goo blog サービス終了のお知らせ 

わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

電気窯、ガス窯、薪窯 2

2019-02-25 17:53:42 | 色と陶芸
4) 同じ釉でも電気窯、ガス窯、薪窯では焼き上がりの色や光沢に違いがあります。

  ⑤ 電気窯とガス窯の作品の色合いの違い。(前回の続きです。)

   釉の色合いの違いは、熱源の差と熱の伝わり方の差による物です。

   特に熱の伝わり方の差が大きな影響を与える事になります。

   熱の伝わり方は、伝導、対流、放射(輻射)があります。

   ⅰ) 陶芸の窯での伝導による場合は、棚板から作品に熱が伝わる際に起こります。

    但し、昇温中では作品の熱容量が小さく、棚板の方が熱容量が大きい為、棚板より作

    品の方が早く温度上昇しますので、棚板より作品の方に熱が伝わる事はほ殆どない

    状態です。

    但し、窯の冷却中では、熱容量の少ない作品の方が早く冷えますので、棚板から作品

    に熱は伝わる事になります。

   ⅱ) 燃料を使用する窯では、主に炎(焔)の対流によって熱が伝わります。対流は作

    品の間(隙間)を通り抜ける際、作品に熱を伝えます。その為、炎の通る適度の隙間

    が必要です。隙間は指一本程度が良いと言われています。狭過ぎでは炎が流れず、

    熱は作品に伝わりません。広過ぎると炎の熱は無駄に流れ去ってしまいます。

    一般に燃料を使う窯では、倒炎式が多いです。即ち、壁の側面から天井まで上昇した

    炎は、反転して底の方に流れ、底周辺に設けられた煙突の入り口に向かい排出します

    尚、一部は天井まで登らず、作品間を通る流れも起こっています。

    炎の熱も一様ではありません。即ち熱の高い所と低い所が混在してります。

    更に、炎に含まれる酸素の量にも偏りがあります。一般に赤い炎は酸素が少なく、青

    白い炎では、酸素分しが多くなります。前者が還元炎、後者が酸化炎と呼ばれる物で

    す。還元炎は酸化金属(地球上の金属のほとんどは、空気中の酸素によって酸化物に

    なっています)を元の金属の色に戻します。この複雑な炎の状態によって釉も複雑な

    影響を受け、変化の富んだ色合いに成ります。炎の温度が高いのは、中性炎と言われ

    ています。

   ⅲ) 電気窯では特別に還元を掛けなければ、即ちガス等を注入しないければ、放射

    (輻射)によって熱が伝わります。放射は空気中では熱を発生せず、物(作品)に当

    たって初めて発熱します。更に、放射は直進性を有しますので、作品が他の作品の物

    陰に入った場合、陰の部分には十分熱量が届かなくなります。特に熱源より遠いと

    供給される熱量は不足ぎみに成ります。そこで容積の大きな窯では、他の窯とは違い

    天井や後ろの壁、扉などにも発熱体を設ける事が多いです。

    実際の焼成では熱量を受けた作品の部分から、伝導により熱が他の部分に供給され、

    同じ温度になろうとします。

    上記の様に、熱の高低差は存在しますが、変化のある炎がありませんので、燃料の窯

    と違い、色も変化に乏しく一定(平板)になり易いです。

  ⑥ 窯操作の違い。

   近年電気窯が多数使用されています。これは、煙突を必要とする窯よりも、環境や窯操

   作が簡単な事に関係しています。煙突のある窯では排気にも気を使う(一酸化中毒に

   注意)事もあり、電気窯では、屋内に設置でき特に排気に気を使う事は少なくなります

   特にマイコンによる自動燃焼が可能になり、一度所定の作業内容をセットすると、プロ

   グラムに従い焼成を終わらせる事が可能に成っています。

   又、電気窯は容積の小さな場合に向いています。通常の100Vの電源で使用できる

   物もあります。より電力を必要な場合には単相(100V)200Vで使用する場合もあり

