わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 259 市販されている粘土類(美濃)

2016-10-26 17:53:14 | 素朴な疑問
美濃は岐阜県多治見市から土岐(とき)市一帯が焼き物の産地です。現在では高田、市之倉、笠原、

瀧呂などにも窯元があります。

美濃の焼き物には、志野、織部、瀬戸黒、黄瀬戸の四種類があります。

桃山から江戸時代は主に、抹茶々碗、向付け、皿、小鉢などの懐石料理用の茶器が作られている

のが特徴です。尚、志野、織部、瀬戸黒、黄瀬戸の名前は主に釉の名前に由来します。

1)志野の土。

  志野は我が国で最初に作られた白い焼き物と言われています。白い素地の上に長石系の白い釉

  が掛かった焼き物です。

 ⅰ) 志野土(荒目、細目): 真っ白な粘土で、耐火性が高く、土味の良い土です。

  a) 荒目の土は、やや粘りが欠けた感じのする土です。焼き上がると表面に「ザラザラ感」が

   残ります。即ち、素地中の気泡が表面に出、釉の表面に小さなボツボツがある、いわゆる

   「柚子肌」が特徴です。又、収縮率が低い(焼き締りが弱い)為か、食器類の口縁が欠け易い

    傾向にあります。但し作品は比較的軽く出来上がります。

  b) 細目の土は、志野独特の粘りのある、純白に焼きあがる土です。

  c) 志野土の特徴は、幾ら長い時間焼いても、形が崩れない事とです。又、施釉の際生掛けが

   可能な事です。志野特有の厚い釉をドップリ付ける行為もある程度安心して行う事があ出来

   ます。

 ⅱ) 志野赤土: 赤土が混じっていますので、白さは少なくなりますが、素地の色の関係で、

  釉が赤っぽい色や、鼠色になる場合があります。

 ⅲ) 五斗蒔(ごとまき)土:土岐市泉町の五斗蒔に産出する、耐火性が高く、土味の良い土です。

   五斗蒔陶土は、主に石英分とカオリン質粘土と長石です。それぞれの、粒子が粗いものと

   細かいものが自然的に粒度配合がなされています。水簸はしますが、粉砕加工はせず、自然の

   ままで使用する事で、五斗蒔土特有の土味が出る様に調整されているとの事です。

   現在では、産出量が少なく、各種鉱物を調合し合成された土が使われているとの事です。

   白色と黄色(赤土)があります。

 ⅳ) もぐさ土、もぐさ白粘土、もぎさ白原土、もぐさ赤土: 白色でカオリン成分が多く耐火度

   が高い粘土です。お灸に使う「もぐさ(艾)」の様にモコモコした珪砂の混じった蛙目質で、

   若干粘りに欠けたの土です。焼き上がりは白く、土味はザックリしていて、抹茶々碗や大物に

   適しています。 もぐさ土100%では、成形難しく他の土20%程度混入させると使い勝手も良く

   なります。赤土には少量の鉄分が含まれています。現在ではほぼ取り尽くし、市販されてい土

   は、他の志野土と混ぜ、もぐさ土風に仕上げています。

  ・ 本場(本物)の「もぐさ土」は、入手困難との事です。

 ⅴ) 志野織部土: 美濃の蛙目で作られた粘土です。志野や織部に使われ、織部の発色も良い

   土です。

2) 織部焼きに適した土。織部とは、主に釉を指す事が多く、織部釉を掛けた作品は、土の種類に

  寄らず、織部焼きと呼ぶ事が多いです。

 ① 織部粘土: 白い粘土で織部色の発色が良いです。

  織部焼きには、一般的な青織部(酸化銅を酸化焼成した物)の他、黒織部、鳴海織部などの技法

  がります。鳴海織部は白い土と赤土を適度に、貼り合わせて土の色の違いと、釉の面白さを加味

  した技法で、主に手捻りで作ります。

 ② 伊賀土(水簸、原土): 粘りの強い土です。

3) 黄瀬戸に適する土。黄瀬戸焼きと呼ぶとき、織部焼きと同様に黄色い釉が掛かった作品を呼ぶ

  事が多いです。

 ① 黄瀬戸粘土: 黄瀬戸の発色の良い土です。

 ② 赤津粘土: 黄瀬戸の産地のある赤津地方に産する土です。

4) 瀬戸黒に適する土。

  水冷や空冷(窯から引き出したらそのまま放置)などで、急冷する事で漆黒になると言われて

  います。その為、急冷出来る土が必要です。又、黒釉を掛けますので、土の色は余り拘る必要は

  ありません。一般に急冷に適した土は、粒子が荒目の場合が多いです。

  尚、楽焼に使える土であれば、瀬戸黒にも利用できます。

以下次回に続きます。
 
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素朴な疑問 258 市販されている粘土類(信楽粘土2)

