わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話29 混ぜて作る釉17 釉の改良4(粘性1)

2013-08-31 21:47:47 | 新釉(薬)の話

作品の上に載っている粉末状の釉は、高い温度で焼成すると、熔けてガラス化し、作品の表面を

覆います。熔けるとは、多かれ少なかれ流動化する事なります。その程度は釉の粘性に左右

されます。流動化が少ないと、釉の塊がそのまま残り、表面に凹凸が現れます。

逆に、釉の粘性が少な過ぎると表面から流れ落ちてしまいます。

釉にはある程度の流動性が必要になります。

勿論、釉の流動性(粘性)の問題は、釉のみが原因ではなく、施釉の厚み、窯の温度、

窯焚きの時間にも大きく関係してきます。

ここでは、釉のみ絞ってお話したいと思います。

1) 釉の粘性(粘度、流動性)。

 釉の粘性に由来する問題として、「ブク」と「ピンホール」、「流れ過ぎ(流れ落ち)」が

 上げられます。

 ① 「ぶく」とは釉の内部や表面に大量の気泡が発生し、煎餅(せんべい)の様に、

  釉が膨れ上がる状態や、気泡が釉を突き破り、抜け出た痕として残った空洞です。

  前者は、釉の粘性がある程度大きく、泡が釉の外に漏れ出さない状態で、後者は、素地や

  釉から大量に発生した「ガス」が、ガラス化した釉の表面から抜け出ようとした場合、

  粘性が小さい為、「ガス」を釉内に留め置く事が出来ずに現れる現象です。

 ② 「ピンホール」とは、素地や釉から抜け出した「ガス」の痕が、埋まらづに残った

  針の穴の様な小さな空洞です。

 ③ 釉の流れ落ちとは、粘性の小さい事などが原因で、棚板まで流れ落ちる現象です。

2) 「ガス」の発生の要因。

 要因には素地の場合と、釉による場合があります。ここでは、釉に対する事に絞って

 お話します。

 ① 炭酸ガスの発生。

  釉中の金属炭酸化合物は、熱分解して金属と炭酸ガス(CO2)になります。

  特に炭酸バリウムは、1200℃程度で分解しガスを発生させますが、粘性が大きいと 

  ガスが釉薬中に留まり、失透釉と成ります。

 ② 酸素ガスの発生。

  酸化第二鉄(弁柄)は、還元焼成で酸素を放出し、酸化第一鉄に変化します。

3) 釉が流れ過ぎる場合。

 ① 結晶釉は結晶が成長する為には、他の釉よりも、若干流れ易い釉である必要があります。

 ② 釉が流れ過ぎて、棚板まで流れ落ちると、作品と棚板がくっ付いて仕舞い、最悪作品を

  壊す必要が起こる場合があります。又、棚板まで落ちなくても、施釉した最下部で、

  滴状の玉になって留まる事もあります。この形を乳と呼び、抹茶々碗などで、珍重される

  事もあります。

 ③ 流動性と関連した問題に、「釉の煮え」があります。

  部分的に高い温度の炎が当たったり、長時間高い温度が当たった場合、釉が流れ落ちる

  状態で、単なる釉の流れ過ぎとは、異なる表情に成ります。

  即ち、「釉が煮え」た場合の痕は、ピンホールが発生し、ピンホールの壁は薄く、

  光沢の無い斑点が現れます。

2) 粘性の調整には以下の方法があります。

 ① 粘性を大きくする方法(流れ難くする:流動性を小さくする)

 ② 粘性を小さくする方法(流動性を大きくする)

以下次回に続きます。  

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新釉の話28 混ぜて作る釉16 釉の改良3(貫入2、亀裂釉)

