わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 318 陶芸の手順とは35(本焼き後の手順2)

2017-12-29 16:06:01 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

8) 使用前に行う事。

 ① 割れやひびが無いかを確認する。

 ② 食器用の水漏れ防止剤を使う。

 ③ 底(畳付)に砥石を掛ける。(以上が前回迄の話です。)

 ④ 土鍋など直火に当てて使う作品(耐熱食器)。

  普通は窯から出した作品は上記処理を行った後や、市販されている作品は購入後、直ぐに使え

  ます。例外として、土鍋等を直ぐに使用する事は避けるのが一般的です。

  ⅰ) 新品の土鍋は水を通し易い。

   土鍋には土鍋専用(直火可能)の土を使います。特徴として耐熱を保つ為にペタライトを多く

   含み、最高温度も1200℃(SK-7)で焼成します。赤鍋土の場合には、1180℃程度です。

   注:ペタライト( リチウム長石、葉長石)とは;土鍋土には、40~50%入っています。

    この物質を入れる事で、熱膨張率を少なくし直火で焚いても割れない鍋になります。

   土鍋の内側と側面は施釉しますが、直火が当たる底は無釉に成っています。

   焼きの甘さによる焼き締まりがやや弱く、素地の粒子もやや粗い為、更に底が無釉であり、

   場合によっては内側の釉に貫入(ヒビ)が発生する為などで、新品の土鍋を何の処理もせず

   使うと、水漏れ(水が染み出す)恐れがあります。

  ⅱ) 「目止め」をしてから使用する。

   上記理由により粘土間の隙間を無くすのが、「目止め」と呼ばれる方法です。

   これは、土鍋を長持ちさせる方法て、「ヒビ」の発生も抑制してくれます。

   「目止め」用には、片栗粉や「お粥(おかゆ)」等の澱粉質を使い、細かい隙間を埋めます。

   a) 片栗粉を使う方法。

    市販されている安価な片栗粉は、ジャガイモの澱粉を使っています。

    水と片栗粉(水に対して約10%程度)を溶き、土鍋の八分目程入れ、弱火で沸騰させます。

    沸騰させたら火を止め自然冷却し、その後中身を捨て良く水洗いし、乾燥させれば完成です

   b) お粥(おかゆ)を炊く。

    残りご飯を使うと、速くお粥を作る事が出来ます。

    ご飯茶碗半分ほどのご飯と水を土鍋の八分目ほど入れ、弱火で炊き込みお粥を作ります。

    炊き上がったら自然冷却し、お粥を取り出し土鍋を水洗いします。完全に乾燥すれば完成

    です。尚、米のとぎ汁や小麦粉を使う事もありますが、澱粉の濃度が薄くなり勝ちで、

    目止めの効果が薄いと言う方もいます。

    長らく使用し続けると、目止めの効果が薄れ水漏れを起こす様でしたら、再度目止めを

    行います。

   c) 土鍋使用上の注意事項。

   ・ 土鍋は意外と脆いですので、急熱や急冷は避けて下さい。

    即ち、最初は弱火で、次第に土鍋が暖かく成ったら火力を上げます。

    又、底に水滴などが有る場合は、拭き取ってから火にかけます。熱い土鍋を急激に冷やす

    事も厳禁です。

   ・ 土鍋の臭い消し。

    土鍋を長く使っていたり、臭いの強い食材を使用すると、土鍋に臭いが着く事があります。

    その際には、茶葉(茶殻でも可)を入れ10分程煮立てると臭いを消す事が出来ます。

   ・ カビ(黴)が発生した土鍋には、「(お)酢」を約50cc程入れ、弱火で10分程煮沸する

    と良い。「酢」には殺菌効果と消臭効果があります。

    尚、カビ防止には湿気の多い場所や濡れたまま保管しない事です。

   ・ 焦げが出来た場合には、重曹を入れ焦げを浮き上がらせてから、ブラシや金属類で強制的

    に剥がします。但し、土鍋を傷付けてはいけません。

    尚、焦げの程度が軽微の場合には、一晩水に着けて置くと、焦げが浮き上がる場合もあり

    ます。

   ・ ヒビ割れ防止

    熱い状態の土鍋を冷水に漬けると、割れを起こす事もあります。

    常温でしっかり冷ました後、水洗いします。長時間洗剤液に着けておくと、洗剤が浸み込む

    事がありますので、注意が必要です。

以下次回に続きます。  
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素朴な疑問 317 陶芸の手順とは34(本焼き後の手順1)

