わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

国宝の焼き物 (人間国宝2)

2010-10-09 21:49:50 | 国宝の焼き物
陶磁器の、人間国宝の話を、続けます。

 1) 現在の陶磁器の、人間国宝

   ⑥ 白磁   :  井上萬二  佐賀県有田町   1929年生、 1995年指定

     白磁の第一人者、有田焼、轆轤成形の名手、壺、皿、花器といった大物から、香炉や茶碗などの

     小品まで、多様な作品を、手掛けます。

     造形の美しさ、端正さ、清楚さがあり、柔らかい線が、磁器に温かさを、添えています。

     近年、白釉と黄釉を掛け分けて、厳しい純白の地肌に、温かみのある文様を表し、

     新たな境地を、開いています。

   ⑦ 青磁   :  中島宏  佐賀県武雄市   1941年生、 2007年指定

     青磁に取り組み、「中島青磁」と呼ばれる、独創的な作品は、高い評価を受けています。

   ⑧ 釉裏金彩 : 吉田美統(みのり) 石川県小松市高堂町 1932年生、 2001年指定 

     明治33年(1900年)から続く、錦山窯の三代目。 

     釉裏金彩(ゆうりきんさい)とは、釉薬の下に、金箔を貼る技法です。

   ⑨ 無名異焼 : 五代伊藤赤水(せきすい) 新潟県佐渡市 1941年生、 2003年指定

     佐渡市相川で産出する、朱泥 (しゅでい) 系の陶器です。

     無名異(むみょうい)とは、酸化鉄を含有する赤土で、止血の為の、漢方薬でもありました。

     又、佐渡金山採掘の際に、出土した為、その副産物を、陶土に利用して、焼いた物です。

     窯変により、赤と黒との対比が、鮮明に出て、これが特徴に成っています。

     (無名異焼は、佐渡以外にも常滑、石見などで、焼かれています。)


 2) 認定が解除された者(過去の人間国宝、故人)

   ① 色絵磁器 : 富本憲吉、加藤土師萌(はじめ)、藤本能道(よしみち)、十三代今泉今右衛門、

   ② 鉄釉陶器 : 石黒宗麿、清水卯一

   ③ 民芸陶器(益子焼): 濱田庄司

   ④ 志野   :  荒川豊蔵、鈴木藏(おさむ)

   ⑤ 瀬戸黒  : 荒川豊蔵

   ⑥ 萩焼   : 三輪休和(十代三輪休雪)

   ⑦ 備前焼  : 金重陶陽、藤原啓、山本陶秀、藤原雄

   ⑧ 唐津焼  : 中里無庵

   ⑨ 染付   : 近藤悠三

   ⑩ 白磁・青白磁 : 塚本快示 

   ⑪ 琉球陶器 : 金城次郎

   ⑫ 鉄絵   : 田村耕一

   ⑬ 練上手  : 松井康成(こうせい)

   ⑭ 三彩   : 加藤卓男

   ⑮ 民芸陶器(縄文象嵌): 島岡達三

   ⑯ 青磁   : 三浦小平二

   ⑰ 彩釉磁器 : 三代徳田八十吉

   ⑲ 常滑焼(急須): 三代山田常山


以上で、「国宝の焼き物」の話を、終わります。

次回から、別のテーマで、お話します。
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国宝の焼き物 (人間国宝1)

2010-10-08 22:15:26 | 国宝の焼き物
陶磁器の、人間国宝(重要無形文化財)

下の一覧には、現在の保持者と、死去により、重要無形文化財の指定ならびに、保持者の認定が

解除された者とに、分けて表示しました。

 ・ 人間国宝の認定は、一分野につき、存命中の一人しか、認定されない事に、成っている様です。

   (決まりが有るのか、不明ですが、その様に、運用されていると、思われます。)

保持者が死亡した時、又は保持団体が、解散した時(消滅した時を含む)は、当該保持者又は

保持団体の認定は、解除されます。


1) 現在の陶磁器の、人間国宝は、以下の9名です。 (2010年3月現在の存命者)

