わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問 53 大皿が本焼きで底割れした原因とは?

2022-06-29 17:59:54 | 質問、問い合わせ、相談事

「さく様」より 以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの見解を記します。

 

先日ガス窯で還元焼成で焼いた大皿(直径40㎝)が、本焼きで底割れしてしまいました。

高台内側が、高台付近に沿って、4分の3ほど円弧上に割れています。厚みは4㎜ほど。

今回、素焼時点で割れは見当たらず、本焼きでぱっくり割れてしまいましたので、

焼き方に原因があるのかと思いました。

黄土に3号透明釉をかけ、還元焼成。窯の大きさは0・2立米。

950℃~1150℃の間還元でその後1240℃まで中性~酸化です。

尚、熱電対は窯の手前中央にさしています。

焼成が原因だとしたら、心当たりとして、いつもの最高温度は1230℃あたりなのですが、

今回10℃高くなってしまったこと、中性の間に急に上がってしまったこと(1時間で100℃)です

本焼の仕方で割れることはあるのでしょうか。

ご返答いただけますと幸いです。


どうぞよろしくお願いいたします。

 

◎ 明窓窯より

本焼で割れる事は、決して珍しい事では在りません。

今回の件では、原因は幾つか在りそうです。

1) 素地に黄土を使った為

 黄土は酸化鉄が入っています。勿論,含入量の違いによって素地の色も異なります。

 薄黄色から茶色、更にはより濃い茶色から黒色と変化します。

 焼き上がった色はどの様でしょうか?

 又、自然の黄土か、調合した黄土かによっても性質も異なります。

 A) 一般に鉄分は粘土の耐火温度を下げる働きが有ります。

  それ故、白色粘土類より高温で「ヘタル」(柔らかく成る)確率が高くなります。

 B) 鉄分が多いと、土が焼き締まる温度は低くなります。

  それ故、特別高い温度で焼く必要はありません。むしろ一般の粘土よりも若干低い

  温度で焼いた方が良い結果がでる可能性が高いです。

 C) 鉄分の多い粘土は、還元焼成で更に耐火度が弱く成ると言われています。

  還元を強く掛ければ強い程、影響力は強く成ります。

2) 成形時間の問題かも知れません。

 A) 素焼きでは傷は無いとの事ですが、多くの場合些細な傷や割れを見逃している

  事が多いです。素焼き後の目視では見えない傷が有った可能性も有ります。

 B) 些細な傷や割れを見つける良い方法は、素焼きした作品を水にくぐらせて濡らし

   その後の素地の表面が水を吸収し乾燥する様を観測する事で見つける事が出来ます。

   即ち、割れがある部分は、その割れ目に水が浸み込む為、周囲より乾燥が遅く

   はっきりした線状に現れます。

  尚、割れた断面を観察する事で、素焼き前か本焼き中か又は冷め割れにより物かの

  判断がある程度わかる場合が多いです。

  即ち、断面全体に釉が掛かっている場合は、素焼き時に、断面の周囲の場合に釉が残って

  いれば本焼き中に、断面に全く釉が無い場合には、冷め割れの可能性が有ります。

3) 大皿は高台位置を何処に決めるかによって「ひび」が入り易くなります。

  又、鉢類よりも、平たい皿の方が危険度は増します。

 A) 大皿の場合、高台位置を中心側に寄せると、皿の外周側が下に落ち易く成り、

  外側過ぎると、皿中央部が下に落ち易く成ります。

  その際、高台周辺で割れが発生する場合が多いです。

 B) 上記の危険性を回避する為に、大皿の場合二重高台にする事が有ります。

   即ち、大小の高台を内外に設ける方法です。

 C) 割れ予防方法として、高台脇に「R]を付ける

   高台と本体の繋がり部分に「R]を付け、即ちに部分的に肉厚にし、強度を持たせる

   方法です。高台脇をすっきりさせる為には、シャープにしたい所ですが、

   高台内側ではほとんど目に入りません。

   又高台の断面を台形にする方法も有ります。

4) 割れの原因は多肢に渡ります。

  一番の問題は、何らかの歪(ひずみ=ストレス)が発生した結果です。

  それが、熱的歪(収縮歪など)なのか、機械的歪(偏肉など)なのかは、

  作品を見て判断するか、経験によって判断するしかありません。

以上 思い付く程度の事を述べました。参考に成れば幸いです。

コメント (1)
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