わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉薬とガラス 13(透明と不透明釉4)

2011-10-31 21:58:08 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
2) 不透明釉(失透釉)について

 ④  乳濁釉について。

   失透釉には、「マット釉」と「乳濁釉」の二種類があります。

   「マット釉」は「艶消し釉」とも言い、今までお話した様に、釉の中や表面に微細な結晶(固体)が

    一様に存在し、釉面も光が乱反射して、光沢の無い釉となります。

   しかし、「乳濁釉」は、異なる現象によって引き起こされます。

   即ち、一つの釉の中に、二種類の違うガラス質が分離生成され、その境界面で反射角度が変わり、

   乱反射を起こします。この二種類のガラス質を作る現象を「分相」と言います。

  ) 光沢のある不透明釉です。

    釉面は平滑で光沢があります。代表的な釉として「白萩釉」や「卯のふ釉」「乳白釉」などが

    あります。釉の中には乱反射する物質が存在し、釉の表面には乱反射する物質は、存在して

    いない状態に成っています。

  ) 分相とは、釉の中に「結晶性の固体物質」や「異なる液体物質」が存在する場合、「気体物質」が

     存在する結果、釉の中で二種類以上に、ガラス質が分離した状態を言います。  

  ) 固体物質(微結晶)

    前回お話した失透剤と言われる物質の、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどは、

    「マット釉」としても、「乳濁釉」としても使われます。これらは微結晶を析出しますが、

     釉の中に留まっている限りは「乳濁釉」で、表面まで浮か上がって来ると「マット釉」に

     なります。即ち、表面は微結晶を含まないガラス質で、その下に微結晶を含むガラス質の

     二種類の違うガラスが存在すと「乳濁釉」に成ります。

  ) 液体物質(アモルファス)

    釉の原料に珪酸と燐化合物を同時に使うと、透明性のある「珪酸系のガラス」と水滴状の

    微物質を含む「燐酸系のガラス」に分離します。

    又、珪酸を多量になると、「珪酸ガラス」と「高珪酸ガラス」に分離し、異なるガラス質の

    分相を起こします。

  ) 気体物質(細かい泡)

   a) 「白萩釉」や「卯のふ釉」「藁白」「糠白」などの乳濁釉は、稲等の禾本科の植物から採った、

     藁灰(わら)や籾殻(もみがら)灰、糠(ぬか)灰などの珪酸成分の多く含む原料を

     使っています。 これらの材料を、アルカリの媒熔剤と伴に高温にすると、細かい泡(ガス)が

     大量に発生します。 この大量の泡が、表面より抜け出ない状態で、釉中に留まった結果、

     透明性が失われ乳濁します。

   b) 乳白釉の白さ加減は、釉に含まれる粒子(分散相と言う)や泡の細かい程、更に屈折率が高く、

     反射面が大きい程、白く仕上がります。又、蛍石や骨灰も白さを助けます。

3) 釉の着色剤(顔料)について。
   

以下次回に続きます。
  
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釉薬とガラス 12(透明と不透明釉3)

2011-10-30 21:41:30 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
2) 不透明釉(失透釉)について

