わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 171 大きな作品はなぜ難しいか6?

2015-07-29 20:07:03 | 素朴な疑問
9) 大物の作品を窯詰めする時の注意。

  作品が制作出来き乾燥や施釉がなされたら、次に焼成になります。当然、大きな作品が焼ける

  窯が条件です。昔は大窯と言う共同窯を使っていましたので、大きな作品を数多く焼く事が可能

  でしたが、近年は量産品を除き、個人窯が普通ですので、大きい窯を所持している方は比較的

  少なくなっています。その為、他の窯を借りる場合もあるかも知れません。焼成の際十分容積の

  大きい窯であれば、数個の作品を同時に焼成できますが、ギリギリの大きさであれば、一個のみ

  に成る可能性もあります。

 ① 大物を窯に運ぶ時と窯詰め時の注意。

  窯の構造として、横(前)扉式、上扉式、そしてシャトル式の物があります。それぞれ一長一短

  があり、窯積めの際、死角になる部分も違いがあります。大きな作品ほど死角の範囲も広く

  なります。又、大きな作品は慎重に窯のある場所まで、移動させなければ成りません。

  一人で持ち運ぶ程度の作品から、2~3名の人手が必要な物があります。又車を使って他の場所

  に移動する場合も発生するかも知れません。いずれにしても、本焼きが済んでいない作品は、

  脆く壊れ易いです。当然部屋の出入り口は、十分広く開け放されている必要があります。

  窯までの移動の際に作品を破損する事も、結構多い事故です。

  a) 持ち運ぶ際、大きな作品は、なるべく板(亀板)などに載せた方が安全です。

   特に移動中、揺れる様な不安定な作品では、底に楔(くさび)方の粘土片を噛まし安定させる

   様にします。この楔も窯詰めの際に利用すれば、作品を安定して窯詰めする事ができます。

   場合によっては、紐などを作品に掛けて、揺れを抑える必要がある場合もあります。

  b)上扉式の窯の場合、窯詰めには作品は高く持ち上げ、なるべく水平にする必要があります。

   当然不安定な姿勢に成ります。上部より中を覗き込む事になりますので、裾広がりの作品には

   向いていますが逆三角形形の作品では、底周辺が見え難くなります。尚、大皿の様な作品では

   細い紐や糸を二本又は折り返して二本にして、皿の高台の両端に掛け、吊り下げる事で狭い

   場所でも窯詰めが可能に成ります。横扉の場合には、奥行きが死角に成りますので、後ろの

   壁との距離を間違わない様にします。安全なのはシャトル式の窯で、周囲の状態を把握しな

   がら窯詰めできる利点もありますが、他の窯よりも容積が少なくなる傾向があります。

 ② 焼成で必要な温度まで上昇させるには、窯に適量の作品が無ければなりません。

  作品が少なければ、早く温度が上昇すると考えがちですが、必ずしもその様には成りません。

  温度が上昇するには、蓄熱性が必要で蓄熱する量の作品が無いと、熱は無駄に外部に逃げて

  しまいます。但し、多く詰め込み過ぎると、火(熱)の回りが悪く、温度は確実に上昇が遅く、

  目標温度になら無い場合も多いです。

  ) 大きな作品はどうしても、窯に隙間が出来易いです。何らかの方法でこの隙間を少なく

   する必要があります。特に円形の作品はその周囲に隙間が出来ます。隙間の大きさによっては

   その場所に他の作品を置く事も可能ですが、最初から考えておかなければ適当な物は見つかり

   ません。その場合、ダミーの物質(支柱など)を置く方法もあります。

  ) 作品をどの位置に置くか。

   a) 窯の容積がぎりぎりの場合には、考える余地もありません。作品を窯詰めした場合、

    若干隙間が出た場合が問題に成ります。窯の中央に置くと、周囲の熱は均等に当たり易いで

    すので理想的ですが、他の作品を入れる際には、やや端に置いた方が隙間が広く出来易いです

   b) 高さ方向に余裕がある場合。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 170 大きな作品はなぜ難しいか5?