2016-10-20 14:10:28 | 素朴な疑問
6) 実際に市販されている土を検討してみます。

 ① 轆轤作業に向いた土。

  ⅰ) 信楽水簸(すいひ)粘土: 以上が前回の話です。

  ⅱ) 薪窯用信楽水簸(すいひ)粘土。

   窖窯(あながま)は無釉の焼き締め陶を薪を使って焼く方法です。その為、良く焼き締まる土

   であり、且つ緋(火)色や窯変が出易い土が選ばれます。自然の土もありますが、それ様に

   合された土が市販されています。薪窯には登窯がありますが、近年ではほとんど使う人もいなく

   成っていますが、それ用の土もあります。

   a) 3号薪窖窯荒目土: 薪による焼成で緋(火)色が出易い土です。

   b) 4号薪窖窯細目土: 薪による焼成で緋(火)色が出易い土です。

   c) 6号薪窖窯荒目土: 薪による焼成で緋(火)色が出易い土です。

   d) 信楽炎色粘土。 古信楽炎色粘土。大物炎粘土。

   e) 並黄瀬(きのせ)粘土。黄瀬原土。黄瀬古信楽土

    以上の粘土類が、緋色や火襷(たすき)などが、華やかに出易い土となります。

   f) 7号薪窖窯赤荒目土:高温で焼成できる赤土です。

   g) 8号薪窖窯赤細目土:高温で焼成できる赤土です。 

    h) 古信楽登窯用粘土:細かい石ハゼのある土で、薪で焼成するのが良いです。

    上記の粘土が、渋い色に胡麻(ごま)や焦げなどの窯変が起こり易い粘土です。 

  ⅲ) 粉末状の粘土及び原土。

   上記の粘土類は、「練り土」と呼ばれる水分を含み、直ぐにも使用できる状態で、市販されて

   いる粘土です。粉末状の土や原土の中には、御自分で適度の水を加えてから、練って使える

   粘土にする必要があります。又、他の土に混入し好みの土を作る時にも使います。

   a) 信楽粉末土。信楽牧山粉末土。

    天日干しした土を石臼で粉砕した土を、篩に通した物で、他の土に30%程度混ぜる事で、

    粘りや腰のある、轆轤挽きし易い土を作る事が出来ます。又、再生土や水分の多い軟らかい

    土に混ぜると、即使える土にする事が出来る便利な土でもあります。

    ・ 信楽牧山粉末土は、耐火度が大変高く、冴えた土です。

   b) 木節粉末土。本山木節粉末土。蛙目粉末土。

   c) 童仙傍(どうぜんぼう)土(黒)。童仙傍白土。

    信楽原土の中で最も耐火度のある、小砂混じりの土です。石臼で粉砕し、水を加えて練って

    使います。単味では焼き締まり難い特徴があり、他の土に50%程度混入して使うと良いと

    言われています。又、窯道具(目、トチ、敷台など)や、窯の補修にも使います。

   ・ 尚、一般的には窯道具用には道具土として、市販されている土を使います。

   d) 轆轤(ロクロ)白粘土。轆轤赤粘土: 水簸(すいひ)粘土で轆轤挽きし易い土に調合

    してある土です。

   e) 信楽石ハゼ原土。黄瀬原土。

  ② 手捻り向き、その他の土。

   a) 急熱急冷白粘土(A-1): 信楽産の蛙目土と木節質の土を混ぜ合わせた土です。

    手捻りでも轆轤挽きでも使い易い土です。成形し易くキズも出難く白っぽく仕上がり、

    初心者向きの土で、削り味も良く、ザックリした感じに仕上がります。又、楽焼にも使用

    できます。信楽を代表する土とも言えます。尚、特A-1と呼ばれる更に上級の土もあります

   b) 茶ワン土、赤茶ワン土、茶ワン炎色土: 手捻りでも轆轤でも使い易い土です。

    一般は白色ですが、炎色が出易い土もあります。赤茶ワンは赤土が混入されている為色が

    付きます。

   c) ロット土: 信楽産で調合された物で、手捻りや大物の作品に向いた土です。

   d) 粉引赤土: 軟らかく赤色に発色する土で、粉引用に向いた土です。

   e)  信楽蛙目粘土: 信楽産の蛙目のみの白土です。

      信楽水簸黄土粘土: 信楽土に黄土を混入させた土です。

      信楽作家土: 5種類の土を混合した土で、古信楽風のです。詳細は不明です。

 信楽の土には、その他多くの種類が存在します。多くは他の粘土と混合し、使い易い用に調合