   粘土や釉の原料に成る物質は、温度上昇に伴い、何らかの理由で、必ずガス(水蒸気等)を

   発生させます。 粘土ならば、結晶水や有機物質、硫黄成分などからガスが発生します。

   100℃で水蒸気が、窒素や塩素成分は200℃、結晶水は500℃、炭酸ガスは700℃、硫黄成分は900℃

   程度の温度で、ガスが放出されます。

   長石もガスに成る成分を含んでいますし、炭酸バリウムも1200℃位で 炭酸ガスを発生させます。

   又、釉薬などには、揮発する物質も多く入っています。 例えば、酸化ジルコニウムは950℃で、

   酸化銅は1000℃位からで、酸化クロムは1050℃、酸化ホウ素は1150℃程度から、揮発し始めます。

   それ故、釉の粘性を少なくする等で、上手にガスを逃がさないと、失透になって仕舞い勝ちです。   

 ② 結晶釉について。

   微細な結晶が釉面全体に出現する釉では、マット状に成りますが、透明感のある釉の中に、

   際立った大きさの、星型や扇型、不定型等の結晶が見られる時は、「結晶釉」と言います。

  ) 「マット」と「結晶」とは、見た目には違って見えますが、基本的には同じ現象です。

     違いは、結晶の大きさの違いです。又、「マット」が釉の全体に析出するのに対し、「結晶」は

     一部の場所に集中して析出します。

  ) 結晶を大きく成長させるには、以下のような事が必要です。
   
   a) 冷却はゆっくりさせる事: 1150~1100℃の範囲では、時間を掛けて窯を冷やします。

     その為には、壁の厚い窯か、容積の大きな窯、即ち、冷え難い窯を使うか、或いは途中で

     再点火して、窯を暖めながら冷やします。

   b) 釉の粘性を少なくする事: 結晶すべき物質が、釉の中で自由に移動出来、一箇所に集まり

     大きな結晶を作る為には、粘性が少ない方が有利です。

     その為には、釉のアルミナ成分を少なくする事です。但し、流れ易い釉に成りますので注意。

   c) 同じ釉であっても、冷却スピードが速いと「マット状」になり、遅いと「結晶」が発達します。

     更に、急激に冷却スピードが速いと同じ釉でも、結晶が生成できる間も無く、透明釉に

     成ってしまう事もあります。

  ③ もう一種類のマット釉。

   a) 前記までに述べた、「マット」になる原因は、高温で釉の中に原料が完全に熔け込み冷却時に、

     微細な結晶が析出する結果ですが、他の種類の「マット」は、高温時でも釉に熔け込まず、

     化学的にも不活発(反応しない)な物質を含む場合の「マット」です。

   b) その様な物質には、二酸化ジルコニウム、三酸化アンチモンや失透剤と呼ばれる物があります。

     失透剤としては、酸化錫(すず)や酸化チタン(ルチル)、骨灰などの燐酸化合物があります。

   c) これらの失透剤を使う場合、ムラ(斑)の無い均等な失透を作るには、アルカリ成分を

     少なくする事です。アルカリ成分は原料を熔かす働きがあり、失透剤を熔かすか可能性もある

     為です。

   d) 釉の着色剤の顔料も、釉と反応しないと言う点では、失透の役割を果たします。

     尚、着色剤については、後日お話する予定です。

 ④  乳濁釉について。

以下次回に続きます。
  
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釉薬とガラス 11(透明と不透明釉2)

2011-10-29 21:34:58 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
2) 不透明釉(失透釉)について