2015-07-26 16:57:17 | 素朴な疑問
8) 大物は乾燥に時間が掛かる。

  素焼きをする場合や、焼き締め陶器であっても、焼成の為に窯に入れる際には、完全に乾燥して

  いなければなりません。

 ① 完全に乾燥する条件として、環境(部屋、置き場所、室温)、天候(季節、気温)、作品の

  大きさ、表面積の割合(密閉度合)、そして作品の肉厚等が関係します。又、一塊の土から作った

  場合は、さほど問題に成りませんが、継ぎ足し継ぎ足しによって大きくした作品では、その繋ぎ

  目で乾燥度合が微妙に変化しますので、状況によっては、「亀裂やひび」が入り易いです。

  当然、大きな作品は、強度を保つ為、普通より肉厚に作る必要があります。中でも乾燥の時間を

  大きく左右するのは、作品の肉厚です。上部の重さに耐える為、作品の下部に行くほど肉厚に

  する必要があります。一見白く乾燥している様に見えても、厚い素地の中央付近は、乾燥が

  不十分な場合が多いです。その為、素地の中芯まで十分乾燥させる為には、長い時間を掛ける

  必要があります。

 ② 全体を均一に乾燥させる為には、度々作品の置く向きを変更するのが肝要です。

  一方からの乾燥では、作品が歪む恐れがあります。最後に天日干して、完了する事が出来ます。

  但し大きな団子の様な部分で、ギッシリ中までは土が詰まっている場合(即ちムクの場合)、

  内部は中々乾燥しませんので、ドリル等で小穴を開けると、内部(中心部)が速く乾燥し、

  窯の中での爆発を防ぎます。

 ③ 急いで作品を完成させても、その後の乾燥に意外と時間を取られる事は、珍しい事ではあり

  ません。急ぐからと言って急激な乾燥は、素地のひび割れや、亀裂の原因に成りますので、

  出来るだけ慎重に行う事です。作品によっては数週間を要する事もあり、1ヶ月以上掛かる事も

  稀ではありません。完成期限が決っている作品は、なるべく早く取り掛かる必要があります。

 ④ 乾燥は自然乾燥を基本にしますが、場合によっては、乾燥室やドライヤー等を使う事もあり

  ます。以前ですと、壷の内部に熱電球を垂らし、電球の熱で内部から乾燥していたようですが

  近頃は見る事も少なくなっています。均一に乾燥させる為に方向転換させる際、作品を持ち

  上げたりしますが、重たい作品を移動させるのは、結構危険が伴います。

 ⑤ 乾燥は上部や肉厚の薄い部分から始まります。

  器の内部や底の部分の乾燥は遅く成ります。底部は天地逆にして乾燥させる事もあります。

  但し、ひっくり返す作業が難しい場合も多いです。底の水分を乗せた板に吸い取らせるのも一つ

  の方法です。板を度々取り替える事で、意外と水分を取る事も出来ます。

  乾燥が他の部分より進み過ぎた時には、濡れた布などを巻き付けたり、霧吹きで霧を吹きかけて

  乾燥を抑える場合もあります。

 ⑥ 乾燥具合を音で判断する事も出来ます。

  慣れた方なら、指で弾いたり、軽く叩く事によって乾燥具合を知る事も可能です。丁度西瓜の

  熟れ具合を見るのと同様です。乾燥するに従い高い音になります。

  作品全体を乾燥し過ぎて、問題になる事はほとんどありません。数ヶ月店晒し(たなざらし)

  状態で有っても何ら焼成に影響はでません。場合によっては、「黴(かび)」が発生するかも

  知れませんが、焼成してしまえば黴は燃焼し、黴の影響は無くなります。

9) 大物の作品を窯詰めする時の注意。

以下次回に続きます。 
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素朴な疑問 169 大きな作品はなぜ難しいか4?

2015-07-23 18:22:46 | 素朴な疑問
7) 大物の作品を作る際、「コテ類」を使う事です。

 ① 陶芸に限らず、作品を作る際には、手や指は一番重宝な道具です。しかし手や指で土(素地)

  が触れる範囲は極く狭いです。それ故、小さな作品では手や指のみで作品を作る事は、比較的

  容易ですが、大きな作品では事情が少し異なります。

  作品が大きく面積が広くなった場合、手や指だけでは、一度に押さえる(作業できる)範囲が

  狭いですので、全体の形を整えたり、連続した綺麗な形に作る事は、意外に難しくなります。

  更に細々続ける事は、効率的な作業とも言えません。そこで何らかの道具(用具)を使う事に

  なります。その代表的な物が「コテ類」や叩き棒で、大げさに成ると、型枠を使う事もあります。

 ② 「コテ類」は手や指の代用として使われますが、より積極的にはこれを使わなければ上手に

  作品が作れない事もありえます。特に轆轤作業では、「コテ」は有用です。

  「コテ」類には、長い柄の付いた「柄コテ」や、皿などに使う専用の「コテ」、更には汎用性の

  ある雲形定規風の「コテ」などがあります。多くは木製の物が多いです。代表的な形の「コテ」

  は市販もされていますが、ご自分の作品に応じて自作する人も多いです。

  「牛ベラ」と呼ばれる物は、木製、硬質ゴム、プラスチックなどの素材で出来ていて、幅の広い

   やや長めの「コテ」で先端部分が内側に湾曲しています。器の内側のカーブを一定に保つ為の「

   コテ」とみなす事ができます。

  ) 基本的には、壷や花瓶等の袋物や、皿や鉢などの器の内側に押し当てて、形を整える場合に

   使います。その他土を薄く伸ばす際にも利用します。「コテ」には水分を含ませ、土との抵抗

   を少なくする必要があります。又、抵抗を少なくする為、回転方向に対して直角に対し、

   やや手前に斜めに傾けて使用します。

    広い範囲を面状に押さえますので、「コテ」はしっかり手や指で保持する必要があります。

    「コテ」が振ら付いたり、弱い力では、作品を望む形にする事はできません。

    但し、「柄コテ」は、先端付近に凸状の突起を持ち、点又は線状に押さえ、胴部分を膨らま

    せる時に使用します。手の入らない場所や、届かない場所に当てて使います。

    内側から滑らかな曲線にするのが目的ですが、使いこなすまでには、ある程度の練習が

    必要です。

  ) 内側に使用する「コテ」と向い合う様に、外側に手を添える必要があります。

    力関係では、コテ側(内側)を強くし、外側はやや弱くし、内側から押されたら外側の手は

    外に逃げ、径を大きくする必要があります。

  ) 「コテ」を使う事で、一定の形と連続した線や面を作り出す事ができます。

    又「コテ」は単に、形を整える役割の他、土を締める効果もあります。土の締り具合が弱

    いと、乾燥時や焼成時に、作品に割れや傷が発生します。

  ) 尚、積極的に土を締める、叩き棒があります。唐津焼きなどの大壷を作る際には、内側

    から当て木を当て、外から叩き棒ではさみ付けながら、土を締めます。その際、叩き棒に

    刻み文様があれば、より強く土が締まると同時に、叩いた跡が文様として景色になります。

8) 大物は乾燥に時間が掛かります。(時間を掛けて乾燥させます。)

