わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 273 釉の重掛けと掛分けとは2?

2017-02-23 11:45:36 | 素朴な疑問
2) 釉の掛分け。

  施釉する部分を二重にするのでは無く、部分部分を区切り、異なる釉で彩色する方法です。

  重掛けの技法より釉の種類も格段に多く使う事で、発色の効果は一段と複雑になります。

  但し、釉同士を完全に分離するのは、極めて困難です。多くの場合若干重ね合わせないと、

  釉同士の境界線が、無釉になり易くなります。勿論これも一つの表現法ですので、決して悪い

  訳ではありません。その様な作品をあえて作る人もいます。一般に素焼き後に施釉します。

  尚、掛合わせで施釉する際には、それ前にそれなりの準備作業が必要になる事が多いです。

 ① 釉の掛分ける境目を、決めておく必要があります。

  器の内側と外側、上側と下側、右側と左側、斜め方向、円弧状又は特殊な形に掛分ける等、

  その境目は無限に存在します。更に釉の種類が増えるに従い、飛躍的に境目が増大します。

  特に釉で模様を付ける際には、予め計画を立てておかなければ、収拾が付かなくなります。

  鉛筆やマジック等で直接作品の内外に描き込むと、比較的判り易くなります。上記の筆記具は、

  施釉し本焼きすれば消失してしまいますので、心配する必要はありません。

 ② 境目を設ける方法。

  ⅰ)上記の様に、鉛筆やマジック、墨汁などで区切り線を入れる場合には、線から出来るだけ

   はみ出さ無い様に施釉する必要があります。

  ⅱ) 区切る部分をマスキングする。マスキングテープを使う事も有れば、紙など平面的な物を

   貼り付ける方法や、撥水剤や蝋(ろう)、ラテックス(陶画のり)等を使う事もあります。

   各々特徴がありますので、作品に応じて上手に使い分ける事に成ります。使用方法に付いては

   次回に述べる予定です。

  ⅲ) 区切り部分に土手又は溝を設ける。

   平面的な作品で有れば、かなり有効な方法でが、立体的な作品にはそれなりの処置が必要です

   土手で囲まれた部分には、流し掛けやスポイト掛けが可能になります。溝を設ける事で、

   その外側に広がるのを防ぎます。溝に入り込んだ釉は後で簡単に取り除く事もできます。

   取り除いた溝には、スポイトなどで、別の釉を流し込む事も可能です。

 ③ 複数の釉は同一の作品に掛けますので、焼成温度が同じであり、且つ流れ難い釉が適します。

 ④ 釉同士の境目を決める際、施釉する方法も考える必要があります。

  一般的な漬掛けで行う事も出来ます。二色程度の掛分けであれば、利用が出来ますが、掛分け

  数が多くなるに従い、かなりの制約されます。

  ⅰ) 複数の掛分けの際には、筆塗りが使い易いのですが、どうしても釉が薄塗りに成り易い

   ですので、濃い目の釉を使うか、数度に分けて重ね塗りします。素焼き上では釉の伸びが悪い

   ですので、CMC(化学のり)を利用すると塗り易くなります。

   一番良い方法は、マスキングした後にスプレー掛けする事が適します。幅の広い場合や狭い

   場合にも十分対応できるからです。又吹き掛ける回数にによって、好みの濃淡も付けられる

   利点もあります。

  ⅱ) 二種類の釉を部分的に重ね合わせると、三色になる場合もあります。

   釉同士を重ね合わせると、二色の中間色に成る場合もありますが、多くの場合全く異なる

   色に発色する事の方が多いです。それ故、予め試しておかないと、失敗する事もあります。

  ⅲ) 釉の色の濃い物を下に塗り、その上に薄めの色を塗る場合。

   例えば、飴釉の上に藁白釉を重ねる作品は良く見かけます。飴色にくっきり白色が現れます

   釉の境界線もはっきり区別でます。逆にすると、飴色が薄くなり冴えない色になり易いです

   境界線もぼやける事も多いです。

 ⑤ 掛合わせのやり方。

以下次回に続きます。

 
   