2013-08-30 13:33:33 | 新釉(薬)の話

4) 亀裂(きれつ)釉に付いて。

 亀裂釉とは、積極的に大きく、やや幅広の割れ目(貫入)を作る釉で、氷裂釉の他、

 鮫(さめ)肌釉、梅花皮(かいらぎ)釉、柚子(ゆす)肌釉などと呼ばれる、

 表面が滑らかではない釉もこれらの仲間です。 基本的には、亀裂は焼き物にとっては、

 欠陥品とみなされますが、その肌触りや見た目の奇抜さから、積極的に評価される

 場合が多いです。

 ① 亀裂釉を作るには、貫入を予防する方法と反対の事をすれば良いのですが、具体的

  には素地の収縮を抑え、釉の収縮を強くする事です。

  但し、ここでは、素地の話を割愛していますので、釉の収縮のみに限ったお話と成ります

 ② 亀裂の名称。

  古くから中国では、亀裂の状態によって色々の名前が付いている様です。

  a) 氷裂紋(ひょうれつもん): 氷の表面が裂けた様に大きく割れた状態のものです。

   氷裂青磁などの名前で、市販されています。 色はやや青味が強い青磁です。

  b) 牛毛紋(ぎゅうもうもん): 粗い割れ目だが氷裂紋より、細かく小さい物です。

   柳葉紋(りゅうしもん)と呼ぶ場合もあります。

  c) 魚子紋(ぎょしもん): 細かい「ひび」が多く集まった状態の物です。

   尚、粗い割れ目と細かい割れ目では、粗い方が収縮の差が大きい様に思われますが、

   逆で、細かい方が差が大きく、粗い方が差が少ない場合です。

  d) 蟹爪紋(かいそうもん): 砂地に付いた蟹の爪の痕の様な物です。

  e) 梅花皮(かいらぎ): 井戸茶碗の高台部分に見られる「釉の縮(ちじれ)」です。

  f) 我が国でも「鬼萩」と呼ばれる物は、上記の亀裂紋と趣を異にする釉です。

   特に、萩焼きの十一代三輪休雪氏の作品が著明です。

    注: 十一代三輪休雪(寿雪): 萩焼きの人間国宝 平成24年没

 ③ 梅花皮や鬼萩は、釉を厚く掛けた為、釉の表面張力が強く作用して、釉が「引き千切れ」

  状態に成った物と考えられています。いわゆる「釉のめくれ」とは異なる現象との事です。

  又、単に素地と釉の収縮差による物では無い様です。

  いずれの場合にも、粗めの土や砂混じりの土を使い、カンナで表面を荒し、釉が全面に付着

  しない様に細工する必要があります。

 ④ 亀裂釉の作品を作る。

  a) 釉を二度三度と厚く掛けると、釉に亀裂が入ります。但し、どんな釉にも対応する

   訳では有りません。

  b) 釉には、アルカリ分(K2O、Na2O)を多くし、リチュウム(Li2O)を加えると、

   見事な亀裂釉に成ります。

  c) マグネシアとアルミナは、表面張力を増加させる、有力な添加剤です。

 ⑤ 亀裂を引き立たせる技法。

   積極的に亀裂文様を表現するには、以下の方法があります。

  a) 焼成後に墨を塗り込み、亀裂にしみ込ませた後、全体を水洗いします。

   水で洗っても、亀裂内の墨は残ります。同様にして、墨の代わりに弁柄を使うと、

   赤い色の亀裂が浮き上がってきます。

   青磁の緑(または青緑)の場合には、墨の黒さが冴えます。

  b) 焼成後に砂糖水やコバルト塩に漬け、更に素焼きを行う方法。

   砂糖は糖分ですので、素焼き程度では炭化し黒くなります。

   コバルト塩の水溶液で行うと、青い亀裂紋が表れます。

   亀裂以外の部分は、水洗いすれば取り除けます。又、使用中に亀裂の色が消える事も

   有りません。

  c) 使用するに従い、「ひび」が鮮明に現れてきます。

   これは、一種の汚れが「ひび」に入り込み目立つ結果です。これを味わい深いと感じ

   るか、汚いと感じるかは、個人的な趣味ですが、汚れと感じる場合には、再度素焼き

   すれば、新品同様に綺麗にする事が出来ます。

以下次回に続きます。

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新釉の話27 混ぜて作る釉15 釉の改良2(貫入1)

2013-08-27 17:44:23 | 新釉(薬)の話

1) 理想的な釉とは?