 された土です。カタログだけでは判’識別別できない、同じ用な名前の物も有りますので、ご自分

 に合った特別な用途の土は、メーカーに問い合わせて下さい。

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 257 市販されている粘土類(信楽粘土1)

2016-10-14 13:30:19 | 素朴な疑問
6) 実際に市販されている土を、紹介検討してみます。

 粘土の中には、用途に関わらず、万能な土もあります。(其れなりに、どんな用途に使える土)

 一方用途的に適した粘土を使いたいと思っている方も多くいます。市販されている粘土類には、

 ある程度その用途に適した粘土が用意されています。その用途別の土に付いて述べたいと思います

 但し、磁器土に付いては、後日述べる予定です。

 ① 轆轤作業に向いた土。

  轆轤挽きに適する土は、腰が有り直ぐに「ヘタラ」ない事と、土がスムーズに伸びてくれる事

  です。肌理が細かく手触りの良い土が多いのですが、大物の場合には、若干粒子が粗い方が向い

  ています。

  ⅰ) 信楽水簸(すいひ)粘土: 良質の蛙目土と木節土を沈殿させ、その上部の微粒子を篩

   (ふるい)に掛け、木くずや砂などの不純物を取り除き、天日などで乾燥させた土です。

   粘り気が多く、砂気の少ない粘土です。尚、並漉し(なみこし)は篩の目の100を通した土で、

   特漉しはそれより細かい篩を通した土たです。 篩目は数の多い程、目が細かくなります。

   信楽水簸(すいひ)粘土には、幾つかの種類があります。

  a) 信楽水簸(すいひ)並漉し粘土: 安価で代表的な粘土で、初心者からベテランまで、

   万人向きの多く使う事われる土です。安価で容易に手に入り、極一般的な粘土です。焼き上が

   りが黄白色で、他の土とも相性が良く馴染み易いです。食器などに使われる人気のある土です。

   小物から大物まで使われています。

  b) 信楽水簸(すいひ)特漉し粘土: 並漉しより篩目が細かい土です。

   作品に細工を施す場合に向い粘土です。小物向きです。目が細かいですので、並漉しより

   若干縮み量が大きいです。

  c) 信楽赤水簸(すいひ)粘土: 鉄分の多い土で、焼成では茶色から褐色を呈します。

   この粘土を100%で使と、釉が焦げてしまったり、釉剥げを起こす事も多く、更に耐火温度も

   下がり、焼き縮みも大きくなり、器形が崩れ易くなります。その為、並漉しなど他の粘土と

   混ぜて使う事が多いです。混ぜる量は10~50%程度が安全です。当然混ぜる量が増えるに

   従い、素地の色も濃くなります。釉の発色も鈍く(渋く)なりますので、好んで赤土を混ぜ

   て使う人も多いです。 尚、用途や混入物の違いによって赤1号~4号が)有ります。

   又はそれ以上番号の物もあります。

  d) 古信楽土(細目、荒目): 石ハゼ(珪長石の祖粒石)が5~10%程入った白色の粘土です。

   素地と石の粒子の細かい細目と、素地と石の粒子がやや粗い荒目があります。

   焼成すると、作品の表面に半透明の石がとび出してきますので、野趣溢れた作品になります。

   尚、皿の様に口径を広げる作品では、荒目を使うと口径に「ひび」が入りや易くなります

   ので、慎重に轆轤挽きしなければ成りません。

  ・ 古信楽赤土: 古信楽土に赤土を混入した土です。焼き上がりは茶褐色に成ります。

  e) 信楽原土:信楽石ハゼ原土、黄瀬(きのせ)原土、特選黄瀬原土。

   信楽石ハゼ原土は白色の原土で、このままで作陶できる古信楽風の作品になります。

   黄瀬(きのせ)原土は、黄瀬山に産する原土で、黄味白色になります。石ハゼ、緋色、焦げ等

   の窯変はこの土の化学的作用と言われています。この土単体での作品は素朴で力強い表現に

   なります。 特選黄瀬原土は、粘りの強い腹土で、緋(火)色が良く出ます。

  f) 黄瀬土: 黄瀬土原土を水簸した土で、信楽土の最高級品とも言われています。

  g) 信楽黄土水簸粘土: 耐火度があり、酸化及び還元焼成で黒っぽく焼き上がります。

  h) 白御影土、黄御影土、黒御影土: 