   ます。尚、電熱線(発熱体)は消耗品です。ある程度使用したら交換する必要がありま

   す。使用条件や使う頻度によって寿命が異なりますので、詳しい事はメーカーにお問い

   合わせ下さい。更に、電熱線や窯材料(耐火レンガやグラスウール等)は市販されてい

   ますので、電気窯を自作する事も可能です。

以下次回に続きます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

電気窯、ガス窯、薪窯1

2019-02-18 16:57:13 | 色と陶芸
前回からの続きです。

4) 同じ釉でも電気窯、ガス窯、薪窯では焼き上がりの色や光沢に違いがあります。

 陶芸では窯は、熱を閉じ込め、温度を上昇させる為に必要不可欠な物です。

 窯にはガスや灯油、薪などの燃料を必要とする窯と、燃料を必要とせず、電力のみで熱量を

 供給する窯があります。一般には焔(ほのお)の出る窯と焔の出ない窯と言われています。

 窯を築くには、いずれも耐火レンガを使います。但し、構造には大きな違いがありますので

 一つの窯で代用する事は、かなり難しいです。

 これらの窯の大きな違いは、空気(特に酸素)以外の要素が関与するかしないかの差です。

 即ち、燃料に含まれる成分も重要な役割を担います。

 更に煙突の有無にも関係して、焼き上がりの色や光沢にも大きく関係する要因です。

 ① 本焼きの焼成では、火の温度が何度であるかよりも、作品自体が何度に保たれているか

  が重要です。これを熟成温度と言います。

  即ち短時間でどんどん温度を上昇させ、所定の温度にしても、品物が焼成される訳では

  ありません。ある一定の温度をある程度の時間保持し続ける事が必要です。

  焼成とは、原料である粘土や長石、珪石、絹雲母などが加熱によって化学変化を起こし

  これらの組成鉱物の変性作用とみる事ができます。

  釉の熟成には釉の均一な調合と、釉の組成原料や原料粒子の細かさも重要です。

  但し楽焼では短時間で温度を上げ、表面の釉を熔かすだけですので、焼成時間も短くなり

  ます。

 ② 燃料に含まれる成分とは?。

  電気窯の場合、空気に含まれる酸素のみですが、ガスには、酸素以外に炭素、水素が含ま

  れ、薪の場合には、更に水分と微量な植物成分(有機物や微量な金属類)を含み、焼成の

  残渣となる灰類も含まれます。

  これらは、窯の中で化学変化を起こし、炭酸ガスや一酸化炭素を発生します。

  これらは窯焚き中に連続して供給され続けます。又焼成には水分も大切な役目があると云

  わています。

  都市ガスやプロパンガスは、炭化水素が主原料の為、焼成中に水素と酸素が化学変化を起

  こし、水を発生するとも言われています。施釉の際、水分も含まれますが、高い温度に

  なると、ほとんど蒸発してしまう為電気窯では、水分は無くなっていると思われます。

 ③ 電気窯は炉内は余分な燃料成分が無い為、雰囲気は清浄に保たれていますので、磁器の

  焼成に向いています。雰囲気は酸性又は若干の還元になり、炉内が一定になり易い為、

  安定した色合いを得る事が出来ます。更なる還元を掛けるには、外部よりガスや炭を供給

  する必要があります。近年、マイコンを搭載した窯が増え、ほとんど自動的に焼成できま

  すので、焼成は比較的容易に成り、盛んに使用されています。

  但し色合いを要求される陶器では、余り望ましくないと見なされる事もあります。

 ④ 薪窯は焼き締めを行う事が多く、施釉陶器は少ないです。

  施釉せずとも、薪窯独特の色に仕上がります。特に薪窯に適する粘土も市販されています

  薪の成分の他に灰(赤松)も関係し、更に、藁(わら)などを用いて火襷(たすき)模様

  を作り出す事もできます。この様な色は他の窯でも工夫すれば出ますが、完全に同じ様な

  色合いにはならないそうです。

  この方法に付いては、陶芸の技術書などに掲載されている物を見かけますので、それらを