  釉が熔けガラス質に成った後、冷却するに従い釉の原料が化学変化を起こし、ガラス質の中に、

  生成物が発生します。この生成物がどの様な形のものかによって、透明度の質が変わります。

  大きく分けて、「マット釉(艶消し釉)」と「乳濁釉」に分かれます。

 ① マット釉(艶消し釉)について

   釉の熔け不足により、釉面が「ザラザラ」し、一見マット風に成る事がありますが、これを「マット釉」

   によるものとは、言いません。

   マット釉とは、ガラス質の中に、何らかの「固体物質」が均等に拡散し、更に釉面に細かい凹凸を

   作り、乱反射する事により、光沢をなくし透明性も無くしたものです。

   尚、何らかの「固体物質」とは、何らかの「結晶」又は、「化学的反応に不活発な物質」

   即ち、化学変化をしない物質が存在しているかの、二つの場合があります。

  ) ガラス質の冷却中に、何らかの「結晶」が発生する場合。 

    「結晶」が発生する原因は、過剰に添加された原料の仕業です。

     高温であれば、釉の中に完全に熔け込んでいる原料も、冷却と伴に過飽和状態になり、結晶の

     形で析出してきます。結晶化する原料には、以下の物質があります。

    a) アルカリ類が過剰な場合

      媒溶剤であるアルカリ類の、カルシウム、マグネシオウム、バリウム、亜鉛華等が過剰に

      成ると、結晶化が起こります。これらを総称して「アルカリ性失透」と言います。

      特に、カルシウムは「石灰質マット釉」として広く使われています。

    b) 二酸化珪酸とアルミナ成分が過剰の場合

      この両者が同時に過剰な場合にも、「ムライト」や「クリストバライト」と呼ばれる、

      微細結晶が生成され、失透します。

      両者を含むカオリンを使う事が多く、この釉を「カオリン質マット」と呼びます。

    c) 失透剤を添加して結晶化させる。

      失透剤には、二酸化チタン、二酸化錫(スズ)、二酸化ジルコニウム等が代表的な物質です。

      一般に5~10%程度加えます。これらの物質は高温時には、完全に釉に熔け込みますが、

      冷却と伴に微細な結晶として、析出し失透を起こします。

    d) 金属化合物を添加すると、結晶化が起こる場合。

      酸化コバルト等を、多量に添加した時は、容易に結晶が起き易いです。その結晶が、

      釉の全面に起きれば、失透する事に成ります。

  以上の方法は、過剰に添加した物質が、冷却と伴に結晶を発生する結果、失透に成ったもので、

  釉の表面に結晶が浮き出て、細かい凹凸の為、平滑でない釉面と成り、透明度が失われます。
 
 ② 結晶釉について。

以下次回に続きます。
  
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釉薬とガラス 10(透明と不透明釉1)

2011-10-28 21:43:16 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
今までも何度か透明釉や不透明釉について、述べて来ましたが、見方を変えてお話したいと思います。

 (但し、以前お話した事と、重複する記述まありますが、ご了承下さい。)

尚、不透明釉(失透釉)とは、具体的には一般に、マット釉、艶消し釉、乳濁釉、結晶釉の事です。

1) 透明釉について

   透明とは、下絵付けした場合、釉で邪魔されず、そのまま描いた状態が、表面から見える事です。

   どの様な状態の時に、透明に成るかは、以下に述べます。

  ① 表面(釉面)が平滑で、反射光が規則的で、乱反射がない状態に成っている必要があります。

  ② 釉に光沢がある事です。①のままでは、透明とは限りません。

  ③ 釉の中に、光を乱反射する物質が、存在しない事です。(反射光が規則正しく屈折する事です。)

  実際には、ガラス(釉)の中に、気泡が完全に無いと言う事は稀で、必ず幾分かの気泡を含みますので

  厳密には、この気泡も光を乱反射を起こしますが、見た目の透明度に多きな影響を与えません。

  ④ 釉を透明にする為には、以下の事に注意します。例え、透明釉として、調合したり市販されたり

    していても、その使用の仕方や、窯焚きの状況によっては、透明度が下がる事があります。

   ) 釉の厚みに注意: 釉を厚く掛けると、熔けたガラズ質が厚くなり、釉中のガス(気泡)が

     抜け難く成ります。その結果、透明度が下がる場合も多いです。(白く濁り易い)その為、

     透明釉は若干薄めに掛けます。

   ) 釉の原料はなるべく細かくする: 熔け易くする事と、他の原料と良く反応する為にも、

      原料を細かくする事です。施釉する際にも沈殿物を良く掻き回し、「だま」が出来ない様に

      してから、施釉する事です。

   ) 透明釉は粘度を小さくする: 釉中の気泡が抜け易い様にする事や、他の元素の結晶を

     防ぐ為には、粘性を少なくする事ですが、極端に粘性を少なくすると、釉が流れ落ちますので

     注意が必要です。粘性が少ないと、結晶化を促す働きも出てきますので、注意が必要です。

   ) ねらし時間を長くする: 焼成の最後の段階の「ねらし」(一定温度で、一定時間焼成する事)