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 168 大きな作品はなぜ難しいか3?

2015-07-21 22:16:43 | 素朴な疑問
6) 持ち堪える事の出来る形状にする。

 大きな作品ほど、全体のバランスが大切です。極端に背が高かったり、底の面積が狭い場合や、

 更には、手捻りの作品に多いのですが、左右の形状と大きさ、重量が異なる場合などでは、バランス

 が悪く、制作時や焼成時に窯の中で作品が倒れたり、崩れる恐れがあります。

 ① 全体の重心が何処に有るかによって、置いた時の安定度が決ります。例え何かの調子で倒れ

  掛かった場合でも復元力がれば、元の状態に戻る事ができますが、重心が高い場合や、左右

  どちらかに偏る場合には不安定になります。尚、制作時に作品を手で持つ事が出来れば、おおよそ

  の重心位置を知る事ができます。手に持つ事が不可能の場合でも、作品を揺らす事で判断でき

  ます。少しの外圧で、作品が揺れる状態では、かなり危険性があります。

 ② 土を上に積み上げるにしても、下部が上部の重量を安定的に支える事が出来れば、更に土を

  足す事が可能に成ります。しかし不安定な場合には、高く積み上げる事が出来ません。

  例えば、極端に細くなった首状の部分の上に、容積や重量の大きい物を乗せる事は危険です。

  例え載せる物が中空にして重量を減らしても、不安定度は解消されません。

  一点で支える例としって、「ヤジロベイ」の様に左右バランスよく形作れば、比較的安全です。

  但し、支点に全ての重量が掛かりますので、それなりの強度(肉厚、径などを考慮)が必要に

  なります。 尚、素地同士を接着する際には、接着部分の乾燥度合いが一致していないと、

  接着部分に割れが入り易くなり、接着部分から剥がれる事もあります。

 ③ 安定的な構造とは、エジプトのピラミットの様な形状ですが、いまいち面白味の無い退屈な

  作品に成ってしまい勝ちです。 面白味の有る作品は、ある意味個性的で不安定差が必要かも

  しれません。危険性(危なっかさ)のある作品には、見る人に緊張感を持たせ、作品に動きが

  出て躍動感ある作品になります。

 ④ 粘土(素地)類は、高温の窯の中で、若干軟らかくなります。

  乾燥した素地は機械的強度が増しますので、乾燥させながら土を継ぎ足して大きな物を作る事が

  できます。但し、大皿などは、継ぎ足し部分の接着が巧く出来ず、一塊の土から作る必要が

  あります。どの位軟らかくなるかは、素地の成分と窯の温度と焼成時間で決まります。

  一般に鉄分を含む素地(赤土など)は高温に対して、素地を軟らかくする性質がありますので、

  窯の中で「ヘタリ」易くなります。但し、鉄分は土を焼き締める働きがあります。

  大皿を作る際、特に注意する事は高台径をどの位にするかです。一般的な皿であれば、口径の

  1/2~1/3程度と言われていますが、大皿の場合、この基準は必ずしも適応できません。

  即ち、この基準で作った場合、大皿の底の中央部が高温の為、下に垂れ落ちる恐れがあります。

  出来るだけ高台径を小さ目にしたいのですが、径が小さいと皿の外周が、下に垂れる恐れが

  生じます。その為、焼成時に底の中央部分を、下から何かで支える必要があります。

  多く見られるのは、高台の輪を二重にする方法です。即ち外側と内側に高台を設け、下に落ちる

  のを防止する方法です。

7) 大物の作品を作る際、「コテ類」を使う事です。

以下次回に続きます。 
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素朴な疑問 167 大きな作品はなぜ難しいか2?