    
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質問29 灰汁(アク)抜き後の灰の再利用に付いて。

2017-02-21 22:12:26 | 質問、問い合わせ、相談事
「オカ様」より以下のご質問を頂ました。

 釉薬について質問させて下さい。

 木の実のアク抜きに、木灰を使用するのですが、アク抜き後の灰は廃棄します。

 アク抜きの方法を簡単に説明しますと、木灰に熱湯を注ぎ、そこに木の実を入れ、混ぜ合わせ

 中和させます。数日後に灰から木の実を取り出します。

 釉薬の作り方を紹介しているサイトでは、木灰を何度も水洗いし不純物の取れた灰を、釉薬として

 使用する、というような内容でした。

 質問内容は、アク抜き後に廃棄する灰を、水洗いして釉薬として使用することは可能でしょうか。

 焼き物や釉薬について全く知識がありませんので、素人の発想で申し訳ないのですが、ご意見を

 聞かせ頂ければ有り難いです。宜しくお願い致します。


 ◎ 明窓窯より

  「結論から先に述べると、灰汁抜き後の灰を処理すれば使用可能です。」

  
  木の実や野菜類の灰汁(アク)には、炭酸カリウムやシュウ酸化合物、マグネシウム化合物、

  ある種のアルカロイドや有害物等を含むことが多く、渋味や苦味などの成分を含み、体に良く

  有りませんので、これらを食す際には取り除く必要があります。

  但し、結石の原因になるシュウ酸は茹でる事で、水に溶け出します。

 1) 木の実に使用した灰には、木の実から出た有機物やその他の不純物が、多く含まれている

  はずです。一般の灰は高温で焼成した結果生成された物質ですので、有機物などは燃え尽きて

  います。 それ故、灰汁抜き後の灰をそのまま利用するのは、問題がありそうです。

 2) 釉として使う場合には、新しい真水や熱湯に晒し、水溶性のアルカロイド等の有機物を

  取り除く必要があります。良く晒した後は天日干などで、十分乾燥させます。

 3) 更に高温で焼成し、燃焼性の不純物を取り除きます。

  簡単なのは、素焼きの際、一緒に窯で焼成する事です。粉末状態にし、更に篩(ふるい)に掛け

  て、燃えカスや塊を取り除きます。勿論、灰は本焼きで焼成すると「ガラス質」に成ってしまい

  ますので、くれぐれも行ってはいけません。

 4) 最初に投入した灰と、灰汁抜き後の灰では、別の成分が付加されますので、全く同じ性質の

  灰と言う訳には行きません。それ故、特異の性質を持つ灰(鉄分の少ない灰や独特な発色など)

  として釉に利用している場合、灰の成分の違いで異なる効果(発色)に成りますので、注意が

  必要です。土灰(雑木の灰)の様に利用すれば、十分利用価値があります。


以上 参考にして頂ければ幸いです。疑問や不明な点が有りましたら、再度質問して下さい。

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素朴な疑問 272 釉の重掛けと掛分けとは1?

2017-02-07 15:14:57 | 素朴な疑問
作品に2色以上の複種類の釉を塗る場合、「重掛け」と「掛分け」の方法があります。

「重掛け」は、2種類以上の釉を重ね合わせる方法で、「掛分け」は重ねない方法です。

一色塗りに比べ、いずれも色の変化を楽しむ事が出来ます。

この方法の違いによって、釉の表情は大きく異なります。当然施釉のやり方にも違いが出ます。

1) 釉の重掛け。

 多くの場合、二種類の釉を掛ける事が多いのですが、三種類以上の釉を使う事もあります。

 但し、三種類を同じ処に重ね掛けすると、釉が厚く掛り過ぎ、釉剥げや釉のめくれ、釉の流れ落ち

 等のトラブルが起きる事が多くなります。 それ故多色の重塗りは控えた方が良いでしょう。

 ① 特別な場合を除き、一種類の釉を作品全体に施釉し、部分的に他の釉を重ねる事が多いです。

  特別な場合とは、辰砂釉の様に酸化銅を使う場合、銅が揮発するのを防ぐ目的で、辰砂釉の上に

  透明釉などを全体に塗る場合や、釉の種類によっては、二色重ね合わせてその中間色を得る方法

  です。但し、一般には、二色の中間色が出る事は少ない様です。

 ② 上(後)に行う施釉の方法は、一般に行われている方法で行います。

  例えば、漬掛け、流掛け、吹掛け、イッチン(スポイト掛け)、筆塗り等作品の大きさや形状、

  施釉効果(出来上がり具合)等を考慮して選択します。

 ③ 同じ2種類の釉を掛けるにしても、塗る順序によって釉の発色は異なります。

  一般に、下(先)に掛ける釉を作品全体に施してから、上(後)に釉を部分的又は一部に施し

  ます。

  ⅰ) 似た様な釉を重ねるても、重掛けの効果は薄くなります。

   出来るだけ、色や明度などに大きな差のある釉で、重ねる事をお勧めします。

  ⅱ) 結晶釉の様に、流れ易い釉を下(先)に塗り、その上(後)に他の釉を重塗りすると、

   上の釉も流れ落ち易くなります。その為釉の表情も違ってきます。

  ⅲ) 下の釉の影響で、上の釉が薄まり、淡い色や違う色に発色する事もあります。

  ⅳ) 異なる釉を重ね合わせると、まるで二色の釉とは異なる色と成る事も稀ではありません。

   特に、鉄を含む釉の場合には、変化が大きい様な気がします。色々試してみるのも面白いです

   勿論、中間色も出ない訳ではありません。白マット釉に黒マット釉が重なった場合、グレー色

   に出る場合もあります。

 ④ 流れ易い釉同士を重ね掛けると、一層流れ易くなりますので、注意が必要です。

  これは、釉が厚くなった事が大きな原因です。作品の底近辺(高台脇)に、施釉しない部分を

  設ける必要になるかも知れません。厚掛けを防ぐ為には、一方を薄めに掛けるのも一つの方法

  ですが、釉が薄過ぎると希望の色に成らない事も多いですので、痛し痒しです。

 ⑤ 釉の熔ける温度を揃える事が基本ですが、場合によっては、ある程度異なる温度の釉を使う

  事もあります。即ち一方が十分に溶け、他方が溶け不足になります。一般に溶け不足では釉は

  マット状になりますので、その光沢の違いが浮き出てくる効果もあります。

2) 釉の掛分け。

  施釉する部分を二重にするのでは無く、部分部分を区切り、異なる釉で彩色する方法です。

  重掛けの技法より釉の種類も格段に多く使う事で、発色の効果は一段と複雑になります。

  但し、施釉する前の作業が必要になる事が多いです。

以下次回に続きます。

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