   ① 色絵磁器 : 十四代酒井田柿右衛門  佐賀県有田町、1934年生、2001年指定

      「柿右衛門窯」の、14代目の当主です。

   ② 鉄釉陶器 : 原清          埼玉県寄居町    1936年生、2005年指定

      島根県斐川町出身。 石黒宗麿(人間国宝)、清水卯一(人間国宝)に師事。

      黒色と褐色の、二種類の釉薬を駆使し、大柄な色面で文様を、描いています。

      細かな技巧に、頼る事のない作風は、鉄釉陶器の、新しい発展性を生んだとして、高く

      評価されています。

   ③ 瀬戸黒  :  加藤孝造                   1935年生、2910年指定

      岐阜県瑞浪市生れ。荒川豊蔵(人間国宝)に師事。

      半地上式穴窯を築き、美濃桃山陶の、技法を駆使した、作品を造っています。

      指定は瀬戸黒ですが、志野の焼き物も、手がけています。

   ④ 萩焼   :  三輪壽雪(十一代三輪休雪) 山口県萩市  1910年生、19831年指定

     9代三輪雪堂の三男として、萩市に生れる。兄の10代三輪休雪(休和、人間国宝)に師事して、

     家業に従事します。 その後、三重県津市の千歳山窯で、川喜田半泥子に師事。

     萩焼の伝統を、受け継ぎながら、斬新で卓抜した感覚を駆使し、因習的な、茶陶の世界に、

     新風を巻き起こし、近年では、「鬼萩」、「割高台」等は、茶陶という概念を超えた、

     作品と成っています。

   ⑤ 備前焼  :  伊勢崎淳  岡山県備前市     1936年生、2004年指定

     伊勢崎陽山の、次男として生まれる。 兄は伊勢満。

     斬新な、造形や陶壁など、伝統的な技法を、踏襲しながら、現代的感覚を、取り入れた作品が、

     高い評価を、受けています。

以下次回に、続きます。

 陶磁器の人間国宝
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国宝の焼き物 (文化財保護法2)

2010-10-07 21:36:26 | 国宝の焼き物
文化財保護法の、話を続けます。

 第3章 有形文化財

  第1節 重要文化財

   ) 文化財の保存修理

     a) 修理又は措置をしようとする時は、所有者等は、国の許可が必要です。

     b) 国は,その保存や修理等に対して、国庫補助を行う等の、援助を行っております。
     
     c) 現在、美術工芸品および、建造物の修理技術者は、全国でそれぞれ、約1〇〇人程度だ

       そうです。特殊な専門的業務であり、技術者の養成確保が、重要な問題に成っています。

   ) 現状変更等の制限

      無許可の現状変更は、禁止されています。

      重要文化財に関し、その現状を変更し、又はその保存に、影響を及ぼす行為は、文化庁長官の

      許可を、受けなければ、なりません。

      ただし、非常災害の為に、必要な応急措置を、執る場合などは、この限りでなは有りません。

   ) 管理又は修理の補助

    a) 管理団体が行う、管理に要する費用は、この法律に特別の定のある場合を除いて、

      管理団体の負担となります。

     (国は、管理又は修理の費用の全部、若しくは一部を負担又は、補助金を交付しています。)

    b) 重要文化財の管理又は修理に、多額の経費を要し、重要文化財の所有者又は管理団体が、

     その負担に堪えない場合、その他、特別の事情がある場合には、政府は、その経費の一部を、

     補助金として、交付する事ができます。


 第4章 無形文化財

  無形文化財とは、演劇、音楽、工芸技術その他の無形の、文化的所産で、歴史上又は芸術上、価値の

  高いものを言います。

  その中でも、特に重要なものは、重要無形文化財に指定されます。

 ①  人間国宝について、

  人間国宝は、重要無形文化財保持者として、「各個認定」された人物を、指す通称です。

  文化財保護法には、「人間国宝」という文言はないが、重要無形文化財保持者を指して、人間国宝と

  呼んでいます。

  ) 認定の方式には、「各個認定」「総合認定」「保持団体認定」の、3種があります。

    「各個認定」は、保持者個人の認定、「総合認定」は、集団を構成する保持者の認定、

    「保持団体認定」は、保持団体の認定です。

  ) この法律は、重要無形文化財の、保持者または、保持団体に認定し、その継承の支援と、保護を

     行う事を、目的にしています。

  ) 平成22年9月現在に、認定された、工芸技術部門の、重要無形文化財保持者(各個認定)は、

    165名です。

    工芸技術名は、陶芸、染織、漆芸、金工、金工(刀剣)、人形、木竹工、諸工芸、和紙に

    分けられます。

  ) 陶芸の分野に於ける、保持者の氏名を記載します。

    (記載順は指定・認定された順と成ります。)