2015-07-20 14:00:43 | 素朴な疑問
3) 焼き物は縮む。

 焼き物の特徴の一つに、乾燥時や焼成時に縮むという事が上げられます。

 縮む事で、素地の化学的性質が変わり、密度も増し機械的強度が強くなるのですが、この性質が

 ある為に、作品が歪んだり、「割れやひび」等のトラブルが発生します。

 ① 縮む割合は土の種類にもよりますが、市販されている素地では、概ね(おおむね)12~13%

  程度です。縮む方向は縦、横、奥行きの3方向で、ほぼ同じ割合に成ります。実際には背の高い

  作品は上下に圧縮されますので、高さ方向に若干大きく縮む傾向にあります。

 ② 注意する事は割合ですので、小さな作品ではほとんど無視しても良い程ですので、余り関係

  ありませんが、大きな作品に成るに従い、縮む量は格段に大きくなります。

  例えば、高さ30cmの壷などを作る際には、制作時には約35cm程度の高さの作品を作らな

  ければ成らりません。 即ち、乾燥と焼成で、35cmX0.13= 4.55cm縮む事に

  なります。実際には底に糸を入れて切り離した際、1mm程度の土が採り残されます。

  更に、底削りがありますので、高さ方向に1~2mmのロスが生じます。それ故、4.7~4.8mm

  程度低くなりますので、ほぼ35cmに作る必要があります。

 ③ 大皿など平たい場合。直径60cmの作品を完成させる為には、上記と同様に、直径68cm

  以上の大きさに造る必要があります。

4) 素地(粘土など)が可塑性を有するのは、ある程度水分を含んでいる間だけです。

 ① 素地は乾燥度が上がるに連れて、機械的強度は増しますので、大きな作品を作る時には、

  硬めの素地を使います。完全に乾燥している素地に比べ、圧倒的に強度は低いです。それ故、

  一塊の素地に可塑性を持たせながら、作品を完成させるには、自ずから大きさに限界があります

 ② 壷など背の高い作品を作る方法には、轆轤挽きであっても、数種類の方法があります。

  一番一般的には、土を筒状態に高く薄く伸ばしてから、形造りに入ります。いかに土を上に

  薄く伸ばせるかによって、作品の大きさが異なります。

  ) 1kgの粘土で、片腕が入る程度の内径の筒を轆轤で引き上げる際、最初の関門は20cm

    と言われています。練習を積むに従い15、17、18、19cmと次第に高くなりますが、20cm

    の壁を超えるのは容易ではありません。熟練した人であれば、更に21~25cm程度まで

    伸ばせると言われています。当然伸び易い土を使った場合です。

  ) 手や腕が入らない程度に細い筒であれば、1kgの土で約30cm程度まで伸ばす事が

    できます。

  ) 粘土の量を増やすに従い、筒の高さも増しますが、土の量が二倍に成っても、高さは

    二倍どころか1.3~1.5倍の高さに成れば上々です。増えた土は底周辺の壁の肉厚と成って

    しまいます。同様に三倍の土を使っても、伸び代はどんどん少なくなっていきます。

5) 形造り(直径を広げる)に入ると、高さはどんどん低くなります。

 ① 折角高く上に伸ばした土も、直径を大きくするに従い、背の高さは見る見る低くなって行き

  ます。但し、壁の肉厚はほとんど変化しません。(必ずしも薄くなる訳ではありません)

 ② 低くなる割合は、作品の形状によって大きく異なります。

  即ち、口縁のみを広げ、擂鉢(すりばち)状にするよりも、胴や底近辺の径を広げる時には、

  ことに高さは低くなります。ある程度技術を積んだ方には、どの位低くなるかは、大よその

  見当が付きます。

6) 持ち堪える事の出来る形状にする。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 166 大きな作品はなぜ難しいか1?

2015-07-18 17:35:30 | 素朴な疑問
当然の事ですが、焼き物(陶芸)の作品は、大きいから価値がある訳では有りません。

使い勝手の良い物は、その用途によって適度の大きさがあります。大きな物は展示用などの他、

大勢人が集まった会場や食事、葬儀の花瓶など、特別な場所や特別の時に使われる場合が多いです

それ故大きな作品は使う機会も少なく、作る事も少なくなり勝ちです。しかし、大きな作品を作る

事は、今まで行ってきたやり方では通用しない場合も多いです。

技術力をアップさせたいと思っていたならば、是非大きな作品に挑戦してください。

小物ならば、どうにか処理できる事でも、大物になると狂いが出たり、割れが発生したりする他、

焼成でも失敗する事が多く、小手先では対応できなくなる事があります。

但し、焼く窯があるのが前提で、自分で大きな窯が無い場合には、どなたかに依頼する事になります。

又、窯に収まる範囲の大きさしか作る事が出来ませんから、注意が必要です。

1) 大きな作品は、横方向もそれなりの困難がありますが、縦(高さ)方向に背の高い作品の方が

  より難しくなります。即ち上に乗る重量が大きくなる為、それに耐える強さが必要に成るから

  です。又、作品の狂いも発生し易くなります。

  尚、展示用の大壷などでは、高さが50cm以下が多いです。 大皿なども直径60cm以下が

  多く見受けられます。それ故、ここではこの大きさを一つの目安として考えたいと思います。

2) 大きな作品はどの様に作るか?

 ① 手捻りで作る場合、特に形に拘りなく、大きな作品を作る事が出来ます。

  a) 多くの場合、土を継ぎ足す事で大きな作品に仕上げます。但し、重量の大きい作品は、

   上部の重みに耐える様にする必要があり、その為、肉薄に作る事は難しく肉厚に成り易いです

   又、全体を軽くする為に、強度に関係しない場所はなるべく肉抜きを行います。

   肉抜きの方法は、透彫を施したり、壁の厚みを薄くします。場合によっては筋状の補強(リブ)