   一般的に言われている、欠点の無い釉の条件には、以下の様なものがあります。

  ① 設定された温度で焼成すると、完全に熔け更に釉面が平滑な事。

  ② 釉面に気泡が出ず、焼成時や、作品使用時にも貫入が出ない事。

  ③ 素地と密に熔け合い、密着して剥がれず、使用時にも素地と同様に膨張と収縮を

   行う事。

  ④ 熔けて流れ落ちず、作品の表面を均質で一様に覆う事。

  ⑤ 機械的、化学的抵抗が大きく、良好な耐久性を有するガラス質の事。

  ⑥ 制作時や使用時に無害である事。

 しかしながら、上記条件を全て得る事は難しい事です、釉によっては上記条件を

  逸脱した釉が求められる場合もあります。

 例えば、貫入(かんにゅう、ひび割)や結晶、乳濁、流れ(流動性)の有る釉を求める

 人もいるのは 事実で、工芸品のみならず、普段に使う器にも要求される事も、

 珍しくはありません。

では本日の本題に入ります。

2) 貫入(かんにゅう)に付いて。

 ① 貫入とは単に、乳又は入(にゅう)と呼ぶ事もあり、釉の「ひび割れ」の事です

  「ひび割れ」の大きさも千差万別で、肌理の細かい物から荒くて大きな物まで色々

  あります。貫入の原因は、素地と釉との収縮率の差によって起ります。

  即ち、素地よりも釉が大きく縮むからです。

  窯の冷却時に素地より、釉の方が大きく収縮する結果発生します。

  尚、貫入は、焼成後数日~数年後に突然発生する事もあります。

 ② 貫入を無くす方法には、以下の様な方法があります。

  a) 素地を調節する方法: 素地の縮み率を若干大きくする。

   基本的には、素地と釉では、釉の方が縮み率は大きいものです。

   それ故、素地の収縮を大きくして、釉の縮みに合わせるのも、一つの方法です。

   ここでは、釉について述べていますので、割愛し、詳細は後日述べたいと思います。  

  b) 施釉の方法を検討する: 濃い目の釉を厚く掛けると発生し易いです。

  c) 窯の冷却スピードにも左右されますので窯焚きの方法を検討: 急冷する程

   発生し易いです。

   完全に冷却しない内(100℃以下)に窯出しを行うと、貫入が入り易いです

   但し、窯の冷え具合は、窯の大きさ、壁の厚みにも関係します。

  d) 釉を調整する方法: ここでは、釉の調整で貫入の発生を予防する方法を

   述べます。即ち、窯の冷却時に素地より、釉の方が大きく収縮する結果発生します

   ので、その対策を 述べます。

 ③ 貫入発生の問題点は以下の通りです。

  a) 表面を覆うガラス質の表面が、「ズタズタ」に分割された状態になります。

   その為、釉は機械的にも弱くなるだけで無く、茶渋や食物カス、洗剤のカズ等の

   汚れがひび割れ部に進入し、作品の表面が汚れ、汚く着色する場合も多いです。

   多くの場合、釉の表面のみでなく、素地の近くまで亀裂が入っています。

  b) ガラス質の釉は防水性に優れ、更に、酸やアルカリ等に対して、抵抗性を

   有します。(犯されない事)

   それ故、ひび割れ部から、水漏れや黴(かび)を発生させ難いです。

3) 貫入を予防する。

   基本的には、釉の収縮を少なくし、素地の収縮に近づける事です。

 ① 貫入を無くす一般的な方法は、珪石(珪酸)を増やし、熔融剤を減らす事。

   注: 二酸化珪素は、全ての原料の中で、一番収縮が少ない物質と言われています。

   熔融剤には、アルカリ元素とアルカリ土金類があり、その種類によって収縮率に

   差がでますい。

  ・ アルカリ元素では、ナトリウム、カリウム>リチウム

  ・ アルカリ土金族では、カルシウム>ストロンチウム、バリウム、亜鉛華>マグネシウム

   但し、手元の釉から、熔融剤を取り除くのは、不可能ですので、珪石(珪酸)を加える

   事に成り ます。

 ② 釉の弾力性を増す方法。

  収縮とは、お互いに引っ張り合いながら縮む事で、釉がゴムの様に弾力性があれば、

  釉が引き伸ばされても、「ひび」が入らない事に成ります。

  その様な材料として、錫(SnO2)、ジルコン(ZrO2、4%以上)、

  チタン(Ti2、2%以上)が 有ります。

  但しこれらは、乳濁釉にもなりますので、添加量に注意が必要す。   

 ③ 素地と釉の間を中間層といいます。即ち、釉が素地の表面に食い込んでいる層で、

   この層が  厚い程、素地と釉の緩衝材として働き、貫入を防ぐ事に成ります。

   貫入のある釉に、硼酸を5~10%加えると、貫入を解消する事が出来ます。

   これは、硼酸と水の混合物が素地に吸込まれ、素地を熔かす為、中間層が発達

  すると考え られています。

  ・ 又、焼成温度を若干上げたり、焼成時間を長くする(ならし時間を長くする)と、

   中間層が発達するとも言われています。

 ④ 釉掛けの厚みに左右される。

   釉には、薄く掛けた方が発色や光沢が良い場合と、厚く掛けた方が良い場合が

   あります。厚く掛ける程貫入が多く出ます。これは、素地に密着した釉は自由に

   動けませんが、素地よりやや離れた釉には移動の自由が生じ、強く引っ張れ易く

   なる為です。

4) 亀裂釉について。

以下次回に続きます。

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新釉の話26 混ぜて作る釉14 釉の改良1(熔融剤)

2013-08-25 19:08:48 | 新釉(薬)の話

手持ちの釉を改良して、使い勝手の良い釉にしたいと思った人は、多くいるはずです。

その改良したい事項として、釉の熔ける温度を下げる、ピンホールを無くす、貫入を無くす、

逆に貫入や亀裂を出す(釉のちぢれを起こす)、釉の流れ落ちるのを防ぐ、逆に流動性を

持たせ流れ紋を出す、釉に斑(まだら)模様を出す、逆に釉が斑にならず均一にしたい、

釉に更なる光沢を出す、より鮮明な色を出す、釉掛ける際の釉はげを無くすなど、

数え上がれば切がない程です。

それらに対して、原因の究明や各々の対策が採られる様になって来ています。

それなりに、研究が行われた結果です。

しかしながら、釉に対する不明な点は数多く有り、その対策も完全な物とも言えません。

今回は既存の釉に手を加え、希望の釉に改良する事を、テーマとして取り上げたいと

思います。このテーマは過去にも、取り上げた事が有り、説明が重複すると思いますが、

ご了承下さい。

1) 釉の熔融点を下げる。

 ① 焼き物で特に大事な事は、焼成で必要温度まで上昇させる事です。生焼けの状態では、

  焼き物とはいえません。しかし思うように温度が上がらない場合も多いです。

  「一土、二焼き、三細工」とも言われ、十分に高温で焼かれている事が必須条件に

  なります。施釉した作品なら、釉が熔けている事であり、無釉の場合では、

  十分土が焼き締まるまで、温度が上昇する事です。

  但し、温度が上昇し過ぎることにも、別の問題を引き起こします。

  例えば、釉の流動性などの問題や、釉の「煮え」が発生する事になります。

 ② 温度の上昇は、窯の大きさや構造と燃料の違い、更には窯の焚き方に左右されます。

  ここでは、この点に触れず、釉のみに原因がある場合の、解決方法について述べます。

 ③ 融点(熔ける温度)を下げる方法は、熔融剤(ようゆうざい)を添加する事です。

  尚、正確には、ガラス質である釉には、厳密な温度での融点は存在しませんが、

  一応有るとして話を進めます。

  a) ゼーゲル式より、アルカリ成分(塩基性成分=RO)を一定にした場合、

   アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)を少なくすれば、融点は下がる事が

   解かります。逆にアルミナとシリカが一定の場合には、アルカリ成分を多くすれば

   良い訳です。手持ちの釉から或る成分を取り除く事は不可能です。

   逆に添加する事は可能ですので、熔融剤であるアルカリ(又は、アルカリ土金族)