 尚、人間国宝は多いのに、その作品の、文化財指定はありません。その人の持っている、技術、技能が、

  文化財として、指定されているからです。(数十年後には、重文に指定されるかも、知れません。)


 次回は、人間国宝の一覧(工芸技術、陶芸)を、表示します。
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国宝の焼き物 (文化財保護法1)

2010-10-06 21:44:35 | 国宝の焼き物
国宝の焼き物は、土偶など古代の物を除いて、昭和34年以来、新たに指定されていません。

 国宝選定に当る、文化庁の文化財保護部、美術工芸科の専門の技官が、少ない為と、

「永仁の壺」事件が、なんらかで、関係していると、言う人もいます。

 又、重要文化財(国宝も重文に含まれます)に、指定されると、様々な制約が課せられ、

 それを嫌って指定を、辞退する事も、有る様です。


1) 文化財保護法 (昭和25・5・30・法律214号)

   法律は、以下の条項(項目)から、構成されています。  

 第1章 総 則 (この法律の目的)(文化財の定義)(国民、所有者等の心構)

 第3章 有形文化財

  第1節 重要文化財 (第27条~第56条)

  第2節 登録有形文化財 (第56条の2~第56条の2の11)

  第3節 重要文化財及び登録有形文化財以外の有形文化財 (第56条の2の12)

  第3章第1節 重要文化財

  第1款 指 定 (第27条~第29条)   第2款 管 理 (第30条~第34条)

  第3款 保 護 (第34条の2~第47条) 第4款 公 開 (第47条の2~第53条)

  第5款 調 査 (第54条~第55条)   第6款 雑 則 (第56条)

以下 省略

上記条項の要旨を、まとめると、以下の様になります。

  ① 文化財保護法は、文化財の保存、活用と、国民の文化的向上を、目的とする、日本の法律です。

    数回、改正が行われています。

  ② 国宝や、重要文化財は、文部科学大臣によって、指定されます。

  ③ 国宝は、国の所有ではありません。

    国指定の、重要文化財所有者だけでも、4,000を越える、個人又は法人があるそうです。

    しかも、文化財の日常管理は、管理責任者を定めて、その所有者、又は団体(美術館等の法人)が

    自ら行わなければ、なりません。

  ④ この法律には、色々書かれていますが、その主な項目の要旨を、私なりに、まとめました。

    尚、詳細は、この法律を、御覧下さい。

    (又、ネット上で、閲覧すると、一部が有料なのには、「びっくり!」です。)

  以下、説明していきます。

   ) 国宝、重要文化財の、売買に関わる規定

     個人の文化財が、相続の度に、散逸の危機に晒されて、来ましたが、法律では、私有財産の

     処分の制限まで、深く踏み込んでいません。

    a) 売買(有償)を行う時は、譲渡の相手方、予定対価の額、その他の事項を、記載した書面を、

     文化庁長官に、届け出る必要があります。

    b) 国に対する、売渡しの申出があった時は、国が購入するかどうかを、判断し、買い取る、

      又は、買い取らない旨の通知し、買い取らない場合には、任意の個人、又は団体への売却が、

      許可されます。

      ・ 国、地方公共団体への、売却は非課税です。(租税特別措置法の規定です)

   ) 国宝や重要文化財の、海外輸出を、禁じる規定

     重要文化財は、輸出(国外に出す事も)は出来ません。

     但し、文化庁長官が、海外展等のため、必要と認めて、許可した場合は、この限りでは

     ありません。
 
   ) 公開は、所有者又は、管理団体が行うものとする。

    a) (文化庁長官による公開):重要文化財の所有者に対し、1年以内の期間を限つて、国立

      博物館、 その他の施設において、重要文化財を、出品する事を、勧告する事がでます。

     b) 文化財の公開は、公開によって、損なわれる可能性が、ある場合は、非公開にする事が、

       出来ます。
        
以下次回に続きます。

 文化財保護法
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国宝の焼き物 (仁清2)