   を施し、その周囲を肉抜きします。但し、窯の中や、焼き上がった後でも、安定して置ける

   事が条件になります。高さや台座(底径)のみでなく、左右のバランスを保つ事も大切です。

  b) 部分的に作ってから、各部分を組み立てて大きな作品にする事もあります。

   全体の構想がしっかりし、図面化されていれば、各部品をバラバラに作っても、全体の構想を

   損なう事は少ないです。短期間に仕上げるには向いている方法です。

  c) 下(又は上)部から順番に作り上げる方法もあります。一般的な方法です。

   下部をある程度乾燥させ、その上に土を載せても崩れないと判断できれば、その上に土を

    載せて形を作ります。土の強度を持たせる為、叩き棒で表面を叩き土を締めます。

  d) 全体を作り上げてから、分割して窯に入れる方法があります。

    陶壁と呼ばれる作品は、全体を作り終えた後、各部分を切断する方法が取れられます。

    一塊の状態の方が、全体の形を把握し易い為です。但し、素地が乾燥し過ぎると切断し難く

    なり、もろくなり、壊れ易くなりますので、注意が必要です。

 ② (電動)轆轤で作る場合、ある程度形は限定されます。

  a) 代表的なのが、大皿、大鉢、壷、甕(かめ)、花瓶類で円形を基本とした作品になります。

   轆轤で作る場合、一塊の土から一気に作品に仕上げる方法と、土を後から継ぎ足す方法と、

   土を分割し別々に作り、繋ぎ合わせる方法などがあります。当然一気に挽き上げる方法では、

   大きさに限度があります。

  b) 轆轤作業では、使用する粘土の量により、作品の大きさは大きくなりますが、ある一定量以上

   になると、作品を高く大きく出来なくなります。その高さはその人の技量によります。

 ③ 手捻りと轆轤を組み合わせて作品を作る方法。

  a) 一般に、大きな作品を作る時に使われる方法です。但し、最終的には、轆轤作業ですので、

   作られる作品は上記②と同じ事になる場合が多いです。

  b) 土の種類によっては、轆轤で十分土を伸ばす事が困難な物もあります。その際、紐作りの

   方法で土を巻き上げてから、轆轤挽きして成形します。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 165 焼き物の景色とは4?

2015-07-11 21:26:28 | 素朴な疑問
2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ③ 使用中に起こる「景色」。(前回の続きです)

   完成した作品を使っていると、事件や事故、経年変化などにより、色々な現象が起こります。

   これを逆手にとって「景色」として認める事もあります。

  ) 萩の七化け。

    萩焼きは毛利家の藩窯として、桃山時代に開窯しました。主に茶陶を作っています。

    茶碗、水指、花入などの他、茶の湯の懐石料理の食器として、各種の「向付」や「酒器」が

    多く作られています。萩焼の焼き物は、使用するに従い、味わい深い表情を表す様になります

   a) 貫入(かんにゅう)による「景色」。

    ・ 萩焼きの代表的な土は、防府市大道(だいどう)産の大道土が使われています。

     小砂混じりの白い粘土で「ざんぐり」した柔らかい土です。その為やや焼き締まりが弱く

     柔らかい焼き上がりと成っています。

    ・ 釉は長石に土灰や藁(わら)灰を混ぜた物が基本に成っています。その為、透明又は

     白っぽい釉肌になります。

    ・ 素地に塗る化粧土や釉の掛け具合によって、白萩や強い赤味のある赤萩手になります。

    ・ 焼成時に素地と釉の収縮率の違いで、貫入(小さなひび)が入り易いです。

     この「ひび」に茶渋などの汚れが付くと、より貫入は浮き出てき、趣ある「景色」となります。

     特に湯飲み茶碗などに多く見られます。

   b) 雨漏りによる「景色」。

    萩焼は素地の焼き締まりが弱い為、内側に入れたお茶や酒などが長い年月を経て徐々に

    表面に滲み出る事もあります。悪く言えば「汚れ」が付く事になります。全体に滲み出る

    訳ではなく、部分的に現れますので、作品によって染み出す模様も変化します。

    特に、抹茶々碗や向付などに多いです。勿論、汚れですので、嫌う人もいます。

  ) 割れや「ひび」の入った作品を補修する事で、「景色」が出来る場合があります。

    使用中に割れや大きな「ひび」の入った焼き物は、廃棄処分になります。但し、著名な

    焼き物や、二度と手に入らないと思われる焼き物は、補修(修理)して生き返らせる事が

    あります。この補修の仕方によっては、むしろ補修前よりも良くなる場合があります。

    焼き物が割れた場合、漆(うるし)を用いて接着します。漆のみで接着が済む場合も多い

    ですが、更に他の材料で補強する物も多いです。

   a) 重文 銘「馬蝗絆(ばこうはん)」茶碗、中国(南宋時代) 東京博物館蔵。

    砧(きぬた)青磁の極上の名品です。高台周りに「ひび」があり、接着後更に鉄製の鎹

   (かすがい)で数箇所留めてあります。この鎹が大きなバッタ(馬蝗)に見える事からこの

    銘があります。この「留め金具」が大切な「景色」と成っています。

    尚、この作品には次の様な逸話が残っています。

    平安時代の平重盛が、中国の宋の育王山に黄金を寄進した返礼に、住持仏照禅師からこの

    茶碗が送られてきます。後世、足利義政公の所持になりますが、「ひび割れ」を起こした

    ので、中国に送り返し、同様の物と交換を依頼しますが、「もはや、この様な名器は得る

    事ができず、鎹を打って送り返された」との事です。

    尚鎹とは「コの字」型になった釘で、木材同士を繋げる働きをします。

   b) 金継ぎ(きんつぎ)