     の時間をやや長くし、気泡の抜けた後の「あばた状」の表面を平滑にします。

     但し、「ねらし」時間が長過ぎると、釉の分解が進み過ぎて、大量のガスを発生させる場合も

     有りますので、注意が必要です。

   ) 急速に窯を冷却する事: ゆっくり冷却すると、結晶化が進み易いです。出来れば8~700℃程度

      まで早めに冷却すれば、透明度の高い作品に成ります。

    ・ 急速な冷却は、窯の大きさ(容量)や、窯の壁の厚さ等によって左右されます。

      一般には、色々な窯を用意する事は困難ですし、同時に他の釉の作品を焼く事も多い

      はずです。その場合、窯詰めの仕方で調整するのが一般的です。即ち、窯は下部の方から

      冷えてきます。 暖かい空気は上に昇り、やや冷えた空気が下に溜まる為です。

      それ故、早く冷却したい釉は窯の下部に置き、結晶釉の様な釉の掛かった作品は上部に窯詰め

      します。透明釉以外に、冷却が早い方が綺麗に仕上がる釉には、黒天目や織部釉等が

      あります。この様な、作品をまとめて、窯の下部に窯詰めすれば、現在使用している窯でも、

      十分対応が出来ます。

2) 不透明釉(失透釉)について

以下次回に続きます。    

  
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釉薬とガラス 9(釉の三要素)

2011-10-27 22:20:05 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ④ 三酸化物(中性元素、アルミナ、Al2O3)

   釉に使われる三酸化物は、アルミナのみと言って良いでしょう。ほとんどの釉に含まれています。

   アルミナは水酸化アルミニウムを、300℃で焼いて作り、非常に純度の高い物です。

   水酸化アルミニウムは、微細な為沈殿防止剤としても、使用されます。釉にも使用され、素地との

   密着を良くする働きがあります。又、アルミナ成分は、長石にも含まれています。

  a) アルミナを入れると、熔ける温度が上昇します。又、熔ける温度範囲を広げます。

  b) 量が増えるに従い、粘性が増します。その結果他の元素の結晶化を防ぎ、透明の釉に成ります。

  c) 量が増え過ぎると、逆に微細な結晶が発生し、マット状に成ってしまいます。

    この方法で、マット釉を作る方法が一般的です。

    Al2O3 : SiO2 = 1:3~6(モル比)の割合のときマット釉に成ります。

  d) 結晶釉を作る際、意図的にアルミナ成分を少なくし、釉に流動性を持たせますが、量が少な過ぎると

    釉が流れ易くなり、素地から滑り落ちてしまう場合もあります。

  e) アルミナは、固いガラス質を作りますので、機械的強度や化学的強度を増します。

  f) 釉の表面張力を増す、強力な物質ですので「ちぢれ」を起こし易いですので、適量使う様にします。

  g) 二酸化マンガンと組み合わせて、ピンク釉を作る事が出来ます。

    この釉は非常に耐火度が高く、還元炎で高火度釉として使われます。

 ⑤ 植物の灰

   東洋では古くから、植物を燃焼した後に残る灰を、多く用いていましたし、現在でも陶芸家を中心に

   盛んに使われています。と言うよりもむしろ、釉は灰から出発したとも言われています。

   灰ならどんな種類の植物であって、良いのですが、灰の種類によって各々特徴が有りますので、

   使い分ける事も多いです。種類としては、稲の藁や、籾殻(もみがら)や糠(ぬか)などの

   珪酸を多く含む物や、他に松、椿、栗(栗皮)等が代表的な樹木ですが、その他ススキなどの

   草などの灰も利用しています。 又、色々な雑木や草や葉などを燃やした、土灰(どばい)も

   多く利用します。アルカリ元素である、カリウム、ナトリウム、カルシウム等の他、マンガン、鉄、

   燐(りん)など微量な不純物が入っています。   

  a) 灰を釉として使う場合には、灰単体でも使えますが、媒熔剤として使う事が多いです。

    (灰その物はかなりの高温でないと、熔けませんが素地中の、アルミナやシリカと反応して

     灰単体でも熔ける訳です。)

