わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 70 陶磁器の表面装飾方法 12

2015-01-31 22:20:38 | 素朴な疑問
7) 絵付けによる装飾。

 ① 下絵付け(前回の続き)

  ) 釉裏紅、釉裏五(三)彩。

   酸化銅を含む絵の具で描いて赤を出す方法を釉裏紅(ゆうちこう)と呼びます。

   銅は還元が掛かると赤色に発色すつ事を利用した方法です。

   釉裏五彩とは染付けの藍と釉裏紅の赤の他、緑や黄色、茶色(褐色)などの鉄の色が使われ

   ています。 五種類以上の色を使った物を五彩と言い、三種類の物を三彩と言います。

   次に述べる上絵付けでも、三彩、五彩の名があります。

   筆で描くのが一般的ですが、ゴム印、銅版による捺印の方法もあります。

 ② 上絵付け。

  ) 赤絵、色絵などの色彩豊かな絵模様は、本焼きした器の釉の上に、筆で模様を付けます。

    絵の具の素材は、鉄や銅、金(液)、銀、コバルト、マンガン等の金属にソーダなどを加えて

    調合した物です。但し、本焼き程度の高い温度では、色が飛んでしまい発色しません。

    そこで800℃前後の低温度で焼成します。

  ) 上絵での焼成では、湿度を極端に嫌いますので、上絵付け専用の電気窯を使うのが

    一般的です。この窯を錦窯あるいは錦焼窯と呼んでいます。

    但し、普段使っている窯でも、本焼き後の窯であれば、窯の中の湿度はほとんどありません

    ので、使う事が可能です。

  ) 焼成温度は丁度素焼きの温度と同じ程度ですので、一緒に焼く事も出来ない訳では

    有りません。但し、素焼きですと、どうしても窯の中の湿度が高くなりますので、綺麗な

    色が出難いです。

  ) 上絵の代表的な焼き物は、有田焼(伊万里焼)、九谷焼、鍋島焼、京焼などの磁器の

    肌の上に焼き付けられた作品です。

  ) 赤絵、金襴手。

    赤絵: 有田の酒井田柿右衛門で代表される、赤が主役の絵付けです。

     柿右衛門様式と呼ばれる作品は、1670年代頃に完成されたと思われています。、

     この作品は、オランダ東インド会社(VOC)の手によって、欧州等の国々へ大量輸出され、

     王侯貴族たちの宮殿や、邸宅に飾られていました。

    金欄手:赤絵の上に、更に金彩を施した物です。

    尚、下絵を施した後、更に上絵付けを施した作品も多いです。

  ) 九谷焼き(古九谷、九谷五彩)。

   九谷焼の特徴は「赤、黄、緑、紫、紺青」の、五彩手(通称九谷五彩)と言われる作品です。

   その他、「緑、黄、紫、紺青」を使用した、青手古九谷の塗埋手などがあります。

  ) 鍋島焼き。

    絵付けの特徴は、染付の輪郭線の中を濃み(だみ/染付の 塗りつぶし技法)や上絵の黄や緑

    で塗り埋める手法が採られている事です。


尚、上絵付けに付いては、当ブログの中で、下記の様に取り上げていますので、参考にして下さい。

  陶磁器の絵付け (シンクイン、イングレーズ) 2010-01-17  

  「作品の装飾と陶磁器の絵付け」

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 69 陶磁器の表面装飾方法 11

2015-01-28 21:40:14 | 素朴な疑問
7) 絵付けによる装飾。

  絵付けには、生の状態、素焼き後、本焼き後に行う方法があります。

  生の状態の場合、絵の具を使う事もありますが、多くは泥漿した色土や鉄を含んだ鬼板などで、

  筆やイッチン技法などで、描く事が多いです。