    古信楽土にマイカ(雲母)を混入した土(白御影土)。

    古信楽土に黄土とマイカ(雲母)を混入した土(黄御影土)。

    古信楽土にマイカ(雲母)と黒顔料を混入した土(黒御影土)。

  ⅱ) 薪窯用信楽水簸(すいひ)粘土。

以下次回に続きます。

参考資料: 東京丸二陶料、(株)ヤマニファーストセラミック、(株)新柳北信などのメーカーの

カタログ。
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素朴な疑問 256 市販されている粘土類 3(敵、不適な土)

2016-10-09 20:34:47 | 素朴な疑問
5) 焼き物に適する粘土適さない粘土とは。

 粘土は自然界に存在していますので、その生成から考えて、粘土以外に種々の鉱物が混在してい

 ます。粘土の定義は「粘着性を有する物で、微細な粒子の集合体である物。主に珪素、アルミニウム

 鉄、アルカリ金属、アルカリ土金属、水分などの化学成分を持っている天然物」とされています。

 又粘土自体にしても単一種類の場合は少なく、2種類以上の粘土から構成されている事が多いです

 ①  粘土以外の鉱物とは。

  主な物に、石英、長石類、雲母類、鉄化合物(赤鉄鉱、磁鉄鉱、褐鉄鉱、硫酸鉄)チタン化合物

  (ルチール等)、石灰石(ドロマイト)、マグネサイト、石膏、柘榴(ざくろ)石、電気石など

  その他、有機質の不純物多もあり多種多様です。これら不純物の中には、種類によっては有害で

  何らかの方法で除去しなければ、焼き物の粘土としては利用出来ない物もあえいます。

  尚、当然ですが市販されてる粘土類は、この有害物質の除去作業が終わっている物ですので、

  何ら心配ありません。

 ② 焼き物に適する粘土には、幾つかの条件を備えていなければ成りません。

  ⅰ) 可塑性(かそせい)を有する事。

   可塑性とは、一定の力を加えると変形し、そのままの変形を保持し続ける性質です。

   可塑性を決定するのは、粘土成分中の粒子の細かさです。微細な粒子が多く存在する粘土で

   微細な程可塑性が増します。一般に1μ(ミクロン)以下で有れば、可塑性が発生します。

    (注:1μ = 1/1000mm です。)多くの可塑性粘土の粒子は1~0.1の範囲内にあります。

   粒子の平均が0.55μの時、乾燥収縮は約7.8%程度で、乾燥強さは7.2kg/cm2(平方センチ)

   程度です。(一般的な収縮率ですので、使用している粘土の平均粒度が予想されます。)