   を添加して融点を下げる事です。

  b) 熔融剤としてアルカリ類以外に、酸化バリウム(BaO2)や酸化亜鉛(ZnO)

   などがありますが、作用がアルカリ類と同じ様に働きますので、これらもアルカリ類

   として取り扱っています。

   尚、酸化鉛(PbO)は強力な熔融剤でしたが、有毒の為、現在はほとんど使用されて

   いません。

  c) アルカリ成分の種類。

   石灰(カルシウム、CaO)、 ナトリウム(Na2O)、カリウム(K2O)、

   マグネシウム(MgO)、硼酸(B2O3)等があります。  

   各々単独で使用せず、3種類以上混ぜて使うと、共晶現象が起こりより効果が増す

   と言われています。

  d) 上記成分を手持ちの釉に添加し、熔け易くします。

   添加量を増す事で、より熔け易くなります。

   但し、硼酸を多量に添加すると、乳濁し貫入が入り易いですので注意して下さい。

 ④ その他の熔融剤

  a) 木灰類を添加する。

   灰の中には、上記アルカリ類が豊富に含まれていますので、灰を添加して融点を

   下げる事もできます。

   但し、灰の種類によっては、成分に「ばらつき」があり、鉄分も多く含む為、

   元の釉に 色が付く可能性もあります。

  b) 弗化カルシウム(CaF2)や三酸化アルミニウム( Al2O3)も

   溶媒として使われています。いずれも市販されています。

 以下次回に続きます。     

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新釉の話25 混ぜて作る釉13 色釉4(顔料釉、その他)

2013-08-24 20:36:27 | 新釉(薬)の話

釉は生の状態と、焼成後の色が必ずしも一致しません。むしろ一致しない方が多いはずです。

それ故、初心者や初めてその釉を使う人は、色見本を参考にする必要があります。

但し、その色見本もあくまで見本で、漬け掛け、流し掛け等の施釉の仕方や、焼成温度、

還元、酸化など焼成の仕方によって、見本とは大きく違う場合が多いです。

この問題を解決する方法として、顔料(粉末状)が発明、市販される様になり、

現在では数多くの色の顔料が市販され、基礎釉に添加する事で、生の状態と同じ色で

焼成する事が可能に成りました。

但し、顔料は釉に熔け込む訳ではなく、あくまでも釉中に浮遊している状態ですので、

透明感は有りませんし、下絵付けを施しても、絵は隠れてしまいます。

1) 顔料利用の利点

 ① 各種原料成分を混ぜ合わせ合成し、焼成させる事で釉に入り込まず、釉で分解

  される事も無く、微細に拡散(分散)し、安定した色を出す事が出来ます。

  尚、一般に顔料は、焼成して作りますが、顔料の種類によっては、焼成しない物も

  あるとの事です。

 ② 色の濃淡は、おおむね顔料の添加量に比例しますので、濃淡の調整が可能な事と、

  その顔料は酸化、又は還元や両方可能などと、表示されていますので、それに従う

  限り、表示通りの色が出現できます。

 ③ 基礎釉には透明釉以外に、乳濁釉、マット釉にも添加可能な事です。    

 ④ 一般には市販品をそのまま、添加しますが、顔料の微細度によって、色調に変化が

  ある様で更に、乳鉢などで、微粉末にすると良いとの事です。

2) 顔料の種類。

 古代呉須、旧呉須、ブラック、グレー、ブラウン、ライラック、バナナ黄、カナリア黄、

 グリーン、ヒワ、トルコ青、カイヘキ、ピーコック、エンジ赤、特赤、真紅、釉裏紅、

 ピンク、ホワイト等が市販されています。 50g、100g、1Kgの単位で

 市販されていますが、最小単位で購入後、試し焼きする事を薦めます。

 尚、ご自分で顔料を調合する事も出来ますが、ここでは割愛します。

4) 顔料入りの釉

  粉末ではなく、顔料を添加した各種色釉も市販されています。

  尚、焼成温度は1200~1250℃です。

 5) その他の着色金属。

  今まで述べて来た酸化金属以外に、以下の物質がありますが、余り一般的ではなく、

  入手困難な物も多いですので、参考までに述べておきます。

 ① ウラン化合物(酸化ウラン、ウラン酸ソーダ等)