  素焼き後に行う絵付けの事を、下絵付けと呼びます。即ち釉を上に掛けますので、釉の下の絵と

  言う事です。絵付け後高温(1200~1300℃程度)で焼成し、発色させます。

  本焼き後に行う絵付けは、上絵付けと呼ばれています。一般に800℃程度で焼き付ける事が

  多いです。焼成温度が低いのは、低い温度でなければ、綺麗に発色する事がない為です。

  一般に、絵付けとは下又は上絵付けを指します。これらは、絵の具(顔料)を使いますが、

  焼成前と焼成後の色の変化は少なく、安定的に発色しますので、安心して使用できます。


 ① 下絵付け。

  ) 染付け、青花。コバルトを原料にした顔料で、呉須(ごす)と呼ばれる青~紺色に発色

    する物が代表的な物で、古い時代から使われています。染付けに付いては、何度も取り

    上げていますので、詳細は省略します。薄くしても発色する強固な発色剤です。

    それ故、濃淡を付ける事も可能です。

  ) 鉄絵。酸化鉄を顔料にした顔料で、代表的な物が鬼板(おにいた)と呼ばれる、含鉄土

    です。濃度により茶色~褐色~黒色に発色します。ごく薄くすると発色しません。

  ) 高い温度で発色する、古くから存在する顔料は上記の呉須と、鬼板の二種類ですが、

    近年色数も豊富になっています。即ち、赤、桃、黄、緑(ひわ色、濃緑など)、オレンジ、

    青、紫、紺、黒、白色などです。以前ですと、粉末状で市販され、水を加えて乳鉢などで

    磨り、微細にする必要が有りましたが、近年では水彩絵の具の様に、チューブに入っており

    そのまま直ぐに使える様になっています。

  ) 使い方は水彩絵の具と同じです。筆で塗るのが一般的ですが、その他に、釉の様に漬け

    掛けや流し掛け、スプレー掛け、ブラッシング、吹墨など色々な技法があります。

  ) コバルトは強力な顔料ですので、失敗すると消す事が難しいです。それ故、ぶっつけ本番

    では無く、鉛筆などで下絵を施してから、本番に描きます。現在の鉛筆の芯はプラスチック

    製ですので、本焼きで消失しますので、気にする必要はありません。以前は本物の鉛を

    含んでいた為、使えず毛筆用の墨や、赤インクが使われていました。

  ) 絵付けで注意すべき事は、顔料で描いた部分は、施釉(一般に透明釉)が完了するまで、

    触らない事です。顔料は、単に作品の表面に載っているだけですので、容易に指に転写し

    ます。指に付いた顔料は更に作品の別の場所に転写しますので、汚れがどんどん広がる事に

    成ります。

  ) 転写紙の利用。

    現在陶芸材料店には、各種の転写紙が市販されています。紙に多色で印刷され絵柄で、

    容易に作品に転写する事ができます。複雑な模様や細かい模様まで、手で描く事が困難な

    絵柄であっても簡単に転写できます。その方法は、転写紙の使用する部分を鋏(はさみ)で

    切り取り、作品の必要な場所に載せます。その上から水で塗れたスポンジで押さえて、

    作品に皺が出来ない様に貼り付けます。十分水を含まないと、素焼きが水を吸い取ります

    ので、しっかり塗らす事ができません。全体に水が行き渡ったら、ピンセットなどで、

    転写紙の端を摘み、慎重に剥がし取ります。慣れてくると、剥ぎ取るタイミングが解かり

    ますが、不安な場合は端を少しめくり、素地に転写している事を確認してから、全部を

    剥がす方が安全です。 転写不良の場合は、ほとんどが水分不足です。

    尚、転写紙は一度しか使えません。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 68 陶磁器の表面装飾方法 10

