わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

7 金属が釉に熔ける理由 2。

2019-04-17 17:01:44 | 色と陶芸
4) 金属は二種類以上を混ぜ合わせると、融点が低くなる傾向があります。

 代表的な物に青銅があります。歴史的にも古くから知られた方法で、鉄器以前は青銅器の

 時代が長く続いていました。これは鉄や銅等を熔かす事が難しかった事と、青銅器が美し

 かった、事及び錆(さび)に強かった為です。

 銅に錫(すず)を10~20%程度混入し、青銅を作りますが錫を混入させる事で200℃

 程度融点を下げる事が出来、これを型に流し込み、複雑な形の作品を造っていました。

 釉でも、アルカリ(又は土)金属(Na,K,Mg,Ca等)を混入させ、熔ける温度を下げていま

 す。尚、釉は一種のガラスのです。ガラスは水や金属類と異なり、明確な融点は存在しませ

 ん。釉を加熱し行くと、釉を構成する粉末が次第に柔らかくなり、ついにガラス状に成って

 熔け出します。ちなみに、ガラスは化学では個体ではなく、液体として扱います。

 金属(結晶)は原子が規則正しく並んでいる原子の集合体です。

 原子同士がお互い引き合う力が働いています。これを結合(又は凝集)エネルギーと言いま

 す。このエネルギーの元は、原子核の外を回る電子の力です。電子は-(負)の電荷を持ち

 +(正)の電荷を持つ原子核と、クーロン力で引き合ってい円運動をしてます。

 加熱して行くと、電子の動きは活発になり、クーロン力を振り切って自由に動き回る様にな

 り、金属の結晶構造も崩壊し、緩やかに熔ける事になります。

 (尚、ここでは詳しい話は難しくなりますので省略します。)

5) 釉に添加されるアルカリ金属類は、電子を活発に動かす原動力になります。その添加す

 る割合と種類が多く成れば成程、より低い温度で活発に動かす事になります。

 アルカリ金属類の種類が多く成れば、相乗効果が重なりより強力な熔融剤となります。

 熔融剤をより強く働かせる為には、温度をある温度以上に上昇させる事ですが、更に、釉の

 原料であるシリカやアルミナ類、及び熔融剤を細かく粉砕する必要があります。

6) 前述した様に、釉は一種のガラスですので、ある温度で一気に熔ける事はありません。

 釉の表面から内部に向かって少しづつ軟化して、ガラス可し最終的に熔解します。

 それ故、ある程度の時間が必要になります。この時間が焼成の最後工程である、「寝らし」

 です。この時間を長く採れば釉も十分に熔け、必要な色や光沢が出る事になります。

 必要な焼成温度になっても、この時間を短くすると焼き不足となります

 焼け不足になると、ガラス質の表面が「ザラツキ」光沢も無く、釉の色も正規の色に成りま

 せん。この様な場合、再度焼き直す事えで所定の艶や色を取り戻す事が出来ます。

以下次回に続きます。
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7 金属が釉に熔ける理由 1。

2019-04-06 20:32:11 | 色と陶芸
釉の原料は、シリカ(SiO2)と酸化アルミニュウム(Al2O3)と熔融剤(RO)であるアルカリ

(Na.K.Ca.Mg、各種灰等の塩基分)の混合物です。シリカもアルミも金属です。

シリカ単体での融点は1685℃では、アルミニュウムの融点は2050℃です。熔融剤を入れる事

で1200~1300℃程度まで融点を下げる事になります。上記シリカとアルミではその混合比率

によって乳濁色にする事は可能ですが、一般的には透明になります。

釉に色が付く理由は、素地に含まれる鉄分の他、微量な金属が釉に熔け出すためですが、意図

的に釉に鉄や銅、クロム、酸化亜鉛、錫やコバルト等の金属類が入っている事で、これらが釉

に熔け出、発色を促します。金属の種類と量によって色々な色を出す事が可能です。

又、同じ金属であっても、焼成時の酸化、還元などの窯の雰囲気でも、金属の発色は異なりま

す。特に酸化鉄を含む釉は、黒、茶色、焦茶色、赤、緑、黄色、場合によっては白など多くの

色を出す事が出来ます。

金属の融点は焼き物の焼成温度(ほとんどは1300℃以下)より、はるかに高い場合が多いで

す。例えば、鉄の融点は酸化物の違いによりますが、少なくとも1500℃以上です。

銅の融点は1064℃と比較的低いですが、酸化クロムは2000℃、酸化コバルトは1935℃、酸化

亜鉛は2000℃、酸化錫は1625℃といずれも、焼成温度より高くなっています。

 (尚、一般に酸化物は金属元素より融点は高く成ります。)

それ故、1250℃前後で焼成する焼き物では、一見金属が釉に熔けないと思われるかもしれま

せん。しかし、釉に金属類を混入し、釉内に熔け出させ色を付ける事は普通に行われています

では、何故に熔け出し、又何度位で釉中に熔け出すのでしょうか?。

1) 結晶が析出する温度が、熔け出す温度と考えられます。

 結晶釉では、最高焼成温度より、徐冷する事により釉内の金属が熔けに難くなり、余った金

 属が釉内に蓄積し続き、次第に結晶化を起こする事によって起こると考えられています。

 それ故、結晶化が起こる周辺の温度が金属類が釉に熔け出す温度と考えられます。

 尚、結晶の構造の違いによって結晶も見た目に違いがでます。

2)色は光の反射の波長によって決まります。

 全反射の場合には、白色になり、全く反射しない(光が吸収される)場合は黒色になります

 但し、正反射(入射角と反射角が等しい)の場合には光沢がで出ますが、乱反射の場合には

 艶消し(マット)状になります。但し反射は焼き物の表面以外に,釉中に熔けている成分

 によって引き起こされる事もあります。特に結晶に当たった光は、その金属の種類に応じて

 大きな屈折や反射に変化を起こします。その為、金属毎に光沢や色に差がでます。

 正反射の場合、釉の表面が平滑ですが、乱反射の場合、表面に細かな凹凸が有ったり、

 釉の中の結晶の影響を受ける事もあります。 

3)常温では、金属は強固な結晶として強く結び付いています。

 金属類が釉に熔けるためには、この結合を断ち切り、結晶を壊さなくてはなりません。

 高温にする事で、この鎖を断ち切る事にするのですが、先に述べた様にかなりの高温が必要

 になります。この鎖を断ち切る作用をするのが、塩基類(熔融剤)になります。

 その他複数の金属類が共存すると、お互いに影響し合い融点が低くなる傾向があります。

 更に、熔融剤を有効にする為に、微粉末状にして混入する必要があります。

 又発色を良くする理由と、釉に金属が熔け易くし、更に釉に均等に熔ける様にする為でもあ

 ります。

以下次回に続きます。

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