  黄色(レモン黄): 硼酸の入った釉では、1050℃以上で発色します。

  添加量は0.003モル以上。 但し、温度が高くなるに従い黒味を帯びて来ます。

  橙色: 亜鉛華を多くし、アルカリ(又は、アルカリ土金類)を少なくして、

   酸化ウランを6~10% 添加すると、橙色になり、更に、酸化錫を5%添加

   すると、褐色掛かった橙色になるそうです。

   灰色: ウラン色釉は、還元焼成で、灰色に成ります。

   緑色: 更に酸化コバルトを添加し、酸化焼成で得られます。

  ② 更に特殊な物質として、セレン、カドミウム、金、銀などがあります。

   いずれも低温での焼成が条件です。セレンとカドミウムの混合で、セレン赤釉に

   なります。金では菫(すみれ)色、紫菫色(紫金)になります、金のコロイド粒子の

   大きさで色が変わると言われています。

   銀では麦わら色になるとの事です。

  この辺の参考資料が乏しく、明快に説明できないのをお許し下さい。

以上で、色釉の話を終わります。   

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新釉の話24 混ぜて作る釉12 色釉3(マンガン、ニッケル、チタン釉)

2013-08-23 21:33:11 | 新釉(薬)の話

マンガン、ニッケル、チタンはいずれも、適量を添加する事で、釉に熔け込み透明感のある

色釉となりますが、過剰に添加した場合には、乳濁や結晶釉と成ります。

いずれも、市販されている金属です。

1) マンガン釉

  一般に入手可能のマンガンの酸化物は、二酸化マンガン(二価)(MnO2)です。

  二価のマンガンは、白色、淡い黄色、茶色、褐色、茶系黒色の釉を作り出します。

   尚、マンガンには三価(紫色)、や四価(褐色)、七価(濃い紫色)の酸化物が

   あります。

  ① 基礎釉に、1%(外割り)の二酸化マンガンを添加した場合。

    還元焼成で白色になり、酸化焼成で淡い黄色になります。

  ② 5%の二酸化マンガンを添加した場合。

    還元焼成で黄色に、酸化焼成で薄茶色から赤紫に発色します。

    強い酸化の雰囲気では、三価のマンガンが発生し、紫に発色すると言われて

    います。 酸化焼成では還元焼成より、釉に透明感が出易いです。

  ③ 10~30%の二酸化マンガンを添加した場合。

    添加量が増すに従い、酸化、還元に関係なく、濃い褐色になっていきます。

   a) マンガン結晶釉

    マンガンの添加量を増やすと、茶褐色地に黄色の斑点が現れます。

    マンガンが安定した結晶となって析出した物で、還元よりも酸化の方が出易いです。

    30%を添加した物は「マンガンラスター」と呼ばれ、表面にキラキラしたマンガンの

    結晶が現れます。

   b) 金色ラスター釉。

    二酸化マンガン(約20%添加)を利用したラスターですが、マンガン以外に

    酸化銅3%、酸化クロム0.5%程度含まれています。発色は不安定です。

  ④ アルミナと硼酸を含む釉に酸化マンガンを添加すると、濃い赤紫系の褐色に

    なります。

2) ニッケル釉。

   ニッケルを基礎釉に添加すると、結晶を作り乳濁する事があり、利用する事も

   ありますが、多くの場合、色釉の金属材料として、使われる事が多い様です。

   但し、色が不安定で「ムラ」が出来易く、使い難いかもしれません。

   ニッケルが焼き物の釉に使われる様になったのは、歴史が浅いとの事です。

  ① 酸化ニッケル(NiO)は基礎釉の違いによって、以下の様な発色になります。

    尚、添加量は1%~2%程度の場合です。

    アルカリ系の釉に酸化ニッケルが少量の場合には灰色になり、アルミナや硼酸の多い

    釉にニッケルを多量に添加すると、褐色になります。

   a) CaO釉: 茶色、緑色、灰緑色、結晶性の乳濁釉。 還元炎で灰色に

   酸化炎で緑色。

   b) ZnO釉: 茶色、焦げ茶色。マット調になります。

   c) MgO釉: 乳濁釉から緑色。

   d) BaO釉: 茶色中に暗紫色。

   尚、褐色や暗い黄色の濃淡は、温度の変化に敏感に反応します。

  ② 碧色の顔料をつくる。

   酸化ニッケルと、1.5倍の「アルミナ」を混合し、1000℃で酸化焼成すると、

   碧(青)色の顔料を作る事が出来ます。

  ③ 市販されている酸化ニッケルには、緑色の物と黒色の粉末の物があります。

   緑色の物は、ニッケル含有量が70%程度の物で、黒色は90%の含有量の物です。

3) チタン釉。

  酸化チタン(TiO2)は、黄色釉を作る原料です。

  還元炎で、暗黄~茶褐色、酸化炎で、橙黄~茶褐色となります。

  ① チタン結晶釉。
 
  a) チタンのみを6~10%程度添加した状態では、艶消風の白地に白い円状結晶を
    析出します。
 
    亜鉛結晶釉に、チタンを添加した場合、黄色味を帯びた結晶になります。
 
  b) ルチール結晶釉。 朱赤の地に金色の結晶が生まれる釉薬です。
 
    弁柄8% 酸化チタン10%等を添加して作るそうですが、詳細は不明です。
 
    その他、各種金属酸化物の添加で様々なパステル調発色の結晶釉となります。
 
 
近年、新しい釉が続々と登場する様になりました。これは、今まで使われていなかった金属類が、多く
 
使われる様になった事が、一つの原因と思われます。
 
これからも、変化のある新しい釉が開発される事が多いでしょう。
 
更に、市販されている釉を追試するのではなく、自分で新たな釉を作り出す事も大いに望まれる処です
 
以下次回に続きます。
 
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新釉の話23 混ぜて作る釉11 色釉2(クロム釉)