2015-01-27 22:18:18 | 素朴な疑問
6) 艶(つや)出しによる装飾。

  魅力的な作品にする為に、表面を磨き艶を持たせる技法は、古く土器の時代から行われています

  又、表面に艶を出すのは、単に装飾の為だけではなく、実用的な意味がありました。

  即ち、表面を擦り続ける事により、表面の肌を目詰まり状態にしてから、低温で焼成すると、

  吸水性を少なくし、丈夫な容器を作る事が出来るからです。それ故、釉が発明されていない、

  古い時代の「水甕」として使用する場合には、必ず磨き作業が施された様です。

  現在では、施釉が一般的(主流)ですので、水漏れを防ぐ為の、磨く作業は必要としませんが、

  装飾の一種として行われている場合もあります。

 ① 効果的に艶出しを行うには、粘土が若干湿っている状態で行い、表面をなだらかにします。

  ) 肌理の細かい泥漿(でいしょう)を表面に塗って(コーティング)から作業に取り掛かる

   とより効果的です。

  ) 古くは川原で拾った、滑らかな自然石を使用していました。現在では市販されている

   「ゴムヘラ」を使う事が多いです。その他、「皮やぼろきれ、フェルト」を使う事もあります

  ) 粘土が乾燥した場合には、「スプーンの背」や球面の硬い物質を使います。

  ) 道具を作品に根気良く擦り付けると、光沢が出てきます。

 ② 艶出し剤を使う方法。 焼成前や後の作品に使います。

   当然、釉の光沢とは異なります。

  ) 擦って(さすって)艶を出す方法以外に、油や植物の汁、松ヤニ、木から取れる樹脂、

   アスファルト、アラビヤゴムなどを容器の内側や表面に塗り、艶出しを行う方法があります。

   アラビヤゴムに顔料を添加し、色の付いた光沢にする事も行われています。

   上記物質は、単体でも耐水性のある物です。

  )我が国では、天然漆(うるし)や和ニスなどが用いられています。現在では、人口樹脂や

   透明な合成ニス等も使われています。透明な物は素地の色を強く反映します。

  ) 家具などに使われている艶出し剤を使う場合もあります。但し、食器には衛生上不向き

   です。

  ) 艶出し剤を塗れば適度に光沢が出ますが、更に布や皮で磨き上げると、更に光沢が増し

   ます。

 ③ 艶出し剤を使うタイミング。

  ) 生の状態(焼成前)に煮詰めた樹脂を塗り、低温で焼成すると樹脂は強い皮膜になり、

    強い光沢を生じます。

  ) 焼成したばかりの熱い作品に、樹脂や植物の汁を垂らしたり、塗る事により光沢を出す

    事も出来ます。
 
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素朴な疑問 67 陶磁器の表面装飾方法 9

2015-01-26 21:58:28 | 素朴な疑問
5) 貼り付け文様。

  粘土片を作品の表面に貼り付け、浮き彫り状に見せる装飾技法です。

  一般には、伴土と言い同じ種類の土を使いますが、異なる色を使いたい時には、伴土に顔料を

  添加し、色土を作ります。

 ① 貼り付ける部品同士が、なるたけ乾燥具合を揃える。

  粘土は両方とも軟らかい状態では、押し付けるだけで簡単に接着が可能です。しかし、一方が

  乾燥が進み過ぎた場合、接着後に剥がれ易くなります。勿論貼り付ける部分が小さく、面積も

  狭い場合には、乾燥の具合を考える必要は少なくなりますが、面積が広くなるに従い、乾燥

  具合は慎重に、見極める必要があります。剥がれない場合でも、軟らかい土が乾燥収縮する為、

  表面に「ひびや割れ」が生じます。極端な場合には、本体を歪ませる事も稀ではありません。

  基本的には、両方の乾燥具合を合わせた方が安全です。特に両方の粘土の種類が異なる場合

  には収縮率に差が出易いですので、乾燥具合を揃えた方が良い結果が得られます。

 ② 乾燥の進んだ作品や、貼り付ける部品を取り付けるには、両方の貼り付け部分に刻み(XX)

   の傷を付け、更に、「ドベ」(同じ粘土の泥漿した物)を塗り、押圧するだけで接着が可能

   です。その際、「ドベ」が隙間からはみ出す様に「タップリ」塗ります。はみ出した「ドベ」

   は筆などで、簡単に拭い取る事が出来ます。面積の広い場合には接着面に空気が閉じ込めない

   様に、中心から外側に向かって貼り付けいきます。特に貼り付けた部分の周辺は、しっかり

   押さえ、「剥がれやめくれ」を防止する必要があります。

 ③ 貼り付ける部品は以下の様な物があります。

  ) 粘土の丸めた小粒(ペレット):金属を繋ぐ「リベット」(打ち鋲)状の物と同じ形状

    です。適度に丸めた粘土粒を半分に切断して使います。簡単な模様ですので、どの様に

    配置するかがポイントです。

  ) 印花紋の平たい粘土板。(紋貼り)

    粘土板に多数の印花紋を捺し、適度の大きさに切り出す方法です。又先に必要な粘土板を

    作り、そこに捺印する方法もあります。この場合も、どの様な位置にどの様な印花紋を

    取り付けるかによって、その人のセンスが現れます。

  ) 紐状の粘土を貼り付ける。(筋貼り)