2010-10-05 22:00:24 | 国宝の焼き物
国宝 色絵 藤花文茶壺

 江戸時代初期(16~17世紀)  京焼 野々村仁清作 

  丸亀藩、京極家伝来。 MOA美術館蔵 (静岡県熱海市)

 大きさ: 高 28.8cm、 口径 10.1cm、 胴径 27.3cm、 底径 101.5cm

 ・ 茶壺(ちゃつぼ)とは、葉茶を保管する為に、用いられる壺で、「葉茶壺」又は、「大壺」と呼ばれ

   この壺から、取り出した茶葉を、石臼で擂り潰し、茶の湯に使用する、抹茶にします。

    (現在では、ほとんど、使われなくた物です。)

 1) 藤花文茶壺の特徴

   ① ふっくらと丸い、大きな壺です。

     この茶壺の形は、ルソン壺と呼ばれ、室町時代末期から、桃山期にかけて、多数輸入されていた

     南中国産の壺の姿を、模した物と、言われています。

     なで肩で、穏やかな、張りのある形となっています。

     造りは薄く、轆轤(ろくろ)の仁清と、言われる技が、冴えています。

   ② 素地は灰白色の陶器で、淡い灰黄味を帯びた、白釉が腰まで掛かり、全面に貫入が見られます。

     釉を掛けていない、腰以下の部分は、赤褐色となっています。

   ③ 肩から胴にかけて、垂れ下がる、藤花文が、曲面に巧みに描かれ、構図、彩色とも極めて巧妙

     に造られています。

   ④ 藤の花は赤、紫、金及び、赤の輪郭線でくくり、銀で彩り、蔓は赤で描き、黒で輪郭を取って

     います。藤の葉の葉脈の、表現に用いられた、「針掻き」という技法は、葉脈を白く表し何百枚

     かの葉には、一枚一枚葉脈を施し、まったく乱れる事なく、整然と表されています。

   ⑤ 肩に、覆(おお)いを結び止める、把手(はしゅ)、耳が4個が、十文字方向に付いています。

     底は平底で、左脇に、小判形の「仁清」の、大印があります。  

   ⑥ 葉は明るい緑、蔓(つる)は赤茶、花は赤、薄紫、銀で彩色され、赤い花には金の、薄紫と

      銀の花は、赤の縁取りです。

 2) 仁清は、 国宝のこの壺の他に、多くの茶壺を残しています。

   ① 色絵 吉野山図茶壺 (重文・静嘉堂文庫美術館)

   ② 色絵、芥子文(けしもん)茶壺 (重文・出光美術館)

   ③ 色絵、月梅図(げつばいず)茶壺 (重文・東京国立博物館)

   ④ 色絵、山寺図茶壺 (重文・根津美術館)

   などが知られますが、形の美しさと、文様の豊さで、藤花文茶壺に、及ぶ物はないと、言われ

   仁清作の中でも、傑出したものです。 京風文化の、象徴的作品とも、言える作品です。


 これで、国宝の焼き物の話を、終わりますが、

 次回は、国宝などの、文化財保護法などについて、述べます。

 国宝 色絵 藤花文茶壺
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国宝の焼き物 (仁清1)

2010-10-04 21:31:24 | 国宝の焼き物
国宝 色絵 雉香炉(きじこうろ)

 江戸時代前期 野々村仁清作 京焼 石川県立美術館蔵

 大きさ : 幅 48.3cm、 奥行 12.5 cm 、高 18.1cm

  (国宝 昭和26年6月9日指定)