2013-08-20 21:12:12 | 新釉(薬)の話

酸化クロム(Cr2O3)は緑色の粉末で、緑を発色する時に使います。尚、還元焼成で

「クロム赤釉」と呼ばれる、赤やピンク色の釉を作る金属でもあります。

1) 酸化クロムは釉に熔けない。

 ① 鉄や銅と異なり、クロムは釉にほとんど熔けず、釉中に浮遊した状態で存在します。

  その為、釉に透明感がなく、同じ緑色とは言いながら、銅釉では透明感のある緑色とは

  見た目にも大きな違いが生じます。

 ② 酸化クロムの含有量に応じて、安定した若草色から濃い緑色になります。

  即ち、1%程度(外割り)を添加し還元焼成で、若草色になり、5%では、濃い緑色に

  なります。

  但し、マグネシウムが入っている釉は、緑にならずやや暗い茶色に成ります。

2) 酸化錫を添加した、クロム赤釉に付いて。

 ① 酸化クロムと酸化錫(すず)を混合して、灼熱するとピンク色になり、ピンクの顔料

  としても使われています。

  又、酸化錫を含む釉に酸化クロムを入れると、ピンク色または、マロン(えび茶)になり

  ます。

  添加する量は100g当たりの外割りで、クロムが0.3g、錫が6.0g程度です。

 ② 酸化焼成で、綺麗な濃い赤釉になります。

  特にCaO釉で透明感の無い綺麗な赤釉になり、BaO釉では鮮やかさが減少したやや

  「どぎつい」赤釉となる傾向があります。添加量は1.5~3g位が適量です。

  還元焼成では、酸化錫でやや乳濁した、綺麗な萌黄(もえぎ)色になります。

  中性炎では、赤茶色風になります。但し、いずれも透明感は有りません。

 ③ 基礎釉の影響。

  CaO釉よりも、BaO釉の方が濃くて綺麗な赤釉になります。又、マグネシウムの

  入ったMgO釉では、赤い釉には成らず、白又は白い結晶釉になります。

3) アルミナと酸化クロムとでピンクの顔料を作る。

 酸化錫は高価な金属で赤釉を作りますが、錫を使わずに以下の方法でピンク釉を作る方法

 が有るとの事です。

 カオリンなどのアルミナを酸化クロムと焼(か しょう)すると、ピンクの顔料ができ

 ます。この顔料を基礎釉に添加して、ピンク釉を作ります。

  注: 焼とは、鉱物の固体を加熱して、熱分解や相移転を起こしたり、揮発成分を

  除去したりする熱処理の方法です。

 ・ 相移転とは: 同一の物質でも、温度や圧力の変化により、物理的な性質が明確に

  異なる状態に変化する現象です。この場合、アルミナの結晶構造が変化すると

  思われます。

  例えば、水(H2O)は、氷→水→水蒸気の様に別の性質や状態に変化します。

4) 酸化錫を含む釉を、酸化クロムの釉の近くに置くと、酸化クロムの蒸発により、

  酸化錫を施した作品が、ピンクに染まる場合がありますので、窯詰めの際、置く位置に

 注意が必要です。

以下次回(マンガン、ニッケル、その他)に続きます。

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新釉の話22 混ぜて作る釉10 色釉1(コバルト釉)

2013-08-18 20:21:14 | 新釉(薬)の話

焼き物で使う色は、1000℃以上の高温で焼成している為、紫外線や酸やアルカリで消失する物では

有りません。色の大本は各種の酸化金属です。金属の種類によって発色が異なります。

更に、酸化や還元焼成の違いや、焼成温度、冷却スピードなどによっても変化します。

1) 色釉の原料となる金属には以下の様な物があります。

   コバルト(紺、藍)、クロム(緑、茶色、赤)、マンガン(無色、褐色、暗黄、紫)、ニッケ(黄、緑、

   茶色、灰色、赤紫)、チタン(黄、橙黄)、アンチモン(白、黄、橙黄)、バナジュウム等があり、

   やや有害な物質として、ウラン、カドミウム(淡緑)、セレン等があります。

   基礎釉に、色の金属以外にどの様な物質が入っているかによって、又、色の金属がどの様な

   状態で有るかによっても、発する色も変わります。

2) 個々の金属に付いて。

  ① コバルト: 天然の酸化コバルトは中国などで、極く少量算出しますが、現代では、一般に

    人工的な酸化コバルトが使われています。天然のコバルトには不純物が含まれ、深みのある

    渋い藍色を呈しますが、化学的に作られた純粋の酸化コバルトは、非常に鮮明な藍色になり

    ます。

    酸化コバルトは還元焼成で、紫掛かった藍色に、酸化焼成で濃い藍紫色に成ります。

  ) 酸化コバルトは自己主張の強い顔料で、1%程添加するだけで、十分に濃く発色します。

     5%添加すると、酸化、還元の別なく、美しい瑠璃(るり)釉になります。

  ) 呉須(合成呉須)は、酸化コバルト以外に、ニッケル、銅、鉄、マンガン等多くの不純物を

     含み、その調合の仕方の違いで、多くの種類の呉須が市販されています。(天然に近い呉須は

     旧ゴス、古代ゴスなどと呼ばれています。)