   a) 一般に円形の紐を使いますが、場合によっては、平たい紐、断面が三角形の紐を使う事も

    あります。紐をどの様に貼り付けるかは、自由ですが「井桁」「あやめ紋」「しのぎ紋」

    「流水紋」風など幾つかのパターンが存在します。

   b) 紐は軟らかい方が、自由に湾曲しますので加工し易いです。但し太い紐の場合には乾燥

    時に、紐が切れる恐れが生じますので、極端に太い紐は避けて下さい。

   c) 沢山貼り付けると、作品のバランスが崩れてしまう恐れも出ますので、全体のバランスを

    考えなければなりません。

  ) 装飾とは限りませんが、人形や動物の手足などを後から接着する事もあります。

    更に、蓋物の摘みなどを、接着する場面も多いです。基本的には上に記した方法と同じです

    但し、実用面が前面に出ますので、使い易い形にする必要が有ります。
 
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素朴な疑問 66 陶磁器の表面装飾方法 8

2015-01-25 22:13:31 | 素朴な疑問
4) 化粧土を使った化粧掛け以外の装飾方法。

 ① イッチン(スポイト掛け)、絞り描き。いずれも同じ内容です。

  ) 素地と異なる色土の泥漿(でいしょう)を、半乾燥状態の素地上に、スポイト等を用いて

    細い線状の模様を描く方法です。この場合、イッチンを施した部分は盛り上がります。

  ) 盛り上がらないイッチンの方法。

    素地全面に化粧土を塗り、まだ濡れている状態で、異なる泥漿の色土をイッチン技法で施す

    と、イッチンした部分は最初に塗った化粧土に潜り込み、盛り上がらず平面に成ります。

  ) スポイト等の先端は、作品に接触させながら描くと上手くいきます。作品表面から離れて

    しまうと、泥漿の量のコントロールが難しくなります。更に立体的な作品の場合、泥漿が

    流れ落ちる場合もありますので、流れ落ちない様に泥漿の濃度を調整したり、作品の角度を

    調整しながら作業する必要も生まれます。 

    尚、色土による練り込み模様ですと、鶉(うずら)紋と呼ばれます。

  ) フェザー・コーミング(羽梳き模様)。

    イッチン描きで、複数の異なる色で、盛り上がった平行線を密に引きます。その線と直角

    方向に鳥の羽の先(根元側)で連続的に引っ掻くと、「さざなみ」風の連続模様が現れます

    即ち、凸状の縞模様が連続して続きます。見方によっては「孔雀の羽」の様にも見える物

    です。主にヨーロッパで行われている装飾模様ですが、歴史は古く3世紀の宋(春秋戦国

    時代)の頃から存在していた様です。

 ② 掻き落とし。

  ) 素地に素地と異なる化粧土を掛け、乾燥後に模様に沿って表面を掻き落とし、模様を浮き

   出させると同時に素地と化粧土の色の差で、表情を表します。模様の外側を掻き落とす方法と

   内側を掻き落とす方法があります。写真のネガ、ポジの関係に成ります。

  ) 平面な模様ではなく、単に引っ掻き線や、櫛目などの線を入れる事もあります。

   この場合は、化粧土は乾燥気味の方が、綺麗な線が出やすいです。

 ③ 墨流し、マーブル模様。

   複数の泥漿した色土を作品上に適宜垂らし、作品自体を強く揺さぶったり、斜めに傾けたり

   して、泥漿同士を混ざり合わせて、模様にする方法です。一発勝負に成りますので、作業する

   前に、十分考慮しておく必要があります。当然、泥漿が固定するまでの時間しかありません。

   それ故、泥漿は弛めの方が作業し易く、混ざり易くなります。模様や出来上がりは偶然性が

   優先しますので、思わぬ模様に成る事もあります。

 ④ 象嵌(ぞうがん)。

  ) 作品の表面を凹状に彫りこみ、模様を描きます。この凹んだ部分に素地と異なる色土の

    泥漿を流し込みます。泥漿は乾燥と伴に体積が減ります。凹み部は作品の高さより低く

    なりますので、数回同じ作業を繰り返す必要があります。最終的には乾燥時には、盛り上