 ・ 色絵とは、本焼きした、釉の上から、絵具で文様を描き、もう一度、低い温度で焼き、発色させた物、

   即ち、上絵付けによる、技法です。

 1) 特徴

  ① 陶器製の香炉で、大きさは、ほぼ等身大の、雉(きじ)の形をしています。 

    飛び立つ、直前の姿を写し、尾を水平に保ち、安定感があります。

    造形や、焼成などに、難しい技が、駆使されています。

  ② 背部と腹部の上下に分かれ、腹部の内側に、凸部の合せがあり、背部が噛み合う様に、

    成っています。

    蓋になる背部には、4個の半月状の、煙出し穴が開けられ、香炉としての機能が、見られます。

  ③ 素地は、わずかに黄色味を帯び、一面に粗い貫入が入り、その上に緑、紺青、紫、赤、黒、

    金の絵具を使って、目、鶏冠(とさか)、耳、羽根、羽毛などを、豪華な極彩色で描いています。

    顔を赤で彩色し、羽毛は青・緑・赤・黒・金の5色で、鮮やかに表現して、「色絵技法」を発揮した

    作品です。

  ④ 背部と腹部の内側に、それぞれ、「仁清の」刻印が、捺されています。

    実際に、香炉として、使用する事よりも、置物を意識して、造られたのでないかと、思われます。

 2) 色絵 雌雉香炉について

   国宝の雉香炉と、1対に成った、「仁清」作の、重要文化財の「色絵 雌の香炉」が、同じ

   石川県立美術館に、収蔵されています。

   大きさ: 幅 37.5 cm、 奥行 11 cm 、 高 22.2 cm

  ・ この1対の香炉は、仁清の彫塑的作品の、代表的傑作として、広く知られる名品です。

  ① 等身大の大きさで、後を振り返り、その嘴(くちばし)の先は、左背の羽毛に掛かり、

    尾は約45度の傾斜で、ピンと張ています。

    顔面部は、赤や金彩で、眼の縁は、僅か青の絵具を用いる他は、体の全体を、濃淡の銀彩と

    成っています。 それが酸化の為、やや黒味を帯びています。

  ② 蓋の背の箇所に、羽毛の形をした、煙出し用の孔が、4個開けられ、裏部は、頸に相当する部分

    から孔部にかけ、白釉が掛かり、それ以外は、無釉と成っています。

  ③ また、身部の底を露胎とし、前方胸寄りに、「仁清」印が、捺されています。

 3) 石川県立美術館の、茶道美術は「山川コレクション」が中心で、金沢の素封家、「山川家」が三代に

   渡って収集伝世した物です。仁清の「国宝 色絵雉香炉」は山川家、初代甚兵の収集品です。

以下次回に続きます。

国宝 色絵 雉香炉

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国宝の焼き物 (秋草文壺)

2010-10-03 21:31:55 | 国宝の焼き物
国宝  秋草文壺 (あきくさもんこ)

 平安時代末(11~12世紀) 渥美窯  慶應義塾所蔵 (国立博物館寄託)

 1) 発見の経過

   ① 昭和17(1942)年、神奈川県、川崎市の白山古墳から、骨蔵器(骨壺)として発掘されました。
 
     古墳の後円部下方から、粘土の土台に、河原石を敷き詰め、その上に、骨壺が置かれた、遺構が

     発見されます。

   ② 全長87mの、前方後円墳の、古墳であり、この地区の、豪族の墳墓だったと、考えられています。

     日本住宅営団の、土地造成の為の、トロッコの路床を作る際の、工事中に偶然発見されました。

      (現在は、市街地に取り込まれ、跡形も、残っておりません。)     

   ③  但し、古墳時代(5世紀)と、壺が作られた時代には、約700年の開きが有りますので、

      この壷の主は、古墳に埋葬された人物とは、別人に成ります。

   ④  出土された壺の中には、人骨がありました。 この壺は、地主に引き取られますが、

      後に東京の慶應義塾大学に、譲り渡されます。

     (中に入っていた人骨の供養料として、5円(今の数万円相当)を受けとっただけとの事です。)

