わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問 32 釉の痘痕(あばた)の解消方法

2018-03-05 17:06:03 | 質問、問い合わせ、相談事
Unknown (tak) 様より以下の質問をお受けしましたので、当方なりの回答を致します。

 市販の松灰70と長石30を混ぜて作った釉薬

 そのままだとうまく焼けたのですが、コバルトを添加したらブツブツが・・・

 いつも困っていたのですが あばた、なのですね

 ほかの釉薬と一緒に焼いていますし、表面のマットな感じは気に入っているので、最高温度は

 変えたくないのですがガスをうまく追い出す方法はありますか

 900度くらいのところを長くしてみているのですが・・・

 
明窓窯より

1) 気泡(ガス)のできる理由。

 クロム、ニッケル、アンチモン等の有色金属酸化物を釉に混入させた場合、気泡が発生する事が

 あります。特に不純物が含まれる時に発生し易いです。

 又、コバルト、マンガン、ニッケル等の酸化金属は、高温で酸素との結合や酸素の放出を頻繁に

 行います。どのタイミングで吸収し、どのタイミングで放出するかは、定かではありません。

 この酸素の放出が気泡の原因です。釉の粘性が大きいと、釉の表面から完全には抜け出せず、

 表面が荒れた状態に成ります。

 又、ピンク、コバルト、クロム等の顔料を釉に添加した時、釉が縮れる場合があります。

 特に、釉に粘性が少ない時で、顔料が十分に水洗いされていない時や、硫化物が含まれる場合は、

 顕著に現れます。

2) 対策としては、釉の粘性を弱め、流動性を持たせるのが、有力な方法と思われます。

 釉に珪酸(シリカ)や石灰(炭酸カルシウム)が多く成ると、粘性が強くなると言われえいます。

 ① 松灰や長石の種類を変えたり、調合割合を変える方法。

  灰類には、種類によって20~50%の石灰が含まれます。市販されている松灰をご利用との

  事ですが、それには天然と合成のがあります。合成の物は品質が一定ですが、天然物ではその

  生育土壌、伐採時期、木の老若、木の部位(幹、枝、葉、根、樹皮等)によって成分が異なり

  ます。その為、焼成された釉の表情にも変化があります。松灰を天然から合成へ、又は合成から

  天然物に変える事で、気泡を減らせるかも知れません。

  一方長石にも正長石(カリ)、ソダー長石(ナトリウム)、灰長石(カルシウム)があります。

  多く使われるのは正長石(福島長石等)ですので、多分正長石を使用していると推察されます。

  正長石には、約65%程度のシリカが含まれています。

  以上の事から、御使用の釉は粘性が強いと思われます。

 ② 添加物を入れる事で粘性を弱める。

  御使用の釉の組成や焼成温度を変更したくないとの事ですので、粘性を弱める為には、何らかの

  物質を添加する必要があります。

  ⅰ) 硼酸を添加する。

    硼酸は珪酸と同じ様に、ガラス質に成ると同時に、釉の粘性を弱める働きをします。

    又、釉を安定化する働きもあります。流動性が求められる結晶釉にも多く使われています。

  ⅱ) 融剤と成るナトリウム、カリウム、バリウム等のアルカリ又はアルカリ土金属を添加する。

   これらを添加する事で、融点(ガラスですので、実際には融点はありませんが)を下げる事が

   出来、気泡の発生を早める事も可能になり、速やかに放出させます。

  ⅲ) 炭酸リシウム(その他、リシウムの酸化物)ははなはだ強い融剤で、わずか1%程度を

   添加する事で、流動性を増し、痘痕やピンホール等の改善に大きな効果を発揮します。

 ③ 「900度くらいのところを長くしてみているのですが・・・」

  私には、この意味が判りません。この行為は、結晶釉の結晶を成長させる時に行う物と思われ

  ます。気泡を釉から放出するには、温度が低過ぎます。

  時間を掛けるのであれば、最高温度で引っ張る事(寝らすと言う)です。引っ張る時間が長け

  れば長い程、釉は平滑になり痘痕は解消します。理想的には30~60分程度以上が必要ですが

  燃費が掛りますので、最適な必要な時間を見付けて下さい。

以上、参考に成れば有り難いです。
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1 コメント

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Unknown (ぶくぷく)
2023-10-15 19:34:36
こんちには。厚かましい質問で申し訳ありません。
陶芸を始めて五年目の者です。
家で一人で作っています。これまでは市販の釉薬を使ってきましたが、欲しい色の釉薬を自分で作ってみようかと思い立ちました。
少し勉強しましたが、難しくてよく理解できません。
作りたいのは、焦げ茶で少し紫がかったマット釉です。実際に使っておられる作家さんがおられます。
釉薬の調合は一筋縄ではいかないことは理解していますが、もし、比較的簡単な調合方法がありましたら、教えていただけますか?
紫がかっていなくても、焦げ茶のマット釉でもかまいません。食器に使いたいと思っています。
無理なお願いで恐縮ですが、よろしくお願いします。
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