    がった状態にします。

  ) カンナを使って平らに削る。色土が盛り上がった部分をカンナで削り取り、表面を均一に

    します。

  ) 彫り込みはなるべく深くし、特に模様の周辺部は深くすると、カンナで削った後、綺麗な

    象嵌模様に成ります。

  ) 象嵌は手間隙が掛かる割には、意外と綺麗に敵上がり難いです。

 ⑤ 三島(印花紋)。

  ) 花などが彫られた印を、作品に捺印して印花紋を付けます。その後、刷毛などで化粧土を

    塗ります。すると、印が捺された部分は凹んでいる為、化成土が掛かりません。即ち素地の

    色のままに成ります。

  ) 全面に化粧土を塗り、その後に捺印する方法もあります。この場合には、凹んだ部分にも

    化粧土が残る事に成ります。

5) 貼り付け文様。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 65 陶磁器の表面装飾方法 7

2015-01-23 22:19:16 | 素朴な疑問
3) 化粧掛けによる装飾方法。

 ① 化粧土の古典的な利用方法。

  ) 粉引き(こひき)による装飾。

   色の付いた土で作った作品を、白く見せる為、表面に白化粧土を付着させる方法ですが、

   刷毛ですとどうしても、刷毛の通った跡が残ります。作品を白く見せる方法は、白い釉でも

   可能ですが、土と釉では明らかに違いが出ます。粉引きの方法は以下様になります。

 ◎ 尚、粉引きについては、当ブログの「化粧土の調整(粉引き)」2009-9--27で述べています

   ので参考にして下さい。

  a) 漬け掛け(浸し掛け)による方法。一般的に行われている方法です。

   適度の濃度の化粧土の泥漿(でいしょう)が入った容器に、直接漬けます。数秒ご直ぐに

   引き上げます。

  b) 流し掛け、化粧土の泥漿を柄杓の様な容器に取り、作品や容器を回転させながら一気に

    流し掛けする方法です。

  c) 粉引きの技法は上記の様に施釉する方法と同じですが、大きな違いがあります。

    それは、粉引きは失敗する確立が大変高い事です。失敗とは作品が崩れ落ち、原型を留め

    ないくしてまう程です。

  d) 失敗の理由。素地の選定の誤り、乾燥具合の誤り、泥漿の濃度の誤り、泥漿の掛ける

    順序の誤り、その他の誤り等があります。

   イ) 素地として、粒子の細かい赤土が向いています。細かい粒子の為、化粧土の水分が

     吸収し難い事が理由です。又赤土を使う事で、化粧土の白が引き立ちます。

   ロ) 乾燥具合:ある程度素地が乾燥していないと、化粧土は作品の表面に載りません。

     逆に乾燥し過ぎると、水分を吸収し過ぎて、作品が壊れる事に成ります。丁度良い乾燥

     具合は、ご自分で試して決めて下さい。尚、粉引き掛け終了後は、ドライヤー等で速やか

     に乾燥させる事で、壊れる危険性を少なく出来ます。

   ハ) 水分の少ない化粧土を作る。

     水分を少なくし、且つ、付着を良くするには、解コウ剤を添加した化粧土を使う事です

     即ち、炭酸ソーダや、珪酸ソーダ(水ガラス)などを、泥漿に添加し少量の水で、

     流動性の有る、化粧土を作る事が出来ます。尚、CMC(化学のり)を添加する事で剥がれ

     を予防します。

   ニ) 化粧土を掛けると、素地は水を吸って膨張します。

     膨張方向は主に、化粧土を掛けた面と反対方向に強く現れます。それ故、作品の外側に

     掛ける場合には、内側に力が働きます。これは、作品の径を縮める方向ですので、

     危険は少ないです。しかし、内側に掛けた場合、外側へと膨張し力が掛ますので、

     作品が壊れる危険性が高いです。内外の両方に掛ける場合は、内外同時又は、外側を

     先にし、乾燥後に内側を掛けると、危険は少なくなります。

  e) 粉引き後は乾燥させてから、素焼きを行い、更に透明釉を施釉し本焼きします。

 ◎ 「化粧土と色土15 調合と使い方6(粉引1)2013-10-20」 も参考にして下さい。

以下次回に続きます。


     
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素朴な疑問 64 陶磁器の表面装飾方法 6

2015-01-21 21:10:55 | 素朴な疑問
3) 化粧掛けによる装飾方法。

  素地と異なる色の土を化粧土といいます。当初は素地の色の悪さを隠す為に、白い土を使用した

  物ですので化粧土と呼ばれています。しかし現在では、単に表面に塗って素地の欠点を隠すのみ

  でなく、積極的に利用しています。色の種類も豊富になり、色々な技法が取られ、有力な装飾

  手段の一つになっています。

 ① 化粧土の古典的な利用方法。

  ) 刷毛目(はけめ)による装飾。

   a) 刷毛を用いて作品の表面に、化粧土を塗る方法で、刷毛の通った跡が残るのが特徴です。

    器の表面全体に塗る方法と、部分的に塗る方法があります。

   b) 素地と色違いの土を塗りますので、効果的な色土の調和で表現する事が大切です。

    化粧土の色は白以外に、赤、ピンク、黄、緑、青、紫、黒など豊富にあります。色の付いた

    化粧土も市販されていますが、顔料(着色剤)を粘土に混入させて、ご自分で作る事も

    可能です。以前ですと、土の収縮率を合わせる為、伴土(ともつち)と言い素地と同じ土に

    顔料を混ぜる事が推奨されていましたが、現在市販されている化粧土は、ほとんどの素地と

    相性が良い様に調合されています。

   c) 塗り方も、轆轤を回転させて渦巻き状に塗る方法や、中心から放射状に塗る方法があり

    ます。刷毛の目の粗さや幅によって、刷毛目の表情も変化します。

   d) 上記の様に刷毛で、作品の表面を撫ぜる様に塗る方法以外に、刷毛を打ち付ける様に

    して塗る方法もあります。

   e) 化粧土を筆に取り、撒き散らす方法の装飾。

    これは、偶然性を取り入れた模様の装飾方法です。今まで述べてきた方法はあり程度、

    模様の配置を考慮して作業を行っていますが、この方法は、筆を強く振る事で、筆に含ま

    れる色土の泥漿(でいしょう)を、作品上に撒き散らす方法です。多くの場合点又は線状に

    成りますが、筆を振り降ろす速度よって模様の勢いに違いが出ます。 

   f) マスキングによる装飾。

    型紙を作り、作品の上に貼り付けその上から、化粧土を刷毛塗りする事で、型紙部分のみを

    色抜きする事が出来ます。当然ですが、切り抜き方によって切り抜いた部分のみに色土を

    塗ることも可能です。型紙を外すタイミングも重要です。ドライヤー等で若干乾燥させた

    後、ピンセット等を使い紙の端からゆっくり剥がします。型紙は丈夫な物であれば、数回

    使用できますが、一般的には、一度のみの場合が多いですので、同じ型紙を複数個用意

    しておく必要があります。

  ) スポンジを用いて、泥漿(でいしょう)した色土を塗る装飾。

   a) 上記の様に刷毛を用いる事が多いのですが、刷毛の代わりにスポンジを用いる事もあり

    ます。刷毛と違い刷毛目は出ませんが、スポンジの目の粗さによって斑(まだら)な文様に

    なり、更に、押し付ける強さによっても、表情が変化します。

   b) 異なる色の泥漿を重ね塗りする事で、更に複雑な文様を作る事が出来ます。

    但し、乾燥していない色土の上から重ねて塗ると、色土同士が混ざり合い、多くの場合

    汚れた感じになりますので、手に付かない程度に乾燥し、その上に異なる色土を載せます。

  ) 粉引き(こひき)による装飾。

以下次回に続きます。
   
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素朴な疑問 63 陶磁器の表面装飾方法 5

2015-01-18 22:10:19 | 素朴な疑問
2) 彫る削る方法。(前回の続きです)

 ⑤ 透かし彫り。

 ) 任意の模様の透かし彫り。

   丸や規則的な幾何学模様では、既存の抜き型を使う事も可能ですが、好みの形の透かし彫りを

   行う為には、幾つかの注意点があります。

  a) 透かし彫りの出来る範囲を把握する。

   作品の側面に孔を開ける事は、作品を軽くする効果もありますが、基本的には強度を落とす

   事に成ります。少数の孔であれば問題も少ないのですが、抜く数が増えるに従い、機械的

   強度は確実に弱くなります。それ故、どの程度までなら強度を落とさずに透かし彫りが可能か

   を把握する必要があります。

  b) 透かし彫りを施した為に、作品が変形する場合があります。

   作品の壁面全体に偏る事なく、透かし彫りを行えば問題も少ないのですが、或る範囲のみに

   集中して透かし彫りを多くすると、乾燥と伴にその部分が他の部分に引っ張られ、変形し易く

   なります。

  c) 透かし彫りの孔の大きさによっても、作品の強度に影響を与えます。

   特に、作品の重量が掛かる作品の下部では、大きな透かし彫りは避けたい処です。

   基本的には、下部は細かい模様にし、中部から上部に掛けて模様を大きくした方が強度を

   保つ事が出来ます。

  d) 透かし彫りの文様によって、「ひび」の入り易い形状もあります。

   即ち、「Vの字」状の切れ込みを入れない事です。Vの先端部分から「ひび」が現れどんどん

   伸びて行き、大きな「割れ」と発展します。どうしても「V形」を作りたい時には、先端部分

   に丸(R)を設ける必要があります。丸みは「竹ひご」などの細い棒を押し付けるか、回転

   させる様にして「なすり付け」ます。

  e) 孔同士の間隔や、作品の縁から距離も十分とる事も重要です。

   孔同士の間隔は少なくても5mm以上必要です。隣接する孔が丸い場合には、少ない距離で

   良いですが、直線同士が隣接する場合は、作品の肉厚にも関係しますが、1cm以上が必要

   です。同様な事は縁と孔との間隔でも同じと考えて下さい。

  f) 大きく孔を開ける際には、小さな孔を開けてから、その周囲を削り取って孔を広げる方法が

   安全な方法です。一度に大きな孔を開けるなると、慎重に作業する事に成りますので、意外と

   時間が掛ます。小さな孔はドリルの刃を用いて開けますが、径の細い物から順次太い物で

   開けます。カッターの刃を用いて孔を大きくしますので、カッターの刃先が入り込む程度の

   孔は必要です。

  g) 作品に孔を開ける際、模様の当たり線を付けておきます。この線は最後まで残し、仕上げの

   際に削り取る様にします。更に、彫り込んだ端面に傷が残ると、そこから「ひび」が入り易く

   成りますので、出来る限り端面は皮などを使い、滑らかにしておくと安心です。

  h) 針金を使って孔を開ける方法。

   直線的な模様の場合には、刃物が有効ですが、複雑な曲面の孔を開ける際には、細い針金が

   有効です。即ち、ドリルやキリの刃先で小さな孔を開け、針金を通します。この針金を糸ノコ

   の様に、押したり引いたりして使います。即ち針金の両端を持ち、当たりを付けた模様に

   沿って動かします。この方法ですと、細かい格子模様の透かし彫りも可能です。

  i) 多数の透かし彫りを施した作品は、移動に注意が必要です。特に窯詰め等の際、狭い

   窯中では一度詰めた物を移動させる事は危険が伴います。素焼きが済めば一安心ですが、

   壊れ易いですから丁寧に取り扱います。

3) 化粧掛けによる装飾方法。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 62 陶磁器の表面装飾方法 4

2015-01-17 22:04:18 | 素朴な疑問
2) 彫る削る方法。(前回の続きです)

 ⑤ 透かし彫り。

  一般に食器として使用する容器には、透かし彫りは施されませんが、ランプ等の照明器具や、

  菓子鉢の様に液体を入れない容器などには、模様として透かし彫りを行う事も多いです。

  更に、花瓶や壷などの場合、壁を二重に作り、その外側のみに透かし彫りを施す技法も古くより

  行われています。又、蛍焼きと呼ばれる技法は、小孔を開け釉でその孔を塞ぐ方法が取られて

  います。釉のみの部分は、透明感のある焼き物になります。特にご飯茶碗などで見掛けます。

  (尚、孔は貫通した物で、穴は行き止まりの物です。)透かし彫りを行うには幾つかの方法が

  有ります。

  ) 抜き型を使う方法。

   a) クッキーの抜き型は、容易に手に入る物です。金属製や樹脂製の物が多いです。

    ハートの形や、動物の形、木の葉型、花型など種類は豊富です。しかし、模様としては

    小型の物は少ない様で、使い勝手が必ずしも良くありません。

   b) 私事ですが、東京の浅草の近くの合羽橋(かっぱばし)で、小型の抜き型を買い求めて

    います。桜の花びら一枚程度の小さな抜き型も売られています。又、幾何学文様に適する

    三角形、四角形、六角形などの基本形や、他に楕円状の物もあります。これらを組み合わせ

    れば連続模様の透かし彫りも可能です。

   c) 抜き型を使う場合、作品の形にしてから、抜き文様を加えます。

     勿論、タタラ(粘土板)での段階で型抜きする方が、簡単な為、型抜き後に組み立てる

     事も多いです。型抜きをする際には、粘土が適度に乾燥している事が大切です。軟らかい

     と抜く事は簡単ですが、全体の型が崩れます。乾燥し過ぎると抜けません。

   d) 型抜きの際には、裏面を手(指)や板で押さえると、抜き易くなります。

     当然、肉が薄い方が抜き易いです。更に、抜いた裏面には「ばり」(毛羽立ち)が発生

     しますので、端面と裏面の「ばり」は取り除きます。

  ) ドリルの刃を使う。

   a)「ドリル」とは、金属や木工用の丸い穴(孔)を開ける道具です。金属製の物は1~10mm

    以下の物が多く、木工用のはそれ以上の物が多いです。モーターを使ってドリルで穴を開け

    すると効率が良いのですが、出来れば一孔づつ手で開ける事を薦めます。

    尚、ドリルの無い場合、金属製のパイプを使う事も出来ます。例えば、傘の中心棒の様な

    物も使えます。そのほか、プラスチックのパイプも役に立ちます。場合によっては瓶などの

    蓋も使う事も出来ます。  

   b) 「ドリル」で穴を開ける際、刃先が食い込まず、逃げる事がありますので、必ず穴の

     中心部には、針などで小さな凹みを付けておきます。(尚金属に穴を開けるの場合には

     「センターポンチ」と言う道具があります。)

   c)「ドリル」の刃は時計回転(右回転)で先に(中に)進みます。逆回転で抜け出す事に

    成りますが、完全に抜け切るまで右回転させます。

 ) 任意の模様の透かし彫り。

以下次回に続きます。

  
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素朴な疑問 61 陶磁器の表面装飾方法 3?