     ・ 酸化鉄を添加すると、還元で淡い青色に、酸化で黄、又は褐色になり、鉄分が多くなると

       暗い黒になります。

     ・ 酸化マンガンを添加すると、還元で灰紫に、酸化で灰褐色に、焼成温度が低い場合には、

       強い紫色になります。逆に高温では、紫色が弱くなります。

  ) 呉須は染付け用の下絵具として利用されます。1250℃以上で安定的に発色するのは、

      酸化コバルトを含む呉須のみです。

3) 瑠璃釉と呉須釉。

  ① 酸化コバルトを用いた釉に、瑠璃釉と瑠璃海鼠(なまこ)釉があります。

   ) 瑠璃釉薬は、基礎釉(石灰三号など)に1%程度の酸化コバルトを添加して作ります。

      (重量比、外割り)。 但し、基礎釉を選ぶ事により、その色合いも変化します。

     ・ BaO釉では、やや明るい瑠璃色になります。

     ・ CaO釉は、やや暗くなります。  即ち、明るさの順序は以下の様になります。

       明、 BaO釉 > CaO釉 > ZnO釉 > MgO釉、 暗

   ) 酸化コバルトを15%添加し、還元焼成すると、瑠璃色にピンクやオレンジ色の結晶が

       析出し、瑠璃釉とは、趣が大きく異なります。

    ② 瑠璃海鼠(なまこ)釉。

   ) 乳濁釉を基礎釉として、酸化コバルトを1%添加すると、白く濁った紺色の海鼠釉になり

       ます。

    ) 石灰三号100に合成藁(わら)灰100、松灰40、酸化コバルト1を添加すると、柔らかい

       色彩の海鼠釉となります。

  ③ 呉須釉: 酸化コバルトの代わりに、呉須を用いた釉です。

     市販されている呉須は、粉末の物とチューブ入りの物があります。後者は主に絵付け用の

     絵の具として使います。釉に添加するには、前者(粉)の物を使います。

   ・ 呉須には、古代呉須、墨呉須、焼貫呉須、青呉須、紫呉須、黒茶呉須など、酸化コバルトに

      他の成分を添加し、色違いの呉須にし種類も多いです。

   ・ 呉須を添加する事で、酸化コバルトとは異なる多種類の青(紺)色を作り出す事が出来ます。

次回クロム釉に続きます。

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新釉の話21 混ぜて作る釉9 銅釉2(辰砂と鈞窯釉、トルコ青釉)

2013-08-16 21:35:07 | 新釉(薬)の話

鈞窯(きんよう)とは、中国の金代、明代に鈞州と呼ばれた河南省禹県を中心とした窯場です。

青味のある失透性の白釉が掛った陶器を制作していました。その後、宋や元時代以降華北各地で

焼れています。明や清代にも華南で模倣されています。

・ 銅の発色による紅や紫の斑文のある物や紫、紅、藍釉の掛った華やかな物など多彩です。

1) 鈞窯釉とは、白い乳濁釉を基礎釉に微量の鉄分や酸化銅を添加し、赤や薄紫色が出る釉です。

   月の光の様なので、月白釉(げっぱくゆう)とも言います。鈞窯風と呼ばれる釉を入れると、その

   色は多彩です。紫紅釉は青磁の青と辰砂の赤が混ざった美しい紫色とも言えます。

  ① 乳青色の釉を掛けた青磁で、紅紫色の斑文(はんもん)を加えたものもあります。

  ② 乳緑色の釉に、微量の鉄分と銅の成分を添加し、鮮やかな青黄緑色の発色と、銅と反応して

     紅紫色の変色模様が浮き出た物もあります。

  ③ 澱青釉と呼ばれる釉は、透過性の少ない青磁釉で、珪酸分が非常に高く、高温で焼き上げ

     宝石の オパールの様に光を微妙に屈折させ、独特の色と艶を作り出します。

  ④ 紫紅釉は、器の一部に銅を塗り、その上から青磁釉を掛けて焼き、青色の中に赤紫色を

     浮かばせる技法です。 又、失透性の青磁釉と辰砂を混ぜる方法もあります。

    ・ 鈞窯釉の中で、赤紫色が入っている物の方が評価は高くなります。

 2) 鈞窯釉の調合。

  ① 辰砂釉に、骨灰や酸化錫(すず)などの乳濁剤を5~10%添加すると、辰砂釉と反応して、

    白色になったり、青白色になります。前者を月白釉と言い、後者を青鈞窯とよびます。

  ② 辰砂釉に乳濁剤として、酸化チタンを添加し還元焼成した場合、鈞窯釉が得られます。

    酸化チタンの含有量により、綺麗な辰砂から白に近い乳濁釉に変化します。

    更に、900℃程度で再加熱すると、チタンの含有量、再加熱時間、加熱温度を調整する事で、

    様々な鈞窯釉を得る事ができます。尚、再加熱は結晶を成長させる為に行います。

  ③ 灰釉による鈞窯釉。

    珪酸分が多い釉は乳濁します。藁(わら)灰には多くの珪酸が含まれています。

    透明釉に藁灰を20~30%程度添加し更に、酸化銅1~1.5%、酸化コバルト0.2~0.4%を

    混ぜて還元焼成すると、紅色の乳濁釉に紫色の斑文の鈞窯釉になるとの事です。  

3) その他の銅釉。

  ① トルコ青釉: 銅は酸化焼成すると緑色に発色しますが、基礎釉に「BaO釉」を使い、酸化銅を

     1.5%程度、炭酸リチュウム3.5~4.5%を添加し、酸化焼成すると淡青色になります。

     リチウムが添加されると、光沢と流動性が増します。

    ・ 石灰透明釉を基礎釉にする場合には炭酸バリウムを20~30%前後添加し、酸化銅と

      炭酸リチウムを同程度添加します。

  ② その他の銅釉。

     緑色をした釉には、大なり小なり銅が入っています。

     例えば、緑釉、青銅釉、ビードロ釉、海鼠(なまこ)釉等があります。

     これらに付いては、後日お話しする予定です。     

 以下次回(各種色釉)に続きます。

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新釉の話20 混ぜて作る釉8 銅釉1(織部、辰砂)

2013-08-15 21:35:56 | 新釉(薬)の話

釉の着色剤として、鉄と共に古くから使用されている金属に銅があります。

一般に銅は酸化焼成で、(青)織部釉の様な緑色に発色し、還元焼成では辰砂(しんしゃ)の様に

赤く発色すると言われていますが、実際にはもっと多彩な色を呈します。

青や赤紫、青紫、黒、場合によっては無色の透明釉にもなるとも言われています。

又、還元焼成でも赤でなく、茶色や緑色を呈する場合もあります。

1) 銅の種類

  ① 酸化銅(CuO): 酸化第二銅と呼ばれる黒色の粉末として市販されています。

     焼成中に蒸発(揮発)する性質があり、発色が不安定に成り易いです。

  ② 塩基性炭酸銅(緑青=りょくしょう): 有毒な劇物の緑色の銅です。

     劇物に指定されていますので、一般には使用しない方が安全です。

2) 酸化焼成

   素地に赤土を使うと、織部の緑が目立ちませんので、白い土を使う方が織部釉の効果が出ます

  ① 石灰透明釉に7%(外割り、重量比)の酸化銅を添加すると、透明感の強い織部釉ができます

  ② 上記の成分に松灰を40%程度添加すると、色彩に深味が出て更に、溶融温度も下がり、

     流動性が増し、流れによる濃淡も現れます。

  ③ 土灰透明釉に7%の酸化銅を添加しても、②の様な状態になります。

  ④ 10%と酸化銅を増やして行くと、緑色が濃く成るのではなく、釉は光沢の無い黒い酸化銅の色

    に成って行きます。(綺麗な色とは言えません。)

3) 還元焼成

   基礎釉に酸化銅を添加し、還元焼成で朱紅色になる釉を辰砂(しんしゃ)釉といいます。

   特に牛血紅(ぎゅうけつこう)や火焔紅(かえんこう)、桃花片(とうかへん)が有名です。

    注: 牛血紅とは、鮮血の色で強い赤が特徴です。1700年頃景徳鎮で発明された様です。

       火焔紅とは、真紅(しんく)の上に藍紫色が煙の様に漂い、燃え盛る炎を思わせまる釉です

  ① 酸化銅を1%以下添加し還元焼成後急冷すると、銅が石灰透明釉に吸収され、透明になり

     ます。

  ② 上記条件で徐冷すると、釉中に熔けた酸化銅が、小さな粒(コロイドと言う)が析出し、赤く

     発色します。還元により酸化第二銅は赤い酸化第一銅に変化します。細かい第一銅は橙色

     ですが、釉中では赤くなります。

  ③ 辰砂の赤は、冷却過程の900℃程度から始まり、室温まで徐冷した場合に一番赤が

     鮮明になります。  

  ④ 同じ酸化銅の量を添加しても、基礎釉に何を使うかによって、赤い色も変化さいます。

   ) CaO釉に酸化銅5%添加の場合: 緑色が混じったぼんやりした赤色になります。

   ) BaO釉に酸化銅1%添加の場合: 深味のある赤い色となります。

      更に、酸化錫(すず)や骨灰を添加すると、輝きが増し質的にも良い釉に成ります。

      酸化銅5%以上になると、還元焼成でも緑色に発色します。

   ) ZnO釉に酸化銅5%添加の場合: 安定感のある(均一な)赤色になります。

   ) MgO釉に酸化銅1%添加の場合: MgO成分を減らし、結晶の析出を抑えると淡いピンク

      色になる場合もあります。(但し焼成条件は難しそうです。)

   ⑤ いずれの基礎釉でも酸化銅を15%添加すると、表面が曇った緑色、又は黒に発色します。

      酸化銅が釉に熔ける量に限界がある為、酸化銅がそのまま残る為と考えられています。

      但し、ZnO釉では、明るい緑色になります。

      尚、表面の曇りは酸化銅の結晶が析出したもので、現在では薄い塩酸に漬けて取りますが

      以前は、栃(とち)の実の殻を入れた水に漬けて取り除きました。

以下次回に続きます。

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