  b) 同じ種類の灰であっても、採り入れる時期や場所によって、大きく違いが出ます。

     その為、釉として一定にならず、工業的(量産的)には、自然の灰ではなく、合成の灰が

     使われます。逆に、陶芸家などはその変化を期待して、使うとも言われています。

  c) 灰は大量の水で、水溶性の不純物を取り除きます。又、燃え残りの炭(残滓=ざんし)も除きます。

    水を何度も取り替え、繰り返す必要があります。

以上で「釉の三要素」の話を終わります。

次回から、透明釉と不透明釉(マット、艶消し、乳濁結晶など)について、お話します。
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釉薬とガラス 8(釉の三要素)

2011-10-26 21:11:35 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ② アルカリ土類(金属)の種類と効果

  ) ホウ素(三酸化ホウ素、B2O3): ホウ素もアルカリ元素ではありませんが、同様な働きを

    します。 他のアルカリ元素類が、酸素が1個なのに対して、3個入っています。

    ホウ酸を含む物質には、酸化ホウ酸やホウ砂(熔融ホウ砂)、メタホウ酸ナトリウム、コレモナイト、

    ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛などがあります。

    ほとんどの物質は、水溶性の為、「ホウ酸系フリット」にして使います。

    (コレモナイトは、わずかに水に溶けますが、ほとんど不溶性とみて差し支えありませんので、

     生の状態で、使用できます。)

    a) 低火度では、粘性のある安定したガラスを作ります。

    b) 高火度では、釉の熔ける温度を下げますが、粘性も下げる働きをします。

    c) 他の元素の結晶化を防ぎ、釉の透明度を増し、光沢を与えます。

    d) 釉の表面張力を弱めます。更に、機械的強度を増します。

    e) ホウ素は、問題がある釉の改善に役立てる事も多いです。

 ③ 二酸化物(酸性元素): 酸素を2個持っている物質

   ) 二酸化珪酸(シリカ、SiO2)

     二酸化珪酸は以下の物質に含まれています。

    ・ 珪石 : 一般的に使われる原料です。純度99%の物もあります。

    ・ 珪藻土(けいそうど): 水生植物の化石が軟らかい岩石に成った、白色又は灰色の粉末状の

      物で、非水溶性ですが、大量の水を吸収します。 シリカの含有量はさほど多くはありません。

    ・ 長石 : 二酸化珪酸以外に、アルカリ成分等を含んでいます。

        カリ長石(正長石、福島長石など)、ソーダ長石(釜戸長石、対州長石など)があります。

    ・ カオリン、粘土類 : カオリンの主成分は、カオリナイトで、アルミナ、珪酸(約46%)と

      結晶水(約14%)から出来ています。釉の調合には、結晶水を除いて計算します。

      カオリンは、可塑性がある為、釉が素地に付着するのを助けます。又釉の沈殿を有る程度

      押さえてくれます。粘土類もカオリン同様に使いますが、他の金属類を含んでいますので、

      色が付かない様に注意が必要です。

    ・ タルク : 二酸化珪素の他に、酸化マグネシウムが入っています。

   二酸化珪素の性質は以下の通りです。
   
    a) ガラスの本体(ボディー)を作る材料です。

    b) 釉の熔ける温度を上げる。(媒熔剤が多量にあれば、温度は下がります。)

      又、熔ける温度範囲を広げます。

    c) 機械的、化学的強度を強くします。

    d) 膨張係数(率)を小さくしますので、貫入の発生を抑えます。

  ) 三酸化ホウ素 : 本日のブログの頭書にも記述しましたが、ここでは、ガラスの生成に関与

     しますので、お話します。 この物質は使う量や他の元素との組み合わせで、ガラスの生成に

     寄与したり、逆に壊す(媒熔剤として)働きがあります。

     二酸化珪素と組み合わせ、「フリット」したホウ酸を添加すると、かなり低温から安定した

     ガラスを作ると言われています。

以下次回に続きます。


 参考資料 : 「焼き物実践ガイド」 (誠文堂新光社 樋口わかな著)
 