  参考にして下さい。

 ⑤ 電気窯とガス窯の作品の色合いの違い。

以下次回に続きます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5 反射と乱反射

2019-02-11 21:57:44 | 色と陶芸
焼き物の表面からの反射光によって、色の表情も大きく異なります。

一般には光沢釉と非光沢(マット)釉と呼ばれる状態です。尚その中間に半艶消し釉もありま

す。施釉された焼き物の表面は、ガラス質で覆われています。特別釉を厚くする青磁釉などを

除く釉の厚みは1mm以下が多いです。

滑らかに熔けた釉では反射は、ガラスの表面、ガラスの中間、及び素地とガラスの界面で起こ

ります。この反射は主に表面のみに起こる場合と、表面と中間で起きる場合、及び境界面を含

めて全ての場所で起こる事もあります。反射光同士は、お互いに干渉し合い、複雑な光と成る

場合もあります。ガラス層の中間には、釉から析出した金属類の結晶や、気泡などが含まれる

釉もあり、その面で反射もします。

1) 艶釉、一般的な釉(光沢釉)。

 一般的な釉は、光沢のある物が多く、マット系の場合は〇〇マットと名前が付けられている

 場合が多いです。

 ① 艶釉や光沢釉の場合、釉は高温で完全に熔けた状態でガラス化し、冷却により固まっ

  た物です。即ち釉の表面が均一に熔け、素地に密着して平滑に成り反射しています。

  又、表面に曇りもない無い状態にも成っています。

  尚、釉のガラスと一般的なガラス(ビンやグラス類)とは、若干性質が異なります。

 ② 光沢釉は、透明釉だけで無く、結晶釉でも乳白(濁)釉でも起こります。

  結晶や気泡などが内部にとじ込まった状態でも、器の表面が平滑であれば、光沢が出ます

  又、釉の中に存在する物質からも光の反射が起こり光沢釉に成ります。

 ③ 艶釉は、特に光沢のある釉で、艶黒釉が代表的な釉で市販されています。

  一般的な光沢釉よりも、表面より強く反射します。光沢を強くするには硼酸(ホウサン)

  や硼砂などを少量添加すれば良い様です。

2) 半艶釉、艶消釉(マット釉)。

  器の表面が平滑でなく、荒れていたりするとマット釉になります。表面が平滑でないと光

  は乱反射し艶消しとなります。表面の荒れ具合によって、艶消し半艶消しとなります。

  又、釉の中間に結晶や分相がある場合、その部分で乱反射し艶消しとなる場合があります

   注:分相とは、性質の異なるガラスが、水と油の様に混ざり合わずに、存在している

   状態です。

  ① 表面が平滑でない場合は釉の成分による物と、釉の熔け不足の場合や熔け過ぎがあり

   ます。熔け過ぎでは、表面から釉が流れ出したり、釉や素地から気泡などが発生し、

   表面に痘痕(あばた)を作り、凹凸の影響で乱反射を起こすからです。

   a)アルミナ(Al2O3)成分が多い程、更にシリカ(SiO2)成分が少ない程い、十分に熔

    けていても、艶消し(半艶消)釉になります。これはSio2ーAl2O3性状図からも読み

    取れます。手持ちの粘土を混入させても、マット釉を作る事ができます。

   b)釉が十分に熔け切っていない場合、ガラス質は中途半端な状態になり、表面に細か

    凹凸がありザラ付き、光が乱反射します。 更に、熔け不足が部分的な場合、一つの

    作品でも光沢のある面と、光沢の無い面とが同時に存在する事もあります。 

3) 釉の色は焼成時間が長い程、趣のある色合いになります。

 基本的には、釉が完全に熔ければ良いのですが、短時間で熔かした釉は「テカッテ」いる感

 じで、陶芸の世界では、余り良しとしない風潮があります。

 それ故、長時間かけて焼成し、趣のある色艶に仕上げる事が行われています。

4) 同じ釉でも電気窯、ガス窯、薪窯では焼き上がりの色や光沢に違いがあります。


以下次回に続きます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする