ口からヤスリ等の工具類を入れる事が出来るか?

更に 釉の濃さで穴を塞いでいる厚みも異なります。釉が薄ければ釉の幕も薄いですので

先の尖った金属等で、叩き割る事も可能かも知れません。

1) 細いダイヤモンドヤスリで、穴を広げる。

  一か所のみ穴が塞がっていないとの事ですので、その穴に丸(又は三角)いヤスリ

  が入れば、ヤスリで穴を広げる事ができます。ダイヤモンドヤスリは、100円

  ショップでも入手可能です。直線状以外に曲がった形の物も有ります。

  但し、ヤスリの先が届かない場合は、穴を広げる事は出来ません。

  尚、歯医者さんが歯を削る様な、小回りの利く工具が手に入れば理想的ですが。

2) 先の尖った金属製の工具を使って、穴の釉を突き破る。

  釉が完全に塞いでいる訳ではなく、10~30%の空間があれば、工具を用いて突き

  破れるかも知れません。工具はヤスリに比べある程度自由に変形可能ですので、先端

  部分を穴の近辺に差し込む事が可能かも知れません。工具の先端部分に衝撃が出る

  様に、打撃を与える必要があります。小さな穴が開けば、上記1)の方法で穴を

  広げます。

3) 穴を復活させるのではなく、穴全体を破壊し大きな一つの穴にする。

  一つにした穴のおおきさ(面積)は急須の先端の注ぎ口の内径程度で十分です。

  穴と穴の中間を2~3個程度壊し穴同士を連結すれば、必要な面積は得られます。

  この方法の方が容易かもしれません。但し、本体に「ヒビ」が入らない様にします。

  大きな穴から茶葉が漏れ出しますので、茶漉しを使います。

  茶漉しには急須の本体の蓋側から内部に入れる物(色々の大きさがある)と、注ぎ

  口の外側で使う柄の付いた物があります。いずれも100円ショップ等で販売されてい

  ます。勿論、ティーバックを使えば、茶漉しは必要ありません。

既にお気付きの事と思いますが、施釉した直後に注ぎ口から息を強く吹き込み、穴に

入った釉を吹き飛ばして取り除きます。

又、蛍焼きと言い、くり抜いた小さな模様のある穴(透かし彫り)に釉を掛け、ガラス

質で覆う焼き物も存在します。

以上 参考にして頂ければ幸いです。

 

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続 電動ろくろ14(轆轤作業の手順1)

2019-08-04 15:30:02 | 続 電動ろくろに付いて

 電動轆轤を使うのは、何らかの作品を作る事が目的です。勿論作品が欲しいと言うより

轆轤技術の向上を目的で轆轤を回す場合もあります。その場合は、作り上げた後、作品を

壊す、その土を再利用して、新たに作品を作ります。これは特殊な部類に成り、轆轤の

技術を向上させるには、有効な練習方法と言えます。

ここでは轆轤で作品を完成させる事を前提に話を進めます。

1) 作る物を決める。(形、大きさ、色等をイメージする)

 轆轤の目的は特殊な場合を除いて、粘土(素材)から望みの形(円形又はそれを変形)

 に成形する事です。

 (但し、パーツ毎に制作し、後で組み合わせて作る作品もあります。)

 出来上がった作品がイメージできる事が大切です。無目的に轆轤に向かう事では、轆轤

 技術も上達しません。出来ればイメージが図面化(スケッチ化)出来れば最高です。

 ① 何を作るかを考える事は意外と難しいです。

  陶芸教室などの会員に成れば、簡単な作品から、高度の技術が必要な作品えと、手順

  を追って作陶する事になりますが、一通りの教程を終えれば、自由作品になり、作り

  たい作品は、自分で考える(又は何かを参考にする)事に成ります。

  勿論人の真似から入る事も多いです。但し最初はほぼ同じ様に真似たとしても、ある

  程度真似たらそこにご自分のアイデアを加味し、次第に物真似から脱却し、自分なり

  の作品を作れる様になる事が理想です。難しい作業に成りますが、是非その域に達す

  る様に努力する事が、轆轤上達の近道かも知れません。

  又、轆轤で数多くの形の違う作品を作る事は、色々な技法が必要になりますので、

  轆轤技術の上達に役立ちます。

 ② 形と大きさと素地(粘土)を決める。

  大きさは、焼き上がった時の大きさです。当然焼き締り、縮ますのでその分大きく

  作る必要があります。

  ⅰ) 素地(粘土)を選ぶ。

   選ぶ基準は、轆轤挽が容易な土、素地の色(焼か上がった色とは異なる場合が多い)

   素地の粒子の細かさ(作品の大きさや手ざわり)、施釉陶器又は焼き締め陶器か、

   尚、縮む率は素材(粘土)の種類によって若干差が有りますので、予めどの程度

   収縮するか知っていた方が良いでしょう。又」「○○焼き」と言われる陶器を作る

   際には、その地方の土を使う事になります。

   a) 轆轤挽の「し易い土とし難い土」。

    土(粘土)は日本各地に存在し、その性質も千差万別です。それ故その地方独特

    の作り方があり、轆轤技術も異なる事も多いです。

    一般に肌理の細かい土(細目の土)は、手ざわりが良く、土の伸びの良い物が

    多いのですので、小物を制作するのには、向きますが、大きな作品を作る事は

    難しくなります。大物は肌理の粗い方が適します。

    勿論ご自分で土を調達する人もいますが、多くは陶芸材料店から購入する事が

    多いです。その場合、カタログ等に轆轤挽に向く土で有る事が記載されている

    土を選ぶと安全です。実際に轆轤挽しないと判らない場合も有ります。

    尚、轆轤挽が難しい土でも、作り方を変える事で轆轤で作る事も出来ます。

   b) 耐熱(焼成)温度も大切です。 

     成形した作品は最終的には焼成する事になります。その際、変形せずに十分焼

    締まり、使用に耐える物でなければなりません。多くの種類の作品を作る場合に

    は、素材によって焼成温度を変える事は面倒であり、実際的ではありません。

    それ故どの素材(粘土)でも、一定の温度で焼成出来る事が理想です。

    勿論、異なる素材でも、土の調合によって一定の温度で焼成する事は可能ですが

    出来るだけそのまま使いたいと思うのが普通です。

  c) 焼き締め陶器はそれに適した土を使います。

    焼き締め陶とは、施釉せずに、松灰などによる自然釉が掛かった作品です。

    当然、施釉した作品では出せない趣のある陶器で、それにはそれ専用の土を使う

    事が多く、備前焼や信楽焼きなど薪窯で焼成した作品は人気があります。

  d) 施釉陶器であっても、素地(粘土)の焼き上がり時の色によって、釉の色も

    変化します。即ち、赤土の様に黒っぽく発色した物は、施釉しても。くすんだ色

    に仕上がります。下又は上色絵具で絵柄を付けても、絵柄が綺麗に発色しません

    出来るだけ白又は白っぽい土を使うと、華やかな色に発色しましす。

2) 作り方を決める。

  轆轤挽には、色々な方法があります。小さな作品を作る場合と、大物と呼ばれる作品

  を作る方法は自ずから異なります。又作り方はその地方(又は窯元)の伝統や、個人

  の技量によっても異なります。

以下次回に続きます。   

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