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釉薬とガラス 7(アルカリ元素4)

2011-10-25 21:30:01 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ② アルカリ土類(金属)の種類と効果

  ) 酸化亜鉛(ZnO、亜鉛華)

    亜鉛は周期表ではアルカリ類に入っていませんが、同じような働きをする為、頻繁に釉に

    使われます。添加する量で透明、乳濁、マット、結晶釉と変化します。

   a) 石灰系透明釉に亜鉛華を適度(3%以下)に入れると、透明度を落とさずに、融点を

     下げる事ができます。但し、量が多くなると、耐火度は上がります。

   b) 分相による乳濁を起こします。乳濁釉を作るのに適しています。

     分相による乳濁とは、性質の異なるガラスが、その境界面で乱反射する為に、光沢が

     有りながら不透明に乳濁する現象です。更に、ホウ素が入っていると、効果は強くなります。

   c) 光沢の無いマット釉を作ります。亜鉛華を多く入れると、微細な結晶が釉の表面に拡散して、

     飽和状態に成ると、マット釉に成ります。

   d) 亜鉛華を過剰に入れると、珪酸亜鉛(2ZnO・SiO2)結晶が生成され、大きな星型文様に

     成長し、亜鉛結晶釉と成ります。大きな結晶を作る結晶釉の条件として、以下の事が必要です。

    イ) 釉の粘性が少ない事。

    ロ) アルミナ成分を少なくして、アルカリ分を多くする事。

    ハ) 結晶が十分成長する時間が必要な事。

    ニ) 一定温度を保持する事。この場合は、1150~1100℃の間をゆっくり冷やす事です。

   e) 亜鉛華は、釉に弾力性を与える為、貫入の発生を抑えます。

     又、表面張力をやや大きくしますので、釉の「ちぢれ」を起こす事もあります。

   f) カリウム、ナトリウム、リチウム等を、亜鉛に置き換えると、物理的(機械的)、化学的な

     強度が増します。

   g) 釉の色調に変化を与えます。

     酸化コバルトは、青が強調されます。酸化クロムは緑掛かった茶色になり、クロムピンク釉は

     緑色に褪色するのを防ぎます。

  ) 酸化鉛(PbO): 鉛もアルカリ元素ではありませんが、同じ様な働きがある為、掲載します。

     唯一の低火度用の熔融剤です。生の状態の鉛白、硫酸鉛などは有毒ですので、「鉛フリット」

     として使います。更に、焼成後であっても、酢酸(食酢)等の酸に溶け出す恐れが有りますので、

     食器類などは、特別の場合以外は使用できません。食品衛生上からも、禁止されています。

    ・ 但し、楽焼の抹茶々碗のみ、特別認められています。

   a) 鉛は焼成中でも、簡単に蒸発しますので、室内の窯は換気に十分注意する必要が有ります。

   b) 鉛の熔ける温度範囲は大変広く、必ずしも厳密な釉の調整でなくとも、適応できます。

   c) 他の元素の結晶化を防ぐ為、透明度の高い釉を作る事が出来ます。

   d) 釉の表面張力を弱め、弾力性を増して、貫入の発生を防ぎます。

     但し、鉛の量が多くなると、逆に貫入が発生し易いです。

     又、物理的(機械的)、化学的強度が弱くなり、釉の磨耗性も弱くなります。

   f) 釉の色調に変化を与えます。

     鉛と酸化アンチモンで黄色、鉛と酸化ウランで赤色の釉を作る事が出来ます。

以下次回に続きます。

 
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釉薬とガラス 6(アルカリ元素3)

2011-10-24 22:15:02 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ② アルカリ土類(金属)の種類と効果

   ) ストロンチウム(SrO)