 2)  秋草文壺の特徴

   ① 大きさ: 高 41,5cm 胴径 29cm 口径 17.6cm 底径 14cm。

     かなり、大型の壺です。
    
   ② 形は、口部が高く立ち上がり、ラッパ形に開き、肩がやや張った、豪壮な感じのする壺です。

   ③ 素地は全体に、褐色を帯びた、灰色の土(灰白色半磁質)で、表面は黒く焦げ、口部及び肩に

     黄緑色の、灰釉が一面に掛かり、一部は数条の、釉垂れとなって、胴部に流れています。

   ④ 作り方は、紐を巻上げて、成型した様です。

     窖窯(あながま)で焼成され、粘土は耐火性に弱く、「くすべ焼」に近い作品です。

   ⑤ 壺には、優美な、秋の情景が、刻画文で、描かれており、秋草文壺と名付けられました。

    )胴の三方に、風になびく、「芒(すすき)の穂」を、鋭い刻線で、奔放に描き

    )肩の部分は二段に区切て、うり、芒、柳などを刻し、ロの立上がりには、蜻蛉(とんぼ)と

      芒や、草花を、伸びやかに、直線的な方法で、表現しています。

      この描き方から、本職の、絵描きの手になるものと、見なされます。

    )ロの内側上部には、「上」の文字を、彫り付けていて、何らかの意味が有ると、思われます。

 3) 壺の産地

   ① 器形や作風から、かつては、知多半島、常滑生産説がありましたが、現在は渥美半島、渥美窯

     説が有力です。

   ② 製作年代は、平安時代後期とされています。

     この時代は、唐風の文様から、襖(たもと)を別ち、和風の文様が、出てくる時期に当り、

     日本を代表する、秋草文様が、描かれたと、思われます

     (中国陶磁の影響を、一歩踏み越えて、日本人独自の、表現手法の、登場と成ります。)


次回、国宝の焼き物は、「仁清の香炉と、茶壺」の話しと、なります。

 国宝 秋草文壺 
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国宝の焼き物 (茶碗7)

2010-10-02 22:57:27 | 国宝の焼き物
我が国で作られた、国宝の茶碗は、2碗のみですが、その内の一つが、諏訪の「サンリツ服部美術館」

所蔵の、白楽茶碗(銘不二山)です。

本阿弥光悦の、楽焼、白片身変(しろかたみかわり)茶碗で、作者が、特定されいる国宝の茶碗は、

光悦の「不二山」のみです。

楽焼き本家の、楽茶碗では無く、脇楽である、光悦の作品が、国宝となっているのも、不思議な

感じがします。

1) 楽焼 白片身変茶碗

    高 8.5cm、 口径 11.6cm 高台径 5.4cm。

    江戸時代初期 (17世紀) 本阿弥光悦作

 ① 独特で角造りの、「半筒形」、楽茶碗です。

 ② 焼成中の偶然(窯変と言う)から、白い釉薬が、下半分で黒く炭化し、片身変(かたみがわり)と、

   成っています。

   外側のみでなく、内側も、上下で白黒別の色に、成っています。

   白黒の対比(コントラスト)が、はっきりしています。  

 ③ 箆(へら)使いも鋭く、竪(たて)横に、箆目が付いた、格調の高い茶腕です。

   高台脇から、高台にかけて、厳しく力強い削り痕に、光悦ならではの、風格が見られます。

   (手捻りの、楽焼きですので、当然、箆などを使い、内外を削り、形を整える、作業があります。)

 ④ 「不二山」の銘は、雪を頂く富士山を、連想したのと、窯変して、片身変が出来でき、それが、

   二つと出来ぬ(不二)茶碗である、「天下に二つと無い」と言う事から、光悦自らが、命名した

   物です。(内箱蓋表に、「不二山 大虚菴(印)」と、本阿弥光悦自身が、書付けています。)

 ⑤ 別銘(俗銘)、振袖茶碗とも、呼ばれているます。

   光悦の娘が、嫁ぐ際、振袖に包んで、持参したと、伝えられています。

 ⑥ 伝来は、天保頃に、比喜多権兵衛が所持し、後に、姫路酒井雅楽頭忠学の蔵となり、同家に永く

   伝来しました。 


2) 本阿弥光悦とは、

 ① 安土桃山時代から、江戸初期の、書家、画家、工芸家で、京都の人で琳派に、属しました。

   (1558-1637年)。刀剣の鑑定、研磨を本業としたが、書画・漆芸・製陶にも優れていました。

 ② 光悦が、作陶に携わるようになったのは、晩年の事だと、言われています。

   1615年、57才の時に、徳川家康から、京都洛北の、鷹が峯の一角を、拝領します。

   そこに、一族や友人、配下の職人と共に移住し、後に「光悦村」と呼ばれる、集団を作ります。

   79歳で没するまでの、光悦村時代に、彼は数多くの、茶碗を生み出しています。

    (尚、有名な茶碗として、重要文化財の、楽茶碗、「雨雲」があります。)

