わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

続 電動ろくろ4(自前の轆轤を物ことに付いて)

2019-06-27 16:02:25 | 続 電動ろくろに付いて
電動ろくろ(轆轤)をある程度習得すると、自前の轆轤を持ちたいと思うのは、最もな事です

自前の轆轤が有れば、好きな時間に思う存分轆轤の練習ができ、轆轤技術も早く上達できると

思うかもしれません。これは、大きな勘違の可能性があります。轆轤を持って有効なのには

条件があります。私の経験から言える事は、轆轤技術をまだ十分習得していない方は、例え

一人自宅で練習に励んでいても、ほとんど上達は望めません。多くの場合「宝の持ち腐れ」の

状態となってしないなす。更に言えば、陶芸への情熱を無くす原因にもなります。

どう言う事かと言えば、轆轤を使いこなす事が出来ないからです(技術が未熟)。

轆轤の技術書が幾つか発行されています。この本を見ながら、轆轤(手指)の使い方を練習す

れば、十分轆轤が上手に成ると思われるかも知れませんが、実際にはそんな簡単な事ではあり

ません。なぜその様に成るかを考えてみます。

1) 技術書が完全に説明できていない事。

 前回も説明しましたが、轆轤技術は標準的な方法が有りません。あくまでも著者の考え

 (やり方)を述べた物です。それ故著者によってその技法や解説に違いがあります。

 ご自分と同じ方法の解説書を選んだとしても、往々にして重要な部分が省略されている本も

 多く見る事があります。幾通りかの方法がある場合でも、その内の一つを取り上げたる場合

 が多いです。一番重要な事項が抜け落ちている場合もあります。何が抜け落ちているかは

 ある程度知識がないと判りません。

2) 技術書に書かれている事が十分理解できない(理解不足)。

 著者の言いたい事(やり方など)が、理解できる為には、ある程度の予備的知識が必要な事

 も多いです。理解不足は著者の表現方法に問題がある場合もありますが、受け取る側に

 (読者側)問題がある場合もあります。何を述べているかが、理解できない事も往々にして

  あります。

3) 自分の間違いに気が付かない。

 勿論、自分なりの方法で、作品が造れるならば何ら問題はありません。但し多くの場合作品

 にする為には、出来るだけ余分な動きや労力を少なくする事です。力を必要とする場面と

 力を弱くする(力を抜く)場面等、状況に応じて臨機応変に対応する必要がありまし。

 その為には、何方(どなたか)かに間違いを指摘して貰う事が重要です。一寸した仕草の

 間違いを訂正(直す)する事で驚く程、作品を綺麗に早く作る事が可能になります。又傍に

 いる方が何もして呉れなくても、傍に居るだけで、ある緊張感が生まれ、慎重に作業を進

 める傾向が出てきます。陶芸教室の授業料は、高額な部類です。たいした事も教えてくれな

 いので、高い授業を払わずに自分一人で轆轤を回す方が、安上がりでしかも上達が早いかも

 知れないと思うのは、当然かもしれません。しかし、確実に轆轤が上達するのは、授業料を

 払った方です。授業料に見合った成果を期待する為に、練習に励むからです。

4) 批評し合える仲間がいると上達は早まります。

 数人が一緒に練習する事は、お互いの癖や悪いやり方など、ご自分で気付かない所を指摘し

 てしてくれる事も多いです。それ故、しかりした指導者である必要はありません。

 公民館活動でも、轆轤を使って作陶する所もあります。但し電動轆轤の台数が少ないのが

 欠点です。

5) 結論:ご自分の技量が上達し、どうにか一人で轆轤作業が出来る様になるまで、なるた

  け自前の轆轤を持つのは、我慢した方が良いと私は思います。使用されない轆轤を物つ方

  を何人か見ています。同じ様な例は、カメラや釣り具についても見られる傾向です。

  良い道具を揃えた段階で、興味を失いお蔵入りする人も結構存在します。

今まで轆轤に付いての総論を述べてきましたが、次回より具体的な記事にしたいと思ってい

ます。

以下次回に続きます。
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続 電動ろくろ3(技術を習得したい方の注意点)