2017-12-21 21:51:06 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

8) 使用前に行う事。

  窯から出した作品は、そのまま販売したり使用する事は出来ません。

  見た目では何の問題も無く、完璧な作品と見えても、実際には使用に耐えない作品である可能

  性があるからです。

 ① 割れやひびが無いかを確認する。

  大きく割れた作品であれば、容易に見出す事も可能ですが、良く観察しないと判らない場合も

  あります。但しここで述べる「ひび」は素地本体に発生した物で、釉に発生する「ひび」即ち貫入

  の事では有りません。

  ⅰ) 多くの場合、底割れとして表れます。

   即ち、底の中央に「I又はS字状」に割れる状態で、内側のみ又は裏面のみに現れる場合と

   裏表に貫通して現れる場合があります。一方のみの場合には水漏れを起こさない事が多いの

   ですが、貫通した場合には、必ず水漏れを起こします。際どい場合には、太陽や明るい方向に

   向けて覗き込みますと、点状の明かりが見える場合は貫通しています。水を入れなくても確認

   できますが、不安な場合には水を注ぎ込み確認した方が良いでしょう。勿論補修する方法は

   幾つかあります。

  ⅱ) 持ち手(取っ手)のある作品(例えばカップ類や土鍋)では、持ち手の根元(本体に接し

   ている場所)に「ひび」が入る場合があります。この部分の「ひび」は使用時には常に荷重が

   掛り、「ひび」は拡大する方向になります。この部分が取れる事は大変危険です。一般に作品

   に「ひび」が入っている場合、作品を指の爪等で弾いてみる事です。

   「ひび」が無い場合には、高く澄んだ綺麗な音がしますが、「ひび」の入った作品では、低く

   濁った音色になりますので、容易に確認する事ができます。勿論、取っ手がグラグラと動く

   様でしたら使い物に成りません。

 ② 食器用の水漏れ防止剤を使う。

  以前でしたら食器以外に使う水漏れ防止剤(有臭)が有りましたが、現在は有毒性が指摘され

  ほとんど使わなくなっています。本来しっかり焼き締まった作品では、水が漏る(しもると言い

  ます)事はないのですが、焼きが甘かったり、粗めの素地を使うと焼き締まりが弱く、ジワジワ

  と染み出てきます。特に花瓶類の様に長い間水を入れる器の場合に起こり勝ちです。

  防止剤を少量内側に流し込み、内側全体に掛かる様にし、外に流し出したら、出来れば一晩

  放置し乾燥させます。特に目の粗い素地では、流し込んだ状態で半日放置し、防止剤が素地に

  吸い込む様にしてから、防止剤を外に出し、一晩乾燥させるとより完璧です。

  又陶器類は水を吸い易く、乾燥に時間が掛ます。その為、梅雨時などでは器の高台内や高台脇

  に「カビ」が生える恐れが生じます。その為、特に高台内と、畳み付き部分に水漏れ防止剤を

  塗っておくと予防する事が出来ます。その他ベタ高台の様に無釉の場所も、筆等で塗るとより

  安心です。但し、食器類の内側には、なるべく使用しない方が良いでしょう。何故ならば陶器類

  は使用する直前に、水に浸すと若干釉が水を吸い込み、色が綺麗に出る事が多く成るからです。

  同様な事は花瓶類の外側にも言えますが、長く放置する物ですので、効果は限定的です。

  尚、食器用の水漏れ防止剤は、陶芸材料店で手に入ります。

 ③ 底(畳付)に砥石を掛ける。

  窯から出した作品は、底が荒れています。底にはアルミナを塗ってあり、白くなっている場合

  もあります。この部分に砥石を掛けるのは、食卓やテーブルを傷付けない為です。何らかの

  理由で食器を滑らせると、食卓などに「かすり傷」ができます。砥石が無い場合には、目の細

  かい紙ヤスリを使うと良いでしょう。昔の瀬戸物屋さんでは、高台同士を向かい合わせて、

  こすり合わせて滑らかにしましたが、現在では行っていません。陶器の場合、高台が破損する

  恐れが生じますので、行わない事です。

  更に、棚板の掃除が不十分で、釉の残骸が棚板に乗っている場合、本焼きした本体の底に、

  上記釉の残骸がこびり着く場合には、これは取り除く必要があります。多くの場合釉のみの事

  は少なく、棚板に塗られたアルミナコーチングも一緒にこびり着いています。これは砥石では

  中々削り取り難く、「ダイヤモンドやすり」を使って取り除きます。

以下次回に続きます。  
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素朴な疑問 316 陶芸の手順とは33(本焼きの手順13)