    釉の原料と成る物質は、炭酸ストロンチウム(SrCO3)が唯一の物と言われています。

    1075℃で熱分解し、酸化ストロンチウムと成ります。(SrCO3=SrO+CO2)

    a) 1100℃以上で効果が出る媒熔剤です。熔ける温度を下げ光沢を増します。

    b) 添加量が増えると、半マット状の艶消しとなります。

    c) 貫入の発生を抑え、酸に対して強くなります。

    d) カルシウムをストロンチウムに置き換えると、熔ける温度を下げ、流動性を増します。

      又、亜鉛をストロンチウムに置き換えると、熔ける温度は不変ですが、膨張率と流動性が

      幾分増します。

    f) ジルコン釉にSrO加えると、釉が平滑になり、ピンホールを少なくします。

      ホウ酸釉は独特の濁りを発生させますが、SrOを添加する事で、無くす事が出来ます。

    h) 釉の色調を変えます。赤やピンク系の色はより強く発色しますし、銅釉はトルコブルーに

      成ります。

   ) バリウム(BaO)

     高火度釉として使用し、少量で効果的に働きます。

    ・ 炭酸バリウム(BaCO3)は毒性がありますので、取り扱いに注意が必要です。

      かなり高温になってから、熱分解を起こし、酸化バリウムと炭酸ガスに分解します。

      この炭酸ガスが釉中に残ると、透明度が落ちます。

    ・ メタホウ酸バリウムは、熱分解で炭酸ガスを発生しませんので、「ピンホ-ル」や「ブク」は

      発生しませんし、釉の失透性も起きません。

    a) 粘度が低く成り、光沢が増します。

    b) 釉中に結晶が出来るのを抑制します。その為、透明度が増します。

    c) 多く使うと、逆に結晶を促し、マット状に成ります。

    d) 熔融温度範囲を狭くします。更に、化学的な耐久性も弱くなります。

    e) 釉の色調を変えます。バリウム入りの青磁釉は、酸化鉄による発色を促進させます。

      酸化クロムは一般的には緑ですが、黄色に変化します。酸化コバルトは紫色に、酸化銅は

      緑青に変化します。

   ) 酸化亜鉛(ZnO、亜鉛華)

     亜鉛は周期表ではアルカリ類に入っていませんが、同じような働きをする為、頻繁に釉に

     使われ、アルカリ類と同様に扱います。     

以下次回に続きます。
 
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釉薬とガラス 5(アルカリ元素2)

2011-10-23 22:08:01 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ② アルカリ土類(金属)の種類と効果

   アルカリ土類は、一般的には、アルカリ元素と組み合わせて使います。

   単体では、アルカリ元素より、効果が薄いですが、アルカリ元素と共同で有効に使う事が出来ます。
  
  ) カルシウムは、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、石灰石、大理石より釉に取り入れます。

    炭酸Caは、石灰石として、大量に算出する為、安価です。更に800~900℃程度で、熱分解して、

    酸化Caと炭酸ガスに分解されます。

   a) カルシウム単体では、融点は高い(酸化Caでは2572℃)ですが、二酸化珪素(SiO2)との間で、

     共融現象を起こし、1160℃で熔る様に成ります。

   b) CaOが多くなると、微細な結晶を生成し、マット釉に成ります。この方法が一般的にマット釉を

     作る方法です。

   c) アルカリ元素に比べ、熱膨張率が低い為、貫入の発生を抑えます。

   d) 磨耗などに対し、機械敵強度が増します。又、化学的な耐久性も増します。

   e) 温度の上昇と共に、急激に粘性が少なくなります。(流れ易い釉に成る)

   f) 素地と釉の中間層の形成を促し、釉の密着度が強固になります。

   g) 釉の色に変化を与える事はありません。(他の原料には無い特徴です。)

  ) マグネシウム(Mg)