2019-06-24 14:37:13 | 続 電動ろくろに付いて
陶芸と言えば「ろくろ」と思われる方も多いです。勿論電動ろくろを使わずに作品を造る方も

多くいます。ろくろを使わなくとも(手捻り)立派な作品を造れますし、ろくろでは表現でき

ない作品も数多く存在します。それ故、どちらの方法が良いと言うものではありません。

4)ろくろ(轆轤)は回転させながら、肉薄で軽い作品を形良く、早く作る道具です。

 手捻りよりも数倍~十数倍の速さで形作る事ができ、肉厚を薄く出来ますし、底削りなどの

 作業で、余分な肉を削り取ることで、さらに軽くなります。ろくろ技術に長けた方は、同じ

 様な形状と大きさの作品を、短時間に数多く作る事もできます。

 ろくろ作業を長引かせるのは、得策ではありません。なぜならば、ろくろは別名水挽とも呼

 ばれ、水を使って作る方法ですので、その水が素地に吸い込み素地を柔らかくし、腰が無く

 なります。その為時間と共に作品は下に沈み込み肉厚になります。水の役目は手と作品との

 摩擦を少なくし、手を作品上を滑らかに滑らせる事で、外部からの余分な外力を少なくさせ

 る事です。その為、ろくろに長けた方は水は出来るだけ少なくし、素地から出る泥を多用し

 ます。但し例え泥であっても、長時間作品に触っていれば、素地は水分を吸い込むのは変

 わりありません。それ故、短時間で作陶する事を心掛ける事です。

5) ろくろの技術習得には、かなりの時間を要します。

 自動車の運転免許に要する時間より、はるかに長い時間が必要です。更に自動車教習と同じ

 様に教官(批評してくれる人)がそばに居てくれる事が重要です。即ち初心者は一人や

 独学では、ほとんど何もできません。

 習得に必要とする時間とは、実質轆轤を回転させ粘土に触っている時間の長さになります。

 勿論、底削り等の削り作業時間も含まれます。

 始める年齢も自動車同様、年齢が若い程有利です。少なくとも60歳を超す前が理想です。

 勿論、熱心に練習される方や、手先が器用な方などその人の個性(特性)にもより、必要な

 時間はバラツキがあります。以前にも述べた様に、一般にご自分一人のみで、轆轤作業が出

 来るなでには、約500時間が必要です。集中して時間が取れれば、一年以内ですが、週一

 程度であれば、4~5年は掛かる事になります。

6) ろくろ技術には標準的な方法は存在しません。

 即ち、ある地域のみに通用する方法(技法)も存在します。これはその場所から産出す

 る素材(粘土)に関係する場合や、その地域の師弟関係の影響も大きく影響します。

 現在では、従来の様に焼き物の産地に囚われないで、ろくろを回している方が多くなりまし

 た。何処に住んでいても、自由に素材が簡単に手に入る事が可能に成った為です。

 その為、ろくろ技術は個人によって好きな(やり易い)様に、自由に変えられ様になりまし

 た。轆轤技術は、最初に指導を受けた指導者の技術を真似る事から始まります。この影響は

 かなり強く、ここから中々抜け出せません。それ故、最初は、どの様な方に付いて学ぶ

 かが重要になります。余談ですが、小生の所に左回転のろくろを習いたい方が見えた事が

 ありました。(一般に日本では右回転が多い)その方の指導してくれた方が、左回転でした

 ので、ろくろは左回転で作陶していました。指導者が亡くなった為、ろくろ技術を更に磨く

 為ろくろを再開したいのですが、左回転の指導者が中々見つからないと嘆いていました。

 問題は、回転方法だけではありません。前述した様に、作り方は人によって異なります。

 即ち、手指の使い方は勿論、作陶姿勢やコテ等の用具類の使い方にも違いがあります。

 途中からやり方が変わるのは、色々問題が発生し易いです。ある程度一人で作陶できるまで

 なるべく先生は変えない方が良いと思われます。

以下次回に続きます。
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続 電動ろくろ2(長所と短所)