2015-01-16 17:54:12 | 素朴な疑問
2) 彫る削る方法。

 装飾として作品の表面を削る場合、作品の裏側まで彫りこむ所謂(いわゆる)透かし彫りの方法と

 表面のみを彫り込む方法があります。後者には、線彫りや櫛目模様、象嵌(ぞうがん)模様、

 浮き彫り(レリーフ)などがあります。これらは前回お話した、表面を凹ますのと効果は同じ

 ですが、作業や用具が異なります。

 更に、多くの場合作業に取り掛かる前に作品の表面は、ある程度乾燥させておく必要があります。

 乾燥具合は、作業内容によって各々異なります。

 ① 線彫り。 竹串や竹箆(へら)、彫刻刀、場合によっては、自分の指などで表面に傷を付けて

  模様にする方法です。勿論、模様を付けた後、どの様に仕上げるかは、もう一つの別の工夫が

  必要な場合が多いです。それらが、後で述べる象嵌であり掻き落とし、レリーフなどの方法です

 ② 櫛目。櫛とは髪の毛を梳く櫛と同じ形の用具で、等間隔の細い切れ込みのある物で、木製や

   金属製が多いです。

  ) 一般に櫛目を入れると、表面が「ざらつき」ますので、料理を盛る容器などでは、汚れが

    付き易い為、器の内側に使わない方が良いかも知れません。但し、擂鉢(すりばち)は

    積極的に表面を荒らす為に、櫛目を全面的に器内に施します。

  ) 櫛はその歯の数の多少により、又目の細かさ(ピッチ)によっても、表情が変化します。

    但し、余り細か切れ込みのある櫛は、使い難いです。

  ) 一般に歯先が揃った物が多いですが、湾曲した作品の外側の場合は凹状の櫛を、内側には

    凸状の櫛を使います。当然、湾曲の曲がり具合によって、凹凸の程度も変化します。

  ) 櫛を使用する場合には、櫛に水を着けやや倒し気味にして、滑らす様に使うと、「ばり」

    (毛ば立ち)が少なくなります。尚、発生した「ばり」は、乾燥後に「紙やすり」などで

    取り除く必要が有ります。但し擂鉢の場合は、残したままな方が良いです。

  ) 櫛を使う時の注意点は、櫛のスタートと終了位置は、作品の端面より5mm以上離す

    事です。端面まで櫛目を入れると、そこから「割れや亀裂」が入り易くなります。

 ③ 面取り模様。作品の外側を縦、横、斜め方向に大胆に肉を削り(切り)取る方法です。

   当然、削り取る事の出来る程度の肉厚の作品でなければなりません。面取り数が多くなれば

   肉厚はやや薄くできますが、大胆な場合には、特に肉を厚くする必要があります。

  ) 切れる刃物や鉋(かんな)を使い、大胆に一度で切り取ります。切れ味の鋭さも見所の

    一つです。

  ) 鎬(しのぎ)文: 隣同士の面取りした境が、凸状に盛り上がっている状態の文様です。

    この盛り上がり部分をはっきり強調するには、切り取り部分をやや凹状態にする事です。

  ) 凸部の箇所は肉厚になり、切り取った場所は肉薄に成りますので、乾燥時や焼成時に

    変形し易いですので、急激な乾燥は避けた方が良いでしょう。

  ) 鎬文に施釉すると、鎬の部の釉の色が薄くなったり、素地が露出する場合があり、更に

    凸が強調されます。

 ④ 浮き彫り(レリーフ)模様(彫刻模様)。

  レリーフを作る方法は、後で述べる貼り付けによる方法もありますが、刃物を使って彫る方が、

  文様は「クッキリ」浮き出てき易いです。

  ) レリーフは素材として、粘土以外に、石、木、金属などでも行う事が多いです。

    彫刻の技法は、素材に関係無くほぼ同じです。

  ) 彫刻を施すには、土台と成る作品は、やや肉厚に作る必要があります。更に、肌理の粗い

    土を使うと、綺麗な肌には成りませんので、やや肌理の細かい土を使います。

  ) 彫刻を施す際、予め粘土の表面に下書きを施せば、失敗も少なくなります。

    粘土は適度に乾燥させてると、彫刻し易くなります。乾燥し過ぎると「もろく」なります。

  ) 浮き出す為には、周囲を一段彫り下げます。特に主要な文様の端面が重要です。垂直に

   彫り込む場合と、やや裾野広がりの方法がありますが、前者の方が、陰影が強く出ますので、

   浮き彫りの効果が増します。

 ⑤ 透かし彫り。

以下次回に続きます。
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