   微粒子ほど乾燥後の機械的強度が強くなります。但し、この様な粘土は、保水量が多く、

   乾燥収縮が大きくなります。乾燥後に「ひび割れ」を起こす粘土は焼き物に向きません。

  ⅱ) 適度の温度範囲内で、焼き締まる事。

   焼き締まる事で、水を通さ難くなります。即ち素地の中にガラス質を形成する長石などが

   含まれていなければ成りません。焼き縮みを調整する物に、石英物質があります。

   尚、粘土は加熱する事で、分解や他の物質に変化する等、複雑な加熱変化し、発熱や吸熱も

   起こります。この温度曲線は粘土の種類によって異なりますので、粘土の産地や生成具合を

   見分ける一助になっています。

  ⅲ) 耐火度がある事。

   粘土は加熱によって、多少は軟らかくなります。耐火度が低い粘土では、釉が熔ける以前や

   焼き締まる前に、器形を保持できず、崩れ去る物もあります。単一で焼成する場合には、その

   土に最適な温度を見出す事も可能かも知れませんが、色々な粘土が混在した状態では、焼き物

   として不向きです。逆に耐火度が高い場合には、作品ではなく、窯道具などの制作に向いてい

   ますので、それなりの利用価値があります。

  ⅳ) 釉との相性が良く、釉が表面を綺麗に覆う事。

   相性が悪いと、釉の捲れ(めくれ)や剥がれが発生します。これらは膨張係数の差や、粘土に

   含まれるガス(気孔)、結晶水等と釉の曲げ強さ等の力関係による物と思われます。

   釉が綺麗に発色するには、素地が滑らかで、絵付けを行う場合には、濃い色の土でない方が

   適します。

以下次回に続きます。

   
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素朴な疑問 255 市販されている粘土類 2(粘土の成り立ち)

2016-10-07 16:46:51 | 素朴な疑問
4) 粘土類は母岩と呼ばれる岩石が、風化して出来た物です。

 岩石の出来方は色々ありますが、その化学成分は似たり寄ったりです。即ち、シリカ(珪酸)と

 アルミナ成分と少量の石灰やマグネシア、酸化鉄などの酸化金属類です。これらを造岩鉱物と呼び

 およそ数十種類存在しますが、粘土に適する鉱物は、珪酸、アルミナ、石灰等を多く含む物です。

 更に、焼き物に適する粘土類が、産出する場所は、ある程度限定(産地が偏っている)されます。

 ① 天然の岩石は、その成り立ちから、火成岩、水成岩(堆積岩)と変成岩に大別されます。

   これらは粘土類に変化する以前の状態で、母岩ともいわれる物です。この生成現象は、焼き物

   と類似と考えて良いでしょう。(高温に晒された後、冷えて固まった物)

  ⅰ) 火成岩は地中深く高温の場所から、熔岩が地表に現れる間に、冷えて出来た岩石です。

   冷えた地中の深さによって、深成岩、半深成岩、噴出岩と成ります。

   a) 深成岩は地中深くでゆっくり冷え、その後地殻変動によって地表に出現した岩石です。

    結晶粒は荒くなります。代表的な岩が花崗岩(かこうがん)や橄欖(かんらん)岩です。

    石英、長石、雲母などが多く含まれています。

   b) 噴石岩は地表に噴出した溶岩が急速に冷えた岩石です。

    結晶粒は細かくガラス質を呈します。安山岩、玄武岩、火山岩、熔岩などがあります。

    特に火山岩の中には珪酸が、石英の形で多量に含まれています。

   c) 半深成岩は、深成岩と噴出岩の中間位置で冷えた岩です。性質も中間な物となります。

    石英粗面岩などがあります。石英粗面岩は熱水作用を受け、岩石中の長石等が粘土化し

    鉄化合物が洗い流された物が、陶石と呼ばれる物質です。磁器の原料として大量に使われて

    います。

  ⅱ) 水成岩(堆積岩)は、すでに有った岩石が大気(風)や水(雨、川)等の影響で砕け、

   分解され更に流され運ばれて堆積して出来た岩石です。粘土や黄土、石灰岩、ドロマイト、

   ローム、砂岩、ぎょう灰岩、珪藻土、褐鉄鉱などが該当します。

  ⅲ) 変成岩は、火山岩などが一度生成された後、周囲の激しい環境変化により、最初の性質が

   変化して出来た物です。熱水(熱)による物(熱変成作用)、強い動力による物(動力変成

   作用)などがあります。一般的には「風化、砂婆(さば)」と呼ばれる現象です。陶石や

   滑石などがあります。

 ② 一次粘土と二次粘土。

  酸化鉄の様な鉄化合物は、どんな粘土にも多少に関わらず含まれています。

  ⅰ) 母岩と呼ばれる岩石の傍で、変質細砕された物で、比較的酸化鉄などの不純物を含まない

   粘土を一次粘土(残留粘土)呼びます。又変質細砕された物が、遠くまで運ばれ堆積した土を

   二次粘土(堆積粘土)と呼びます。

   一次粘土が比較的不純物を含まないのに対し、二次粘土は各種の不純物を含みます。その

   不純物も、どの様な場所に流されたかによって違いが出てきます。この違いが産地毎に粘土の

   性質が異なる原因になります。  

  ⅱ) 鉄化合物の含有量と、焼成後の素地色との関係。

   a) 酸化雰囲気焼成: 白色から赤褐色、黒まで変化します。

    1%以下の場合: 白色に成ります。1~4%の場合:象牙色、淡黄色、黄色になります。

    4~7%の場合: 赤、赤褐色。 7%以上:黒褐色、黒色に成ります。

   b) 還元雰囲気焼成: 少量で明るい灰色。4%以上で暗灰色、青色になります。

    酸化第一鉄では、灰色から青色に、酸化第二鉄(弁柄など)では酸化雰囲気で黄色から赤色

    に成ります。

   c) 鉄化合物は還元焼成で、媒熔材として働き磁器化温度を下げます。即ち素地が焼き締り

    易くなります。更に他の媒熔材と共存する事で、効果が増大します。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 254 市販されている粘土類 1