    漆で補修した部分に金粉を振掛け、「割れやひび」の跡を隠すと共に、金で補修した筋又は

    帯状の金線が「景色」となり、補修前より良く見える場合があります。

    尚、金粉は高価ですので、真鍮(しんちゅう)の粉等を使う事もあります。

    こんな笑い話もあります。金継を補修しょうとして、取り除いた処、作品に「割れやひび」が

    なかったとの事です。わざと金継ぎを行う事で、新たな「景色」を作り出す事で価値ある

    物にする目的かも知れません。

   ・ 著名な金継ぎの作品。 重文 楽茶碗 銘「雪峰(せっぽう)」光悦作 畠山美術館蔵。

  )その他   

   a) 火間(ひま)のある「景色」

    火間とは、化粧土を柄杓で流し掛けした際、意図的に掛け残す方法で、主に楔(くさび)型

    こ残します。これが「景色」になります。 上手の粉引(こひき)では、一つの約束事に

    成っています。

   ・ 著名な火間のある茶碗: 粉引茶碗 銘「三好(みよし)」朝鮮 

   b) わざと口縁を欠き、「景色」を作る。古色付けによる「景色」

    意図的に「景色」を作り出す、一つの方法です。完全な形のものより、不完全な形の方が

    趣ある作品になる事もあります。焼成した物を歪ませる事は出来ませんが、部分的に破壊

    する事は可能です。又、古い時代のものに見せ、掘り出し物の様な感じにする事もあります。

    又、人為的に古色を付け「景色」を作り出している作品もあります。いずれも、偽者で偽作

    ですので、騙されない様に注意する事です。

以上で「景色」の話を終わります。  
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素朴な疑問 164 焼き物の景色とは3?

2015-07-10 13:47:31 | 素朴な疑問
2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ② 作品の焼成過程で起こる「景色」。(前回の続きです)

  ) 窯変(ようへん): 焼成中に普段とは異なる釉の色や結晶模様などが現れれ現象です。

    現在では、偶然性に頼らずに、ある程度の事が再現できる様に成ってきました。

    以下の窯変は主に無釉の陶器である、備前焼に現れる窯変です。

   a) 牡丹餅: 作品を重ね焼きし、効率的に窯を利用する事で得られた結果の「景色」です。

     大きな器などの作品の上に、直に作品を重ね焼きした物で、重なった部分に炎や灰が

     掛からない結果出来た「景色」です。上に置いた器の跡が素地のまま、丸い牡丹餅

    (ぼたもち)風になりなります。

   b) 黄胡麻、青胡麻、カセ胡麻(ごま): 燃料である松の灰が高温で熔け、自然釉となった

     物を胡麻と言います。窯の構造や年代によって発色に違いがあります。江戸時代以降は

     黄胡麻、それ以前は青胡麻が多い様です。現在では、人為的に松灰を振り掛ける事で、

     出現させる事が可能に成っています。

   ・ カセ胡麻: 飛んだ小粒の灰が完全に熔けず、粒粒の状態のまま残った状態です

   c) サンギリ: 窯の中で灰で埋もれた場所で起こる現象です。

     即ち還元焼成の為、肌が赤くならず、暗灰色を呈します。

   ・ 榎肌(えのきはだ): サンギリよりも更に温度が低く、積もった灰が黒色や灰色の粒粒

     で、あたかも榎の樹肌の如く様相を呈した物です。

   d) 火襷(ひだすき): 白又は薄茶色の素地に、濃い赤色の線が生じた物です。

     本来は、重ね焼きした際、作品同士がくっつくのを防ぐ目的で、作品に藁(わら)を

     巻いて窯詰めした結果です。藁の跡が赤色に残ります。

  ) 信楽焼きの窯変

   a) 釉垂れ: 松灰による自然釉が熔けて流れ出し状態で、透明度の高い緑色になった物を

     特にビードロと呼んでいます。最も綺麗な窯変とも言われています。

   b) 釉溜り(くすりだまり): 釉が熔けて流れながらも、下まで落ちる事なく、途中で

    滴(しずく)の様に留まった状態の物です。

   c) 灰被り(はいかぶり): 窯の温度が低い為、完全に熔けていない松灰が降り掛かった

    状態です。灰は多くの場合白色になります。

   d) 抜け: 高温の炎が直接当たった部分は赤色になります。しかし直接炎が当たらない場合

    や、他の作品の陰に成った部分は白色になります。同じ作品でありながら、隣同士で赤と白

    の模様になった窯変を「抜け」と言います。     

  ) その他の窯変。

   a) 国宝の曜変天目茶碗(稲葉など4点)も窯変と言えるかも知れません。 

    曜変は元々窯変と書かれた物との事ですので、窯変の一種です。

   b) 楽焼きにも窯変の作品が多いです。

    ・ 国宝 楽茶碗 銘「不二山」光悦作 江戸時代

    ・ 重文 楽茶碗 銘「雨曇(あもぐも)」 光悦作 江戸時代

    ・ 楽茶碗 銘「是色(ぜしき)」 道入作

    これらは釉の色が場所により異なり、「景色」と成っています。 

    上記以外に多数存在します。

  ) その他の「景色」。

   a) 梅華皮(かいらぎ): 釉が縮れて粒状になった物です。

    特に高台付近(高台脇)の釉が縮れ、細かい露がびっしり付いた状態です。

   b) 御本(ごほん): 作品の表面の所々に、白ぽいい肌に赤い(又はピンク)斑点が現れる

    現象です。斑点は略円形で5~30mm 程度の物が多いです。器の内外にでます。

    更にその出現も色々なパターンが存在します。土の成分と焼き方によって異なると思われ

    ます。素地に薄い白化粧を施したり、透明系の釉を掛け、還元気味の焼成で出現すると

    言われていますが、不確実性が高いです。

    器の内側に大きな御本が一つある物、細かい粒子状の御本が密集している物、淡い色の御本、

    濃淡のある御本、その他表情は諸々です。

 ③ 使用中に起こる「景色」。

以下次回に続きます。


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素朴な疑問 163 焼き物の景色とは2?

2015-07-09 11:46:48 | 素朴な疑問
2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ① 作品の成形過程で起こる「景色」。(前回の続きです。)

  ) 箆目(へらめ): 陶工の遊び心?

   主に筒状(袋物)の作品の胴体部分に、竹箆を用いて垂直や斜め線をやや長めに入れる行為

   です。力加減によっては、適度に凹ませ、作品の形と歪み(ゆがみ)の程度が調整できます。

   多くは、側面を切り取るよりも水を付けた竹箆で、内側に力を加えて押し込み撫でる様にして

   跡を付けます。力を入れて一気に行うと、勢いのある線や面になります。

   綺麗に出来ている作品をあえて歪ませ、傷を付ける行為をするのは、陶工の遊び心や悪戯心

   (いたずらごころ)かもしれません。最初は売り物としない作品に、手に持つ箆を押し当て

   傷を付けた処、表情が変わり良く見えたかも知れません。又、たまたまその物を見た人がその

   良さに気が付いたのかも知れません。いずれにしても、この行為が一種の装飾とみなされ、

   「景色」として取り入れられたのではないでしょうか。

   一見無謀の様に見える行為ですが、見方によっては、形全体に動きが出て、軽やかさのある

   作品に生まれ替わります。

  ) 縮緬皺(ちりめんじわ): 砂混じりの素地に場合、削り作業で土が細かく「ささくれ」

   状態になる現象です。あえて綺麗にせず、施釉もせずに、一種の「景色」として鑑賞(観賞)

   します。主に抹茶々碗の高台内に見られます。

 ② 作品の焼成過程で起こる「景色」。

  中世の窖窯(あながま)では、薪を使って無釉の焼締陶器が多く焼かれていました。

  直接強い炎に晒され、燃料の薪の灰が降り注ぎ、変化に富んだ「景色」のある作品が多量に

  作られる事になります。尚、現在でも窖窯で焼成され、人気の作品が作り続けられています。

  ) 窯疵(かまきず)、山割れ : 高温に晒され作品の一部に、亀裂や割れが発生する

   場合があります。 一般にこの様な作品は、失敗作ですので、廃棄処分となります。

   しかし、自然釉であるビードロ釉の美しさ、降り物(薪の灰が降り注いだ物)の見事さ、

   味のある「焦げ(こげ)」など、見所(景色)満載の作品は、廃棄処分する事無く、むしろ

   珍重され、大切にされています。

   特に著名な作品は、伊賀耳付水指 銘「破袋」(16世紀、五島美術館蔵、重文)があります。

  ) ひっつき: 施釉陶器でも無釉の陶器であっても、高温に晒された作品は、素地又は釉は

   軟らかくなります。窯の中で不安定に置かれた作品が、何らかの理由で隣同士の作品や、

   窯道具等と接触した場合「くっついた状態で」窯出しが行われます。

   この場合、両方とも廃棄処分にしますが、一方を助ける事があり、他方は壊す事になります。

   但し、残った作品にも、「くっついた」跡が完全に取り除く事が出来ず残ります。

   多くの場合「くっついた」部分は凸状に膨らみ、「景色」と見る事ができます。

   「くっついた」部分をどの様に処理するかも、制作者の腕の見せ所となります。

  ) 火ぶくれ(せんべい): 煎餅(せんべい)の様に、表面の一部が膨らむ現象です。

    原因は、耐火温度の低い素地(赤土など)が必要以上に高温になった場合。更に、素地に

    有機物や小さな気泡等が入っている時は、ガスが発生し表面の一部が膨らみます。 

    特に、見所「景色」がある場合のみ助ける事に成りますが、作品のどの部分が膨らむかに

    よって、使い物に成らなくなる可能性もあり、廃棄処分になる物が多いです。  

  ) 火表と火裏 : 炎が直接当たる処が火表になり、その反対側が火裏になります。

    火表は高温に成りますので、釉が流れ易くなったり、降り掛かった灰が良く熔けます。

    火裏では、若干温度が低くなりますので、釉や灰の熔け方が弱くなります。その結果一つの

    作品でも、裏表で表情の変化が見られる事になります。この違いが「景色」として見所の

    一つになります。その他、火表側が還元に火裏が酸化焼成になり易い窯の雰囲気であれば、

    釉の色も裏表では違いが出易いですので、この場合にも「景色」が出来る事になります。    

  ) 窯変(ようへん): 焼成中に普段とは異なる釉の色や結晶模様などが現れれ現象です。

    現在では、偶然性に頼らずに、ある程度の事が再現できる様に成ってきました。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 162 焼き物の景色とは1?