2019-06-18 15:17:43 | 続 電動ろくろに付いて
電動ろくろはここ数十年の間に出現した機械です。近年昔からの手回し轆轤や蹴り轆轤が使用

される頻度は少なく成りましたが、各々長所と短所を有しますので、現在でも従来の轆轤を

使用し続ける人もいます。

3)電動ろくろの長所と短所

 電動ろくろは大変便利な機械(道具)で、この道具の出現で比較的容易に誰でも陶芸を楽し

 む事が出来る様になりました。但し、施釉や窯焚きは従来通りです。

 (近年は便利な電気窯が普及しています。)

 ① 長所

  ⅰ) 手や足を使って、自力で回転盤を回転させる必要がなくなりましたので、力仕事の

   量もかなり減少し、非力な女性でも轆轤作業が可能に成りました。

  ⅱ) 回転方向もスイッチ一つで選択可能ですので、容易に回転方向を変える事ができま

   す。技術(腕前)が上達すると、配転方向を変える必要が生じる事がありますが、

   容易に変える事が可能になります。逆転の使い方は、後日お話します。

  ⅲ) 回転スピードも作品の形状に合わせて、自由に調節可能ですし、高速から超低速ま

   で自由に設定可能に成りました。回転スピードの話も後日お話いたします。

  ⅳ) 手足を使って、自力で回転させた場合、回転力を与えた時が一番高速に回転し、

   徐々に回転は遅くなります。即ち、時間と共に回転スピードが変化する事に成ります。

   一方電動であれば、常に一定の回転スピードを保持し続ける事が可能ですし、必要に応

   じて、スピードダアップもダウンも可能に成ります。回転盤が軽いので失敗しても、

   慣性も少なくクラッチを切れば瞬時に手で、回転を止める事も可能です。

  ⅴ) 回転軸にボールベアリングを使用していますので、滑らかな回転で、回転盤の振れ

    も少なく成っています。

 ② 短所

  最大の特徴である、回転盤が滑らかに回転する事が欠点になります。

  即ち、作品が左右対称になり、作品に面白みが出ないと考えている方もおられまし。

  ⅰ) 我が国では、昔から作品の歪み(ゆがみ)を鑑賞(作品の良し悪し)の必要条件

   にする傾向があります。特に茶道の抹茶茶碗は綺麗な形に出来上がっているよりも、

   若干の歪みを大切にしてきましたし、現在でもその傾向が存在しています。

   この傾向は、他の作品にも見られ、我が国独自の美意識と考えられます。

  ⅱ) 電動轆轤は精巧にできていますので、綺麗な形に出来易く成っています。

   勿論、轆轤技術が未術な方は、作品が自然に歪(ゆがむ)んでしまいますが、ある程

   度技術を習得した方は、逆に自然に歪ませる事が難しくなり、あえて歪ませる為に、

   外から力を加える作業を行う程です。

  ⅲ) 従来の轆轤で作った作品がに微妙な歪みを持つのは、必ずしも滑らかな回転では

   無く(ベアリングは不使用)、轆轤自体に「ガタ」が有る事も少なからずあり、

   回転スピードも刻々と変化している為でもあります。回転速度も作り手の腕力に関わ

   り、極端な高速や低速はかなり難しい作業です。

  ⅳ) 轆轤作業で同時に手足を使う事は、何らかの調子を取る事にもなります。

   ある手足の動きのリズムが作陶に良い結果をもたらしている可能性もあります。

  ⅴ) 電動轆轤は姿勢が一定になり易いです。

   従来の轆轤は手足を使う為、体全体の運動に成りますが、電動轆轤の場合、足はベダル

   を踏み込むだけですので、姿勢もり固まり易くなります。極端な前屈み(まえかがみ)