2016-10-04 15:55:43 | 素朴な疑問
陶芸材料店や各メーカーのカタログ等では、色々の種類の粘土類を見る事ができます。

場合によっては、焼き上がりのサンプルを、見る事が出来る場合もあります。

余りにも種類が多く、どの土を使ったら良いのか迷う事も多いと思われます。

値段も安い物から、かなり高額の物まであり(1kg、20kg単位で)、必ずしも高額な土が良い訳でも

有りません。

当ブログでも、カテゴリー「粘土について」の中で、何度かお話しましたが、今回は別の見方で粘土に

付いて述べたいと思います。

1) 初心者や陶芸を始めて年数が浅い方は、先生や指導者が指定した粘土を使う事が多いのですが

  陶芸に慣れて来るに従い、別の種類の土を使ってみたくなりますし、実際に今まで使った事の無い

  土を使う事によって、土の違いが会得できる様になります。当然ですが、各々の土にはその土特有

  の性質を持つ物も多いです。交通網の発達していない昔であれば、その土地で採取された土を

  使うのが常識でしたが、現在では各地の土を取り寄せる事は容易に成っています。

2) 土を選ぶ基準は何か?

  土に何を期待して選ぶかという事です。例えば、轆轤挽きで作り易い物(土が良く伸び、腰が

  ある物等)。大きな作品を作るのに向いている土(縮み量が少なく、軽く出来る土など)。

  絵付けに向いた肌理(きめ)の細かい白い土。細かな細工のし易い土。ゴツゴツした野生的で

  無骨な雰囲気のある作品に向いた土(ハゼ石を含む土など)。釉が映える土や無釉の焼締めに

  向く土。更には 従来には無い土(この場合には独自に土をブレンドする事が多い)。

  個性的な特徴のある癖のある土等、土を選ぶ基準は幾つもあります。又あえて使い難い土を

  無理して使い、その土の持つ個性を引き出して、自分なりに使いこなす事に魅せられた作家さん

  も多い様です。使い難い土の場合には、何あらかの技法を開発し作る事にもなります。

  当然、一地方のみで理想の土を見付ける事が難しく、多くの土地の土をブレンドして自分独自の

  土を調合する作家さんも多い様です。

3) 粘土の主成分は、骨格となる珪石類と、これを熔かす長石や石灰石(楳熔類)、更に粘りを

  与え、加工し易くする粘土類に水を加える事で、成り立っていると言われています。これらは

  お互いに影響し合い、これらを調整 する事で、お互いの欠点を補強し、新たな特性を導き出す

  事も出来ます。

 ① 粘土類は焼き物を作り易くする大切な成分であり、焼き物の質を決定する物質です。

  粘土類と呼ばれる物に、カオリン(カオリナイト)、蛙目粘土、木節粘土などがあります。

  他の要素を混ぜる事なく、この粘土類のみで、粘土として完結した物もあります。

 ② 楳熔類は、長石や石灰石、木灰等に含まれる、カルシュウム、マグネシウム、カリウム、

  ナトリム等のアルカリ成分があります。主に焼成温度を下げ、土を焼き締め強固にする働きを

  担います。

 ③ 珪石類は、シリカと呼ばれる成分で、地球上で一番多く存在する岩石で、これを粉末状にして

  (又は自然界で粉末にたった状態)使用します。尚岩石にはアルミナ成分も多く含まれています

 ④ 粘土に色が付くのは、酸化鉄などの酸化金属や腐食した木片などが微量に灰っている為です。

  代表的な物に赤土と呼ばれる土があります。酸化鉄の含有量によって、生では赤い色をしていま

  すが、焼成後には黄色から褐色、黒へと変化します。又炎の当たり方によって、窯変と呼ばれる

  特別な色(赤やピンク等)が出る場合もあります。

 ⑤ 市販されている粘土は、制作し易いように、これらの要素を適度にブレンドした物です。

   多くの場合、練り土(水分を含む)の状態で市販されています。

   尚、同じ様な土であっても、メーカーによってブレンドに差がありますので、同じ様に焼き

   上がる訳ではありません。

4) 粘土類は母岩と呼ばれる岩石が、風化して出来た物です。

以下次回に続きます。
 