 ③ 楽焼の、手ほどきは、楽家2代常慶と3代道入に受け、樂家から陶土を、分けて貰ったり、釉薬の

   調合法を習った、という光悦の、書簡が残されています。

 ④ 樂家に教えを受ける中、楽家の樂焼と、異なる方向を目指し、オリジナルな茶碗を生み出したます。


以上で、国宝の茶碗の話を終わります。

次回に続きます。

 国宝 楽茶碗 不二山

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国宝の焼き物 (茶碗6)

2010-10-01 22:04:18 | 国宝の焼き物
我が国で作られた、茶碗も2点ほど国宝に、指定されています。

その1点が「銘 卯花墻」の、志野茶碗です。  

 国宝 志野茶碗 銘 卯花墻 (うのはなかき) 

  桃山時代 (17世紀) 美濃(岐阜県可児市) 大萱の牟田洞窯 

  作者 不詳 (加藤源十郎景成の説があります)

  大きさ: 高さ 9.6cm、 口径 10.4~11.7cm、 高台径 6.3cm

  三井記念美術館蔵

1) 志野とは

 ① 我が国の焼き物として、初めて、本格的に焼かれた、白い釉(長石釉)を使った焼き物です。

   又、日本で初めて、絵の描かれ、焼き物でも有ります。

 ② その質感の柔らかさや、温もり、そして淡雪の様な色合いは、日本の焼き物の中でも、ひと際

    特異な陶器です。

 ③ 「もぐさ土」と呼ばれる、粘り気のない白い土に、長石で作った白釉を、厚く掛けて焼きます。

   土に赤い火色が現れ、釉にも細かな、貫入が入り、「柚肌(ゆずはだ)」と呼ばれる、

   小さな穴が、無数に開き、凹凸の趣有る、白い釉に成ります。

 ④ 白い長石釉の肌合いと、酸化鉄(鬼板など)、顔料による、下絵付けが、志野の特徴です。

2) 国宝 志野茶碗 (銘 卯花墻 )とは 

 ① 卯花墻(うのはなかき)の名の由来:

  この茶碗を入れる、内箱の裏に、片桐石州が書いた、古歌の「山里の、卯の花がきのなかつみき、

  雪踏みわけし、心地こそすれ」の、書き付けが有る事から、「卯花墻」の名があります。

  「卯の花」は、見た目が雪の様なので、「雪見草」(ゆきみぐさ)とも、呼ばれています。

 ② 特徴 

  ) 形は、やや腰の張った、半筒形の茶碗で、切立(きったて)風で、口縁近く、横方向に、強く

     箆目(へらめ)が入り、口造りも、高低が有ります。(これを山道といいます。)

     又、口径も自然に、歪んでいます。

  ) 高台は、極端に低く、横方向からは、ほとんど確認できません。

  ) 釉は、ほんのり赤味を帯び、柔らい感じです。

     口縁や裾の緋色は、特に美しく、優れた景(けしき)と成っています。

  ) 釉を掛ける際の、指痕が火間に、しっかり残り、片手で鷲掴み、釉に漬けた事が、判ります。

  ) 鉄(鬼板)で描いた、垣根風の絵に、厚く掛かった釉を、卯の花に見立てています。

     尚、この絵は、井桁(いげた)風に描かれ、何を表現した物かは、はっきり判別できません。

  ) 伝来は、もと江戸の、冬木家にあり、明治20年代中頃に、室町三井家の高保に、渡ります。

     現在は、「三井記念美術館」の収蔵と成っています。

     (尚 三井家では、主に表千家流の、茶の湯をたしな、およそ300年に渡り、利休の道具を

      その核として、多くの茶道具類を蒐集しました。)

以下次回に続きます。

 国宝 卯花墻
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国宝の焼き物 (茶碗5)

2010-09-30 21:54:27 | 国宝の焼き物
前回まで述べて来た茶碗は、中国からもたらされた物ですが、次は朝鮮から輸入された、作品です。

 国宝 大井戸茶碗  銘 喜左衛門

 高麗(こうらい)茶碗の中でも、最も有名な茶碗です。

 井戸の名は、奈良興福寺の井戸氏所持の、当時評判の茶碗があり、そこから起こたと言われています。

 大井戸の名は、他の井戸茶碗よりも、大振りである為、付けられた名です。

 1) 井戸茶碗の特徴

   ① 素地は、赤褐色の粘りの有る土です。

   ② 貫入の有る、枇杷(びわ)色の釉が、全体に掛かり、(高台裏にも)「土見ず」に成って

     います。釉溜りの部分は、白っぽく不透明な色です。

     脇から高台にかけて、素地がざらつき、釉が十分熔けきらず、粒粒の縮れがあり、これを

     梅花皮(かいらぎ)と言い、井戸の大きな、見所と成っています。

   ③ 作りは、やや厚めで、荒い轆轤目が4~5段あり、高台も高く、力強くがっちりしています。

   ④ 見込みは深く、碗型をしています。茶溜りには、重ねて焼いた時の、「目跡(めあと)」が

     5~6個付いており、これも大事な、見所(景色=けしき)に成っています。

   ⑤ 「脇取」と言い、高台脇が、大きくヘラで、削られています。

     高台は、竹の節状に削り取、高台内の中央には、兜布(ときん)と呼ばれる、突起があります。

 2) 国宝 大井戸茶碗

  ① 本多能登守忠義が、所持していたので、「本多井戸」とも呼ばれますが、最初の持ち主である、

    大阪の町人、竹田喜左衛門の名を採り、「喜左衛門井戸」の方が、世に知られています。

  ② 轆轤目が強く出た、高めの「竹の節高台」で、貫入のある、枇杷色の釉が、全面に掛かり、釉の

    縮れによる、高台の梅花皮(かいらぎ)も見事に、出ています。

  ③ 大きさは、 高さ 9.1cm、 口径 15.5cm、 高台径 5.5cm

  ④ 16世紀の、李(り)朝時代の、朝鮮半島で焼成されたもので、高麗茶碗の一種です。

    民衆の日用雑器として、作られた物が、「わび」の美意識に最も適う、茶碗に見立てられ、わが

    国の、茶の湯の道具に、使用されてました。

  ⑤ 京都、大徳寺孤蓬(こほう)庵の所蔵です。

 3) その他の、井戸茶碗

    井戸茶碗は、大井戸、小井戸(古井戸)、青井戸、井戸脇などの、種類に分類されています。

  ① 国宝の「喜左衛門井戸」と、「筒井筒井戸」と、「細川井戸」とを『天下の三名碗』といい、

    「喜左衛門」と「細川」、「加賀」とで『天下の三井戸』とも言うそうです。

    「加賀井戸」は、青味を帯びた釉調に、鼠色のしみが、むら雲のような、景色を作っています。

    この茶碗を、松平不眛公が五千両で買い、「天下の三井戸」は一時、全て不眛公の所持と

    成ります。

  ② 「筒井筒井戸」茶碗  朝鮮李朝前期 

     口径 14.5cm 高台径 4.7cm 高さ 7.9cm

     もと筒井順慶が、持っていた、深めの茶碗で、「筒井の筒茶碗」と言われいています。

     筒井順慶~豊臣秀吉~京都毘沙門堂~金沢嵯峨家~個人蔵(金沢市)

  ③ その他の主な、井戸茶碗

   ) 井戸茶碗(柴田) 重要文化財  李朝  根津美術館

      柴田勝家が、織田信長から、拝領したと言う事で、井戸の名を、最初に高めた茶碗としても、

      有名です。

   ) 井戸茶碗(越後)  口径 15cm 長尾美術館蔵

   ) 井戸茶碗(細川) 

      細川忠興(三斎)~伊達家~冬木喜平次~松平不昧~松平月漂~松平直亮~畠山一清~

      畠山記念館

   ) 大井戸茶碗   銘 有楽(うらく)  高 9.1cm、 口径 15.0 cm、 底径 5.5cm
   
      織田有楽斎~紀伊国屋文左衛門~仙波太郎左衛門~伊集院兼常~藤田香雪~松永安左エ門

      東京国立博物館、重要美術品 松永安左エ門氏寄贈

      織田信長の弟、有楽斎が所持していたところから、「有楽」の銘が付きました。

      優美な大井戸で,ゆるりとした曲線美は、女性的であり,赤みを含んだ、枇杷色の釉薬も、

      しめやかです。

      高台際の、長石釉の梅花皮も、整って穏やかで、豪放な、喜左衛門井戸とは、対照的な

      作風です。

以下次回に続きます。

国宝大井戸茶碗 銘喜左衛門
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