   の姿勢は、腰に大きな負担となり、腰を痛める結果になります。長い時間同じ姿勢で

   作陶を続ける事なく、固まり避け時々腰を伸ばすのが、腰痛対策になります。

 以下次回に続きます。  

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続 電動ろくろ1

2019-06-14 17:52:01 | 続 電動ろくろに付いて
電動ろくろに付いては、過去に何度かお話しましたが、新たな視点から述べたいと思います。

初心者の方で、電動ろくろに興味を持たれる方が多くなりました。

以前より陶芸体験が出来る施設も多くなり、観光地でも体験できる所もあります。

この様な所では1~2時間程度で器の1~3個を作る事も可能です。

制作した作品は、底削りをした後素焼き、施釉、本焼きを経て着払いで送ってくれます。

但し、最初から土が轆轤(ろくろ)上に据えられ、土殺しも終わっている状態がほとんどで、

難しい所は既に済ませてあるのが普通です。その為、手渡しされると轆轤と土を触る程度で、

ご自分で自由に制作した感じがせず、自分で作ったと言うより、ほとんど指導者が作ってしま

ったと感じる程です。

電動轆轤だから簡単に轆轤が回るからと言って、容易に粘土が形に成るわけでも無く、強い力

も必要になります。最初の感想は、「思った以上難しいかった」」と言う方が多いようです。

1) 轆轤の歴史。

 轆轤は数千年の歴史があり、その起源ははっきりしませんが、紀元前約四千年前のバビロン

 に現れ、紀元前三千年頃にエジプトに広がり、更にインド、小アジアに伝わります。

 一方ギリシャから中央アジアには紀元前五百年前に入って行ったと言われています。

 現在使われている轆轤は、ほとんどが16~18世紀ごろから使用され始め、その姿はほと

 んど変化が有りません。当時は作者本人(又は助手、弟子)が手、又は足を使って回して

 いました。

 エジプト時代にも蹴り轆轤、手ろくろがありました。インドでは作者が立った状態で長い棒

 を孔に挿入し、回転させていました。当然直ぐに止まらない様に、重い回転盤に成っていま

 す。座った状態で回転させる方法もあり、重量は40~50Kg程ありました。
 
 かなりの重労働です。

 助手に回転させる方法もありました。助手が天板とは別の同軸上の円盤を手で回したり、足

 で蹴って回していました。轆轤の支柱にベルトを巻き、別のプーリ(ベルトを巻く円盤)

 にベルトを巻き付け、プリーを助手が手(又わハンドル)で回す方法もありました。

2)現代の轆轤の種類。

 ① 轆轤の形状(構造)は回転する円盤(木製、金属製など)の中心に下から支柱を立て円

  盤を受けます。

  更に円盤の振れ止めの為、円盤の裏の中心に支柱を包む筒状の物を設けます。 

  円盤と支柱及び筒状の物の摩擦を出来るだけ小さくする為の形状や油、現在ではボール

  ベアリングが使用されています。
 
 ② 轆轤は大別すると、手轆轤、蹴り轆轤、機械轆轤、電動轆轤となります。

  ⅰ)手轆轤は円盤の上面の縁に3~4個の浅い孔が彫ってあり、ここに棒を差し込み、

   押して回転させます。電動轆轤の発明前の日本で一般的に使われていました。

   即ち、男性が轆轤の前に胡坐(あぐら)をかき、片手に棒を持ち轆轤を回転させ、止ま

   りそうに成ると、更に回転させながら形成させていました。利き腕が右手の人が多いで

   すので、回転し易い右回転(時計方向回転)で回す事が多いです。

  ⅱ)蹴り轆轤は、上下二層構造で、天板の支柱の下方(同軸上)に円盤があり、この円盤

   を足で蹴る(又は手前に引く)事で天板を回転させる方法です。

   手足を同時に使用しますので、効率的に作陶できる利点があります。

   回転方向は、右足で蹴る事が多いですので、左回転(反時計回転)です。但し足を引い

   て使うと回転になります。

  ⅲ) 機械轆轤は、同じ形の物を量産するのに適した方法です。

   石膏型(器の外側の型)を機械回転する轆轤上に設置し、上部よりコテを下ろし、粘土

   を石膏型に押し付けて形作る方法です。手や指が粘土に触わらずに作陶できます。

  ⅳ)電動轆轤は、手回しや蹴り轆轤と同じ作用をしますが、電気で回してくれるので、

   女子でも轆轤作業が可能にまりました。手作業で作りますので、一個一個形に違いが出

   ます。但し、轆轤作業の難しさが簡単に成った訳ではありません。

以下次回に続きます。
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