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窯を築く14 施工6

2016-10-01 15:48:30 | 陶芸の窯を築く
7) 窯を作る作業 

 ② 耐火レンガ(煉瓦)を積む。  

 ③ 扉を作る。(ここでは薪を利用する窯は除きます。)

  ⅰ) 扉を別の場所で作り、後で取り付ける方法が一般的です。(以上が前回までの話です。)

  ⅱ)扉を取り付ける。

   別工程で制作した扉の場合には、窯に取り付ける作業が必要になります。窯本体の中で唯一の

   可動部分となりますので、安定的に使用できる事が大切です。

   a) 軽量耐火レンガであっても、扉の重量はかなり重くなります。一人で作業できない事も

    有るかも知れません。但し 扉を所定の高さに保持できる台を設ければ、一人でも作業が

    可能です。

   b) 予め蝶番(ちょうつがい)の一方を、扉を支える柱に上下二段に取り付けておきます。

    蝶番は窯の重量を支えると共に、スムーズに可動する事が大切ですので、丈夫な構造の物で

    なければ成りません。潤滑油(又はグリス)を差して置くと、より滑らかな動きになります

   c) 扉側のネジ穴に蝶番の穴を合わせ、ネジ止めします。

    取り付けは、扉が水平に移動しなければなりません。左右捩れた状態で取り付けると、扉は

    スムーズに動きません。

   d) 扉をスムーズに開閉する為には、窯と各部署の隙間が一定になる様にします。

    即ち、上下左右の隙間がある範囲内に収まる必要があります。隙間が狭い場合には、扉の

    開閉を繰り返すに従い、窯のレンガと接触し磨れる様になり勝ちです。逆に隙間が多き

    過ぎると、クッション材(綿状のファイバー)を多く使う事になり、熱も逃げ易くなります

   e) クッション材を扉の周囲に張り巡らす。

    クッション材の耐熱は1300℃程度です。板状の物とロープ状の物があります。ロープ状の物

    は窯の周囲に貼り付けるとドアパッキンとして、使い勝手が良い様です。専用の接着材で

    接着します。接着剤は焼成する事で接着効果が現れます。窯の中の熱が外に漏れ出さない様

    しっかり密閉する事が大切です。尚、ドアパッキン材はある程度消耗品で、ある年数が経つ

    とボロボロに劣化する場合もありますので、その際には補修が必要です。

   f) 蝶番と反対方向に、扉の開閉をロックする部材を取り付けます。

    ロック部材は蝶番と反対方向の支柱に、取り付ける事になります。上下二段に取り付ければ

    より確実ですが、扉の高さ方向の中央部分、一箇所でも対応可能です。ロック部材はネジ

    (やや太めのボルト)とナットの組み合わせが一般的です。市販の窯ではハンドルが直角に

     曲がるナット状の物が多いです。当方では見付ける事が出来ませんでしたが、この部品が

     手に入れば、使いたい部品です。

   g) 扉の横幅が広い場合、蝶番に大きな負担が掛ます。

    扉の端を斜め上方向(三角)に、鉄製の鎖(チェーン)などで持ち上げると、より負担が

    軽減されます。

   h)  扉を開いている時間が長い事もあります。

    特に作品の窯詰めの際や窯出しの際です。出来るだけ蝶番の負担を降らす為、扉を下から

    支える「突かい棒」等を設けるとより強固になります。

  ⅲ) 小さな窯であれば、扉も小型ですので、扉の土台(鉄板など)を取り付けてから、耐火

   レンガを積み上げる方法もあります。この場合はレンガを積み上げながら、現物合わせで

   窯本体に合わせる事が出来る利点があります。

  ⅳ)上蓋窯の場合、蓋は平面に成り、形も単純になりますので、製作はより簡単になります。

   但し、耐火レンガを吊り下げる構造になりますので、レンガを蓋の土台にしっかり留める事が

   大切です。

以下次回に続きます。
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