2017-12-05 17:15:11 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

7) 窯出しに付いて。

  窯出しは緊張と不安もありますが、どの様に焼き上がっているかの期待もある作業です。

  何度経験してもこの感覚は変わりません。

 ④ 窯出し後の処置。

  ⅰ) 数人の作り手の作品を焼く共同窯の場合、人毎に作品を集める必要があります。

   共同窯でない場合には、作品毎に集めます。その際作品の大きさ別に仕分ける方法と、釉の

   種類毎に仕分ける方法があります。出来れば釉の種類別に仕分ける事をお勧めします。

   勿論、どの釉を使って焼き上げた作品であるかが、判っていなければ成りません。

   前に述べましたが、同じ釉であってもその表情は大きな差が出る事が多いです。特に還元焼成

   の場合が多いです。 薪窯となると一層変化が大きくなります。 

 以上までが前回の話です。

 ⅱ) 良く焼けた作品は、特に良く観察する事。

   窯のどの位置に窯詰めしたか、作品の周囲にはどの様な作品が置かれていたかも確認します。

   焼成の最高温度は勿論、焼成過程や冷却時間、施釉の種類等を記載すると同時に、それらの

   どの要因によって良い作品に焼き上がったを検討する事も大切です。但し、これらの要因を

   分析しても、次回も同じ様に良い作品に焼き上がる事が保障されないのが、窯焚きの難しさで

   す。特に窯変と呼ばれる現象は稀に起こり、その要因が不明な事で更に珍重される事に成り

   ます。

  ⅲ) 棚板に流れ落ちた釉がある作品の処置。

   窯の最高温度や焼成時間が長過ぎた時、更に流れ易い結晶釉を使った場合に起こり易い現象で

   す。この場合作品が棚板に完全に熔着し、作品を綺麗な状態で棚板から剥がす事はかなり難し

   くなります。

  イ) 棚板の裏側から木槌などで強く叩き衝撃を与えて剥がします。

   棚板上には白色のアルミナコーチングが塗られています。裏側から衝撃を与える事で作品を

   コーチングと共に剥ぎ取る事が出来ます。勿論熔着した面積とも関係しますが、かなりの衝撃

   が必要になります。頑固に熔着している時には、数回叩く必要があります。

  ロ) 熔着面積が部分的で少しであっても、無理やり剥がさない事です。

    熔着が小さな程、無理やり剥がすと作品の熔着部分から作品が割れ易くなりす。

    作品を割らない為には、鏨(たがね)で熔着部分の周囲を丁寧に叩きコーチング部分ごと

    棚板から剥がします。

  ハ) 作品に付いたコーチングはダイヤモンドやすり等で丁寧に取り除きます。

    コーチング剤は硬くて強固ですので、容易に取り除く事が出来ませんが、気長な作業になり

    ます。グライイダーがあれば作業も捗り(はかどり)ます。

  ニ) 作品を取り除いた棚板の部分は新たに、コーチングを塗り補修します。

    何度も補修を繰り返すと、棚板の表面が凸凹になりますので、紙(布)ヤスリ等で平坦に

    します。尚、補修をしなかった棚板も数回の本焼き後に、棚板全体にコーチングを塗り棚板

    を保護します。

  ⅳ) 蓋物の作品の処置。

   一般に蓋物は蓋をした状態で本焼きします。これは作品が歪み蓋が出来なくなるのを防ぐ為で

   例え本体が歪んでも、少なくとも蓋をした状態で焼成した場所では、蓋と器が一体に納まる事

   が可能になる為です。蓋物で問題に成るのが、蓋が本体に焼き付き取れなくなる事です。

   原因は釉同士が熔着する為です。その他。赤土などの鉄分を多く含む素地を使う場合、高い

   温度で焼成すると、素地同士が熔着する場合もあります。その対策として、

  イ) 施釉後に蓋と蓋受け部の釉を落とすと共に、両方をスポンジや布を水で濡らし、拭き取り

   ますが、これだけでは不十分です。

  ロ) 一番有効な方法は、両方が接する部分に、水に溶かした水酸化アルミナ等を筆などで塗る

   事です。アルミナは高温でも熔けませんので、両方が熔着し難くなります。

  ハ) 流れ易い釉を使う場合には、施釉しない部分を通常より若干多くする事です。

   高温で釉が流れ出し、蓋と蓋受けとの間に流れ込まない様にします。

  ニ) 上記対策を施しても、熔着する事はしばしば起こります。その場合、蓋の摘みを持って

   揺するとカタカタと音がすれば、熔着部分は少ないですので、隙間があれば竹ヘラ等でこじ開

   ける事も可能ですが、強引に剥がすのは禁物です。数箇所が熔着している場合には、木槌など

   で外部より衝撃を与え、熔着部分を剥がす方法も有効です。

   全面に熔着した場合、剥がすのはほぼ不可能です。多くの場合本体共廃棄処分にするか、

   蓋のみを助けるかです。但し蓋だけを助けるとしても、本体には大きな傷が残ります。

   尚、アルミナコーチングや水酸化アルミナ等は陶芸材料店で入手できます。

8) 使用前に行う事。

以下次回に続きます。
   
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