    酸化Mg、炭酸Mg(マグネサイト)、ドロマイト(炭酸Caと炭酸Mgとの複合剤)、

    タルク(滑石、3MgO・4SiO2・H2O)などが、原料になります。

   a) 高火度釉として使います。少量入れると熔ける温度を下げ、光沢のある釉を作ります。

   b) 1100℃以下では、少量でもマット釉を作ります。量が増えると熔ける温度が上昇し、1200℃以上で

     微細な結晶が生成され、マット状になります。

   c) 失透剤としては、酸化錫やジルコンが代表的な原料ですが、効果はやや弱いながら、Mgも

     十分効果を発揮します。

   d) 他のアルカリ類に対して熱膨張率が低い為、貫入の発生を抑えます。

   e) Mgは釉の粘性(粘度)に影響を与えません。

   f) 表面張力が大きく成り、「ちじれ」(かいらぎ)を起こし易いです。

   g) 機械的強度を増し、酸や磨耗に対して強くなりますので、タイルなどの建築用陶器の釉として

     多用されています。

   h) 釉の色調を変化させます。酸化コバルト(呉須など)は青(藍色)ではなく紫色に、

     酸化クロムは、緑色ではなくオリーブグリーン色になります。

  ) ストロンチウム

以下次回に続きます。
     
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釉薬とガラス 4(アルカリ元素1)

2011-10-22 22:06:49 | 釉薬に付いて 釉薬の種類 熔融剤
4) 三要素の原料

 ① 一酸化物の種類と効果

   一酸化物には「アルカリ元素」と「アルカリ土類金属」に分かれます。

  ・ 「アルカリ元素」は化学の周期律表の第Ⅰ族ーAに属する、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、

    K(カリウム)の三種で、釉としては、これらの酸化物が使われます。

  ・ アルカリ土類金属は、 周期表第II族元素のうち、 カルシウムCa、ストロンチウムSr、バリウムBa、

    ラジウムRaの四種ですが、ベリリウムBe、 マグネシウムMgをこれに加える事もあります。

    いずれも光沢ある銀白色の金属です。

  ) 酸化リチウム(Li2O)

     酸化鉛に次いで二番目に強力な媒熔剤です。実際の原料として、炭酸リチウムやペタライトを

     使います。 尚、使用効果は以下の様に成ります。    

    a) 釉の粘度を少なくします。

      釉の中のガスが抜け易くなる為、ピンホールの発生を妨げます。

      粘度が小さ過ぎると、逆にガスの発生を抑えきれずに、「ブク」が起きる可能性もあります。

      粘度が低い事は、釉中の過剰な物質が、冷却中に集まり、結晶化し易いです。

      それ故、結晶釉を作る際には、有力な原料に成ります。

    b) 釉の表面張力を少なくする為、釉の「ちじれ」を抑えます。

    c) 他のアルカリ類が、膨張係数が大きいのに対し、リチウムは小さい為、釉の貫入を減らします。

    d) 釉の色に変化を与えます。

      酸化コバルトは紫色に、酸化銅や炭酸銅は、トルコブルー風の緑色に成ります。

  ) 酸化ナトリウム(Na2O)

    炭酸ナトリウムと次に述べる炭酸カリウムは、水溶性の為、そのままでは、釉として使えません。

    長石に含まれていますので、一般には長石(ソーダ長石、正長石等)から取り入れます。

    a) 「アルカリ元素」の中で、最も膨張係数が大きいです。その為、大きく膨張収縮を繰り返し、

      結果的に貫入が入り易いです。

    b) 釉の粘性を下げる為、物理的、化学的性質が弱く成ります。

    c) 釉の熔ける温度範囲を狭めます。

    d) 釉の色に影響を与えます。
     
      酸化銅や炭酸銅はトルコブルーに成り、二酸化マンガンは茶~紫色に成ります。

  ) 酸化カリウム(K2O)

     正長石(カリ長石)は、非水溶性のカリとして、唯一の物ですので、釉に使います。

     正長石はソーダ長石に比べ、高い温度(1500℃)でも流れる事がない為、高火度陶磁器釉

     として、重要な媒熔剤と成っています。

    a) 使用効果は、ナトリウムとほぼ同じですが、ナトリウム程、強力ではありません。

      (粘性、膨張係数、温度範囲、釉の色に影響等は、ナトリウムと同じです。)

 ② アルカリ土類(金属)の種類と効果

以下次回に続きます。
          
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