2015-07-08 11:06:45 | 素朴な疑問
焼き物の世界で、作品の鑑賞(又は観賞)の際、「景色」と言う言葉を聴いた事があると思います。

又、ご自分で作った作品が出来上がった際に、良い景色が有ると嬉しい物で、一段と作品の見栄えも

良くなります。焼き物で言う「景色(けしき)」は日常で使う景色とは、若干異なります。

日常的には、風光明媚な観光地などで、広々として遠くまで見渡せる展望の開けた場所や、島々が

点在し、砂浜や奇岩が連なった場所、川や滝、広い草原や断崖絶壁な場所などは、安全な場所から

眺める事が出来れば、「景色が良い所だ」と言います。

焼き物の世界では、作品の表面に現れた、通常とは異なる模様や色、形などの変化を言います。

但し、風景が万人に認められるのに反し、焼き物の「景色」は必ずしも、万人向けではありません。

人によっては、完全な失敗作とみなす場合もあります。焼き物には焼き損じたり、ひびや割れ、

ひっつき等が起こる事は、稀ではありません。素焼きをしない昔では特に多い傾向にあります。

それらの中から「景色」の美を見出したのは、我が国の茶人と言われています。

日本独特の「美」と言われ「景色」は、外国では通用しない「美的感覚」とも言われています。

前置きが長くなりましたが、本題に入ります。

1) 「景色」を鑑賞(観賞)の対象とみなした始まり。

  焼き物の本家である中国では、人工的に作られ、精緻(せいち)で完璧な物が賞賛されています

  それ故、歪(いびつ)な物や、偶然窯の中で発生した「窯変」と呼ばれる通常とは異なる色や

  色斑(いろむら)に価値を置く事はありませんでした。

 ① 最初に「焼き損じた」色や形の「不揃いや歪み」の「美」を見出したのは、室町時代の茶道の

  開祖と言われる村田珠光(じゅこう)と言われています。

  彼が好んだと言われる「珠光天目」(灰被=はいかつぎ天目)茶碗は、均一に黒く焼き上がらず

  斑(むら)になり、色もくすみ一見すると、焼き損じた失敗作に見える作品との事です。

  しかし、釉の色の変化や茶が映える渋い色合いは、茶人にとっては、趣深く見飽きない茶碗と

  成っています。この作品は偶然に出来上がった物で、むしろ失敗作とみなしても良い程の物で、

  何らかのアクシデントによって焼き上がったと考えられています。

  この村田珠光による「景色」の鑑賞方法が、特に茶人の間で持てはやされ、やがて、焼き物

  全体の鑑賞方法と伝わる事に成ります。後世に成ると偶然性の珍重される「景色」が、意図的に

  (人工的)に行われる様になります。

2) 「景色」はどの様にして起こるか?。

  景色は① 作品の成形過程で起こる「景色」、② 作品の焼成過程で起こる「景色」、③ 作品を

  使用中に起こる「景色」に分類できます。

 ① 作品の成形過程で起こる「景色」。

  尚 成形過程とは、単に成形時のみでなく、施釉時、窯詰め時の過程を含みます。

  又、意図的に着けた痕(あと)なども含みます。

  ) 指跡: 制作途中の土が軟らかい時に、不用意に作品を持つ時に、指の跡が付きます。

    又、施釉の際、作品の腰又は高台付近を、鷲掴みで持ち釉の中に漬ける事で指跡がつきます

    多くの場合、指跡を消しますが、あえて残し「景色」とする場合があります。

  ) 目跡(めあと): 古い時代には、効率良く多量に窯詰めする為に、作品を重ね焼きを

    行う事が普通に行われていました。その為、大振りの作品の内側の底に、小さな土の塊を

    数個置き、その中に小振りの作品を載せて焼成しました。即ち、作品同士のくっつきを防止

    する働きです。この塊は、窯出し後に取り除く事に成りますが、目を立てた部分は跡と

    成って残ります。当然ですが、小振りの器の高台部分にも残る事になります。

    一般的には、目跡は「傷」ですので、歓迎される物ではありませんが、これを「景色」と

    して見立てたのも、茶人の「美意識」の表れです。

  ) 石ハゼ: 作品の表面に小石が飛び出た状態。

    素地に小石等の異物が混入した状態で、轆轤挽きした結果の産物です。

    轆轤挽き直後では、表面上に露出していない場合でも、焼成により素地が収縮し表面に

    露出する場合もあります。小石の周囲に小さな「ひび」が入っている事が多いです。

    これも、異物混入ですので、本来は失敗作ですが、「景色」として鑑賞(観賞)の対象に

    成っています。近年では、むしろ積極的に小石(ハゼ石として市販されています。)を

    混入させて、壷などを作る事も多いです。但し、食器などに多量に混入させると、使用勝手

    が悪くなりますので注意が必要です。(小石が手に当たって痛いなど)

   ) 箆目(へらめ): 陶工の遊び心?

以下次回に続きます。
 
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